環境教育保育事例歌自然体験食育

環境教育 保育 事例

環境教育を保育に入れる全体像
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ねらいは「知識」より体験

幼児期は自然の大きさ・美しさ・不思議さに直接触れる体験が、好奇心や表現の土台になります。

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歌は行動のスイッチになる

歌やリズムは、手洗い・水の使い方・分別など「習慣化」したい行動を自然に促します。

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成功の鍵は「園全体設計」

園庭・散歩・食育・保護者発信をつなげると、単発で終わらず継続しやすくなります。

環境教育の保育事例として歌を使う導入設計

 

保育で環境教育を始めるとき、最初に大人が準備したくなるのは「教材」「知識」「正しい説明」です。けれど幼児期は、まず“感じて動く”経験が先にあり、その後に言葉が追いつく方が自然です。だからこそ、歌は環境教育と相性が良い手段になります。歌は説明より先に、行動の順番を体に覚えさせられるからです。

たとえば「水を出しっぱなしにしない」「紙を大事にする」「もったいないを言葉にする」といった行動は、注意や叱責で身につくよりも、“毎日同じ場面で同じフレーズを歌う”ことで定着します。環境教育を「特別活動」にせず、日常の生活習慣に溶かすのがコツです。

歌の導入は、以下のように“環境の場面”とセットにすると効果が上がります。

  • 🚰 手洗い・うがい:水の量、止めるタイミングを歌の区切りに合わせる(例:サビで止める)。

  • 🗑️ 分別:箱やマークを指差ししながら、短いコール&レスポンスで分類する。

  • 🍽️ 給食:残食を責めず「食べきる」より「命をいただく」「作った人がいる」を歌詞に短く入れる。

ここで重要なのは、歌を“教え込む曲”にしないことです。子どもが歌いたくなるテンポや言葉で、保育者も一緒に楽しめる形にします。歌の目的は「環境問題の理解」ではなく、環境配慮行動の“最初の型”を、楽しく繰り返すことです。

また、園としての設計では「歌→体験→振り返り」の順番が向きます。自然体験や園庭遊びの前に歌で期待感を高め、体験後に同じ歌をもう一度歌うと、子どもは歌詞の意味を自分の体験に引き寄せて理解します。

意外に見落とされがちなのが、歌の“音環境”です。反響が強い部屋だと歌声が聞き取りにくく、子どもの集中が落ちやすいので、壁面素材や配置を工夫して「聞こえやすさ」を整えることも、環境づくりの一部として考えられます(音の環境は“環境教育”の環境でもあります)。

さらに、保護者への説明が必要な園では、歌は保護者の理解を得るための“見える化”にもなります。「今日は園でこんな歌を歌いました」と連絡帳や掲示で共有すると、家庭でも同じフレーズが使われ、園と家庭で習慣がつながります。

「歌は遊びだから環境教育と別」と分けるのではなく、歌を“生活の合図”としてデザインする。これが、保育の現場で環境教育を続けるための現実的な第一歩です。

環境教育の保育事例に学ぶ自然体験と散歩の組み立て

環境教育を保育で実践するとき、強い軸になるのが自然体験です。環境省の事例集でも、幼児期は自然に直接触れる体験を通して、好奇心・思考力・表現力の基礎が培われることが重視されています。つまり「自然の話を聞かせる」より「自然の中に身を置く」ことが核になります。

自然体験は、遠足や行事だけでなく、日常の散歩の質を上げるだけでも成立します。おもしろいのは、都市部でも“森のようちえん”型の実践が成立している点です。園庭がなくても、近くの緑道や公園を日常フィールドとして活用し、0〜2歳児も一年を通して外に出て自然の移り変わりを五感で感じる実践が紹介されています。

