表情筋と歌と発声
表情筋の歌の発声で口輪筋と口角
保育園で歌うとき、声量を上げる前に見直したいのが「口の形」です。表情筋の中でも口輪筋(唇の周り)と頬筋(頬の筋肉)が硬いと、口が縦にも横にも動きにくくなり、母音がつぶれて“何を歌っているか”が伝わりにくくなります。表情筋を鍛えると、滑舌が良くなるだけでなく、口角が上がり声のトーンが明るくなる、という整理は声の訓練でも基本として語られています。発声のウォーミングアップとしても有効です。
ここで大事なのは「筋トレ感」より「可動域」です。保育園の現場は、子どもが見て真似し、同じ動きを再現できるかが成果に直結します。保育者が“口だけ小さく動かして”歌うと、子どもも小さく動かし、結果として音程以前に言葉が不明瞭になりがちです。まずは、表情筋を大きく動かして「口の輪郭を見せる」ことが、実は発声指導の第一歩になります。
参考)https://seizan.ac.jp/wp_new/wp-content/uploads/2021/05/vol13_y01.pdf
おすすめの練習はシンプルです(鏡があると効率が上がります)。声優・ナレーター向けの基礎練習としても紹介される「い」「う」運動は、口輪筋・口唇筋を大きく使うので、歌の母音の形づくりに直結します。
参考)子供におすすめのボーカル練習方法とは?ボイトレのメリットと独…
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「い」:口角を左右へ引き、頬も一緒に上げる(ニコッの形を誇張)
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「う」:唇を前へ突き出し、口の“輪”をはっきり作る
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10回以上を目安に、ゆっくり大きく(速さより形の正確さ)
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疲れたら中止し、翌日に回す(声より顔が先に疲れるのは正常)
「意外なコツ」として、歌う前に“無音で口の形だけ”を作ると、喉を使わずに表情筋だけを先に起こせます。声が出にくい朝や、連続保育で喉が疲れている日ほど、先に表情筋を動かす価値が上がります。
表情筋の歌の発声で呼吸と無理のない響き
保育園の歌で起こりやすい失敗は、「元気よく=大きい声」と短絡して、喉に力が入りすぎることです。幼児の歌唱指導に関する考察では、“怒鳴るように歌ってしまう”状況や、「元気な声」を子どもが“怒鳴る声”だと受け取ってしまう可能性が指摘され、周囲の声やピアノの音を聞きながら歌うなどの声かけが提案されています。
この文脈から逆算すると、保育者側は「子どもが怒鳴りにくいモデル」を先に提示する必要があります。
そのモデル作りに効くのが、呼吸と表情筋の“順番”です。呼吸を整えずに表情だけ動かしても、息が浅いと声がすぐ枯れます。一方で、呼吸だけを意識しても、口が動かないと響きが前に出ません。ポイントは、①息→②口→③声の順に、体を分けて起動することです(この順番にすると、喉が最後まで温存されます)。
実践手順(保育の合間でもやりやすい形):
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①鼻から吸って、口は閉じたまま2秒止める(肩が上がらない範囲)
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②「う」の形で、息だけを細く長く吐く(声は出さない)
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③同じ息の量で「うー」と小さく声を乗せる(音量は3割)
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④最後に、歌詞の母音だけで1フレーズ歌う(例:あ・い・う・え・おだけ)
学校教育の音楽では「呼吸及び発音の仕方を工夫して,自然で無理のない,響きのある歌い方で歌う」という観点が示されています。youtube
保育園は学校とは違いますが、“自然で無理のない響き”を目標にするのは、喉の負担管理という意味でも合理的です。
参考リンク(無理のない響き・呼吸と発音を工夫するという考え方の根拠)
表情筋の歌の発声で滑舌とあいうえお
子どもが歌詞を覚える速度は、音程より「言葉が聞き取れるか」に左右されます。滑舌は舌だけの問題と思われがちですが、表情筋(口輪筋・頬筋)も“発音のフレーム”として重要で、表情筋を鍛えると滑舌が良くなり、声のトーンも明るくなると説明されています。
つまり、滑舌改善は「舌の精密動作」より先に「口の外枠」を整えるほうが近道になることがあります。
保育園で実装しやすいのは、「あいうえお」を“速く言う”のではなく、“口の形を大きく作る”運用です。子ども向けの練習方法としても、「あいうえお」の口の形を繰り返すことや、「あ・い・え」は口角を上げるといった方向性が紹介されています。
ここでは大人(保育者)向けに、声帯に負担をかけにくいアレンジを加えます。
おすすめの「あいうえお」設計(歌に直結させる):
