イングランド民謡グリーンスリーブスを保育で活かす方法
グリーンスリーブスは恋愛を描いた大人向けの歌なので、子どもには使えません。
グリーンスリーブスの起源と歴史|イングランド民謡500年の軌跡
グリーンスリーブスの最初の記録は、1580年にロンドンの書籍出版業組合に「レイディ・グリーン・スリーヴスの新北方小曲」として登録されたものです。 エリザベス朝の頃、イングランドとスコットランドの国境付近で生まれたとされますが、正確な起源は現在でも不明のままです。worldfolksong+1
「グリーンスリーブス=ヘンリー8世が作った曲」という伝説は広く流布しています。これは意外ですね。 しかし実際には、ヘンリー8世(1491〜1547年)が崩御した後に広まった詩のスタイルで書かれているため、ヘンリー8世作曲説は成立しないというのが定説です。 保育の場でこの曲を紹介するとき、「500年以上前からヨーロッパで歌われてきた曲」という導入だけで子どもたちの目が輝きます。
16世紀半ばまで口頭伝承で受け継がれ、17世紀にはイングランドで誰もが知っている曲になりました。 リュート用楽譜も17世紀初頭にロンドンで出版されており、単なる民間の口承歌にとどまらず、クラシック音楽の素材としても洗練されてきた経緯があります。つまり「庶民の歌」と「芸術音楽」の両方の顔を持つ、とても珍しい曲ということですね。
グリーンスリーブスの詳しい起源・歌詞・関連音楽については、以下も参考になります。
世界の民謡・童謡「グリーンスリーブス」歌詞・和訳・由来(worldfolksong.com)
グリーンスリーブスの歌詞の意味|「緑の袖」が象徴するもの
「グリーンスリーブス」というタイトルは、英語で「緑の袖(sleeves)」を意味します。 ルネサンス期の服飾では袖は身頃と別に仕立てられ、恋人同士が袖を交換して愛の証とする風習がありました。 つまり「緑の袖を持つ女性」とは、主人公の男性が激しく恋した相手を指しています。worldfolksong+1
緑という色は恋愛において「気まぐれな愛・失恋・移ろいやすい心」を象徴する色です。 草木が季節で色を変えるように、変わりやすい愛を表しているわけです。歌詞全体は「つれない女性に捨てられた男性が、それでも愛し続ける」という片思いの物語で構成されています。worldfolksong+1
保育士として子どもに紹介する際は、難しい恋愛の解釈は不要です。「昔のヨーロッパの人が大切な人を思って作った歌」という説明で十分伝わります。それで大丈夫でしょうか? 歌詞そのものより、美しいメロディと歴史のロマンを切り口にすると、子どもも興味を持ちやすくなります。また、シェイクスピアの喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』(1602年頃)にもこの曲が登場するほど、当時の社会に根付いていたことが分かります。
参考:歌詞の全文・日本語訳・文化的背景について
Wikipediaー「グリーンスリーブス」日本語版(詳細な歌詞・文化的解説あり)
グリーンスリーブスの3拍子と旋法|保育士が知っておきたいリズムの特徴
グリーンスリーブスはスローテンポの3拍子で書かれた曲です。 4拍子が「歩く・行進する」リズムであるのに対し、3拍子は「揺れる・回る」感覚に近く、身体全体で拍を感じるリトミックや表現遊びに向いています。
この曲の旋法には「ドリア旋法版」と「エオリア旋法版」の2種類があります。 ドリア旋法はレ・ファ・ソ・ラ・シ・ラという音列で、現代の短音階とは微妙に異なる独特のひびきを持ちます。この「古めかしいひびき」がグリーンスリーブスの神秘的な雰囲気を生み出しています。意外ですね。 1つの民謡にこれだけの構造的な奥行きがあることを保育士が把握しておくと、子どもに「昔の音楽は今の音楽と少し違う音で作られていたんだよ」と一歩踏み込んだ説明ができます。
リトミックで使う場合は、1拍目に体重をかけて2・3拍目でふわっと軽くなる「ワルツ型の揺れ」を体で表現させると効果的です。これは使えそうです。 3拍子のリズム感は幼児期に身につけさせるほど感覚が定着しやすく、後の楽器演奏や合唱での拍感覚に直結します。まず「身体で感じる」ことが基本です。
保育現場でのグリーンスリーブス活用法|クリスマス行事から音楽活動まで
グリーンスリーブスは保育園・幼稚園のクリスマス行事に直接使えます。 クリスマスキャロル「What Child Is This(御使いうたいて)」は、グリーンスリーブスのメロディにそのまま新しい歌詞をつけた曲で、1865年頃にイギリスの詩人ウィリアム・チャタトン・ディックスが発表した作品が元になっています。 メロディを子どもたちが知っていれば、クリスマスの歌も自然に覚えやすくなります。
参考)グリーンスリーブス 歌詞の意味・和訳 イングランド民謡
音楽活動では、東京書籍の小学6年生音楽教科書に2重奏教材として掲載されており、中学校の器楽教科書ではアルトリコーダーの演奏教材にもなっています。 保育段階では「聴く」「身体で感じる」ところからスタートし、年長クラスなら鍵盤ハーモニカのメロディ演奏や、鈴・カスタネットを使った簡単な合奏に展開できます。
活動の流れとして参考になるのは、次の3ステップです。
- 🎵 聴く(乳児〜2歳):BGMとして流しながら、保育士が身体を揺らして3拍子を体感させる
- 🤸 身体で表現(3〜4歳):1拍目に「ストン」と座り、2・3拍目にふわっと立ち上がるリトミック遊び
- 🎹 演奏・合奏(5〜6歳):鍵盤ハーモニカや鉄琴でメロディを演奏、鈴・タンバリンで伴奏を担当
年齢別にアプローチを変えることで、0歳から年長まで同じ曲を使い続けられる点が効率的です。つまり長期間使い回せる教材ということですね。
グリーンスリーブスの派生作品と独自視点|保育士が語れる「この曲の意外な旅」
グリーンスリーブスのメロディは500年以上の歴史の中で数多くの作品に引用されてきました。 ビートルズが1967年にリリースした「愛こそはすべて(All You Need Is Love)」のエンディングでグリーンスリーブスが演奏されており、世界が注目したテレビ中継でこのメロディが流れたのです。 保育士がこのエピソードを伝えると「あの有名なビートルズが使っていた曲!」と、子どもも保護者も反応しやすくなります。worldfolksong+1
イギリスの作曲家ヴォーン・ウィリアムズは1928年のオペラを元にして「グリーンスリーブスによる幻想曲」を書き、1934年のロンドン初演でヴォーン・ウィリアムズ自身が指揮を行いました。 また1962年のアメリカ映画「西部開拓史(How the West Was Won)」の挿入歌にも転用されており、アカデミー賞3部門受賞作品でこのメロディが使われています。 痛いですね、こんなに有名な使われ方を知らずに素通りしていたとしたら。
保育士が日常の音楽活動でこの「旅のエピソード」を1つ子どもに話すだけで、音楽への興味は格段に広がります。「500年前イングランドで生まれたメロディが、映画にも、ビートルズにも、クリスマスソングにも使われている」という事実は、子どもにとって「音楽はつながっている」という感覚を育てる最高の素材です。
以下は、グリーンスリーブスの派生作品・クリスマスキャロルとしての活用を詳しく解説したページです。


