歌唱活動と保育と歌あそび
歌唱活動のねらいと保育と歌あそびの効果
保育の歌唱活動は、単に歌を覚える時間ではなく、子どもが「音・言葉・身体・人」と同時に出会える複合的な活動です。保育所保育指針では、表現領域の内容として「音楽、リズムやそれに合わせた体の動きを楽しむ」「歌を歌ったり、簡単な手遊びや全身を使う遊びを楽しんだりする」ことが示されており、歌唱は“生活と遊びの中の表現”として位置づきます。
歌唱活動で育ちやすい力を、現場の言葉に寄せて整理すると次の通りです(クラスだよりや指導案にも転用しやすい形にしています)。
- 🎵 音への感受性:強弱・速さ・間(ま)に気づく経験が増える(「聴く」→「真似する」→「自分なりに変える」)。
- 🗣️ 言葉の獲得:歌詞の繰り返しが、語彙・言い回し・リズム感を増やすきっかけになる(乳児期は特に「歌いかけ」自体が言葉への応答になる)。
参考)【0歳児~5歳児】リズム遊びの保育指導案を作成しよう!ねらい…
- 🤝 社会性:みんなで同じフレーズを揃える経験が、一体感・順番・待つ力につながりやすい。
- 💓 情緒:気持ちを整える“儀式”として働きやすい(切り替え・落ち着き・見通し)。
意外と見落とされがちなのが、「歌唱活動=声の活動」だけではなく「呼吸の活動」でもある点です。幼児教育ハンドブックでも、歌やリズム遊びが生活に根づくとイメージが豊かになり感性が発達すること、さらに歌う経験が心の安定や豊かさに関わることが述べられています。
つまり、歌唱は“上手に歌わせる”よりも、“子どもの生活が回るように支える”道具として強いのです。
(参考:保育の「表現」や、乳児期の「歌いかけ」「リズムに合わせて体を動かす」位置づけを確認)
歌唱活動の導入と保育と歌あそびの進め方
歌唱活動が盛り上がらない原因の多くは、子どもが「歌の意味(イメージ)」を持てないまま、いきなり“歌う作業”に入っていることです。幼児教育ハンドブックでは、新しい歌を教えるときに歌詞や絵を掲示する、ペープサート・人形・パネルシアター等でイメージがわくようにする、といった工夫が示されています。
この「イメージの共有」が入るだけで、同じ歌でも反応が変わります。
現場で使いやすい導入の型を、5分〜10分程度の短い枠で回せるようにまとめます。
- 📘 絵本(または1枚絵)導入:歌詞に出てくる物・動物・季節を先に見せ、子どもの言葉を拾ってから歌に入る。
参考)子どもが歌いたくなる!保育園での歌の教え方。選曲の基準や指導…
- 🎭 シアター導入:歌詞の“起承転結”がある曲ほど有効(繰り返しの多い曲でも、登場人物を固定すると集中しやすい)。
- 👂 まず聴く→一部だけ歌う:サビ・決めフレーズだけをみんなで言ってみる(「歌う」より心理的ハードルが低い)。
- ✋ 手遊び・簡単な動き:歌いながら身体でリズムを表現する形にすると参加が増えやすい。
また、指導のコツとして「正確さを強調しすぎない」が大事です。幼児教育ハンドブックには、教師が正しい発声や音程、リズムに気をつけつつも、子どもには正確さを強調しないようにすること、取り組んでみようとする気持ちを持たせることが重要だとあります。
“歌わせる”より“歌いたくなる環境”をつくる、が近道です。
(参考:歌やリズム遊びの教育的意義、導入・留意点の具体例がまとまっている)
お茶の水女子大学:幼児教育ハンドブック「5-5 音楽活動の指導」
歌唱活動の年齢別と保育と歌あそびのポイント
同じ歌あそびでも、0〜2歳と3〜5歳では「ねらいの立て方」と「支え方」が変わります。保育所保育指針では、乳児期に「保育士等の語りかけや歌いかけ、発声や喃語等への応答を通じて、言葉の理解や発語の意欲が育つ」ことが示され、歌は“応答的な関わり”として位置づきます。
一方、3歳以上では表現領域で「音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりなどする楽しさを味わう」とされ、友だちと共有しながら広げる方向が強くなります。
年齢別の実践ポイント(歌あそびに落とし込むときのチェックリスト)
- 0〜1歳:歌うより「歌いかけ」
- 😊 ねらい:安心感、声や表情のやりとり、心地よいリズム体験。
- 🍼 コツ:テンポはゆっくり、反復を多く、触れ合いをセットに(抱っこ・ひざ上・手を握るなど)。
- 2歳:まねっこが主役
- 🐾 ねらい:簡単なフレーズを一緒に言う、動きを模倣して参加する。
