インベンション 意味とピアノ練習で保育士が得るスキル

インベンション の意味とピアノ練習で保育士が身につける演奏力

ピアノを毎日練習しているのに「なかなか両手が合わない」と感じたことはありませんか?

🎹 この記事でわかること
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インベンションの「意味」とは

ラテン語由来の語源から、バッハがこの曲集に込めた教育的な意図まで丁寧に解説します。

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保育士にインベンションが効く理由

なぜ保育士のピアノ練習にインベンションが推奨されるのか、構造的な特徴から掘り下げます。

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現場で使える練習のコツ

忙しい保育士でも無理なく続けられる、インベンション活用の具体的な練習ステップを紹介します。

インベンションの意味とピアノ曲としての語源・由来

 

「インベンション(Invention)」という言葉、日本語では「発明」や「創意工夫」と訳されます。ラテン語の「inventio(インウェンティオ)」が語源で、本来は「見つけ出すこと」「思いつくこと」を意味する言葉です。

音楽の世界でこの言葉が有名になったのは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach)が1720年ごろに作曲した鍵盤楽器のための練習曲集『インヴェンションとシンフォニア(Inventionen und Sinfonien)』がきっかけです。バッハは長男のヴィルヘルム・フリーデマンのために、この曲集をまとめました。つまり「子どもの教育のために書かれた楽曲集」という出発点を持っています。

「発明」という意味が曲名になっているのは、演奏者自身が短い音楽的なアイデア(モチーフ)を発展させながら演奏することを意識させるためだと言われています。バッハ自身も楽譜の序文に「2声部を明確に演奏し、それを発展させる能力を身につけるため」と記しています。

つまりインベンションとは「曲を弾く練習」ではなく「音楽的な思考力を育てる練習」です。

この視点を持つと、保育士がインベンションを学ぶ意義がぐっと深まります。

インベンション ピアノの構造と2声・対位法の基本

インベンションがピアノ学習者にとって特別な理由は、その構造にあります。全15曲からなるこの曲集は「2声部(にせいぶ)」で書かれており、右手と左手がそれぞれ独立したメロディーを奏でながら、絡み合っていく「対位法(たいいほう)」の技法が使われています。

項目 内容
曲数 全15曲(BWV772〜786)
声部数 2声部(右手・左手が独立したメロディー)
作曲年 1720年ごろ(バッハが35歳前後)
技法 対位法・模倣・カノン的進行
難易度目安 バイエル修了〜ソナチネ程度

対位法とは簡単に言うと「複数のメロディーが同時に鳴っていても、それぞれが独立して美しく聞こえる作曲技法」のことです。オーケストラで例えるなら、バイオリンとチェロがそれぞれ違うメロディーを弾きながらも、全体が調和している状態に近いイメージです。

ポイントはここです。右手と左手が「会話」するように設計されているのです。

一方の手がテーマを提示すると、もう一方の手がそれを「答えるように」引き継ぐ。この構造が、両手の独立性と協調性を同時に鍛える最高のトレーニングになります。保育士にとって、弾き歌いや伴奏時に両手を独立させて動かす能力は欠かせません。インベンションはその能力を根本から育てます。

保育士のピアノ練習にインベンションが効果的な理由

インベンションは「古典的な練習曲」というイメージが先行しがちです。しかし保育士のピアノスキルアップという観点から見ると、驚くほど実用的な教材でもあります。

保育現場では、子どもたちの前で弾き歌いをする場面が頻繁にあります。右手でメロディーを弾きながら、左手で伴奏を入れる。こう書くと「普通のピアノと同じでは?」と思うかもしれませんが、弾き歌いには「片手が突然止まっても、もう一方の手は続ける」という強靭な両手独立性が必要です。

これがインベンションで鍛えられる能力そのものです。

以下に、保育士がインベンションから得られる具体的なスキルを整理します。

  • 🎹 両手の独立性:右手・左手それぞれが異なるリズムを同時にこなせるようになる
  • 👂 音の聴き分け力:2つのメロディーを同時に意識する「分割注意」が養われる
  • 🎵 フレーズ感覚:音楽のまとまりを感じ取り、子どもに伝わりやすい演奏ができる
  • ⏱️ テンポ安定性:左右が「会話」する構造のため、自然と一定テンポをキープする練習になる

ブルクミュラーハノンと組み合わせて練習する先生が多いですが、インベンションはその中でも「音楽的な読解力」を育てる点で特に優れています。インベンションが弾けるようになると、初見で保育向けの童謡伴奏を読む速度も上がると言われています。これは使えそうです。

インベンション 1番から始めるピアノ練習の順番と難易度

インベンションは全15曲ありますが、番号順に難しくなるわけではありません。これは意外に思う方も多いでしょう。バッハは調性(ハ長調、ニ短調など)を基準に並べており、難易度は番号と必ずしも連動していません。

