子ども・子育て支援新制度いつから始まり保育士に何が変わったか

子ども・子育て支援新制度はいつから始まり保育士に何が変わったのか

認可外保育園で働く保育士は、同じ仕事をしていても処遇改善手当が1円も受け取れません。

この記事でわかること
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制度スタートの経緯

平成24年に法律が成立し、平成27年4月から本格施行。2年半以上の準備期間を経て動き出した背景を解説します。

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保育士の処遇改善の実態

月額最大4万円の加算制度など、保育士の給与がどう変わったかを具体的な金額で紹介します。

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幼保特例と最新動向

認定こども園で働くために必要な幼保特例制度の期限延長情報と、2026年から始まる新たな制度変化を解説します。

子ども・子育て支援新制度がいつから施行されたかの背景と経緯

 

子ども・子育て支援新制度が「平成27年4月から始まった」と知っている保育士は多いでしょう。しかし、この制度がそれより約3年前から動き出していたことは、意外に知られていません。

法律レベルでは平成24年(2012年)8月10日に参議院で可決・成立しています。「子ども・子育て支援法」「認定こども園法の一部改正法」「子ども・子育て支援法等の施行に伴う関係法律整備法」という3本の法律がまとめて成立し、これを一般に「子ども・子育て関連3法」と呼びます。

法律の成立から施行まで約2年8か月の準備期間が設けられたのには理由があります。制度の財源として消費税率引き上げによる増収分が充てられる計画だったため、消費税改正(8%への引き上げ)のタイミングに合わせた調整が必要だったのです。

つまり、この制度は「法律ができた年(平成24年)」と「実際に動き出した年(平成27年)」の2つの起点があります。これは保育士試験でも問われるポイントであり、混同しやすいので整理しておくことが重要です。

制度の主管は内閣府ですが、実施主体は各市区町村です。国が財政面・制度面を支え、各自治体が地域のニーズに合わせて5年間の「市町村子ども・子育て支援事業計画」を策定・実行する仕組みになっています。

この「国が制度設計し、自治体が運用する」という二層構造が、地域ごとに保育環境のバリエーションを生み出している背景にもなっています。保育料の上限額は国が定めますが、実際の保育料は各自治体が独自に設定します。そのため、同じ所得水準でも住んでいる市区町村によって保育料が異なるのが現状です。

こども家庭庁「子ども・子育て支援新制度 制度の概要等」

制度の法的根拠・関連3法の内容・施行時期の公式説明が確認できます。

子ども・子育て支援新制度の認定区分と保育施設の種類を整理する

制度の開始以来、保育士が保護者から最も多く聞かれる質問のひとつが「うちの子はどの施設を使えますか?」というものです。これに答えるには、認定区分の仕組みを正しく理解しておく必要があります。

子ども・子育て支援新制度では、子どもを3つの区分に認定し、使える施設・保育時間を決めます。

認定区分 対象年齢 主な要件 利用できる施設
1号認定(教育標準時間認定) 3〜5歳 保育の必要性がない 幼稚園・認定こども園
2号認定(保育認定) 3〜5歳 保育の必要性がある 保育所・認定こども園
3号認定(保育認定) 0〜2歳 保育の必要性がある 保育所・認定こども園・地域型保育

「保育の必要性がある」とは、就労・妊娠・出産・疾病・介護・求職活動など、保護者が日中に子どもを家庭で保育できない事由に該当することを指します。

この制度で新しく整備された地域型保育は0〜2歳専用の小規模保育事業です。家庭的保育(定員5人以下)、小規模保育(定員6〜19人)、事業所内保育、居宅訪問型保育の4種類があり、大規模な保育所では対応しきれなかった地域の保育ニーズに応えています。

また、認定こども園は幼稚園と保育所の機能を統合した施設で、3〜5歳の子どもは保護者の就労状況に関わらず利用可能という点が大きな特徴です。保護者が仕事を辞めても通い続けられるため、転職・育休などライフステージの変化にも対応しやすくなっています。

保育認定を受けた場合、保育時間は2種類に分かれます。フルタイム就労を想定した「保育標準時間認定(最長11時間)」と、パートタイム就労を想定した「保育短時間認定(最長8時間)」です。この時間区分はそのまま保育料の算定にも影響します。

内閣府「よくわかる子ども・子育て支援新制度」

認定区分・利用手続きの流れ・保育料の仕組みについて図解でわかりやすく説明されています。

子ども・子育て支援新制度による保育士の処遇改善の具体的な中身

制度の恩恵として保育士が最も直接的に実感できるのが、処遇改善加算の仕組みです。これが新制度の柱のひとつとして位置づけられており、保育士の賃金水準の底上げを国が財政的に支援する制度です。

もともと処遇改善加算はⅠ・Ⅱ・Ⅲの3種類に分かれて運用されていましたが、制度が複雑すぎて現場の事務負担が大きいという問題が生じていました。そこで令和7年度(2025年度)から3つの区分が一本化され、シンプルな構造に改められています。

