林アキラの「パフ」を保育で使う意義と歌詞の深い世界
「パフ」は子どもが喜ぶだけの曲ではなく、大人が泣くために作られたフォークソングです。
林アキラのプロフィールと「おかあさんといっしょ」での功績
林アキラ(本名:小林晃)は、1958年8月22日生まれ、静岡県清水市出身のミュージカル俳優・作曲家・歌唱指導者です。東京芸術大学音楽学部声楽科を卒業しており、その確かな声楽の技術は保育の世界だけにとどまりません。1979年には第16回ヤマハ・エレクトーン・フェスティバル全国大会で第2位を獲得、翌1980年にはインターナショナル・エレクトーン・フェスティバルでも入賞を果たした本格派です。
1981年4月より、NHKの幼児向け番組「おかあさんといっしょ」の第6代うたのおにいさんに就任。1985年3月まで、4年間にわたり画面を通じて子どもたちに歌を届けました。これは現役保育士の多くが幼少期にリアルタイムで見ていた世代に重なる時代です。
林アキラお兄さんの在任中には、「パフ」をはじめとする数々の名曲が子どもたちに歌い継がれました。林アキラは卒業の際、後任の坂田おさむさんと初めて「引き継ぎ共演」を行い、これがその後の歴代のお兄さん・お姉さん交代時の恒例行事となったのです。これは番組史に残るエピソードです。
林アキラは番組卒業後も「おかあさんといっしょ」とのつながりを大切にし続けました。2009年放送の「50周年特集」、2019年放送の「60周年スペシャル」にもゲストとして出演。2021年のファミリーコンサート「まってたんだよキミのこと」にも出演し、さらに番組内でピアノ奏者としても活躍しています。番組を卒業した後もずっと寄り添ってきた、そういう姿勢がわかりますね。
「おかあさんといっしょ」以外の活動も目を見張るものがあります。ミュージカル「レ・ミゼラブル」では司教役として出演し、「マリー・アントワネット」ではロアン大司教とレオナールの二役を担当。歌唱指導も務めるなど、プロのミュージカル俳優として第一線で活動してきました。子どものうたを歌うだけの人ではありません。東京芸術大学仕込みの本格的な声楽技術と、幅広いエンターテインメントの経験を持つ、真の意味での音楽家なのです。
保育士として「パフ」を子どもたちに伝えるとき、林アキラというアーティストの背景を知っておくと、歌への向き合い方が変わります。単なる「子ども向けのかわいい曲」ではなく、芸術的な深みを持つ楽曲として捉え直すきっかけになるでしょう。
参考:林アキラ氏のプロフィールや活動歴の詳細はこちら
林アキラが歌う「パフ」の歌詞と、その知られざる原曲の意味
「パフ」は1963年2月、アメリカのフォークグループ「ピーター・ポール&マリー(PP&M)」がリリースしたシングルで、Billboard Hot 100で最高2位を記録した大ヒット曲です。原題は「Puff, the Magic Dragon」。歌詞は1959年、レニー・リプトンが19歳のときに書いたもので、学友のピーター・ヤローが曲をつけてPP&Mの名曲となりました。
「魔法の竜パフ」と少年「ジャッキー・ペーパー」の交流と別れを描いたこの曲は、一見すると子ども向けのかわいい童謡に聴こえます。しかし歌詞をじっくり読み解くと、そこには子どもが大人になることの哀愁と、純粋な子ども時代の終わりへの悲しみが込められていることがわかります。
歌詞の後半を見てみましょう。「ある灰色の夜、それは起こった。ジャッキー・ペーパーはもう来なくなった。あんなに強いドラゴンのパフも、力強い叫びを止めてしまった」というくだりは、少年が成長して大人になり、子ども時代の夢や想像の世界から離れていく瞬間を表現しています。つまり「子どもの成長」が原点にあるということです。
