コル・レーニョの歌と弦楽器奏法を保育で活かす方法

コル・レーニョと歌:保育で使える弦楽器特殊奏法の基礎知識

「コル・レーニョが使われた曲を子どもに聴かせると、保育士よりも子どものほうが先に音の変化に気づき、45分間飽きずに集中することがあります。」

コル・レーニョ×保育の3ポイント
🎻

コル・レーニョとは?

イタリア語で「木で」の意味。弓の毛ではなく木製の棹で弦を叩く・こする特殊奏法。カタカタ・カチカチとした独特の打楽器的な音がする。

🎼

有名な使用例

ベルリオーズ「幻想交響曲」第5楽章、サン=サーンス「死の舞踏」、ホルスト「惑星」火星など。骸骨や幽霊など幻想的な場面でよく使われる。

👶

保育での活用ポイント

音の変化を体で感じる体験として活用できる。「なんか変な音!」という子どもの素直な反応が、感性と表現力を育む入口になる。

コル・レーニョの歌とは何か:イタリア語「木で」が意味するもの

コル・レーニョ(col legno)はイタリア語で「木で」という意味の音楽用語です。ヴァイオリン・ビオラ・チェロ・コントラバスといったヴァイオリン属の弦楽器で使われる特殊奏法のひとつで、通常は弓の毛(馬の尻尾の毛を束ねたもの)で弦をこすって音を出すところを、弓をひっくり返して木製の棹(スティック)の部分で弦を叩いたりこすったりして音を出します。

通常の弓奏き(アルコ奏法)とは全く異なるこの奏法では、「カタカタ」「カチカチ」「コンコン」といった独特の打楽器的な音が生まれます。音量は通常のアルコ奏法よりも小さく、音程もはっきりとは聞こえにくいのが特徴です。つまり音程よりも「音色」と「リズム感」を前面に出した奏法です。

この奏法には大きく2種類あります。まず、弓の棹で弦を叩く「コル・レーニョ・バットゥート(col legno battuto)」。もうひとつは、棹で弦を擦って音を出す「コル・レーニョ・トラット(col legno tratto)」です。単に「コル・レーニョ」と楽譜に指示がある場合は、ほとんどの場合バットゥートを指します。

種類 奏法 音の印象
バットゥート(battuto) 棹で弦を叩く カタカタ・コツコツした打楽器的な音
トラット(tratto) 棹で弦をこする ざらざらした独特のノイズ感のある音

音が小さいのが基本です。このため、大ホールでの演奏では奏者全員が一斉にコル・レーニョを奏することで、聞こえる程度の音量が確保されます。これが重要なポイントです。

コル・レーニョを元通りの奏法に戻すときは、楽譜に「arco(アルコ)」と指示が書かれます。保育士がコンサートのプログラムノートを読む際、こうした用語を知っていると子どもへの説明がずっとしやすくなります。

コトバンクのコル・レーニョ解説(音楽用語の意味・用法として信頼性が高い)。

コルレーニョとは? 意味や使い方 – コトバンク

コル・レーニョが使われる代表的な歌・曲:保育士が知っておきたい名曲リスト

コル・レーニョの奏法が使われている曲は、歴史的にも非常に幅広く存在します。最初期の記録としては、17世紀初頭のイギリス人作曲家トバイアス・ヒュームが1605年に著した《エア集 第1巻》に収録された「Harke, harke」という曲が挙げられます。約400年以上前からこの奏法が存在していたことは、意外と知られていません。

もっとも有名な使用例のひとつが、ベルリオーズの《幻想交響曲》(1830年)第5楽章「サバトの夜の夢」です。この楽章では、骸骨が踊り狂うという不気味なシーンを表現するためにコル・レーニョが使われており、カチカチという骨の音を見事に描き出しています。幻想交響曲は保育の現場でも音楽鑑賞のテーマに取り上げられることがある、代表的なロマン派の名曲です。

