家庭的保育の基準を保育士向けに詳しく解説

家庭的保育の基準を保育士向けに徹底解説

保育士資格があっても、追加研修なしで家庭的保育の現場に就くと法令違反になります。

この記事でわかること
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設備・面積基準

保育室は最低9.9㎡(約6畳)以上。定員3名超は1人につき3.3㎡追加が必要です。

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配置・定員基準

0〜2歳児3人に保育者1人。補助者を置く場合は5人まで受け入れ可能です。

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資格・研修要件

保育士でも「家庭的保育者研修」の修了が必須。無資格でも認定研修で就業できます。

家庭的保育の基準とは?制度の概要と位置づけ

 

家庭的保育事業は、2015年(平成27年)に施行された「子ども・子育て支援新制度」において、地域型保育事業のひとつとして法定化された自治体の認可事業です。一般的には「保育ママ制度」とも呼ばれており、保育者の居宅や賃貸マンションの一室などを使って、主に0〜2歳の乳幼児を少人数で保育するしくみです。

なぜこの制度が設けられたのかというと、全国の待機児童のうち0〜2歳児が全体の約8割を占めているという背景があります。国は低年齢児の受け皿を増やすため、認可保育所以外にも多様な地域型保育の整備を推進してきました。その結果、家庭的保育事業は認可事業として位置づけられ、自治体から給付金(補助金)が交付される仕組みになっています。

つまり、家庭的保育は「家でこっそり子どもを預かる」事業ではなく、国の基準に則った認可事業です。

認可事業であるため、設備や運営に関して守るべき基準が細かく定められています。保育士として働く場合も、事業者として開業する場合も、この基準を正しく理解しておくことが必要不可欠です。家庭的保育事業の基準は大きく「設備基準」「運営基準」「職員基準」の3つに分類でき、それぞれ国の基準と自治体独自の上乗せ基準が存在します。

また、ベビーシッターと混同されることが多いですが、ベビーシッターは認可外保育施設であり、対象年齢・補助金・資格要件など大きく異なります。この違いを把握しておくことも、保育士として職場を選ぶ際の重要な判断基準になります。

参考:家庭的保育事業の法的根拠となる基準全文が確認できます。

家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準 – e-Gov 法令検索

家庭的保育の設備基準:面積・構造・衛生環境のポイント

設備基準の中心となるのが、保育室(乳児室・ほふく室)の面積です。保育に使用する専用室は最低でも9.9㎡以上確保しなければなりません。9.9㎡というのは約6畳分の広さで、ちょうど一般的な和室1室に相当します。定員が3人を超える場合は、子ども1人あたり3.3㎡以上を追加で確保する必要があります。3.3㎡は畳2枚分(1坪)ほどのサイズ感です。

設備基準が求めるのは面積だけではありません。具体的には以下の設備が必要です。

  • 🪟 十分な採光・照明・換気ができること
  • 🚽 衛生的なトイレ(幼児用が望ましい)
  • 🧴 手洗い場(保育室に隣接または付近)
  • 🔥 火災報知器および消火器の設置
  • 🌳 屋外遊戯スペース(庭がなくても近隣公園で代替可)

屋外遊戯スペースについては、意外と知られていない点があります。自宅の庭がなくても、付近に代替できる公園や広場があれば認められるのです。都市部の場合、庭付きの物件はほぼ必要ありません。近隣の公園を活用すれば、マンションの一室でも開業できます。

また、一般的な住宅でそのまま認可基準を満たすことは難しく、リフォームや間仕切り工事が必要になるケースが多いです。この点については、自治体によっては整備費の助成を実施しており、横浜市の例では上限200万円(うち備品費は65万円)の整備費助成制度が設けられています。保育事業の開業を検討している保育士にとっては、この助成制度の有無を事前に自治体窓口で確認することが大切な一歩です。

設備基準は自治体によって国の基準より厳しく設定されている場合もあります。これが原則です。

参考:設備基準の詳細と助成の具体例を確認できます。

家庭的保育事業とは?設置基準や運営のメリットについて解説 – SOUキッズケア

家庭的保育の配置基準:職員人数・定員・資格要件の詳細

家庭的保育事業における職員の配置基準は、0〜2歳児3人に対して家庭的保育者1人です。家庭的保育補助者(補助者)を加えて2人体制にする場合は、定員を最大5人まで受け入れることができます。定員の上限は5人以下と定められており、認可保育所のクラス制とは根本的に異なる少人数制が特徴です。

ここで注意が必要なのが、保育士資格の扱いです。「保育士免許を持っているから、そのまま家庭的保育者として働ける」と思っている保育士は多いかもしれません。しかし実際は、保育士資格を持っていても、市区町村が実施する「家庭的保育者研修」を修了しなければ、家庭的保育者として従事することはできません。これは法令に基づく要件です。

逆に興味深いのは、保育士資格を持っていない人でも家庭的保育者になれる点です。保育士以外の人が「認定研修(基礎研修+認定研修)」を修了し、市区町村長から認定を受ければ家庭的保育者として働くことができます。この認定研修の受講料は、多くの自治体で無料です。保育士資格の有無にかかわらず参加できる門戸の広い制度といえます。

なお、資格の有無によって受講内容が異なります。

区分 受講が必要な研修 なれる資格
保育士資格あり 基礎研修のみ(約19〜20時間+見学実習2日) 家庭的保育者
保育士資格なし 基礎研修+認定研修(約40時間講義+68時間実習) 家庭的保育補助者