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1セット目:無声音(声を出さず口だけ)で「あ・い・う・え・お」
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2セット目:ささやき声で「あ・い・う・え・お」(息漏れが多いと喉が乾くので短く)
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3セット目:通常話声で「あ・い・う・え・お」
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4セット目:歌の音程に合わせて母音だけで「あ・い・う・え・お」(1音ずつ)
“あまり知られていない意外な点”として、子どもが「大声」を出しているとき、実は「口の開き」が小さいケースが少なくありません。口が十分に開かないまま音量だけ上げると、声は前に飛ばず、喉の圧力だけが増えて枯れやすくなります。だからこそ、保育者は声量の前に「大きい口」を見せ、子どもが“音量ではなく口の形”で上達できる導線を作るのが安全です。
参考リンク(表情筋トレーニングが滑舌・声のトーンに関わる点、具体的な「い」「う」運動)
ヒューマンアカデミー:表情筋トレーニング(口輪筋/滑舌/い・う運動)
表情筋の歌の発声で子どもの声と模倣
保育園の歌は、保育者が「上手に歌う」より、子どもが「真似して気持ちよく出せる」ほうが成果になります。幼児期の歌唱指導の考察でも、子どもが真似したくなる保育者の表情豊かな歌声が重要だとされ、指導というより援助の意識が大切と述べられています。
ここでいう“表情豊か”は演技力ではなく、表情筋が実際に動いていること(口角、頬、眉、目の開閉)も含みます。
子どもが模倣しやすい歌い方には、いくつかの共通点があります。
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子どもが見て分かる:口の形が大きい、母音がはっきりしている
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子どもが真似して楽:低すぎない、強すぎない、一定のテンポ
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子どもが安心する:顔が怖くない、表情が柔らかい(緊張が減る)
さらに、声のボリューム調整は子どもにとって発達上むずかしい場合があり、感情が声に直結しやすいことが説明されています。
参考)子どもの声のボリューム調整が難しいのはなぜ?理由と対応方法、…
この前提に立つと、「小さい声で!」と結果だけを命令するより、「口は大きく、声は小さく」など、身体の具体的な操作に置き換えたほうが成功率が上がります。
現場で使える声かけ例(そのまま使える短文):
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「口はライオン、声はねずみ」:口を大きく開くが、音量は抑える
- 「お友だちの声も聞こえる声」:周囲の声が聞こえる=怒鳴っていない目安(考察でも“周りの声を聞きながら”が示唆)
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「先生の口を見てね」:聴覚より視覚で模倣スイッチを入れる
表情筋の歌の発声で歩きながら練習
検索上位では見落とされがちですが、保育者向けには「その場で足踏みしながら、あるいは歩きながら歌わせると声が出やすくなる」という提案があります。
この視点は、表情筋や口の形だけに閉じず、“体のリズム”から発声を助けるので、保育園の環境と相性が良いのが特徴です。
なぜ歩行が効くのかを、現場向けにかみ砕くとこうなります。歩くと、呼吸が自然にリズム化され、上半身が固まりにくくなります。結果として、喉で押し出すのではなく、息に声が乗りやすくなります。足踏みならスペースも要らず、子どもにも遊びとして提示できます。
参考)https://www.narasaho-c.ac.jp/assets/pdf/college_info/research-bulletin/25-wada.pdf
具体的なメニュー(保育者の練習+子どもへの展開):
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保育者の仕込み(朝の10秒):足踏みしながら、母音だけでワンフレーズ(例:「うーあーうー」)
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子どもへの導入(活動の導線):行進しながらサビだけ、止まったら小さい声、歩いたら中くらいの声
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声の事故防止:息が切れたら即ストップし、水分、呼吸を戻す(無理に続けない)
この方法の“意外なメリット”は、表情筋の動きも引き出しやすい点です。体が固い状態で口だけ動かすと、顔がこわばる人がいますが、歩行で全身が動くと、表情も連動して柔らかくなり、結果として歌の伝わり方が変わります。

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