日本では「おかあさんといっしょ」で使用された野上彰による日本語詞のバージョンが最も広く知られています。1973年以降、何度か小学校の音楽教科書にも掲載された実績があり、幼児から小学生まで幅広い年齢層に親しまれてきた曲です。
一方、アメリカでは曲が発表された当時、この曲がベトナム戦争の反戦歌だとか、麻薬(マリファナ)を歌ったものだという解釈が広まり、シンガポールでは放送禁止になったほどです。しかし作詞者のリプトン本人はこれを強く否定し、ピーター・ヤローも「歌詞に他意はなく、子どもの成長の歌だ」と公言しています。こういった複雑な歴史的背景を知っておくと、保育士として保護者などから質問を受けたときに適切に答えられます。
「パフ」の名前はドラゴンの不思議な鳴き声に由来しているとされています。「Puff」という英語はもともと「吐息」「息を吹きかける」という意味を持ちます。ドラゴンが炎を吹くイメージにも合う名前ですね。子どもたちに歌詞の意味を伝えるとき、「パフっていう名前はりゅうの声からつけたんだよ」と一言添えるだけで、子どもの目が輝きます。
参考:「パフ」の歌詞の成立経緯や文化的背景について
パフ(曲) – Wikipedia(歌詞の意味・放送禁止の経緯など)
保育現場での「パフ」歌唱指導のポイントと子どもへの伝え方
保育士が「パフ」を子どもたちと歌うとき、曲の持つ世界観をどう届けるかが大切なポイントになります。「パフ」は4拍子で拍が取りやすく、前半8小節と後半8小節の旋律が似た構造になっているため、幼児でもリズムを掴みやすいのが特徴です。繰り返しのメロディーが多い分、子どもたちが自然と口ずさめるようになるスピードも早いです。
歌唱指導の現場では、次のような点を意識してみてください。
- 🎶 テンポはゆったりめに設定する:「パフ」は壮大なドラゴンの物語です。急かして歌わせるより、少しゆっくりめのテンポで丁寧に歌わせると、歌詞のイメージが浮かびやすくなります。
- 🐉 「パフ」のキャラクター像を絵本や絵で見せてから歌う:2007年に出版されたCD付き絵本『魔法のドラゴン パフ』(ピーター・ヤロー著、さだまさし日本語訳)は100万部を売り上げた人気作です。絵本を読み聞かせてから歌うと、子どもたちの感情移入度が段違いに高まります。
- 🌊 情景を言葉で添える:「ホナリーリトルという海に、まほうのりゅうがすんでいたんだよ」と導入すると、子どもたちは歌を「物語」として受け取れます。
- 👏 手拍子や手遊びと組み合わせる:保育の現場では、歌と身体表現を合わせることで子どもの集中力が持続します。「パフ」は4拍子なので、1拍・3拍に手を叩くシンプルなリズム遊びとも相性がよいです。
歌唱指導の効果は音楽的な技術の習得だけにとどまりません。岡山大学の研究によれば、幼児は音楽を通じて自分の感情や状況を歌詞になぞらえて自発的に表現する行動が観察されています。歌を歌うことは、子どもの言語能力・記憶力・感情表現力の発達に直接つながる活動なのです。「パフ」のような物語性の高い曲は、特にこの効果が期待できます。
また、「パフ」は保護者世代にとっても懐かしい曲であるケースが多いです。お迎えのときに「今日パフを歌ったんだよ」と子どもが話せば、自然と親子の会話が生まれます。保育活動が家庭とのつながりを生む機会になる、そういう視点からも「パフ」は価値ある選曲です。
参考:幼児の音楽表現活動と保育者の援助についての研究
音楽による幼児の表現活動の意義と保育者の援助に関する研究(岡山大学)
「パフ」のリコーダー・器楽合奏への展開と保育から小学校への橋渡し
「パフ」は保育園・幼稚園での歌唱活動にとどまらず、小学校の音楽教育との橋渡しとなる曲としても優れた教材です。教育芸術社の『小学生の音楽3』に器楽合奏の教材として掲載されており、小学3年生を対象とした音楽の授業でリコーダー演奏の定番曲になっています。これが原則です。
