ヘンリー・パーセル – トランペット・ヴォランタリーを保育で活かす方法

ヘンリー・パーセル – トランペット・ヴォランタリーを保育で活かす

この曲を「パーセル作曲」として子どもに教えると、間違いをそのまま広げてしまいます。

この記事でわかること
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曲の正しい作曲者と歴史

「トランペット・ヴォランタリー」は実はパーセルの作品ではなく、ジェレマイア・クラーク作曲。長年の誤解がどのように生まれたかを解説します。

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バロック音楽が子どもの脳に与える効果

科学的研究に基づく、バロック音楽の幼児教育への効果。認知機能・集中力・言語発達との関係を詳しく紹介します。

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保育現場での具体的な活用法

朝の会・お昼寝・行進遊びなど、トランペット・ヴォランタリーを使った保育アイデアを場面別に紹介します。

ヘンリー・パーセル – トランペット・ヴォランタリーの「本当の」作曲者

 

「ヘンリー・パーセル – トランペット・ヴォランタリー」という名前で知られるこの曲ですが、実際にはパーセルが作曲した曲ではありません。正式な作曲者はジェレマイア・クラーク(1674〜1707年)というイギリス・バロック期の作曲家です。

参考)デンマーク王子の行進曲 – Wikipedia

クラークは元々この曲を「デンマーク王子の行進曲(The Prince of Denmark’s March)」という鍵盤曲として作曲しました。 現存する最古の楽譜は1700年にロンドンで出版されたハープシコード曲集の中に「クラーク氏作曲デンマーク王子の行進曲、ロンド」として収録されています。

では、なぜ「パーセルの曲」と言われ続けてきたのでしょうか?

1870年代、リーズのオルガニスト・ウィリアム・スパークがオルガン小曲集を出版した際、この曲を誤って「パーセル作曲トランペット・ヴォランタリー」として掲載しました。 スパークの死後、指揮者のヘンリー・ウッドがその楽譜を入手し、「パーセル=ウッドのトランペット・ヴォランタリー」としてプロムナード・コンサートで演奏、さらにラジオやレコードによって世界的に広まりました。wikipedia+1

この誤解が解けたのは1939年のことです。 1700年出版の楽譜が発見され、クラーク作品であることが判明したのです。これは実に約70年間にわたる「作曲者の取り違え」でした。

項目 ヘンリー・パーセル ジェレマイア・クラーク(真の作曲者)
生没年 1659〜1695年 1674〜1707年
出身 イングランド・ウェストミンスター イングランド・ロンドン
主な活動 宮廷音楽家・オルガニスト 王室礼拝堂オルガン奏者
代表作 オペラ「ディドとエネアス」、アブデラザール組曲 デンマーク王子の行進曲(トランペット・ヴォランタリー)
誤解との関係 誤って本曲の作曲者とされていた 1939年に正式に作曲者と判明

保育士として子どもに伝えるなら「この曲の名前はヘンリー・パーセルと一緒に語られることが多いけれど、実際に作ったのはジェレマイア・クラークという人なんだよ」と一言添えると、それ自体が子どもの好奇心を刺激する素材になります。

参考)ヘンリー・パーセル – Wikipedia

参考:作曲者の誤解の経緯について詳しく解説されています。

デンマーク王子の行進曲 – Wikipedia

ヘンリー・パーセル – トランペット・ヴォランタリーが「なぜ」有名になったか

この曲が世界的に有名になった背景には、編曲者ヘンリー・ウッドの存在があります。

ウッドは「パーセル作」として入手した楽譜を、トランペット・オルガン・打楽器による編曲や、トランペットと管弦楽による編曲など、複数のバージョンに仕上げました。 プロムナード・コンサートで繰り返し演奏されたこの曲は、20世紀にラジオ・レコードを通して一気に世界中へ広まりました。有名になったのですね。

本来の速度はウッド編曲版よりもずっと速かったという点も、あまり知られていない事実です。 当時のナチュラルトランペットで演奏するには第11倍音と第13倍音を使う必要があり、速いテンポで演奏することで音程が安定したとされています。

現代では20世紀中の無数の結婚式で演奏されるようになり、「結婚式の入場曲の定番」として定着しました。 また、意外なところではビートルズの曲「イッツ・オール・トゥ・マッチ」の中でも一部が引用されています。

🎵 この曲の別名も整理しておきましょう。

  • 「デンマーク王子の行進曲」(正式名称・クラーク作曲)
  • 「トランペット・ヴォランタリー」(通称・ヘンリー・ウッドの編曲版として有名)
  • 「ヘンリー・パーセル – トランペット・ヴォランタリー」(長年の誤解から残った呼び名)

保育の場では「この曲は結婚式でもよく使われるくらい、みんなに愛されてきたんだよ」と伝えると、子どもたちの親しみやすさが格段に増します。日常生活と音楽をつなぐ視点が重要です。

ヘンリー・パーセル – トランペット・ヴォランタリーとバロック音楽が子どもの脳に与える効果

バロック音楽を保育で使うことには、科学的な根拠があります。これは使えそうです。

カナダのマギル大学とハーバード大学の研究では、幼児期に15ヶ月間楽器を練習させたところ、脳の構造が変化し、右の中心前回・脳梁・一次聴覚野が大きくなり、運動能力と聴覚機能が改善したことが報告されています。 単に楽器を弾かせるだけでなく、質の高い音楽を「聴く」体験も重要な刺激になります。

