インクルーシブ保育の実践例と保育士が学ぶ環境整備の基本
インクルーシブ保育を「理念だけ知っている状態」で現場に立っても、90.2%の保育士が外国にルーツを持つ子どもへの対応に難しさを感じています。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000131.000043389.html
インクルーシブ保育の実践例:障がい児への環境整備の具体的な方法
インクルーシブ保育における環境整備は、障がいのある子どもが「参加できない」を「参加できる」に変える土台です。 感覚過敏のある子どもには、静かなクールダウンスペースを保育室の一角に設けることが有効で、大きな音や人混みからの一時退避場所として機能します。
参考)インクルーシブ保育とは?取り組むうえで大切なことや具体例を紹…
活動の見通しを持たせる工夫も欠かせません。 発達障がいのある子どもに対しては、イラスト付きのスケジュールカードを使い、1日の流れを視覚的に示すことで不安が大きく軽減されます。 これは「言葉だけで説明しても伝わらない」場合にとくに効果的で、保育士の声かけ回数も自然に減ります。
制作活動では、細かい作業が苦手な子どもに対して、手でちぎれる素材や大きなハサミ・ペンを用意するだけで、同じ活動に参加できるようになります。 つまり「活動内容を変える」のではなく、「道具を変える」のが原則です。
運動遊びの場面では、体の動かし方に不安のある子どもを事前に少人数で個別練習させてから集団に合流する方法が実践されています。 這い這い競争・トランポリン・サーキット遊びなど、体幹を使う活動を自由遊びに組み込むことで、姿勢保持が難しい子どもへの支援にもなります。inclusive.nise.go+1
国立特別支援教育総合研究所が運営するインクルーシブ教育システム構築支援データベースでは、保育所での具体的な支援事例が多数公開されています。環境整備の参考に活用できます。
国立特別支援教育総合研究所:インクルーシブ教育システム構築支援データベース
インクルーシブ保育の実践例:加配保育士の配置と役割分担の実態
保育士の加配体制は、インクルーシブ保育の質を左右する最重要ポイントのひとつです。 現場では「加配保育士」「サポート保育士」「個別支援保育士」「保育支援者」と役割が分かれており、それぞれの機能を正しく理解することが大切です。
参考)インクルーシブ保育の現状|実践に向けた課題と成功事例から学ぶ…
加配保育士は通常の配置基準に加えて数名を追加配置するもので、園の規模に応じて人数が決まります。 サポート保育士は園全体を受け持ち、原則「児童4人:保育士1人」の割合で動きます。 これは1クラス20人のクラスなら5人の保育士が目安になる計算で、通常の担任1〜2人体制とは大きく異なります。
個別支援保育士は障がいの程度に応じて「1対1」「2対1」「3対1」など柔軟に配置される仕組みです。 重度の支援が必要な子どもに対しては完全マンツーマンになることもあります。
一方で、令和3年度の調査では保育所等のうち16.9%が障がい児の受け入れ困難ケースを経験しており、主な理由は「保育士の数の不足」と「子どもの障がいの重さ」でした。 人員不足が実践の壁になっているということですね。
参考)https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/track-record/assets/pdf/r3cc-report-05.pdf
保育支援者を活用して給食配膳・清掃などの非保育業務を分担することも、保育士の業務負荷を下げる有効な手段として注目されています。 保育士が子どもと向き合う時間を確保するための仕組みとして、積極的に検討する価値があります。
インクルーシブ保育の実践例:外国にルーツを持つ子どもへの対応と通訳機活用
外国にルーツを持つ子どもへの対応は、インクルーシブ保育の中でも特に難しさが増しているテーマです。 2024年の調査では保育士の90.2%が「外国にルーツを持つ子どもへの対応に難しさを感じる」と回答しており、2020年比で35.4ポイントも増加しています。 意外ですね。
保護者への対応はさらに困難で、93.8%の保育士が「難しさを感じたことがある」と答えています。 おたよりにルビを振る、翻訳機能を使って会話するなどの工夫が現場では行われていますが、宗教上のルールや文化習慣への対応まで求められるケースも増えています。