リコーダーでの「パフ」演奏に関する資料には次の特徴が記されています。
- 🎺 編成:リコーダー①・リコーダー②・鉄琴・キーボードの計4パートで構成される合奏曲
- 🕐 習熟の速さ:4拍子で拍が取りやすく、前後8小節が似た旋律のため短時間で技能習得が可能
- 🎼 工夫の余地:技術が身についたあとは演奏の強弱や表情など「音楽的な工夫」を試す時間を確保しやすい
保育士として、この視点は非常に大切です。保育園・幼稚園でしっかりと「パフ」を歌って親しんだ子どもは、小学校でリコーダー演奏に取り組む際にスムーズに入っていける可能性が高まります。「知っている曲を楽器で演奏する」という体験は、子どもにとって大きな達成感と自信につながるからです。つまり保育での歌唱活動が、将来の音楽学習の土台になるということです。
器楽合奏版の楽譜は出版社「ブレーメン」から「ASCシリーズ」として販売されており、子どもたちだけで演奏できる難易度に設定されています。保育士・幼稚園教諭が知っておくと、保護者への説明や就学準備の取り組みに役立てられます。
また、リコーダーの音源はYouTubeやSpotifyでも複数の「パフ」カバー版が公開されており、子どもが自宅でイメージをつかむ教材としても活用できます。保護者に「こういう動画があります」と案内するだけで、家庭学習の質が上がります。これは使えそうです。
参考:群馬県総合教育センターによる「パフ」の器楽合奏学習指導案
林アキラが「パフ」を通じて保育に残した独自の音楽的遺産
保育士の視点から見落とされがちですが、林アキラが「パフ」に残した貢献は単なる「歌唱」だけではありません。これは少し意外な話です。
林アキラは「おかあさんといっしょ」での活動を通じて、子ども向けの歌に「本格的な声楽的表現」を持ち込んだ存在と言えます。東京芸術大学で培ったクラシックの発声技術を、幼児向けの楽曲に自然な形で落とし込んだ歌い方は、番組の音楽的クオリティを底上げしました。林アキラが卒業後にミュージカル「レ・ミゼラブル」(1987年初演)の司教役として出演したのは、決して偶然ではありません。
特に「パフ」においては、原曲のフォークソングとしての素朴さを活かしながら、声楽家としての豊かな表現力でドラゴンと少年の物語を立体的に歌い上げています。2021年の「おかあさんといっしょ」スタジオライブでは、林アキラはピアノ奏者としても登場し、自身が歌手でもあり伴奏者でもある音楽家としての多才な姿を見せています。
保育士として、この視点から「パフ」を捉え直すメリットがあります。「パフ」は子どもたちに「よい歌声とはどういうものか」を自然に届けられる曲です。子どもは保育士の歌声を聞いて育ちます。保育士自身が「パフ」を深く理解し、物語に感情を乗せて歌うことで、子どもの音楽的感性を育てる機会が生まれます。
保育士のピアノや歌唱スキルに不安がある方は、まず原曲の林アキラバージョンを何度も聞き込んで「どこで声の強弱が変わっているか」「どこで感情が乗っているか」を感じ取ることが、歌唱力向上の近道です。楽譜を読む前に「耳でコピーする」という方法は、声楽家が実際に行う練習法のひとつでもあります。
林アキラの「パフ」は、JOYSOUNDのカラオケ楽曲としても配信されており(楽曲番号105006)、保育士が自分の歌い方を確認・練習するツールとしても使えます。1曲から保育の音楽表現を磨く手がかりになることを覚えておくとよいでしょう。
また、林アキラは現在もブログ「AKIRAKIA」(livedoorブログ)を定期的に更新しており、ファミリーコンサートや音楽活動の最新情報を発信しています。音楽教育・歌唱指導に真剣に向き合う保育士にとって、林アキラの活動から学べることはまだまだ多くあります。
参考:林アキラのブログ「AKIRAKIA」最新活動情報


