保育士国家試験の合格率と難易度・攻略法を徹底解説
ニコイチ科目は片方だけ合格しても、翌年ゼロからやり直しになります。
保育士国家試験の合格率の推移と最新データ
保育士国家試験の合格率は、2024年度(令和6年度)で26.3%という結果でした。受験者数は58,767人、合格者数は15,475人で、受験者のおよそ4人に1人しか合格できていません。決して簡単な試験ではないということが、まずこの数字から伝わるでしょう。
過去5年間の推移を見ると、合格率は19.9%〜29.9%の間で変動しており、平均はおよそ25%で安定しています。極端に高い年や低い年があるものの、おおむね「4〜5人に1人が合格する水準」と考えておくと現実的です。
| 実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2024年(令和6年) | 58,767人 | 15,475人 | 26.3% |
| 2023年(令和5年) | 66,625人 | 17,955人 | 26.9% |
| 2022年(令和4年) | 79,378人 | 23,758人 | 29.9% |
| 2021年(令和3年) | 83,175人 | 16,600人 | 19.9% |
| 2020年(令和2年) | 44,914人 | 10,890人 | 24.2% |
他の医療・福祉系国家資格と比較すると、社会福祉士の合格率が約56.3%、介護福祉士が約78.3%(いずれも2025年実施)であることを踏まえると、保育士試験の難易度の高さがよくわかります。つまり、他の福祉系資格よりも難しい部類に入ります。
また、前期(4月)と後期(10月)で年2回実施されますが、合格率にほぼ差はありません。2023年度のデータを見ると、前期が28.0%、後期が26.3%とわずかな差です。前期の方がやや高い傾向はありますが、後期が極端に不利というわけでもありません。自分の学習進度に合わせて選んで問題なし、が原則です。
参考:こども家庭庁「保育士試験の実施状況(令和6年度)」
保育士国家試験の合格率が低い理由と9科目の壁
合格率が約25%にとどまる背景には、試験の構造的な難しさがあります。大きな要因は3つあり、いずれも「1科目でもコケたら終わり」という厳しさと直結しています。
① 9科目すべてで60%以上が必要
保育士試験の筆記試験は、以下の9科目で構成されます。
- 保育原理
- 教育原理
- 社会的養護
- 子ども家庭福祉
- 社会福祉
- 保育の心理学
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
各科目で100点満点中60点以上を取らなければ合格になりません。得意科目で90点を取っても、苦手科目が1つでも59点以下なら不合格です。科目間で点数を補い合うことができない、完全な「足切り方式」になっています。これが合格率を下げている最大の理由です。
② 筆記・実技の二段階構成
筆記試験に合格した人だけが実技試験に進めます。筆記で全科目をクリアしても、実技で落ちてしまえば資格は取得できません。実技試験の合格率は比較的高い傾向にありますが、あくまで最後まで気が抜けない構造になっています。
③ 学習範囲が広大
法律・制度・心理学・栄養学・音楽理論など、9科目にわたって全く異なる分野の知識が求められます。「保育実習理論」では音楽記号やコードの知識まで問われるため、保育に関係しない勉強が必要になる場面もあります。働きながら受験する社会人にとっては、この広い学習範囲を「こなす時間を確保すること」自体がチャレンジです。
参考:一般社団法人全国保育士養成協議会「試験科目・合格基準」
保育士国家試験で最も落とされる「ニコイチ科目」の攻略法
保育士国家試験の中で、最も受験者を苦しめる科目が「教育原理」と「社会的養護」のセットです。この2科目は「ニコイチ科目」と呼ばれており、その仕組みを知らないまま受験すると大きな痛手を食います。
仕組みはこうです。通常の科目は20問出題され100点満点ですが、ニコイチ科目は各10問で各50点満点です。そして合格するには、同じ試験回で2科目とも30点以上(60%以上)を取ることが条件となっています。片方だけ30点以上を取っても合格にはなりません。
つまり、教育原理が満点でも社会的養護が29点なら、どちらも不合格扱いになるということです。厳しいですね。
