鍵盤ハーモニカ保育鍵盤ハーモニカ
鍵盤ハーモニカの保育ねらい
保育で鍵盤ハーモニカを扱うとき、最初に確認したいのは「到達点=演奏の完成度」ではなく、「経験の質=音楽に親しむプロセス」だということです。文部科学省の幼稚園教育要領(領域「表現」)では、音楽に親しみ、歌ったり簡単なリズム楽器を使ったりする楽しさを味わうことが示されています。鍵盤ハーモニカは“簡単なリズム楽器”そのものではありませんが、子どもが音を出し、音の違いに気づき、友達の音と重なる面白さを味わうという点で、ねらいに沿いやすい活動です。参考:幼稚園教育要領の「表現」(6)にある「音楽に親しみ…楽しさを味わう」記述。
幼稚園教育要領(表現)参考リンク:
保育の現場で「ねらい」を言語化すると、次のように整理しやすくなります。発表会に向けた活動でも、ここを押さえておくと、練習が苦手な子が出ても支援方針が作れます。
- 音の高低・長短・強弱に気づき、音への興味を深める。
- 自分の感じたことを音で表す(同じドでも、短く・長く・強くで表情が変わる)。
- 友達と合わせる・待つ・聴くなど、集団の音のやりとりを経験する。
- 小学校で鍵盤ハーモニカに触れる前に「楽器は楽しい」という感情を積む。
意外に見落とされがちなのが、「鍵盤ハーモニカ=演奏技能の活動」だけでなく、「呼吸と身体のコントロール」も含む活動だという点です。息を一定に送るには姿勢や口の使い方が関係し、子どもは音を出しながら自分の身体感覚を調整しています。保育者が“できた・できない”の評価軸だけで見てしまうと、この大事な育ちが見えにくくなるため、ねらいに「息を意識する」「音を聴いて調整する」などを入れると観察しやすくなります。
鍵盤ハーモニカの保育指導
幼児にとって鍵盤ハーモニカが難しく感じやすい理由は、「鍵盤を押す」と「息を吹く」を同時に行う必要があるからです。家庭向けの記事でも、まず歌えるようにしてから、鍵盤だけの練習、吹く練習、最後に両方を合わせるという流れが紹介されています。保育でも同じ発想を使うと、クラスの“できる・できない”の差をなだらかにできます。参考:幼児は二つの作業を同時にする必要がある、歌→鍵盤→吹く→合わせるという段階練習。
指導の流れ参考リンク:

園で実施しやすい、段階的な指導例を具体化します。ポイントは「全員を同じ速度で進めない」ことではなく、「同じ活動の中で複数の成功ラインを用意する」ことです。
- ステップ1:歌う・口ずさむ(曲のイメージを作る)
- ステップ2:机で指の体操(指番号を決めて、1〜5を動かす)
- ステップ3:鍵盤だけ(息は保育者が担当、または吹かずに“押す練習”)
- ステップ4:吹くだけ(ドの音だけで、長く伸ばす/短く切るの遊び)
- ステップ5:合わせる(最初は2音〜3音のパターンでOK)
このとき、指使いの“正しさ”をいつ確定させるかが悩みどころです。最初から厳密にし過ぎると、音を出す喜びが削られ、離脱が増えます。一方で、自由にし過ぎると、後で直す負担が増えます。おすすめは「序盤は音を出すことを優先し、慣れてきたら“指番号”を合言葉にして共通言語化する」方法です。指番号は、クラス全体の声かけが統一しやすく、個別支援にもつながります。
発表会前の“詰め”では、合奏の完成度より「合わせる体験」を中心に置くと、練習が穏やかになります。たとえば「全員で同じ旋律」ではなく、同じ曲の中で役割を分ける方法です。
- Aグループ:ドだけ(一定のリズムで支える)
- Bグループ:ドレミの短いフレーズ
- Cグループ:旋律に挑戦
この形なら、苦手な子も曲の中に“居場所”ができます。上達したら役割を入れ替え、全員が挑戦できるようにします。
鍵盤ハーモニカの保育お手入れ
保育で鍵盤ハーモニカを扱うなら、衛生は「家庭任せ」ではなく、園のルールとして設計する方が安全です。ヤマハの案内では、本体やケースは水洗いしないこと、本体は湿らせた布を固く絞って拭き、その後乾拭きすることが示されています。また、内部には金属製のリードがあり、水が入ると錆びて不具合の原因になると説明されています。参考:本体・ケースは水洗いしない/リードが錆びる可能性。
お手入れ参考リンク:

