悲愴ソナタ 第2楽章 楽譜の選び方・入手法・弾き方ガイド
「第2楽章だけ弾けばいい」と思っているあなた、実はその判断が練習時間を3倍以上ムダにしています。
悲愴ソナタ 第2楽章の楽譜が無料で手に入る主なサービス
ベートーヴェンは1827年に亡くなっており、著作権の保護期間をはるかに超えているため、原典楽譜はパブリックドメイン(著作権消滅)となっています。つまり、原曲の楽譜は合法的に無料でダウンロードできるのです。これを知らずに毎回楽譜を購入している方は、知らないうちに数千円単位の出費を重ねています。
代表的な無料入手先をまとめると、以下の通りです。
- 🌐 IMSLP(国際楽譜図書館プロジェクト):1862年版ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社の原典楽譜など複数版が無料公開。PDFで全楽章まとめてダウンロード可能。
- 🎵 MuseScore:有志が作成した編曲楽譜が多数。初級向けから中級向けまで難易度別に検索できる。
- 📄 piadoor.com:第2楽章のみ特化。オリジナル・ドレミ付き・全指番号・テクニック版など複数形式で無料公開。
- 🖨️ pianoclassics.net:「クラシックピアノ名曲110」として悲愴ソナタを無料公開。コンビニ印刷にも対応。
注意が必要なのは、楽譜の「編曲」部分です。原典楽譜はパブリックドメインですが、ある出版社が独自に指番号・強弱記号・ペダル指示などを加えた「校訂版」は、その校訂作業自体に著作権が発生するケースがあります。無料で配布されている楽譜が「原典」か「校訂版」かを確認してから使うことが基本です。
また、ヤマハが運営する「ぷりんと楽譜」では、上級者向けの正確な楽譜を1曲495円(税込)程度で購入できます。収益を得るための発表会や、精度の高い演奏を目指す場合は有料楽譜を検討する価値があります。
参考:ヤマハぷりんと楽譜 – 悲愴ソナタ第2楽章
ヤマハ「ぷりんと楽譜」での悲愴ソナタ第2楽章の販売ページ。上級向け楽譜の内容・価格確認に使えます。
悲愴ソナタ 第2楽章の難易度と楽譜が読みにくい理由
「静かな曲だから簡単そう」と感じた方は多いはずです。これが落とし穴です。
全音ピアノピースでの難易度分類は「D(中級上)」ですが、これは第1楽章から第3楽章全体への評価で、最も技術的に難しい第1楽章を基準にした数字です。第2楽章だけに着目すると、ツェルニー30番練習曲に取り組んでいるレベルであれば一通り音を追えます。ブルグミュラー25の練習曲を修了した程度からでも挑戦できます。
ではなぜ楽譜が難しく見えるのかというと、「ゆっくりな曲ほど楽譜が真っ黒になる」という原則があるからです。テンポが遅いので、その時間を埋めるために32分音符・装飾音符・ターン記号などの細かい音符がびっしり並びます。A4用紙1枚が細かい音符で埋め尽くされる感覚で、視覚的な圧迫感が大きいのです。
この曲は全73小節で、ロンド形式(ABACAという繰り返し構造)で書かれています。
- 🅰️ A(主題):1〜16小節 / 変イ長調の美しい主旋律
- 🅱️ B(第1エピソード):17〜28小節 / 装飾音・ターンが集中する難所
- 🅰️ A(主題再現):29〜36小節
- 🅾️ C(第2エピソード):37〜50小節 / pp〜mfの対比が大きい
- 🅰️ A+コーダ:51〜73小節
ロンド形式ということは、主題(A)が繰り返し登場するということです。楽譜全体の約半分はAの主題の反復になるため、「Aセクションさえ仕上げれば曲の骨格がつかめる」と理解しておくと学習計画が立てやすくなります。
楽譜購入や練習計画を立てる前に、まずこの構成を確認しましょう。IMSLPで楽譜を見ながら73小節を5つのブロックに分けてメモするだけで、譜読みの効率が大幅に変わります。
参考:悲愴ソナタ 第2楽章 演奏完全ガイド(小節別解説)
各小節ごとの詳細な演奏ヒント・ペダリング・声部分けの方法を解説。楽譜を持ちながら読み進めると非常に役立ちます。
悲愴ソナタ 第2楽章の楽譜を読む際に必ず押さえるべき弾き方のコツ
楽譜の音が追えるようになったからといって、それで「弾けた」とは言えません。この曲の本当の難しさは「4つの声部を同時に歌わせる」ことにあります。
第2楽章の冒頭には「Adagio cantabile(ゆるやかに、歌うように)」という指示があります。単語の意味を確認すると、Adagioは速度記号で「ゆるやかに」、cantabileは発想記号で「歌うように」という意味です。つまりベートーヴェンは楽譜に2種類の異なる指示を同時に書き込んでいます。
冒頭の主題部分(1〜16小節)は、次の3つの役割が1つの楽譜に重なっています。
内声の16分音符はあくまでサポート役です。つまり、内声は「大きく弾いてはいけない」のが原則です。鍵盤から指を大きく上げずに、鍵盤の近くからそっと打鍵することで音色が均一に揃います。この技術を意識せずに練習していると、内声ばかり目立つ不自然な演奏になってしまいます。
テンポについても誤解が生まれやすいポイントがあります。情緒たっぷりに弾こうとして30bpm以下になると、音楽が間延びして眠くなる演奏になります。おすすめは「実際に声に出して歌ってみて、息継ぎが自然に入るテンポを見つける」方法です。声で歌えるテンポが、ピアノでcantabileできるテンポと一致します。目安としては♩(4分音符)=70程度が出発点になります。
