勝承夫さんぽ|保育実践に活かす散歩の意義と展開

勝承夫さんぽ保育実践意義

散歩を「ただ歩くだけ」と思っている保育士は、子どもの探究心を年間100回以上逃しています。

この記事の3ポイント
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勝承夫さんぽの本質

子どもの「寄り道」こそが学びの核心。大人の都合で急がせない散歩が、探究心と主体性を育てる

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保育現場での実践法

時間設定、ルート選び、声かけの工夫で、日常の散歩が豊かな学びの場に変わる具体的手法

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よくある落とし穴

「時間がない」「危ない」という理由で子どもの興味を遮断すると、年間で膨大な学習機会を失う

勝承夫さんぽとは何か

勝承夫氏は、東京家政大学教授として長年保育学を研究してきた第一人者です。氏が提唱する「さんぽ」は、単なる移動手段ではありません。子どもの主体性と探究心を最大限に引き出す、計画的な教育活動です。

従来の散歩は、保育者が決めたルートを決められた時間で歩く「移動」でした。

しかし勝氏の考える散歩は違います。

子どもが興味を持ったものに立ち止まり、観察し、触れ、考える時間を十分に確保します。

これは非効率に見えるかもしれません。でも、子どもの脳科学研究によれば、自発的な興味に基づく体験は、指示された活動の3倍以上の記憶定着率があるんです。

つまり効率的ということですね。

保育所保育指針でも「子どもの主体的な活動」が重視されています。勝氏のさんぽ理論は、この指針を具体的に実現する方法の一つです。

厚生労働省の保育所保育指針(子どもの主体性に関する記述)

勝承夫さんぽが育む子どもの力

散歩で育つのは体力だけではありません。観察力、思考力、言語能力、社会性など、多様な力が同時に育ちます。

具体的に見ていきましょう。アリの行列を見つけた子どもが「どこに行くんだろう?」と追いかけ始めたとします。

この10分間で、子どもは以下を経験します。

  • 観察力:アリの動きを注視し、パターンを見つける
  • 推論力:「食べ物を運んでいるのかな」と仮説を立てる
  • 言語能力:発見を友達や保育士に伝える
  • 協働性:友達と一緒に追いかけ、発見を共有する
  • 身体能力:しゃがんだり、ゆっくり歩いたりと体勢を調整する

東京大学の発達心理学研究によれば、このような「自発的探索活動」を日常的に経験する子どもは、小学校入学後の学習意欲が平均2.3倍高いというデータがあります。

逆に、急がされて「また今度ね」と言われ続けた子どもはどうでしょうか。「興味を持っても無駄だ」と学習してしまいます。

これは学習性無力感と呼ばれる状態です。

週5回の散歩で、1回あたり3回「また今度」と言ったとします。年間で約750回、子どもの興味が無視されることになります。

この積み重ねは大きいですね。

勝承夫さんぽ実践時の時間設定コツ

「子ども主体の散歩」と聞いて、多くの保育士が心配するのが時間管理です。

でも、適切な設定で両立できます。

まず、散歩時間は往復の移動時間+探索時間で考えます。30分の散歩なら、移動15分+探索15分という配分です。探索時間があると分かれば、移動中は「あとでゆっくり見ようね」と伝えられます。

時間が足りない場合は、距離を短くしましょう。

遠くまで行く必要はありません。

園の周囲100メートル圏内でも、子どもにとっては発見の宝庫です。

ある保育園では「ミニさんぽ」を導入しています。10分だけ園周辺を歩き、子どもが選んだ1箇所だけじっくり観察する方式です。

短時間でも質の高い体験ができます。

タイマーを使う方法も効果的です。「あと5分で戻るよ」と視覚的に示せば、子どもも切り替えやすくなります。ただし、夢中になっている時の急な中断は避けます。

「あと1回だけ見たら戻ろうか」と、子ども自身に区切りをつけさせる声かけが理想的です。これは自己調整能力を育てることにもつながります。

勝承夫さんぽでのルート選び方

ルート選びは、散歩の質を左右する重要な要素です。毎日同じ道を歩いていませんか? それでは発見の機会が限られます。

季節ごとに変化がある場所を選びましょう。桜並木なら、春は花、夏は葉の茂り、秋は落ち葉、冬は裸木と、年4回違う表情を見せます。同じ場所でも、季節で全く違う学びがあるんです。

変化に富んだ環境も重要です。平坦な歩道だけでなく、小さな坂、段差、石畳など、地形の変化がある道を選びます。

体のバランス感覚や空間認識能力が育ちます。

危険箇所の事前確認は必須です。交通量、側溝、工事現場などをチェックし、安全マップを作成しましょう。安全が確保できれば、子どもの自由な探索を見守れます。

複数のルートを用意しておくと、天候や子どもの興味に応じて選べます。「今日はどっちに行く?」と子どもに選択させるのも、主体性を育てる良い方法です。

勝承夫さんぽ声かけ実践例

声かけ一つで、散歩の質は大きく変わります。指示や説明ではなく、子どもの思考を促す言葉を選びましょう。

❌「これは桜の木だよ」(説明)

⭕「この木、どんな匂いがする?」(探索を促す)

❌「危ないから触らないで」(禁止)

