イルカのうた「いるかはザンブラコ」を保育で活かす歌い方と伝え方
「ピアノを一音も間違えなかったのに、不合格になった保育士がいます。」
イルカのうた「いるかはザンブラコ」の由来と歌詞の仕掛け
「いるかはザンブラコ」は、作詞:東龍男、作曲:若松正司によって生まれた童謡です。もともとNHK教育テレビの番組「ワンツー・どん」(1974年〜1996年放送)のために制作されました。この番組はフォークダンスや音楽遊びを小学生に紹介する内容で、番組内のバンブーダンス(竹を使ったフィリピン発祥のフォークダンス)のBGMとして、この曲が起用されたのが始まりです。
その後、全国の小学校の体育・音楽の授業に広まり、「バンブーダンスといえばこの曲」というイメージが定着しました。保育現場でも長年にわたって親しまれ続けており、令和6年(2024年)には保育士実技試験の課題曲にも選ばれました。
つまり、この曲は「遊びのための音楽」として設計された曲ということです。
歌詞は3番まであり、各番に独自の動物とダジャレが登場します。
- 1番: イルカ /「イルカはいるか」(いるか=居るか?)
- 2番: バッタ /「バッタはばてた」(ばてた=疲れた)
- 3番: カエル /「カエルはかえる」(かえる=帰る)
どれも「ネコがねころんだ」「ウマがうまれた」のような、動物名と日本語の動詞・形容詞を掛け合わせたシンプルな言葉遊びです。これは意外に深い仕掛けで、子どもが初めて聴いたとき「えっ、今なんて言った?」と引っかかり、自然と集中して聴くようになります。
言葉遊びは子どもの語彙力を育てます。単純に見えるダジャレが、「同じ音でも意味が変わる」という日本語の面白さに気づかせてくれる、立派な言語教育の入口になっているのです。
「ザンブラコ」という聞き慣れない言葉は、水に飛び込む・波に揺れるようすを表したオノマトペ(擬音語)です。「ザンブ」という水音に「ラコ」という軽快な響きが加わることで、イルカが大波を越えてはねる場面が頭にイキイキと浮かびます。このように具体的な情景を喚起する音選びが、保育士が子どもたちに伝える際のイメージ共有をしやすくしています。
作詞者の東龍男は、合唱曲「気球にのってどこまでも」でも知られる作詞家です。作曲者の若松正司はNHK教育番組関連の楽曲を数多く手がけた作曲家で、その息子・若松歓も後に音楽の世界で活躍しています。親子でNHK教育番組の音楽を支えてきた家系だという背景は、この曲の質の高さを改めて感じさせます。
「イルカはざんぶらこ」の由来とバンブーダンスとの関係について詳しく解説(世界の民謡・童謡)
イルカのうた「いるかはザンブラコ」の3拍子と子どもの体への影響
「いるかはザンブラコ」が他の保育ソングと大きく異なる点の一つが、ワルツ(3拍子)のリズムで書かれていることです。保育でよく使われる童謡の多くは2拍子・4拍子系の曲です。「ちょうちょ」「チューリップ」「アンパンマンのマーチ」なども、ほぼ2拍子・4拍子のノリになっています。
それに対して3拍子の曲は、「踊り・揺れる・回る」という体の動きに自然とつながります。
専門家の研究によると、3拍子のリズムは幼児期の子どもが日常的に触れる機会が2拍子系に比べて少なく、意識的に保育に取り入れることで、身体の揺れ・バランス感覚・空間認知の発達を促す可能性があると指摘されています。「いるかはザンブラコ」の「ザンブラコ」という言葉自体が3拍子を体感させるための仕掛けとして機能しており、子どもが歌いながら自然に体を揺らせるように設計されているわけです。
これは使えそうです。
保育士として、この曲を歌うときには「ただ歌う」だけではなく、体を揺らしたり、腕で波のような動作をしたりすることを意識すると、子どもたちも一緒に体を動かしやすくなります。特に「おおなみザンブラコ」の部分では、両腕で大波のような大きな動きを取り入れると、視覚的にもリズムが伝わりやすくなります。
3拍子の特性を理解した上で歌うのが基本です。
バンブーダンスとの組み合わせは特に効果的で、2本の竹棒を床に打ち付けながら踊るバンブーダンスは3拍子のリズムとの相性が非常に良いため、運動会や発表会でこの曲を使うケースも多く見られます。竹棒が手元にない場合は、新聞紙を丸めたものやペットボトルで代用できます。1組200円程度の素材で実施できるため、コストの面でも取り組みやすい遊びです。
乳幼児の発達に沿う保育の歌の選曲と3拍子のリズムに関する研究論文(白藤学院)
イルカのうた「いるかはザンブラコ」の弾き歌いで保育士が陥りやすい3つのミス
令和6年度(2024年度)保育士試験の実技「音楽に関する技術」の課題曲に「いるかはザンブラコ」が選ばれました。試験の合格基準は50点満点中30点以上です。実技試験全体の合格率は約8割ともいわれていますが、それでも一定数の人が不合格になっています。
「練習したのに落ちた」という場合、よくある原因は大きく3つに絞られます。
ミス①:テンポが速すぎる
ピアノに集中すると、無意識にテンポが上がってしまうことがあります。「いるかはザンブラコ」はワルツのリズムですが、速く弾きすぎると子どもが一緒に歌えない速度になってしまいます。子どもが口ずさめる速さで演奏することが基本です。練習時にメトロノームを使い、♩=100程度(1分間に4分音符が100回)を目安にした上で、実際の子どもの声のテンポに合わせて調整しましょう。