こうした状況に対し、約半数(47.7%)の保育士が「保育者向け通訳機」の使用経験を持ち、使用した保育士の92.2%が「役に立っている」と回答しています。 これは使えそうです。
通訳機が役立つ理由として「言語的な不安が解消されストレスが減った」(57.4%)、「緊急時の迅速な対応が可能になった」(55.3%)が上位に挙がっています。 保育用語に対応した専門機器は「一般の翻訳アプリでは不自然になる保育用語」の問題を解消できるという声も多く寄せられています。
外国にルーツを持つ子どもへの対応を体系的に学ぶなら、文部科学省の「外国人児童生徒等教育の充実のための施策」も参考になります。
文部科学省:外国人児童生徒等への対応に関する情報(外国語版も掲載)
インクルーシブ保育の実践例:異年齢・混合クラスで育む共生の実践
インクルーシブ保育の実践として、「クラスの壁をなくした異年齢保育」を取り入れる園が増えています。 神奈川県茅ヶ崎市の「うーたん保育園」では、3〜5歳児と乳児が同じ空間で過ごす中で、子どもたち自身が問題を話し合って解決する姿が生まれています。hoiku.sho+1
具体例として、乳児がブロックを口に入れてしまったことをきっかけに、幼児たちが話し合い「奥まった場所にブロックを移し、テーブルでスペースを区切る」という解決策を子ども同士で考えたという事例があります。 大人が決めるのではなく、子ども自身が考えるプロセスがポイントです。
参考)インクルーシブ保育を支える環境・仕組みとは? うーたん保育園…
どろんこ会グループのような実践では、クラス分けなしのゾーン保育を採用し、1歳児・3歳児・5歳児・障がいのある子ども・ない子どもが同じゾーンで関わり合います。 座禅・畑仕事・裸足保育など、体験型の活動を通じて「思い通りにならない経験」を積ませることを重視しています。
参考)どろんこの保育
こうした混合環境では、発達が早い子が遅い子を助け、遅い子が早い子の優しさを引き出す相互作用が生まれます。 つまり、異なる発達段階の子どもが同じ空間にいることが、一方的な「支援」ではなく「育ち合い」につながるということです。
ただし、異年齢・混合保育には安全管理の難しさも伴います。 乳児と幼児が同じ空間にいる場合、小さな玩具の誤飲リスクなどを保育士が常に把握し、空間設計に反映させる必要があります。
インクルーシブ保育の実践例:保育士の専門性向上と独自視点の「保護者との協働」
インクルーシブ保育の実践で見落とされがちなのが、「保護者を支援の受け手ではなく担い手として位置づける」という視点です。 保護者は子どもの特性を最もよく知る存在であり、保育士が一方的に情報を伝えるだけでは本来の連携にはなりません。
具体的には、保護者が参加できる勉強会や観察の機会を定期的に設けることが有効です。 家庭での子どもの様子を保育士が把握し、保育室での対応に反映させる「双方向の情報共有」が、支援の精度を高めます。
保育士の専門性向上という側面では、障がいや発達特性について知識のなかった保育士が「文献を調べながら対応する」姿勢を持つことで、子どもに良い変化が生まれた事例が報告されています。 専門知識がなくても「本人を理解しようとする姿勢」が実践の質を底上げするということですね。
参考)https://www.tuins.ac.jp/wp-content/uploads/2025/03/202503-03aiyama.ishikura.kawasaki.pdf
2024年の調査では、保育士がインクルーシブ保育を学ぶ場として「保育園が行う研修」(64.8%)が最多で、次いで「保育士養成校の授業」(38.6%)となっています。 研修が専門性向上の主要ルートということです。
保育士の精神的サポートやチーム支援も課題として挙がっており、業務量の多さや外部機関からの後方支援不足が現場の負担増につながっています。 こうした状況を改善するには、園内での役割分担の明確化と、月1回でも外部の専門家を招くような仕組みづくりが現実的な一手です。
参考)https://isephp.org/wp-content/uploads/2025/03/0316_02_closing_02_kousinbou0310.pdf
厚生労働省の「保育所保育指針」や子ども家庭庁のインクルーシブ保育推進資料は、実践の根拠を確認するうえで必読です。