クラシック音楽の中でコル・レーニョが使われる有名な曲をまとめると、次のようになります。

  • 🦴 ベルリオーズ《幻想交響曲》第5楽章:骸骨が踊るシーンで使用。「骸骨の音」描写の代表格
  • 💀 サン=サーンス《死の舞踏》(1874年):死神がヴァイオリンを弾き骸骨たちが踊るという題材の曲。骸骨の動きをコル・レーニョで描写
  • 🪐 ホルスト《惑星》「火星、戦争をもたらす者」:戦争的・機械的な緊張感を表現するために使用
  • 🔥 ストラヴィンスキー《春の祭典》(1913年):20世紀音楽の革命的作品でも使われている
  • 🎭 モーツァルト《ヴァイオリン協奏曲第5番》第3楽章:「トルコ風」のエキゾチックなエピソードで低弦がコル・レーニョを担当

これほどの有名曲に使われているということですね。保育士として音楽鑑賞の場面でこれらの曲を子どもに聴かせる際、「弓をひっくり返してコンコン叩いているよ」と一言添えるだけで、子どもの反応が大きく変わります。

特にサン=サーンスの《死の舞踏》は、ハロウィンの時期の音楽活動や、秋の音楽鑑賞のプログラムとして保育現場でも活用しやすい曲のひとつです。曲の長さも約7分と長すぎず、骸骨や幽霊などのビジュアルとセットで楽しめます。これは使えそうです。

マーラーに至っては、交響曲第1番から第7番まで、実に7曲すべてにコル・レーニョの用例があります。1人の作曲家がここまで多用した例はきわめて珍しく、マーラーがこの奏法を特別に好んでいたことが伺えます。

ウィキペディア(コル・レーニョ)のコル・レーニョ用例一覧(主要作曲家・作品が時系列で整理されている)。

コル・レーニョ – Wikipedia

コル・レーニョの歌が与える音の効果:子どもの感性を刺激するポイント

コル・レーニョが生み出す音は、通常の弦楽器の音とはまったく異なります。子どもが「なんか変な音がする!」「これ楽器の音?」と反応するのは、ごく自然なことです。この「えっ、なにこれ?」という驚きの瞬間こそ、感性が育まれる大切な体験になります。

子どもの感性は6歳までに80%以上が成長するといわれています(NPO法人みんなのことば代表・渡邊悠子氏による)。この時期に本物の生演奏でさまざまな音色に触れることは、言語発達や感情表現の土台にもなります。コル・レーニョの「ざらざら」「カタカタ」という音は、通常の豊かな弦の音とのコントラストがとても大きいため、子どもの注意を引きつけます。

実際、保育園・幼稚園へのアウトリーチコンサートを手掛けるNPO法人「みんなのことば」では、プロのヴァイオリン奏者・ビオラ奏者・チェロ奏者が参加した45分間のコンサートを1,300公演以上行い、12万人以上の子どもたちに届けてきた実績があります。そのなかで、「子どもが飽きずに最後まで聞いていられると思わなかった」という保育者の声が口々に聞かれるといいます。音色の変化に富んだ演奏が、子どもの集中力を自然に引き出すのです。

コル・レーニョの音が子どもの反応を引き出しやすい理由を整理すると、次のとおりです。

  • 🥁 打楽器的な音色:「叩く」という動作が直感的にわかり、体でリズムを感じやすい
  • 😲 ギャップの大きさ:通常の美しい弦の音との落差が大きく、「違いを感じる力」を刺激する
  • 👁️ 視覚的な面白さ:弓をひっくり返す動作は目でも見てわかるため、演奏者の動きに引き込まれる

音色の変化を感じ取る能力は、後の音楽的素養の基礎になります。カタカタ・コンコンという音を聞いて「骸骨の音みたい!」「雨みたい!」と表現できるなら、それ自体が立派な音楽体験です。

子どもへの音楽鑑賞導入に関する詳細(東京藝術大学による保育現場での音楽活動の手引き)。

子どもの心を育む音楽活動(東京藝術大学)PDF

コル・レーニョの歌と弓へのダメージ:保育士が知っておきたい楽器の知識

コル・レーニョ奏法には、演奏者にとって大きなリスクがひとつ存在します。弓のスティック(棹)が弦に直接ぶつかるため、弓に傷がつきやすいということです。これは楽器を扱う保育者にとって非常に重要な知識です。