参考)[最新研究紹介]幼少期の楽器訓練は、音楽に関わる脳部位の発達…

国立生理学研究所の研究では、4〜6歳の幼児を対象に1年間の音楽訓練を行ったところ、バイオリン音に対する聴覚野の反応が大きく変化したことが確認されました。 音楽訓練を受けた子どもの脳は、わずか1年間で測定可能なレベルで発達していたのです。

参考)4−6歳児における1年間の音楽訓練が聴覚誘発脳磁反応の発達に…

バロック音楽が子どもにもたらす主な効果をまとめると。

  • 🧠 認知機能の向上注意力・記憶力・言語能力の改善
  • 💬 言語発達の促進:リズムと言語習得には強い関連性がある
  • 🤝 社会性と情動調整:感情の表現や共感性を育む
  • 🏃 運動機能の向上リズム感・協調運動能力の向上

スタンフォード大学の研究では、バロック音楽をBGMにするとワーキングメモリと計画力が向上する傾向があると確認されています。 「ヘンリー・パーセル – トランペット・ヴォランタリー」のような明快なリズムと高貴な音色は、子どもの脳に心地よい刺激を与えます。

参考)脳と心を整える音の処方箋 〜J.S.バッハの数学的音楽がもた…

お昼寝明けや活動の切り替え時に静かめな音量でかけると、子どもが自然と体を動かしはじめる効果が期待できます。BGMとしての導入から始めるのが現実的です。

参考:音楽が子どもの発達に与える影響について保育現場の視点から解説されています。

音楽の力で発達を促す!保育現場での実践(after-reha.com)

ヘンリー・パーセル – トランペット・ヴォランタリーの保育現場での具体的な活用アイデア

この曲は「行進」「整列」「入場」「退場」など、保育の場面で幅広く使えます。まずはどの場面で使うか決めるのが最初のステップです。

🎺 行進・体操の場面

テンポが明快なので、朝の会の入退室時の行進曲として最適です。「右・左・右・左」と声をかけながら一緒にリズムを刻むと、子どもが自然に体幹を動かし始めます。リズム感の育成にも直結します。

🎵 音楽鑑賞の時間

年長クラスでは「この曲、結婚式でも使われているんだよ」と話してから流すと、子どもたちの反応が変わります。音楽に「物語」を添えることが大切です。「この曲の正しい作者は誰でしょう?」といったクイズ形式にすれば、導入として盛り上がります。

🎠 劇・お遊戯会の入場曲

荘厳さと親しみやすさを兼ね備えたこの曲は、お遊戯会の幕開けや主役の入場シーンに使うと会場の雰囲気が一気に引き締まります。保護者にも「聞き覚えのある曲」として安心感を与えます。

📋 活用場面まとめ

場面 活用方法 ねらい
朝の会・入室 行進のBGMとして流す 体幹・リズム感の発達
音楽鑑賞 作曲者のクイズとともに紹介 音楽的知識・好奇心
劇・お遊戯 入場曲・開幕曲として使用 非日常感・集中力
お昼寝明け やや小さめの音量でBGMに 気分の切り替え

保育では「聴く」「動く」「感じる」の3要素を組み合わせると効果が高まります。 一度に全部やろうとせず、まず1つの場面から試すのが継続につながります。

参考)【特性のある子供にも】音楽の力で発達を促す!保育現場における…

ヘンリー・パーセルと同時代のバロック音楽を保育で使う独自視点

あまり語られない視点として、「なぜバロック音楽は保育現場で使いやすいのか」という構造的な理由があります。

バロック音楽の多くは「通奏低音」と呼ばれる規則正しい低音の反復構造を持っています。この繰り返しパターンが、子どもの脳に「次に来る音」の予測をさせ、それが充足されることで安心感と集中力が生まれるとされています。 構造化された音楽が感情の予測と制御能力を強化するという研究報告もあります。

パーセルが実際に作曲した「アブデラザール組曲」の「ロンドー」は、後にベンジャミン・ブリテンが「青少年のための管弦楽入門」の主題として採用しました。 この作品は「各楽器を順番に紹介する」という構成で、保育や初等教育での音楽鑑賞教材として世界中で使われています。

つまり、「ヘンリー・パーセル – トランペット・ヴォランタリー」の誤解がなければ、クラークの名前がもっと早く子どもたちの間に広まっていたかもしれません。歴史の偶然が音楽教育に影響した例として紹介すると、保護者向けのコラムや研修でも話題になります。

パーセルが18歳で王室の弦楽合奏隊の専属作曲家に就任し、36歳で亡くなるまでに800曲以上を作曲したという事実も、子どもへの伝え方として使えます。 「たった36年しか生きられなかったのに、これだけの音楽を残したんだよ」という話は、子どもの心に「命と音楽」の重みをさりげなく伝えられます。

参考:パーセルの生涯と作品について詳しく掲載されています。

ヘンリー・パーセル – Wikipedia

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