平井康三郎と保育園と童謡
平井康三郎の童謡ととんぼのめがねの基本
平井康三郎(1910-2002)は日本の作曲家で、童謡では「雛祭」「スキー」「とんぼのめがね」などが代表作として挙げられます。
保育園の現場で扱うなら、まず「とんぼのめがね」を“歌”としてだけでなく、“観察→ことば→動き”に展開できる教材と捉えると設計が楽になります。
この曲は、子どもが身近に触れられる自然(空・太陽・赤とんぼ等)のイメージと、繰り返しの言葉が強みで、導入時に説明を増やしすぎなくても成立しやすいタイプです。
保育士向けの押さえどころは、次の3点です。
- 「めがね」という比喩は、子どもが理解しやすい“見立て”で、発達段階に合いやすい。
- 短いフレーズの反復が多いので、集団でも“入り口”を作りやすい。
- 歌いながら視線を上に向けたり、腕で飛ぶ動きを作ったりすると、自然に声が前へ出やすい。
また、曲の背景を一言だけ添えると、保護者にも説明しやすくなります。
「とんぼのめがね」はNHKラジオで初放送が行われた記録が、童謡研究系の資料として提示されています。
“昔から歌われた歌=古い”ではなく、“電波に乗って広がり、園児の歌としても扱われた”という筋道で語れると、行事の歌とは違う価値が伝わります。
参考:平井康三郎の略歴や代表作(童謡含む)の確認
平井康三郎のひな祭と保育園の行事
「ひな祭(雛祭)」は、国民学校初等科の教科書『うたのほん 下』(昭和16年発行)に掲載された、という整理がされています。
この情報は、行事の導入で「いつ頃から“子どもの歌”として整えられてきたか」を語る材料になり、行事の“説明”が長くなりすぎるのを防ぎます。
歌詞自体がひな人形の段飾り(内裏雛、五人囃子、行燈など)を追っているため、制作・飾り付け・絵本読み聞かせと結びつけると理解が深まります。
保育園での実践アイデアは、歌唱指導よりも「言葉の体験」に軸を置くと回りやすいです。
- 導入:ひな人形の写真(またはカード)を見せ、歌詞に出る語を先に拾う。
- 展開:歌いながら“上の段/下の段”を指差しで追い、視覚と聴覚をつなぐ。
- まとめ:制作物(紙皿雛、台紙の段飾り)と歌を結び、発表(ミニ鑑賞会)にする。
“意外に効く”小技として、あえてフレーズの切れ目で止め、子どもに次の語を言ってもらう方法があります。
行事歌は「先生が歌って子どもが追う」形になりがちですが、言葉当てクイズにすると、参加が均等になりやすいからです。
行事前の慌ただしい時期でも、1回3分程度で回せるのが利点です。
参考:『ひな祭』の教科書掲載や曲の背景、楽譜の扱いなど(行事導入の裏付けに使える)
平井康三郎ととんぼのめがねの保育園の歌遊び
「とんぼのめがね」は、初放送の調査として「昭和24年8月22日にNHKラジオ第一の幼児番組『歌のおけいこ』で歌われた」旨が提示されています。
さらに翌週に「勝鬨保育園園児の歌」として扱われた、という記述もあり、“保育の現場とメディア”が早い段階で接続していた点が興味深いところです。
この背景は、園内研修で「歌遊びが“余興”でなく、幼児教育の中心的教材になりうる」ことを説明する根拠としても使えます。
歌遊び化する時は、振付を増やすより「観察の質」を上げた方が、子どもの集中が続きます。
例えば、園庭で見られる“とんぼ”の種類や、時間帯で空の色が変わる体験を入れると、歌詞の「水いろ」「ぴかぴか」「赤いろ」が“思い出のラベル”になります。
その上で室内に戻り、次のようにシンプルに回すのが効果的です。
- 準備:青・黄(太陽)・赤の丸カードを用意し、歌詞の色で出す。
- 歌う:サビ(「とんだから」周辺)だけ先に繰り返し、成功体験を作る。
- 遊ぶ:カードを見せたら、その色の“空/おてんとさま/夕やけ”を指差しで表す。
- 発展:年長は「自分の見た空の色」を一言で言ってから歌う。
“あまり知られていない寄り道”として、初放送の年や番組名を、掲示(今週のうた)に小さく添えると、保護者の会話が増えやすいです。
とくに祖父母世代が反応しやすく、送迎の短時間でもコミュニケーションの糸口になります。
平井康三郎の保育園での童謡の選び方
平井康三郎は童謡だけでなく、歌曲・合唱曲・器楽曲など幅広い領域で作品を残し、教育や教科書編纂にも関わった経歴が整理されています。
そのため、保育園の「季節の歌」選定では、単に“有名曲”を並べるより、「行事(ひな祭)」「自然観察(とんぼのめがね)」「身体感覚(スキー)」のように、ねらいで束ねるとカリキュラムとして説得力が出ます。
また、童謡は“歌えること”がゴールになりやすい一方、保育では“子どもが何を感じたか”を拾う方が重要なので、選曲基準を言語化しておくとブレません。
実務で使える選び方の観点は次の通りです。
- 季節性:行事や自然体験と結びつくか(例:ひな祭、秋のとんぼ)。
- 発達:反復が多い/音域が高すぎない/言葉が難しすぎない。
- 展開:制作・絵本・ごっこ遊びに派生できるか。
- 説明責任:保護者に「なぜこの歌か」を一言で説明できるか。
“園のカラー”を出すなら、同じ童謡でも取り上げ方を少し変えるのがコツです。
例えば、0〜2歳は「聞く・揺れる・まねる」を中心にし、3〜5歳は「観察→言葉→表現(歌)」へと順に積み上げると、同じ曲が“毎年新しく”なります。
この積み上げ設計は、発表会のためだけに歌を詰め込むより、子どもの自己表現を伸ばしやすい運用です。
平井康三郎と保育園の童謡の独自視点
検索上位で多いのは、作曲者としての紹介や、曲の解説、歌詞・楽譜への導線ですが、保育の現場では「歌が“園の時間”を整える」側面が見落とされがちです。
そこで独自視点として、平井康三郎の童謡を“生活リズムの合図”として使う設計を提案します(歌唱力の巧拙ではなく、集団の呼吸を揃える道具としての歌)。
例えば「とんぼのめがね」を外遊び前に短く歌うと、空を見る動作が入り、視線が上がって気持ちが切り替わりやすくなります。
さらに、クラス運営に直結する使い方として「歌の役割分担」を入れると、子どもの主体性が上がります。
- カード係:色カード(青・黄・赤)を出す。
- 合図係:歌い始めの前奏で手拍子を1回入れる。
- 観察係:今日の空を一言で言う(例:あおい、まぶしい、あかい)。
この“係”は、楽器がなくても成立し、しかも毎回同じ係にしなくてよいので、発達差のある集団でも回しやすいです。
結果として、歌の時間が「上手に歌える子だけが目立つ時間」になりにくく、保育の公平性にもつながります。


