かえるの歌と輪唱
かえるの歌の由来とドイツ民謡
「かえるの歌」は日本では童謡・唱歌として定着していますが、原曲は19世紀ドイツの童謡「Froschgesang」を元にしたもの、と整理されています。
日本語側のクレジットは一般に「作詞:岡本敏明/作曲:ドイツ民謡」とされますが、岡本本人は「訳詞」の意識が強く、JASRAC登録も訳詞扱いである、という説明があります。
この“訳詞”という位置づけは声楽的に重要で、歌詞の意味を厳密に再現するより「歌いやすさ」や「輪唱教材としての機能」を優先した可能性を読み取りやすくなります。
また、玉川学園の資料では、スイスの教育者ヴェルナー・チンメルマン博士が玉川学園に滞在した際に岡本敏明へ教えた歌が基になり、岡本が日本の子ども向けに詞を付けたことで「蛙の合唱」として広まった、という誕生経緯が語られています。
同資料では岡本の回想として、「蛙の合唱」はチンメルマン博士から教わった歌のうち“最初に日本語の歌詞をつけた歌”であり、この経験が多くの輪唱を日本へ紹介する契機になった、という趣旨も示されています。
声楽を学ぶ立場から見ると、この曲は「作品としての芸術歌曲」というより、教育の現場で“機能する”よう設計・選別されてきた教材です。
参考)Redirecting…
だからこそ、歌うときは「かわいく歌う」で止めず、①輪唱で崩れない発声、②短いフレーズでも伝わる子音と母音、③他者の声に埋もれない響き、を意識すると学習価値が跳ね上がります。
参考:成立背景(チンメルマン博士、岡本敏明、輪唱普及の文脈)
かえるの歌の輪唱と合唱の基礎
輪唱は「同じ旋律を時間差で重ねる」形式なので、歌い手に求められる能力が単旋律より増えます。
具体的には、(1)自分のテンポを保つ、(2)他声部につられない、(3)それでも全体の縦を感じて合わせる、という相反する課題を同時に扱います。
声楽学習者が輪唱を“子どもの遊び”扱いすると取りこぼしが大きく、むしろ基礎の弱点が露出しやすい短距離テストとして使えます。
練習の順番は、合唱団でも個人レッスンでも次の流れが安定します。
・手順1:全員ユニゾンで、母音だけ(例:aやu)で歌って、息の流れと音程の揺れを確認する。
・手順2:歌詞を入れて、子音でテンポが前に転ばないように“子音は短く、母音で拍を支える”意識を合わせる。
・手順3:輪唱に入る前に、二組に分けて「入口(開始位置)」だけを何度も練習し、重なる箇所の聴き方を決める。
この流れは、輪唱に必要な“入口の統一”と“母音での合唱”を同時に作るために有効です。
「かえるの歌」は短くシンプルなため、輪唱が成立した瞬間に“うまくいった感”が出やすい一方、油断すると音程が落ちたり、言葉が濁ったりして完成度が止まりがちです。
そこで声楽学習者は、輪唱のゴールを「合わせる」から一段上げて、「互いの声を聴きながら、響きを壊さずに自分のラインを保つ」へ設定すると、合唱的な基礎力が伸びます。
かえるの歌の音域と音程の練習
学校の学習指導案レベルでも、「かえるのうた」は主音から順次進行し、6音程度の音域でできている点に着目して、音の高さ・階名との関係に気付かせる教材として扱われています。
この“狭い音域”は声楽学習者にとっても利点で、広い跳躍が少ない分、喉や顎の余計な動きが音程の乱れとして表面化しやすいからです。
つまり、難しい曲でごまかせる問題(息が浅い、支えが抜ける、母音が変形する)が、短い童謡では逃げ場なく出ます。
音程練習としてのおすすめは、階名唱→歌詞→輪唱の順です。
参考)http://chibashikyoken.sakura.ne.jp/sidouann/12_onngaku_syou/onngaku_syou45.pdf
