表現活動保育の歌あそび手遊びリズム

表現活動 保育 歌あそび

表現活動としての歌あそびの全体像
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ねらいを先に決める

「歌をうたう」より先に、感性・言葉・身体・関わりのどこを育てたいかを明確にします。

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短い型で安心をつくる

手遊びや繰り返しフレーズで見通しを作り、子どもが自分から入りやすい入口を用意します。

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生活へつなげる

朝の支度・片付け・移動・行事など、園生活の場面に歌あそびを自然に埋め込みます。

表現活動の保育指針のねらいと歌あそび

 

保育における表現は、「感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性の芽生えを培う」という目標とつながっています。特に保育所保育指針の領域「表現」では、音楽・リズム・身体の動きを楽しむことや、歌を歌ったり簡単な手遊びを楽しんだりすることが内容として示されています。つまり、歌あそびは“音楽の時間”というより、子どもが日々の経験を表し直すための土台として位置づけると整理しやすくなります。

歌あそびを「導入」「つなぎ」「まとめ」に使うだけだと、子どもは“先生が始めたから合わせる”になりがちです。表現活動として深めるなら、子どもの側に起こった感情や発見(うれしい・驚いた・怖い・もっとやりたい)を、歌やリズムに“変換できる”ようにする視点が必要です。たとえば散歩で見つけたどんぐりを、持ち帰ってから「コロコロ」「ポトン」などの擬音でリズム化し、短い替え歌にしてみるだけで、環境→言葉→表現へと経験がつながります。

参考:領域「表現」のねらい・内容(歌、リズム、手遊び等の位置づけ)

・保育所保育指針(◆平成29年03月31日厚生労働省告示第117号)

表現活動の歌あそびと手遊びのねらい

手遊び歌は、短時間で始めやすく、手指の動き・模倣・言葉のリズムをまとめて扱えるため、クラス全体の“同じ場”をつくるのに向いています。ねらいは「手ぶり身ぶりを真似する楽しさ」「言葉のリズムの面白さ」「数やストーリーへの親しみ」などに置け、結果として集中や一体感にもつながりやすいです。ここを押さえておくと、手遊びを“とりあえずのネタ”から、ねらいのある表現活動に引き上げられます。

実践では、ねらいを1つに絞るほど活動が締まります。たとえば「語彙」をねらう日は、歌詞のキーワードをはっきり提示し、同じ言葉を別の場面でも使えるようにします(例:「大きい・小さい」「はやい・おそい」「ふわふわ・かたい」)。「身体」をねらう日は、手だけでなく肘・肩・体幹まで動きが広がるようにし、最後は“止まる”“ゆっくり”など抑制も入れると運動の質が上がります。

参考:手遊び歌のねらい(模倣、言葉のリズム、数・ストーリー等)

保育におすすめの手遊び歌53選|ねらいと盛り上げ方のポイント…

表現活動の歌あそびの年齢別

年齢別に考えると、同じ歌でも「求める姿」が変わります。0〜1歳は“聴く・揺れる・声に反応する”が中心で、保育者の歌いかけと、子どもの発声(喃語・声の高さ・息づかい)を受け止めること自体が表現になります。保育所保育指針でも、乳児期は「歌やリズムに合わせて手足や体を動かして楽しむ」ことが内容として示されており、正確さより心地よさ・安心感を優先すると筋が通ります。

2歳前後は模倣が伸び、手遊びが“再現できる楽しさ”に変わってきます。この時期は、同じ歌を繰り返す価値が高い一方、子どもが勝手に変え始める(歌詞を言い換える、手の形を別のものにする)ことも増えます。そこを「違うよ」と直すより、「そうきたか」と拾ってクラスで共有すると、表現活動が“与えられるもの”から“みんなで育つもの”に変わります。

3〜5歳は、歌あそびが「役割」「順番」「友達との調整」へ広がります。たとえば輪唱や掛け合い、ペアで動きを作る歌あそびは、表現だけでなく協同性・言葉のやり取り・見通しを含みます。ここで大切なのは、完成度を上げるより「試行錯誤して表現を楽しむ」「やり遂げる充実感に気づく」方向に援助することです(保育所保育指針の“内容の取扱い”とも整合します)。

参考:保育所保育指針(乳児期の歌やリズム、領域「表現」の内容)

・保育所保育指針(◆平成29年03月31日厚生労働省告示第117号)

表現活動の歌あそびの環境と導入

歌あそびは“音”だけで成立するため、準備が少ない反面、環境の影響を強く受けます。まず見直したいのは、子どもが「いつ始まるか」「どこに集まればよいか」を理解できる合図です。毎回同じ短いフレーズ(例えば“始まりの歌”)を固定すると、子どもは活動の見通しを持て、安心して参加しやすくなります。

導入のコツは、最初の10秒を「子どもの参加しやすさ」に全振りすることです。いきなり速いテンポや大きい声で押すのではなく、①保育者が小さく歌い出す→②子どもの視線が集まる→③手遊びの最小動作から入る、の順にすると失敗が減ります。研究の視点でも、手遊び歌は“話すような声”に近い歌い方が子どもの安心や聞き取りやすさにつながる、という指摘があります(いわゆる朗々とした歌唱より、日常の語り口に近い歌唱が適するという考え方)。

また、意外と見落としやすいのが「音量」より「子音の立て方」です。手遊び歌はテンポが速くなりやすいので、子音を強くしすぎると硬い印象になり、子どもが“追い立てられる”感覚になることがあります。言葉が届く範囲で、息の流れを止めない発声(語りかけの延長)を意識すると、クラス全体が落ち着いてそろいやすくなります。

参考:手遊び歌の歌い方(話す声に近い歌唱が適する等の考察)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjomep/8/1/8_94/_pdf

表現活動の歌あそびの独自視点

歌あそびの“独自視点”として提案したいのが、「歌を教える」から「音を採集する」への転換です。園の中には、すでに歌の素材が大量にあります。たとえば、雨の日の傘のしずく、給食室の音、廊下の足音、積み木が崩れる音、窓の風の音などです。これらを子どもと一緒に“聞いて、まねして、並べる”だけで、即興の歌あそび(音あそび)が立ち上がります。

進め方はシンプルです。

  • ① 今日の「音」を3つ決める(子どもが選ぶ)
  • ② その音を口でまねる(擬音でもOK)
  • ③ 3つを順番に並べて“リズム”にする
  • ④ 手や体の動きを1つ足す(手拍子、膝、足踏みなど)
  • ⑤ 最後に「この音はどこで聞いた?」と生活へ戻す

この方法の良さは、正解がないことです。音程が合っているか、歌詞を覚えたか、という評価から離れて、子どもが自分の体験を素材にして表現できます。さらに、同じ“音の並び”を別の日にもう一度やると、「昨日と同じ」「今日はこうしたい」と比較や工夫が生まれ、表現が積み重なります。保育所保育指針が大切にする「子どもが試行錯誤しながら様々な表現を楽しむ」「達成感に気づく」援助ともつながります。

最後に、歌あそびを表現活動として続けるコツを、現場用のチェックとしてまとめます。

✅ ねらいは1つに絞れているか(言葉/身体/関わり/イメージ)

✅ 子どもが変えられる余白があるか(替え歌、動き、順番)

✅ 生活に戻れる問いがあるか(いつの気持ち?どこで見た?)

✅ “うまさ”より“やってみた”を拾えているか

✅ 終わり方が決まっているか(短い締めの歌や合図)

この5つがそろうと、歌あそびは行事のための練習ではなく、日々の保育の中で育つ表現活動になっていきます。


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