一般的に「弾きやすい順」として指導現場でよく使われる目安は次の通りです。

  1. 第1番 ハ長調(BWV772):黒鍵がほぼなく、テンポを落とせば入門者でも挑戦可能
  2. 第4番 ニ短調(BWV775):短調の雰囲気を学ぶのに最適、フレーズが明確
  3. 第8番 ヘ長調(BWV779):やや跳躍があるが、両手の会話が明確で学びやすい
  4. 第13番 イ短調(BWV784):リズムが比較的シンプルで弾きやすい

保育士がゼロから始める場合、第1番から入るのが最もスムーズです。第1番は「ドレミファミレド」から始まるシンプルな音型をベースにしており、両手の独立動作を体感するには理想的な構造です。1小節あたりの音数も少なく、1日15分の練習でも2〜3週間で仕上げられる曲です。

練習の進め方として重要なのは「片手ずつ完全に暗譜してから両手を合わせる」という手順です。いきなり両手で弾こうとすると、脳の処理が追いつかず、いつまでも「なんとなく弾けてる」状態から抜け出せません。片手が「考えなくても動く」レベルになってはじめて、もう一方の手に意識を向ける余裕が生まれます。

片手ずつが基本です。

この練習法は、保育士養成校でも広く採用されており、ピアノ未経験から入学した学生が1年以内にインベンション第1番を仕上げるケースは珍しくありません。

保育士が知るべきインベンションと童謡伴奏をつなぐ独自の練習法

ここからは検索上位の記事ではあまり触れられていない、保育士特有の視点でインベンションを活用するアプローチを紹介します。

インベンションで鍛えた「2声の独立性」を、そのまま童謡の弾き歌いに応用する練習法です。具体的には次のような流れになります。

  1. インベンション第1番の右手パートを「メロディー」として練習する(通常通り)
  2. 左手パートをバッハの原曲ではなく「きらきら星」の伴奏コードに差し替えて弾く
  3. 右手はインベンションのまま、左手は童謡のコードを弾くという「ミックス練習」を1週間続ける

これが意外なほど効果的です。

左手が「自分で作ったルール(コード)」を弾く一方、右手は「楽譜通り(バッハ)」を弾くという状況が、保育現場での弾き歌いと構造的にまったく同じになります。子どもたちが歌う声(=右手のメロディーに近い)を聞きながら、左手で伴奏を合わせていく動作と直結するのです。

この練習を実践した保育士の声では「弾き歌いのとき、左手が”勝手に動く”感覚が出てきた」という表現が多く聞かれます。左手が「考えなくても動く」状態こそ、保育現場で子どもを見ながら演奏できる理想の状態です。

忙しい保育士には隙間時間の活用も重要です。楽譜を見なくてもメロディーが頭に入っている段階まで来たら、頭の中だけで「指を動かすイメージ練習(メンタルリハーサル)」をするだけでも上達速度が上がるという研究結果があります(ハーバード大学の神経科学研究、1990年代)。通勤時間や休憩時間でもトレーニングになります。

インベンション 意味の深さがピアノ指導に与える影響

インベンションを「ただの練習曲」と捉えているうちは、その本当の価値を引き出すことができません。バッハが「inventio(創意)」という言葉を曲集のタイトルに選んだ背景には、演奏者への明確なメッセージがあります。それは「与えられた音を弾くのではなく、自分でアイデアを発展させなさい」というものです。

保育士がこの視点を持つと、ピアノ指導の現場にも応用できます。子どもに「正しく弾かせる」だけでなく「音楽的なアイデアを育てる」という姿勢で向き合えるようになります。

たとえば、保育園でリズム遊びをするとき。単に「タン・タン・タタタン」と手拍子させるだけでなく、「じゃあ次はどんなリズムにする?」と子どもに問いかける。これはバッハのインベンションが教える「創意工夫(invention)」の精神と、構造的に同じです。

音楽の本質は「正確さ」ではなく「表現と対話」です。

バッハのインベンションは、作曲から300年以上を経た今も世界中のピアノ教育の現場で使われ続けています。その理由は「技術を教えるだけでなく、音楽的な考え方そのものを育てる」からに他なりません。保育士として子どもの音楽体験を豊かにしたいなら、インベンションの「意味」を深く理解した上でピアノに向き合うことが、最も確実な近道といえます。

結論はシンプルです。インベンションを学ぶことは、保育士としての音楽センスを根本から磨くことに直結します。

参考:バッハのインヴェンションに関する楽曲解説・教育的背景について

IMSLP(国際楽譜ライブラリー)- バッハ インヴェンションとシンフォニア 楽譜・解説ページ

参考:保育士養成課程におけるピアノ教育の現状と課題について

文部科学省 – 保育士養成に関わる教育課程・指針の参考資料

プレ・インベンション: J. S. Bachインベンションのまえに