保育士資格を持つ人は研修の負担がかなり少なくなりますが、それでも「研修修了ゼロ=就業不可」という点は変わりません。これが条件です。

また、子どもの定員については原則1〜5人とされていますが、実際には最少定員を3人以上と定めている自治体も多いです。1人・2人だけでは収支が成り立ちにくいため、自治体が独自に下限を設けていることがあります。開業前に必ず自治体の要件を確認しましょう。

参考:配置基準の比較と全国的な状況が整理されています。

【2025年最新】保育士の配置基準とは?施設ごとの違いと計算方法 – 保育士人材バンク

家庭的保育の運営基準:保育時間・給食・健康診断の義務

運営基準のうち、保育時間については「1日8時間を原則とする」と定められています。ただし、保護者の就労時間や生活状況に応じて事業者が柔軟に設定できます。延長保育や土曜保育の有無・休業日の設定も事業者に委ねられており、認可保育所より運営の自由度が高い点が特徴のひとつです。

給食(食事の提供)については、原則として事業所内での自炊調理が求められますが、以下の方法も認められています。

  • 🍱 外部委託会社(仕出し業者など)からの提供
  • 🏫 連携施設(認可保育所など)からの搬入
  • 🧑‍🍳 調理員を別途配置した場合の施設内調理

外部委託が可能であれば、調理員を雇わなくて済むため、1〜2名規模の小さな事業所でも運営コストを抑えられます。これは使えそうです。

健康診断の義務については、見落としがちな重要ポイントがあります。子どもへの健康診断は「入所時の健康診断」に加え、少なくとも年2回の定期健康診断が義務付けられています(家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準 第17条)。年1回では基準を満たしません。また、家庭的保育者自身の健康診断も年1回以上の実施が求められており、調理を担当する場合は月1回の検便も義務です。

嘱託医の配置も運営基準に含まれます。嘱託医は健康診断や病気のときの医療的アドバイスを担当する医師で、1事業所につき1名の確保が求められます。保育所と同様の健康管理体制が少人数の事業所にも求められているわけです。厳しいところですね。

連携施設の確保は、3歳以降の進学先確保と体調不良時の代替保育のために求められる重要な運営要件です。認定こども園・幼稚園・認可保育所のいずれかと書面で連携関係を結ぶ必要があります。ただし、周辺に連携先となる施設が存在しない地域では、自治体の認定により免除される経過措置が設けられています(令和11年度末まで延長)。

参考:運営基準の原文と条文番号が確認できます。

家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準 – 厚生労働省

家庭的保育の基準を活かした開業・就業のステップ

家庭的保育の基準を把握した上で、実際に開業・就業するまでのステップを整理しておきましょう。保育士としてすでに現場経験がある人でも、家庭的保育事業は「別の認可事業」として一から手続きが必要になります。

ステップ①:自治体への事前相談

まず、開業または就業を希望する市区町村の担当窓口に相談します。自治体ごとに国の基準より厳しい独自基準を設けているケースが多く、面積要件・定員下限・連携施設の指定など、インターネットの情報だけでは拾いきれない条件があります。事前相談は必須です。

ステップ②:家庭的保育者研修の受講申込

保育士資格を持っている場合は基礎研修のみ、資格がない場合は基礎研修+認定研修を受講します。受講料は多くの自治体で無料です。ただし、認定研修は実施回数が少なく、年1〜2回程度の自治体が多いため、スケジュールを早めに確認することが重要です。茨城県や東京都など、研修情報を公式サイトで随時公開している自治体もあります。

ステップ③:設備の整備と審査

保育室の面積・構造・設備を整えた上で、自治体に認可申請を行います。申請から認可まで数ヶ月かかるのが通常です。改修工事が必要な場合は整備費助成の申請も検討しましょう。書類審査に加え、実地調査が行われることが一般的です。

ステップ④:連携施設の確保

近隣の認可保育所・認定こども園・幼稚園などに連携協力を依頼します。連携施設には「保育内容の支援」「代替保育の提供」「3歳以降の進学先確保」という3つの役割があります。人間関係や地域との繋がりが物を言う場面であり、日ごろから地域の保育施設と顔の見える関係を築いておくことが大切です。

ステップ⑤:認可取得後の運営管理

認可取得後も、自治体への定期的な収支報告・指導検査への対応・保育記録の保管・年2回の子どもへの健康診断実施など、継続的な義務が伴います。1人で開業する場合は、事務処理の負担が想定以上に大きくなることがあります。記録管理にICT保育ツールを活用することで、書類作業を効率化できます。

一方、事業者としてではなくスタッフとして家庭的保育事業所に就職したい保育士の場合は、開業手続きは不要です。雇用先の事業所が認可を取得済みであれば、自身が研修を修了した上で就業できます。この場合でも研修は必須です。

立場 主な手続き 研修の要否
開業者(事業者) 自治体窓口相談→設備整備→認可申請→運営 必須(基礎研修)
就業者(スタッフ) 研修修了→既存事業所への就職活動 必須(基礎研修)

全国の家庭的保育者の総数は約1,416人(2021年時点・厚生労働省調査)と、保育所勤務の保育士約40万人と比べると非常に少ない状況です。認知度が低いことが人材不足の一因であり、今後の需要拡大が期待される分野でもあります。

家庭的保育の基準を正しく理解することが、第一歩です。

参考:家庭的保育者になるための研修情報(茨城県の事例)が確認できます。

家庭的保育者(保育ママ)になるには – いばらき保育人材バンク(茨城県公式)

家庭的保育の基本と実践: 家庭的保育基礎研修テキスト