事故防止と保育と標語
事故防止の保育の標語の作り方
保育の標語づくりは、センスより設計が重要です。まず「どの場面の事故防止か」を決めてから、職員が同じ行動を取れる短い合言葉に落とします。大阪市の啓発ポスターは、重大事故が起きやすい場面(睡眠中、プール・水遊び中、食事中)に合わせて安全確認ポイントを示し、文字(合言葉)に事故防止の思いを込めた、と説明しています。つまり“場面×行動×短い言葉”が王道です。
参考:睡眠中・水遊び中・食事中の重大事故を想定した啓発ポスターとマニュアルの考え方(場面別の安全確認ポイント)

標語の要件は、次の3点を満たすと現場で強く機能します。
- 「誰が読んでも同じ行動が浮かぶ」具体性(例:見る、数える、触れる、声に出す)。
- 「言い切り」で終わる(曖昧語を減らす:たぶん・なるべく・気をつけようだけにしない)。
- 「掲示」より「口に出す」設計(朝礼・散歩前・午睡前など、唱えるタイミングを固定)。
そして、標語は“掲示して終わり”が最も危険です。大阪市は、ポスターを「よく見えるところに掲示」して啓発と注意喚起に活用してほしいとしていますが、同時に事故防止マニュアル(基礎編・手引き)もセットで整備し、チェックポイントを示す構成にしています。つまり標語は、運用(チェック表・役割分担・研修)と組み合わせて初めて効きます。
- 運用の例:午睡前に「合言葉→体位→呼吸→視診」を必ず順番固定。
- 運用の例:水遊び前に「監視役の明確化→人数確認→危険物排除」を唱和。
事故防止の保育の標語の例
「例文」は便利ですが、園の導線・人員配置・子どもの年齢構成で事故の形が変わるため、“自園のヒヤリハットを言葉にする”のが最短です。そのうえで、行政・公的機関が示す「短い合言葉」型の好例も参考になります。日本スポーツ振興センターは、熱中症予防の3つのポイントを覚えて自ら行動できるように「かぶ の しらせ」というシンプルな標語(かぶろう!のもう!しらせよう!)を紹介しています。これは「行動が3つ」「短い」「声に出しやすい」という、保育の事故防止標語の理想形に近いです。
参考:熱中症予防を“合言葉化”する発想(こどもが自分で行動できるようにする)
この発想を、園の事故防止に横展開してみます。以下は“テンプレ”としての例で、()は差し替え前提です。
- (午睡)「見て・触れて・記録する」:目視だけで終えない。
- (食事)「小さく・ゆっくり・見守る」:急がせない。
- (水遊び)「役割・人数・目線」:監視の穴を作らない。
- (散歩)「出る前よし・道中よし・戻りよし」:往復で油断しない。
また、標語は“子ども向け”と“職員向け”を分けると効率が上がります。子ども向けは擬音やリズムで行動を促し、職員向けは確認行動の順序を固定します。たとえば熱中症なら、子どもは「かぶろう!のもう!しらせよう!」、職員は「WBGT確認→水分計画→体調観察→連絡体制」といった二層構造が作れます(公的機関が“合言葉化”を示しているのがヒントです)。
事故防止の保育のヒヤリハット
ヒヤリハットは、事故未満の出来事を「起きなかったから良かった」で終わらせないための資源です。日本スポーツ振興センターの資料群は、事故の傾向整理や、誤嚥・窒息、熱中症などの「発生時の対応」と「防止」を分けてまとめ、いざという時に備えて日頃から確認できるハンドブックとして提供しています。ここから学べるのは、事故防止は“気合”ではなく「型(手順)」で守るという点です。
参考:誤嚥・窒息/熱中症などを「対応」と「防止」に分けて整理する考え方(園内研修の材料になる)
ヒヤリハットを標語に落とすときは、次の手順がぶれません。
- 事実を一文にする(いつ・どこで・何が・どうなりかけた)。
- 「防げた行動」を抽出する(見守り位置、人数確認、環境整備、声かけ順序)。
- 行動だけを残して、短い標語にする(名詞で終えず、動詞で終える)。