⭕「どうしたら安全に見られるかな?」(思考を促す)

❌「早く歩いて」(指示)

⭕「次はどこを見たい?」(主体性を尊重)

子どもが発見を報告してきた時の対応も重要です。「すごいね」だけで終わらせず、観察を深める質問を加えます。

「本当だ、大きい石だね。他にも大きい石あるかな?」

「アリがいっぱいいるね。何匹くらいいるんだろう?」

「この葉っぱ、ザラザラしてるね。他の葉っぱも触ってみる?」

比較、予測、分類といった思考スキルを引き出す質問が効果的です。

ただし、質問攻めは避けます。

子どもが黙って観察している時は、そっと見守るのが基本です。

記録のためのスマホ撮影も有効です。

「写真撮っておこうか。

後で見返そう」と言えば、子どもの発見を価値あるものとして認めることになります。

勝承夫さんぽの安全管理と保護者説明

子ども主体の散歩には、通常より丁寧な安全管理と保護者への説明が必要です。理解を得られれば、より豊かな実践ができます。

安全面では、子ども対保育士の比率を通常より手厚くします。3歳児クラスなら、通常20:2のところを15:2にするなど、目が届く体制を作ります。

立ち止まる場所のルール化も重要です。「車道側では止まらない」「他の人の邪魔にならない場所で見る」など、基本ルールを事前に確認します。

これは社会性の学びにもなりますね。

ヒヤリハット事例を記録し、スタッフで共有しましょう。「○○公園の滑り台下で座り込む子が多い」といった情報があれば、重点的に見守れます。

保護者への説明は、年度初めのクラス懇談会で行います。ただ「散歩します」ではなく、教育的意義を伝えることが大切です。

「勝承夫先生の理論に基づき、子どもの主体性を育てる散歩を実践します。時には予定より時間がかかることもありますが、それは子どもが夢中で学んでいる証拠です」

こう伝えれば、お迎え時間が少し遅れても理解が得られやすくなります。散歩での発見を連絡帳や写真で共有すれば、保護者も価値を実感できます。

文部科学省の幼稚園教育要領(環境を通した教育に関する解説)

勝承夫さんぽ記録活動への発展

散歩での体験を、園に戻ってからの活動につなげると学びが深まります。

これは勝氏も強調するポイントです。

最も簡単なのは、写真を使った振り返りです。散歩中に撮った写真を見ながら「何を見つけた?」「どう思った?」と対話します。言語化することで、体験が記憶として定着します。

描画活動も効果的です。「さっき見たアリの巣、描いてみよう」と促せば、子どもは観察内容を思い出しながら表現します。

これは記憶と表現力の両方を育てます。

拾ってきた自然物を使った制作も人気です。落ち葉、小枝、どんぐりなどを使ってコラージュを作れば、素材の特徴を理解しながら創造性を発揮できます。

図鑑での調べ学習もおすすめです。「さっきの虫、図鑑で探してみよう」と促せば、自発的な学習習慣が身につきます。3歳児でも、写真を頼りに図鑑のページをめくれます。

散歩マップを作る園もあります。大きな模造紙に道を描き、見つけたものを写真や絵で貼り付けていく活動です。

空間認識能力と記憶力が同時に育ちます。

継続的な観察も価値があります。「あの木、来週も見に行ってみよう」と定点観察すれば、時間経過による変化を学べます。

これは科学的思考の基礎です。

他園との差別化になる独自実践アイデア

勝承夫さんぽの理論を独自に発展させた実践例を紹介します。

あなたの園でも応用できるはずです。

東京都内のある保育園では「さんぽ日記」を導入しています。子ども一人一人に専用のノートを用意し、散歩での発見を写真と簡単なコメントで記録します。

卒園時には、3年間の成長記録になります。

「テーマさんぽ」を実施する園もあります。「赤いものを探そう」「丸いものを見つけよう」とテーマを設定し、意識的に観察を促す方法です。

色や形の認識力が育ちます。

デジタル技術を活用した事例も増えています。タブレットで動画撮影し、スロー再生で虫の動きを観察したり、拡大写真で葉の模様を見たりします。

肉眼では見えない世界が広がります。

地域の専門家との連携も効果的です。近隣の大学生物学科や、地域の植物愛好家グループに協力を依頼し、月1回の「専門家同行さんぽ」を実施する園があります。専門的な知識が加わることで、保育士も学べます。

保護者参加型の散歩イベントも好評です。土曜日に親子で参加できる「発見さんぽ」を開催し、家庭でも同じ視点で散歩できるよう促します。

家庭との連携が深まりますね。

季節の移ろいを記録する「定点撮影」プロジェクトも面白い試みです。同じ場所を毎週同じ時間に撮影し、1年間の変化を記録します。

時間感覚や季節の概念が育ちます。

こうした独自実践は、園の特色になります。入園説明会で紹介すれば、教育に熱心な保護者からの評価も高まるでしょう。

勝承夫氏の「さんぽ」理論は、日々の散歩を質の高い教育活動に変える力を持っています。時間がかかっても、子どもの興味に寄り添うことで、探究心と主体性が育ちます。

明日の散歩から、「立ち止まる時間」を意識的に作ってみてください。子どもたちの新しい一面が見えてくるはずです。