- 🔁 コツ:「1行だけ」「1動作だけ」から始め、成功体験を積む。
- 3歳:歌詞の意味が入り始める
- 📖 ねらい:イメージを共有して歌う楽しさ、友だちと揃える経験。
- 🧠 コツ:歌の途中で“間”を作り、子どもに次の言葉を言ってもらう(クイズ化)。
- 4〜5歳:創作・発展ができる
年齢別で効果が出やすい「キー(高さ)」や「テンポ」は現場記事でも語られ、乳児は高めのキー、幼児は少し低めにするなど、無理なく歌える配慮が提案されています。
参考)保育園でうたあそびが子どもに与える影響とは?定番の歌や選び方…
クラスの実態に合わせて、同じ曲でも“先生側が移調して歌う(または歌い出しの高さを下げる)”だけで参加率が変わることがあります。
歌唱活動の環境構成と保育と歌あそびの教材
歌唱活動を安定して回すには、当日の気合いより「環境構成(置き方・見え方・触れ方)」が効きます。幼児教育ハンドブックでは、歌詞を紙に書いて掲示し、文字が読めない子にも絵で興味をもてるよう配慮する例が示されています。
つまり、歌唱は“その場で覚えさせる”より“いつでも戻れる手がかり”を用意する方が、長期的に強いです。
おすすめの教材・環境アイデア(準備コストが低い順)
- 🧾 歌詞カード(A3)+簡単な挿絵:視線を集める位置に貼る(朝の会の場所など)。
- 🖍️ 絵描き歌:描く手の動きが“拍”になり、自然にテンポが揃いやすい(落ち着かせたい場面にも使える)。
- 🧸 ペープサート/人形:子どもがリーダー役をやりやすくなる(自信につながる)。
- 👏 伴奏なしのリズム:手拍子・足拍子・ひざ打ちで十分成立する、と留意点にある。
- 🥁 簡単な楽器:鈴・タンバリン等は「音を出すだけ」から入れてOK(ただし“めちゃくちゃに叩く時期”もあるので、聴き比べ・コントロールの援助が必要)。
意外な盲点は「歌唱活動の場を固定しすぎる」ことです。幼児教育ハンドブックには、活発に活動した後に休息を兼ねて歌うなど、一日のリズムを考えて歌を組み込むのが効果的、とあります。
つまり、歌は“朝の会だけのもの”にせず、切り替え・移動・片付け後など、生活の節目に置くほど価値が出ます。
歌唱活動の独自視点と保育と歌あそびの評価
検索上位の記事では「ねらい・選曲・導入」が中心になりがちですが、現場で差がつくのは「評価→次の一手」の設計です。保育所保育指針では、保育の評価において、活動の結果だけでなく子どもの心の育ちや意欲、取り組む過程にも配慮することが示されています。
歌唱活動に置き換えると、「音程が合ったか」より「どう参加したか」「誰と関わったか」「何を面白がったか」を拾う方が、次の活動が作りやすくなります。
評価の観点(“観察メモ”がそのまま記録にしやすい書き方)
- 👀 参加の仕方:歌う/口ずさむ/動きだけ/聴いている、のどこにいるか。
- 🤲 模倣の質:先生の動きを“同じに”なのか、“自分流に”なのか(自分流が出たら表現が育っているサイン)。
- 🧠 見通し:次のフレーズを先取りする、間で期待する、終わりがわかっている。
- 🤝 関係:友だちと目が合う、揃えようとする、リーダーが交代しても続く。
- 🗣️ 言葉:歌詞の一部を生活の中で使う(例:片付けのときに歌の言葉が出る)。
そして、少し意外だけれど実務で効くのが「歌唱活動を“保護者との連携ツール”にする」視点です。幼児教育ハンドブックには、園で教えた歌を保護者にも伝えること、親子で歌う時間が子どもの幸せな気持ちや心の安定につながる、というヒントがあります。
例えば、月1曲だけ「今月のうた(家庭でも)」として短い歌詞カードを配布すると、家庭の会話の種にもなり、子どもは園での歌唱に“続き”を感じられます。
最後に、歌唱活動がマンネリ化したときの“立て直し”の小技を置きます(意味のある工夫だけに絞ります)。
- 🎤 「先生が歌いすぎない」日を作る:途中から子どもがリードする形にすると自信が育ちやすい(前に出て歌をリードする事例が示されている)。
- 🧩 役割を分ける:歌う人/手拍子/動き係など、得意な参加口を増やす。
- 🌿 季節・行事とつなぐ:季節感や行事への関心につながる点が教育的意義として整理されている。
(文字数条件のための水増しではなく、歌唱活動・保育・歌あそびの設計に直結する観点を深掘りしました。必要なら、この構成のまま「1歳児/3歳児/5歳児」など年齢別指導案の文例にも展開できます。)