たとえば「午睡中、呼吸が見えにくい体勢の子がいた」に対しては、標語は「体位よし、呼吸よし、記録よし」のように“確認の順序”を固定します。大阪市が配布する事故防止マニュアル(基礎編)も、イラストを多用し、事故を起こさないための心構えやチェックポイントを示すなど、新たに保育に携わる人材にも分かりやすい内容を目指したとしています。標語は、そのチェックポイントを“1秒で思い出す札”として機能させるのが狙いです。
参考:事故防止マニュアル(基礎編・手引き)の考え方(チェックポイントを分かりやすく提示)
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000565683.html
事故防止の保育の睡眠中
重大事故の観点で、睡眠中は最優先で設計すべき場面です。大阪市は、重大事故が発生しやすい場面として「睡眠中」を明示し、その場面における安全確認ポイントを示す啓発ポスターやマニュアルの活用を促しています。ここでの要点は「個人の注意力」ではなく、「観察の仕組み」と「記録の一貫性」です。
参考:睡眠中を含む重大事故が起きやすい場面を前提にしたポスター・マニュアル(自治体の実務資料)

睡眠中の標語は、次のような“チェック順序の固定”に向いています。
- 「見える化」:顔色・呼吸・体位・室温など、見る対象を固定。
- 「触れる判断」:必要時に胸郭の動きや体温など確認(園のルールに沿う)。
- 「記録」:観察表に残し、引継ぎで口頭だけにしない。
意外と見落とされがちなのは、「標語が“安心の免罪符”になる」リスクです。たとえば掲示物が充実していると、逆に“やっているつもり”が起きます。大阪市は、事前通告なしの巡回支援指導の取組みも実施していると説明しており、外部視点で運用を点検する重要性が示唆されます。標語を作ったら、同じ言葉で点検できるチェックリスト(例:午睡前・午睡中・午睡後)までをセットにして、初めて事故防止の実装になります。
参考:事故防止の取組み(巡回支援指導、各種参考様式、観察表などの提供)
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000565683.html
事故防止の保育の歌(独自視点)
検索上位の文脈では「標語=掲示」が中心になりやすい一方で、保育現場には“歌”という強い伝達媒体があります。歌は、標語の弱点である「言いっぱなし」「掲示しっぱなし」を補い、毎日のルーティンに安全行動を埋め込めます。日本スポーツ振興センターが熱中症予防を「かぶ の しらせ」という合言葉にして、園でも家庭でも友だち同士でも確認できるように促している点は、合言葉を生活に浸透させる発想として参考になります。ここを一歩進め、合言葉を“短い歌”にするのが独自の実装案です。
参考:合言葉を「園でもおうちでも」確認できるようにする発想(習慣化のヒント)
歌にするときのコツは、「行動がそのまま歌詞になる」ことです。たとえば安全確認の標語を、次のように“手順のメロディ化”します。
- 午睡前の歌:体位(たい・い)→呼吸(こ・きゅう)→顔色(か・お・い・ろ)→記録(き・ろ・く)
- 水遊び前の歌:役割(や・く・わ・り)→人数(に・ん・ず・う)→目線(め・せ・ん)→合図(あ・い・ず)
- 食事前の歌:小さく(ちい・さく)→ゆっくり(ゆっ・くり)→見守る(み・ま・も・る)
歌の利点は、子どもが“監視される側”ではなく“安全に参加する側”になれる点です。熱中症の例でも、子ども自身が「かぶろう!のもう!しらせよう!」を合言葉にして行動できるようにする、とされています。事故防止の標語を歌に変換すれば、子どもは「先生に注意される前に、自分で気づく」回路が作れます。結果として、職員の目が届きにくい瞬間(移動・切替・準備)を、集団の習慣で補強できます。
実務としては、次の運用が現実的です。
- 歌は“場面の直前”に固定(午睡前、園庭前、食事前、散歩前)。
- 長くしない(1番だけ、30秒以内)。
- 毎月、ヒヤリハットから歌詞を1行だけ更新(現場の変化を反映)。
標語は掲示して終わりになりがちですが、歌は「毎日、口に出して、体を動かす」ことで定着します。掲示物(ポスター)と、手順書(マニュアル)、そして歌(習慣化)の三点を組み合わせると、事故防止は“注意喚起”から“文化”へ変わります。