散歩型の自然体験を環境教育にするには、次の3つを押さえます。

  • 🧭 「目的地」より「途中の発見」:移動を急がず、立ち止まる時間を確保する。

  • 📝 “見つけたい気持ち”の仕掛け:カード、シール、写真などで観察の焦点を作る。

  • 🔁 季節の反復:同じ場所に何度も行き「この前と違う」を感じる。

特に「この前と違う」という感覚は、環境の変化を捉える原体験になります。大人の説明よりも、子ども自身の気づきが先に立つように設計するのが要点です。

活動案としては、次のような“軽い自然体験”でも十分に深まります。

  • 🍂 落ち葉の色・形の違い集め(集めた後に「色の地図」づくり)。

  • 🐾 生き物の痕跡探し(虫そのものがいなくても、穴、羽、糞、食痕)。

  • 🌧️ 雨上がり観察(匂い、地面の柔らかさ、流れた土の跡)。

そして、歌と組み合わせるとさらに強くなります。散歩の前に「きょうの探検うた」を歌い、帰ってきたら「みつけたうた」を歌う。子どもが“言葉にしにくい体験”を、歌のフレーズに乗せて共有できます。

安全面は重要ですが、危険をゼロにするより、リスクを見立てて管理しながら体験の価値を最大化する考え方が現実的です。大人側の自然体験の経験不足が安全確保に影響するという指摘もあり、園として研修や下見、危険箇所共有の仕組みを持つことが大切です。

参考:幼児期の自然体験・自然保育の優良事例(自治体・都市部・ビオトープ等)が体系的にまとまっています。

環境省「幼児期における環境教育体験活動事例集」(ねらい・事例・安全性の考え方)

環境教育の保育事例として食育と栽培をつなぐ実践

環境教育は「自然=森や川」だけではありません。毎日の給食や栽培活動は、資源循環・生物多様性・ごみ問題など、生活に直結した入口になります。特に保育園は、子どもが毎日“食べる場”であり、ここを環境教育の中心に据えると継続しやすくなります。

食育や栽培を環境教育として成立させるポイントは、「収穫する」だけで終わらせず、プロセスの連続性を作ることです。タネをまく→育つ→収穫→調理→食べる→残渣をどうする(コンポスト等)までつながると、“循環”が体で理解できます。

具体的には、次のような流れが園で実装しやすいです。

  • 🌱 栽培:プランターや小さな畑でもOK。毎日通る場所に置くと観察が続く。

  • 👃 五感観察:匂い、手触り、色、虫、土の湿り気を言葉にする。

  • 🍳 調理体験:年齢に応じて「ちぎる」「混ぜる」「洗う」から。

  • 🗑️ 残渣:食べ残しの扱いは慎重にしつつ、野菜くずや落ち葉で堆肥化を検討。

ここで歌を入れると、さらに一体化します。

  • 「おみずはちょっと」「つちにありがとう」「いただきます」の短い歌を、栽培・手洗い・給食の定位置に置く。

  • 収穫の達成感は、歌のテンポを上げて祝う(成功体験の記憶が残りやすい)。

意外な深掘りとしておすすめなのが、「渋柿が甘くなる」など“変化の不思議”を使う方法です。環境省の事例には、渋柿を口にして「しぶい」を体験し、冷凍で甘くする工夫を子どもが選んで成功した話が紹介されています。こうした体験は、自然物が「加工・環境条件」で変化することを実感でき、食育にも環境教育にもつながります。

また、保護者との連携も食育は作りやすい領域です。園で育てた野菜の話題が家庭の会話に自然に出ると、家庭側の行動(買い物、残食、料理)が少しずつ変わります。環境教育を園だけの取り組みにせず、生活全体の文化にする視点が重要です。

環境教育の保育事例で広がる園庭ビオトープと生き物観察

園庭に自然を持ち込む方法として、ビオトープは非常に強い実践です。園外に出なくても日々変化が起き、子どもの「なぜ?」が絶えず生まれます。環境省の事例集でも、園庭ビオトープを起点に、カエルの卵やオタマジャクシ、植物遊びなどへ発展する例が紹介されています。