難しい箇所が集中するのは17〜28小節(Bセクション)です。特に20〜22小節にはターン記号と装飾音符が連続して登場します。
- ⚠️ ターン(20〜21小節):「5連符」で弾くのがスタンダード。4音に均等割りにすると機械的でモタつく。
- ⚠️ 装飾音(22小節):まず装飾音を外して骨格だけ弾き、拍の感覚を体に入れてから戻す。
装飾音を外した練習は「スケルトン練習」とも呼ばれ、拍感が崩れやすい箇所に対して非常に効果的です。楽譜に赤ペンで「1拍目」「2拍目」と拍頭の位置を書き込んでから練習すると、さらに理解が深まります。
参考:悲愴(第二楽章)の弾き方コツと難易度解説
cantabileのテンポの見つけ方・声部分けの練習法を具体的に解説。中級者向けの解説として非常に参考になります。
悲愴ソナタ 第2楽章の楽譜で見落とされやすい「スタッカート」の誤解
「スタッカートは音を切る記号」と思っているなら、この曲で大きな誤解を起こす可能性があります。
第2楽章の7小節目・8小節目には「スラースタッカート(スラーとスタッカートが組み合わさった記号)」が登場します。一般的にスタッカートは「音を短く切る」記号として認識されていますが、作曲家がスタッカートを使う理由は「音を切りたい」だけではなく、「軽い音色で表現したい」という意図を含む場合があります。
この箇所でのスラースタッカートの正しい解釈は「ダンパーペダルで音はつなぎつつ、手のタッチを軽くする」というものです。音響的には音が続いているが、タッチの重さを減らすことで軽い質感を出す、という二重の処理が求められます。
この解釈は楽譜だけを読んでいると気づきにくいポイントです。楽譜の記号をそのまま「音を切る」と解釈して練習を進めると、演奏全体のレガートな流れが途切れ、曲の雰囲気が壊れてしまいます。意外なことですね。
もう一点、楽譜を読むときに注意すべき記号として「rf(リンフォルツァンド)」があります。コーダ部分(70〜72小節)に3回登場しますが、これは「p(弱く)の世界の中でのrf」です。決して「ここは強く弾く」という意味ではありません。pp〜pの音量レンジの中で、相対的に少しだけ際立たせる程度にとどめましょう。
楽譜の強弱記号を正しく理解するために参考になる知識として、ピアノの音量レベルを「1〜10」のスケールに置き換えて考える方法があります。pp(ピアニッシモ)を1、ff(フォルティッシモ)を10とすれば、このコーダ部分はppレベルの「1」の中でのrf、つまり「2」程度が適切という感覚です。数値で整理すると迷いにくくなります。
参考:悲愴ソナタ 第2楽章 演奏完全ガイド(小節別解説)
スラースタッカートの解釈・rfの扱い・ペダリングの細部まで、全73小節を網羅した詳細ガイドです。
悲愴ソナタ 第2楽章の楽譜から「三大ソナタ」の意外な事実を知る
「悲愴は三大ソナタの中で最も難しい」と思っていませんか。実は難易度的には三大ソナタの中で一番取り組みやすい位置にあります。
ベートーヴェンの「三大ピアノソナタ」とは「悲愴(Op.13)」「月光(Op.27-2)」「熱情(Op.57)」の3曲を指します。制作年順に並べると「悲愴(1798〜99年)→月光(1801年)→熱情(1803〜04年)」と、作曲活動の初期・中期・中期後半にそれぞれ位置します。つまり悲愴は三大ソナタの中で最も初期の作品です。
三大ソナタの難易度を全音ピアノピース基準で比較すると下記のようになります。
| 曲名 | 作品番号 | 全音難易度 | 作曲年 |
|---|---|---|---|
| 悲愴(第1〜3楽章) | Op.13 | D(中級上) | 1798〜99年 |
| 月光(全楽章) | Op.27-2 | D〜E(中級上〜上級) | 1801年 |
| 熱情(全楽章) | Op.57 | F(上級) | 1803〜04年 |
悲愴の第2楽章がこれほどまでに広く知られるようになった背景には、ベートーヴェンが意図的に「楽章の序列を逆転させた」という事実があります。当時のソナタ形式では第1楽章冒頭に最も印象的な主題を置くのが慣習でした。ベートーヴェンはその慣習を破り、第1楽章を序奏(イントロ)として機能させ、第2楽章に最も心に刻まれるメロディを配置したのです。
この革新的な構成ゆえに「悲愴といえば第2楽章」というイメージが定着しました。2006年に放映されたフジテレビ系ドラマ「のだめカンタービレ」の挿入曲として使われたことも、現代の知名度を大きく後押しした要因の一つです。
またビリー・ジョエルの1983年の楽曲「This Night」は、第2楽章のメロディを直接引用した作品として知られています。クラシックの枠を超えてポップミュージックにまで影響を与えた楽曲の楽譜を手元に置いて弾くことは、音楽の歴史的なつながりを実感できる体験にもなります。
参考:ベートーヴェン「悲愴ソナタ」解説と楽譜
三大ソナタの位置づけ・作曲背景・名盤情報・無料楽譜リンクがまとめて掲載されています。

ベートーヴェン:3大ピアノ・ソナタ集 《月光》《悲愴》《熱情》 (SHM-CD)