ミス②:歌声が小さい
ピアノの伴奏に気を取られるあまり、声量が落ちてしまうのもよくあるパターンです。試験の評価は「歌」が主役です。実際、保育士試験の指導機関である四谷学院は「ミスタッチをしても不合格にはならないが、歌声が聞こえないと評価が下がる」と明言しています。声の大きさよりも、「楽しそうな声か」「子どもが真似したくなる声か」という点が評価のポイントになります。
ミス③:聴き慣れているから「正しく歌えている」と思い込む
この曲の落とし穴がここです。幼い頃から知っている曲だからこそ、自分では正しく歌っているつもりでも、実はリズムや音程がずれていたというケースが保育士試験の指導現場で毎年報告されています。「家族に聞いてもらったが、家族全員が間違って覚えていた」という実例もあるほどです。
思い込みに注意すれば大丈夫です。
対策として、練習を始める前に必ず楽譜と公式の音源を照合してください。JASRACが管理する楽譜データや、ほいくis公式チャンネルのような信頼性の高い動画で耳と楽譜の両方から確認する習慣をつけると、思い込みによるミスを防げます。
イルカのうた「いるかはザンブラコ」を子どもに伝えるときの歌い方・見せ方のコツ
保育士試験の対策として練習している人も、日常保育でこの曲を使う人も、最終的なゴールは「子どもが楽しく歌えること」です。そのためには演奏技術よりも「伝え方」の工夫のほうが実は大きな差を生みます。
歌詞は「耳」で届ける
子どもたちは歌詞を目で読むのではなく、耳で聞き取ります。「ザンブラコ」「ピョンピョコピョン」「ジャンブラコ」など、各番で言葉が変わる部分は特に、はっきりと発音することが重要です。滑舌が気になる人は、子音の口の形を意識するだけで聞こえ方が大きく変わります。たとえば「ザ」は舌が上の歯の後ろに軽く触れる発音です。ローマ字表記で歌詞を書き直して発音練習をすると、意識が向きやすくなります。
ダジャレは「間」で楽しむ
「イルカはいるか」「バッタはばてた」「カエルはかえる」というフレーズは、少しだけ間を取ってから笑顔で歌うだけで子どもの反応が変わります。「いるかは……いるか!」という流れで目を大きく開けて言うだけで、子どもたちがクスッと笑い始めます。音楽的なスキルよりも「一緒に楽しむ表情」が最大の武器です。
番ごとに動きを変える
1番はイルカ→両腕で水をかく動作、2番はバッタ→膝を曲げてピョンピョン飛ぶ動作、3番はカエル→しゃがんでジャンプする動作、というように各番で体の動かし方を変えると、子どもたちが飽きずに最後まで参加できます。4〜5歳児は体の動きのバリエーションを増やすことで、自分なりの振り付けを創り始めることもあります。これは「表現する楽しさ」の原点です。
笑顔が一番の伝え方です。
声量が多少小さくても、表情が固くても、保育士が「楽しそう」に歌っていれば子どもはそれを敏感に感じ取ります。子どもたちは保育士の表情を鏡のように映します。まず自分が楽しむことが、子どもへの最高の伝え方になります。
イルカのうた「いるかはザンブラコ」の楽譜・移調・独自活用アイデア
「いるかはザンブラコ」の楽譜は複数の難易度で市販・配布されています。Piascoreやヤマハの「ぷりんと楽譜」などでは入門〜中上級まで複数のアレンジが販売されており、piascore上では超初級版が数百円から入手可能です。ほいくisではメンバー登録(無料)で弾き歌い用の楽譜を無料ダウンロードできます。
移調について知っておきたいこと
保育士試験では移調(調を変えること)が認められています。楽譜通りのキーが高すぎて歌いにくい場合は、自分が歌いやすいキーに移調して演奏することが可能です。移調しても減点にはなりません。ただし、移調後の楽譜に♯(シャープ)や♭(フラット)が増えることがあります。ピアノ初心者の場合、移調後に弾きにくくなるケースもあるため、「歌いやすさ」と「弾きやすさ」の両方から判断して移調を検討することが大切です。
ヘ長調(♭1つ)かハ長調(♭・♯なし)が多くの受験者に選ばれており、初心者にも比較的取り組みやすい調です。
保育現場での独自活用アイデア
水遊びや夏の季節イベントでは、この曲が特に生きます。プールや水遊びの前に「いるかはザンブラコ」を歌ってから活動に入ると、子どもたちの気分が一気に高まります。「今日はみんなもイルカになって水の中をザンブラコしようか!」という一言だけで、活動への期待感が変わります。
また、3番のカエルの「ジャンブラコ」に合わせてカエルジャンプをする運動遊びも人気です。運動能力の発達が著しい3〜5歳児が、笑いながら体を動かせる遊びとして活用できます。約3〜5分で完結するため、活動の合間の短い時間にも取り入れやすい点が保育士にとって実用的なポイントです。
さらに、絵本と組み合わせる方法もあります。海の生き物をテーマにした絵本の読み聞かせの後にこの曲を歌うと、子どもたちのイメージが膨らんだ状態で歌えるため、表現がより豊かになります。
楽譜や活用の幅が広い曲です。
ピアノが苦手な保育士でも、ギターやオルガンに持ち替えることが保育士試験では認められています(ギターの場合は自分で持参)。日常の保育でも楽器の種類にこだわらず、弾きやすい楽器でこの曲を取り入れることで、子どもたちと楽しい音楽時間を作ることができます。