ビオトープが環境教育として優れている理由は、次の通りです。

  • 🐸 命の循環が“毎日見える”:誕生、成長、死、季節の再来を観察できる。

  • 🧠 探究が自然に始まる:図鑑で調べる、写真で比べる、絵に描く、劇にするなど表現に広がる。

  • 👥 社会性が育つ:「触らずに見守る」「みんなで守る」などルールが自分ごとになる。

特に保育園では、環境教育を“情緒”と結びつけられるのが強みです。生き物に出会ったときの驚きや喜び、時に「かわいそう」と感じる揺れを、すぐに正解へ誘導せず、言葉にして共有する。これが、環境配慮の根っこになります。

ビオトープ活動を歌に接続する方法もあります。

  • 「そっとみる うた」:観察のときの声量や動きを整える。

  • 「いのちの うた」:季節の変化を歌詞に入れて、去年と今年をつなぐ。

  • 「おかえり うた」:捕まえた生き物を戻す行為を、儀式として定着させる。

さらに、少し意外な設計として「表現活動(人形劇・劇遊び)」を環境教育の中心に置く方法があります。事例では、ビオトープづくりの経験や気づきを振り返り、ストーリーを考えて人形劇にする実践も紹介されています。環境教育は理科のように見えがちですが、実は“表現”の力で深まります。

園として導入するなら、最初から大規模に作らず、小さな水場・小さな草地・落ち葉の溜まり場のように“ミニ環境”を段階的に増やす方が安全管理もしやすく、職員の合意形成も進みます。

環境教育の保育事例にない独自視点として歌とリスクマネジメントを両立する方法

検索上位の事例は、自然体験・ESD・食育・ビオトープの紹介が中心になりやすく、「継続の難しさ」や「現場で止まるポイント」の解像度は記事によって差があります。そこで独自視点として、歌を“リスクマネジメントの道具”として使う発想を提案します。

自然体験や園庭活動は、どうしても「危ないからやめよう」「説明が大変だから単発で終わる」になりがちです。ここで歌を使うと、注意喚起が“叱る言葉”から“共有ルール”に変わります。叱られた記憶は残りやすい一方で、萎縮も生みます。歌はその代わりに、行動の型をポジティブに刷り込めます。

例えば、次のように「危険回避の歌」を作ります。

  • 🪵 木の枝:振り回さない(腕の範囲で止める)を短い歌にする。

  • 💧 水辺:走らない・押さない・ひとりで行かないを3フレーズにする。

  • 🔥 焚き火や調理:近づく距離、順番、道具の持ち方を歌詞で固定する。

ポイントは、“歌いながらチェックする”ことです。

  • 出発前:みんなで歌って、約束を声に出す。

  • 現場:危険な場面で保育者が歌い出すと、子どもが自然に行動を切り替えやすい。

  • 帰園後:もう一度歌い、できたことを称える(反省会にしない)。

これは、ただの雰囲気づくりではなく、園の安全文化の形成です。環境省の事例集でも、自然体験活動の安全性確保には、子どもの発達理解とリスクマネジメントが重要であり、指導者側の体験不足が安全確保に影響しうることが述べられています。そこを補うのが、歌によるルールの共通言語化です。

さらに、保育者間の連携にも効きます。注意の言い方が職員ごとに違うと、子どもは混乱します。「この歌が流れたらこの行動」という合図が統一されると、引き継ぎや非常勤の先生が入る日でもブレにくい。結果として活動の継続率が上がります。

最後に、保護者説明の場でも歌は強い材料です。安全対策を文章で説明するより、「園ではこの歌で約束を共有しています」と伝える方が具体的で、家庭でも同じルールが再現されやすくなります。

参考:幼児向けの「もったいない」などを紙芝居やゲームで伝える講座、先生向けの実践支援(保護者への情報発信を含む)の考え方が紹介されています。

地球環境基金だより「幼児期から育もう 環境教育の『種』」(園児向け講座と先生向け支援の事例)

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