一方で、パイプや吹き口は水洗いでき、まず中性洗剤で洗って水で流し、完全に乾かしてから戻すことが推奨されています。カビ対策として、こまめな洗浄が基本で、難しければ2週間に1度でも家で水洗いするよう提案されています。参考:吹き口・パイプは中性洗剤で洗浄、完全乾燥/カビ対策の頻度。
お手入れ参考リンク。

園内で運用しやすい「お手入れの決めごと」を、子どもにも分かる言葉で掲示すると定着します(クラスだよりにも転用できます)。
- 演奏後:水抜き(できる機種はボタン)→ケースは開けて帰る。
- 吹き口:週末に洗う(園で回収して洗浄する方式でも可)。
- ホース:水を通してすすぐ→まっすぐにして乾かす。
- 本体:水は入れない、濡れ布巾は固く絞る。
- 共有はしない:吹き口は個人管理(予備も個別に)。
意外な盲点は「乾かし方」です。洗浄自体はできていても、ケースに入れたままにしてしまうと、湿気が残りやすく匂い・カビの原因になります。園で“乾かす場所”を先に作っておく(洗濯ばさみ、フック、乾燥ラック等)だけで、衛生の質は大きく変わります。
鍵盤ハーモニカの保育環境
鍵盤ハーモニカは、子どもの集中を引き出す一方で、音量・準備・片づけがネックになりがちです。だからこそ、環境設定を「練習の前」に整えておくことが、指導の半分を占めます。まず座る位置と姿勢が安定しないと、息が途切れ、音が途切れ、結果として“弾けない”感覚につながります。机と椅子の高さが合わない場合は、足台や座布団などで調整し、背中が丸まり過ぎない状態を作ります。
次に「音の大きさ」を味方にする工夫です。クラス全体で同時に吹くと、どうしても騒音に近くなり、苦手な子ほどさらに焦ります。そこで、活動を次のように分けるとスムーズです。
- 無音活動:鍵盤を押す練習(息は吹かない)
- 小音活動:一人ずつ、または列ごとに短く吹く
- 合音活動:全員で合わせる(短時間に区切る)
この切り替えを明確にすると、子どもは「今は音を出す時間/今は音を出さない時間」を理解しやすくなります。
さらに、楽器の置き方・運び方も“事故予防”として重要です。鍵盤ハーモニカは落とすと破損しやすく、ホースや吹き口の紛失も起きます。園でのルール例は以下です。
- 置く場所は机の右上など固定(毎回同じ位置)。
- 運ぶときはケースの取っ手を両手で持つ(走らない)。
- ホース・吹き口は袋に入れて名前を明記(予備も同様)。
鍵盤ハーモニカの保育独自視点
検索上位では「指使い」「曲」「発表会」「お手入れ」に話題が集まりやすい一方で、保育ならではの独自視点として扱いやすいのが「聴く力を育てる鍵盤ハーモニカ」です。鍵盤ハーモニカは“吹けば鳴る”分、音の出し方が即座に結果として返ってきます。この特性を利用して、演奏技術よりも「聴いて調整する」活動を中心にすると、全員参加型になりやすいです。
たとえば、次のような“聴く”が主役の遊びは、上手・下手の差が目立ちにくく、クラスが荒れにくい傾向があります。
- まねっこリレー:保育者が2音だけ鳴らす→子どもが同じように鳴らす。
- 音さがし:今日は「ド」だけ探す(同じ音をそろえる)。
- 合図で止める:音を出す→保育者の手拍子でピタッと止める(待つ力)。
- どっちが長い?:同じドでも、短い音・長い音を聴き比べる。
ここで効くのが、“できた”の基準を複線化することです。
- 基準A:音が出せた。
- 基準B:合図で止められた。
- 基準C:友達の音を聴いて同じ音を探せた。
このように複数の評価軸を用意すると、演奏が得意ではない子も「自分はこれができた」と言えます。結果として、鍵盤ハーモニカの時間が「競争」から「共同」へ寄りやすくなります。
最後に、保育者側の負担を下げる工夫も独自視点として重要です。毎回“曲の完成”を求めると、準備も練習も重くなります。月に1回は「曲をやらない鍵盤ハーモニカの日」を作り、音あそび(まねっこ、止める、ドだけ、強弱だけ)に切り替えると、子どもも保育者も息切れしにくくなります。

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