バイオリン用の弓は、入門用でも数千円から数万円、プロが使用するフランス・ドイツ製の古い弓になると16万円~30万円台が「一般的な趣味演奏レベルでの高級品」とされており(島村楽器調べ)、上を見れば100万円を超えるものも珍しくありません。コル・レーニョを頻繁に行うと、こうした高価な弓の棹に傷がつくリスクがあります。厳しいところですね。

このため、プロのオーケストラ奏者でさえ、コル・レーニョが指定されている曲を演奏する際には「コル・レーニョ専用の安価な予備の弓」を用意するケースが多いといわれています。また、カーボンファイバー製の弓は木製より10倍以上の耐久性を持つとされており(ARCUS BOW TOKYO調べ)、コル・レーニョでも傷がつきにくいため、対策として用いられることがあります。

さらに、弓へのダメージを防ぐために「コルレーニョガード」という専用アイテムも存在します。薄い合成樹脂製で弓のスティック部分に装着して使うもので、価格は800円程度で販売されています(クワトロ弦楽器調べ)。演奏途中でも脱着できる設計になっており、実用的なアイテムです。

保育施設でプロのアーティストを招いたコンサートを開催する機会がある場合、楽器の扱いについての理解があると、演奏者とのやりとりがよりスムーズになります。たとえば、コンサート後に子どもたちが楽器に触れる「体験コーナー」を設ける際には、「弓の毛の部分で弦に触れる」ことを基本とし、コル・レーニョのような棹を直接叩く動作は演奏者の指導のもとでのみ行うよう注意を促すことが大切です。弓の取り扱いは慎重にが原則です。

コルレーニョガードの詳細(弓のダメージ対策製品)。

コルレーニョガード – Amazon(弓の棹を保護するアイテム)

コル・レーニョの歌を保育活動に取り入れる独自視点:「音色当て」遊びで感性を育む方法

保育現場でコル・レーニョを含む弦楽器の特殊奏法を活用する方法として、筆者がおすすめするのが「音色当て」遊びです。これは検索上位の記事ではほとんど取り上げられていない実践的なアプローチです。

具体的な方法はシンプルです。まず、コル・レーニョの音が入ったクラシック曲を流します(たとえばホルスト「惑星」の「火星」やサン=サーンスの「死の舞踏」など)。そして、通常の弦の音が聞こえているときは「のびのびした音のときに手を挙げて」、コル・レーニョの音に変わったら「カチカチした音のときに体を揺らして」という指示を出すだけです。

この遊びには、次のような教育的なねらいが含まれています。

  • 🎧 聴く力:音の変化に自然と意識が向くようになる
  • 🙌 身体表現:音を「体で感じる」経験が表現力の基盤になる
  • 💬 言語力:「カチカチ」「ざらざら」「ふわふわ」など擬音語・擬態語が豊かになる

子どもが感じ取った音を「骸骨みたい」「雨の音みたい」と言ったとき、その表現は必ず肯定してあげてください。正解・不正解はなく、感じたことを言葉にできたこと自体がゴールです。意外ですね、と思うかもしれませんが、正確な音楽用語よりも豊かな感受性の方が、幼児期にははるかに大切です。

東京藝術大学が保育現場向けに作成した「子どもの心を育む音楽活動」という資料では、楽器を「見る」「音を聴く」「響きの違いを聴く」「様々な奏法を楽しむ」という4段階での楽器体験が推奨されています。コル・レーニョはまさに「様々な奏法を楽しむ」段階の代表例として位置づけることができます。音の違いを楽しむことが基本です。

音楽活動を計画する上で、コル・レーニョが出てくる曲を選ぶ際の年齢別のポイントとして、3~4歳児には「音が変わったことに気づく体験」を中心に、5~6歳児になったら「なぜ音が変わったのか」を絵や実物を使って説明してあげると理解が深まります。たとえば鉛筆の「消しゴムの端」で机の端をコツコツ叩いてみせることで、コル・レーニョの原理をわかりやすく伝えられます。これは保育士の工夫次第で大きく変わります。

保育現場への本物の音楽体験提供の実践例(出張クラシックコンサートのNPO法人の取り組み)。

本物の音楽体験で子どもの感性を育む!NPO法人みんなのことば – マイナビ保育士