一本化後の処遇改善加算の主な内容は次のとおりです。

区分 主な対象 手当の目安
区分1(基礎分) 全職員 平均経験年数に応じ月額12,000円〜38,000円程度
区分3-①(中堅リーダー) 副主任保育士・専門リーダーなど 月額最大4万円
区分3-②(職務分野別リーダー) 職務分野別リーダーなど 月額5,000円

月額最大4万円というのは、一般的な手取り月収に換算すると年間で約48万円の上乗せです。これはベースの給与に加算されるので、中堅以上の保育士にとっては非常に大きな恩恵となります。

ただし、処遇改善手当の恩恵を受けられるのは認可保育施設に限られます。認可外保育園(無認可保育所)で働く保育士は、たとえ同じ業務内容・経験年数であっても、この加算制度の対象外となります。認可外保育園は施設型給付の枠組みに入らないためです。

処遇改善手当がもらえるかどうかは職場選びに直結します。求人票を見る際は「認可保育施設かどうか」を確認することが、給与面の現実的な判断基準になります。

マイナビ保育士「令和7年度から変更された保育士の処遇改善加算一本化について」

一本化後の新制度における加算区分・対象者・手続きの変更点が詳しく解説されています。

子ども・子育て支援新制度における幼保特例制度と保育士の資格取得への影響

認定こども園の本格普及に伴い、新制度が保育士に突きつけた課題のひとつが「幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を持つこと」の義務化です。新しく整備された「幼保連携型認定こども園」で働く保育教諭には、両資格の保有が原則として求められます。

ここで多くの現役保育士が直面するのが「自分は保育士資格しか持っていない」という壁です。通常、幼稚園教諭免許を取得するには大学や短大で正規の課程を修了する必要があり、フルタイムで働きながら取得するのは現実的に難しい場合があります。

この問題を解消するために設けられたのが幼保特例制度(特例制度)です。保育士資格を持ち、かつ在職経験が3年以上・4,320時間以上ある方を対象に、通常より少ない単位数(2科目8単位)で幼稚園教諭免許を取得できる特例として整備されました。

当初この特例制度の期限は制度施行から5年間(令和元年度末まで)とされていましたが、対応が間に合わない現場の実情から延長が繰り返されてきました。現在は令和12年3月31日(2030年3月31日)までの適用期限となっています。

期限延長が複数回行われた事実は、現場の保育士が資格取得に費やせる時間的・経済的余裕の少なさを制度側も認識している証拠です。とはいえ期限は確実に存在するため、認定こども園での勤務を目指す保育士は通信制大学などを活用しながら早めに取得準備を進めることが現実的な対策となります。

保育士養成協議会「特例制度について(幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例)」

特例制度の対象者・実施期間の延長情報・申請に必要な実務経験の計算方法が確認できます。

子ども・子育て支援新制度の現在地と2026年以降の保育士が知るべき最新動向

新制度が施行されてから10年以上が経過した現在も、制度は静止しているわけではなく、社会の変化に合わせて継続的に更新されています。

保育士として現在最も注目すべき動向のひとつが、2026年4月から全国で本格スタートした「こども誰でも通園制度」です。これは生後6か月〜3歳未満の未就園児を、保護者の就労有無にかかわらず、月最大10時間を上限に保育施設に通わせることができる新たな仕組みです。

この制度が保育士に直接影響する理由は、保育現場の対応コストにあります。保育士を対象に行ったアンケートでは、53.7%が制度導入に「不安」と回答しており、業務負担の増加や見慣れない子どもの安全確保への懸念が上位に挙げられています(2026年1月調査)。これは5人に2人以上が現場の負担増を見込んでいることを意味します。

一方で、財政面からの後押しとして、2026年度は保育士の人件費が5.3%引き上げられることが決定しています(こども家庭庁発表)。1人あたり年間約20万円の改善見通しとされており、単純計算では月約1万6,700円の上乗せです。

これらをまとめると、現在の保育士を取り巻く環境は「業務負担の増加」と「処遇改善の継続」が同時進行しているという構図です。制度の恩恵を最大限に受けるためには、勤務先が認可施設かどうか・処遇改善加算の対象となっているかを把握したうえで、キャリアプランを考えることが重要になってきます。

新制度施行以降、保育士が働ける場所は幼稚園・保育所の2択から、認定こども園・地域型保育・事業所内保育・放課後児童クラブなど多様な職場へと広がっています。選択肢が増えたこの環境を活かし、自分のライフスタイルや志向に合った施設を選ぶことが、長く働き続けるための現実的な一歩になるでしょう。

2025年度・2026年度の処遇改善率の比較や、年収ベースの具体的な改善見込み額が確認できます。


ポイント解説子ども・子育て支援新制度: 活用・改善ハンドブック