さらに注意が必要なのが「問題数が少ない」という点です。10問中4問まで間違えると不合格になります。問題1問あたりの重みが、通常科目の2倍になっている計算です。「なんとなく勉強してきた」という状態では、確率論的に突破が難しくなります。
ニコイチ科目を攻略する際は、2科目をセットで学習スケジュールに組み込み、模擬試験でも「両方同時に30点超えを達成できているか」を確認することが基本です。どちらか一方に自信があっても、もう一方を後回しにするのは危険と覚えておいてください。
参考:スタディング保育士講座「保育士試験の中でも難しい科目」
保育士国家試験に合格するための勉強時間と効率的な学習計画
保育士国家試験に合格するために必要な勉強時間は、一般的に130〜180時間が目安とされています。1日1時間の学習なら約4〜6カ月、1日2時間なら約2〜3カ月で到達できる計算です。
科目別の目安(合計130時間の場合)は以下のとおりです。
| 科目名 | 勉強時間の目安 |
|---|---|
| 保育の心理学 | 16時間 |
| 保育原理 | 20時間 |
| 子ども家庭福祉 | 13時間 |
| 社会福祉 | 10時間 |
| 教育原理 | 14時間 |
| 社会的養護 | 13時間 |
| 子どもの保健 | 16時間 |
| 子どもの食と栄養 | 16時間 |
| 保育実習理論 | 12時間 |
ただし、これはあくまで目安です。福祉系の知識をすでに持っている方はもっと少ない時間で済む一方、全くの未経験からスタートする場合は200時間以上かかることもあります。
学習効率を高めるうえで重要なのが、インプットとアウトプットのバランスです。参考書を読んだだけでは知識は定着しにくく、過去問で実際に「自分が答えを出せるか」を確認するアウトプットの工程が不可欠です。間違えた問題は解説を読み、そこで改めてテキストに戻って理解を深める、この繰り返しが合格への最短ルートになります。
仕事や育児をしながら勉強する方にとって課題になるのが、学習習慣の維持です。まとまった時間が取れない日は、通勤時間や休憩時間の「スキマ10分」を活用するのが現実的です。スマートフォンで過去問アプリを使うだけでも、積み重ねれば大きな差になります。
学習計画を立てる際は、試験日から逆算して「週何時間勉強できるか」を具体的に設定し、そのうえで科目ごとの優先度を決めましょう。苦手科目こそ早めに着手することが、全科目を60%以上に揃えるうえで重要です。
保育士国家試験の合格率を上げる「科目合格制度」と独自戦略
保育士国家試験には、一般にはあまり知られていない重要な制度があります。それが「科目合格制度」です。一度の試験で全科目合格しなくても、合格した科目の試験は3年間免除されます。つまり、1回で全科目合格する必要は全くありません。
たとえば、1回目の試験で9科目中6科目に合格したとします。残り3科目は2回目以降に受験することができ、合格済みの6科目は改めて受験しなくていいわけです。これを逆算すると、「1年目は得意科目をまとめて通過し、2年目に苦手科目を重点攻略する」という分散戦略が成立します。
この制度が大きな意味を持つのは、受験に合格した科目が失効する前に全科目を揃えることが条件である点です。3年間が有効期限のため、「1年目・2年目でそれぞれ一部ずつ合格し、3年目で残りを揃える」といった計画も理論上は可能です。ただし、3年目に失効が重なると再受験が必要になるため、スケジュール管理には注意が必要です。
また、一発合格率はわずか15%というデータ(厚生労働省・2018年度)があります。合格者の中で最も多いのは「2回目で合格」した方で32.9%、次いで「3回目」が22.1%という分布です。複数回受験が当たり前の試験であるとも言えます。
| 受験回数 | 合格者の割合 |
|---|---|
| 初回(1回目) | 15.0% |
| 2回目 | 32.9% |
| 3回目 | 22.1% |
| 4回目 | 13.0% |
| 5回目 | 6.6% |
| 6回目以上 | 10.1% |
「一発合格できなかった=失敗」ではありません。合格者の85%は2回以上受験しているという事実は、多くの受験者にとって心強い情報です。科目合格制度を活用し、自分のペースで着実に合格を積み重ねる戦略こそが、保育士試験においては実は王道と言えます。
参考:厚生労働省「保育士試験合格者の就職状況等に関する調査研究報告書」