階名唱では、同じ高さをただ当てるのではなく、「前の音から次の音へ、どれだけ上がる/下がるか」を体で感じる“相対”を優先すると、輪唱でつられにくくなります。
とくに輪唱中は、他パートの音が自分の基準音を揺らすため、階名唱で“主音へ戻る感覚”を身体に入れておくと安定しやすいです。
ここで意外に効く小技が、「ケケケケ」の扱いです。
・子音(k)を強くしすぎると、息が止まり、音程が下がる。
・逆に子音が甘いと、輪唱で言葉の輪郭が消えて一体感が薄れる。
解決策は、「子音は軽く鋭く、母音は縦に長く」の原則で、発声の流れを切らないことです。
かえるの歌の楽譜と歌詞の違い
実務上、「かえるの歌」は“正式題名は『かえるの合唱』、通称『かえるの歌』”として流通しているため、教材や演奏会資料では表記揺れが起きやすい曲です。
さらに、一般的な説明として「作詞:岡本敏明/作曲:ドイツ民謡」とされつつ、岡本本人は訳詞であるとし、ドイツ語の原曲歌詞が存在する、という整理も重要です。
声楽学習者がここを押さえると、歌詞を扱うときに「意味の解釈」だけでなく「訳詞としての発音配置(歌いやすさ優先)」という視点を持てます。
歌詞面で現場が迷いやすいのは、擬音部分です。
・日本語は「クヮクヮクヮクヮ」「ケケケケ…」という表記が一般的に知られています。
・ドイツ語原曲側には quak や kä の表記が紹介されることがある、とされています。
この差は“翻訳の正しさ”というより、各言語の発音と歌いやすさ、そして子どもの教材としての明瞭さの問題として捉えると建設的です。
また、輪唱教材として教科書に採用され全国で使われた経緯が説明されており、教育現場で広がった歌である点は、曲の流通やバリエーションを理解する手がかりになります。
声楽の現場では、譜面が一つでも、母音処理や子音の長さ、ブレス位置の取り方で“別の曲”のように聴こえるため、指導者側が意図を言語化して渡すと仕上がりが揃います。
参考:原曲・通称・訳詞扱い、教科書採用の経緯(概要の確認)
かえるの歌の声楽練習と独自視点
検索上位の多くは「由来」「歌詞」「輪唱」「楽譜」に寄りますが、声楽学習者に向けては、かえるの歌を“超短い発声実験曲”として扱うと独自性が出ます。
曲が短いぶん、同じフレーズを条件を変えて何度も回せるので、フォーム改善の因果関係を自分で掴みやすいからです。
独自視点としての提案は、「輪唱=対位法ごっこ」ではなく「輪唱=耳と身体の分離トレーニング」として設計することです。
耳は周囲に引っ張られますが、身体(呼吸の支え、母音の置き方、喉頭の安定)は自分で守らないといけません。
この分離ができるほど、合唱だけでなくアンサンブル、重唱、さらにはオーケストラ伴奏の中でもピッチを保ちやすくなります。
具体的な練習メニュー例(レッスンでそのまま使える形)
🎯目的:輪唱で音程と響きを崩さない
・メニューA:母音「u」だけで全曲→同じテンポで歌詞入り(子音で喉が固まっていないか確認)
・メニューB:二人一組で輪唱、後から入る側は“相手の声量の7割”を上限にして、無理に張らず響きで抜ける感覚を作る
・メニューC:「クヮ」の子音を強くしない条件で、子音の位置を前歯側に寄せて明瞭さを確保する(息の流れは止めない)
この曲は短いので、録音して1分で検証→修正→再録音、の反復が可能で、成長の手応えを得やすいです。
意外と効果が出るのが、「最初の1音だけを100点にする」練習です。
輪唱では入口が乱れると、その後をどれだけ頑張っても濁るため、開始音の母音・息・ピッチを揃えるだけで合唱全体が見違えます。
声楽学習者は“フレーズ後半で盛り上げる癖”がつきやすいですが、この曲ではむしろ「入口の設計」が表現を決める、と捉えると練習が締まります。

