五音音階 保育 日本の歌
五音音階の特徴と日本の音階(民謡音階・律音階・都節音階・琉球音階)
日本の民謡や伝統音楽では、5つの音から成る音階が基本になっているものが多いと整理されています。特に「民謡音階(レミソラド)」「律音階(レファソラド)」「都節音階(レミ♭ソラシ♭)」「琉球音階(レファ#ソラド#)」の4種類にほぼ整理でき、中心の音(主音)がレだけでなくソやラになることもある、という説明は現場の見立てに役立ちます。こうした分類を知っておくと、同じ「日本の歌」でも、明るく開放的に感じるもの/少し陰影が出るものなど、響きの違いを言語化しやすくなります。
また、明治以降に広く使われた「ヨナ抜き音階」は、音の数は同じ5音でも「ドレミソラ」を中心に据え、西洋和声(ドミソ等)と相性がよい“ハイブリッド”として語られています。保育でピアノ伴奏をつけた時に「なんとなく収まりがいい」童謡があるのは、この仕組みで説明がつく場面があります。逆に、都節音階などは西洋の和声にそのまま当てはめにくいことがあり、無理に伴奏を厚くすると“日本の歌らしさ”がぼやけることがあります。
参考)https://www.ne.jp/asahi/sayuri/home/doyobook/doyo00meiji1.htm
現場での扱い方としては、「理論を教える」より先に、音の雰囲気を保育者が体感しておくのが現実的です。たとえば同じ歌詞遊びでも、音階の違いで子どもの身体反応(揺れ方・歩き方・声量)が変わることがあり、観察の視点が増えます。そこで、園内研修では「歌う→中心音を探す→伴奏を薄くする/やめる→もう一度歌う」という順番で試すと、短時間で差が見えやすくなります。
参考:日本の音階(4種の整理、ヨナ抜き音階、わらべうたの音数が少ない例)

五音音階と保育のわらべうた:音域・半音・コミュニケーション
保育で五音音階が強い味方になる理由の一つは、わらべうたが「音域が狭い」「半音がない」など、子どもに無理のない条件を多く備えている点です。音が少ないと、子どもが音程を“当てにいく”より、声と身体の感覚で歌に入りやすくなり、導入が速くなります。さらに、遊びを伴うわらべうたは、歌うこと自体がコミュニケーションになりやすい、と整理されています。
また、わらべうたは「音楽の母国語」という捉え方が紹介されており、母国語のように“その国のメロディーが自然に一体となっている”ことが強調されています。保育の言葉かけで言えば、「上手に歌って」より「いっしょにやってみよう」「もう一回まわる?」のように、遊びの流れへ接続する声かけの方が機能しやすい土台です。わらべうたの価値を“情緒”だけでなく、“園の集団形成の道具”として捉え直せます。
参考)https://hosen.repo.nii.ac.jp/record/275/files/kiyou1304.pdf
乳児~低年齢では、正確な音程よりも、保育者の声が安心の合図になります。紹介記事でも「歌いやすい音程で歌いましょう」と明記されており、記録された音高に縛られない運用が推奨されています。ここは現場で意外に重要で、「先生の声が高すぎて子どもが出ない」「低すぎて響かない」をその場で調整できると、五音音階の良さが生きます。
参考)https://www.u-gakugei.ac.jp/graduate/professional/upload/R4reports.pdf
参考:0・1・2歳児のふれあいわらべうた(歌いやすい音程で、という運用のヒント/遊び方の具体)

五音音階の日本の歌を保育で選ぶコツ:ヨナ抜き音階と伴奏
「日本の歌=全部が同じ音階」ではなく、ヨナ抜き音階のように西洋和声と“はまる”タイプと、民謡音階・都節音階のように“はまりにくい”タイプがある、という見立てが選曲の精度を上げます。ヨナ抜き音階は唱歌・童謡・歌謡曲など例が多いとされ、5音でも和音が自然に乗りやすいと説明されています。保育でピアノ伴奏を日常的に使う園ほど、まずはヨナ抜き寄りの曲から始めると失敗が少ないです。
一方で、“はまりにくい”音階を保育で扱う価値は高いです。伴奏を薄くして歌声中心にすると、子どもの声が前に出て、歌の輪郭(中心音や節回し)が立ってきます。合唱・編曲の観点でも、日本の5音音階は西洋のハーモニーになじみにくい場合があり、そこをどう工夫するかが編曲者の腕の見せどころだと述べられていますが、保育では「工夫=引き算」が効く場面が多いです。
実践の小技としては、次のように段階を踏むとクラスが崩れにくくなります。
- まずアカペラで保育者が歌い、子どもは聴く(“まね”の前に“浸る”)。
- 次に、手拍子や歩くなど拍の遊びを足す(歌詞理解が浅くても参加できる)。
- 最後に、必要ならピアノを“単音・ドローン的”に足す(和音で埋めない)。
五音音階の保育実践:わらべうた遊び(まめがらがら・ねずみ ねずみ)
低年齢で取り入れやすいのは、歌と動きが直結している「ふれあい」型です。例として紹介されている『ねずみ ねずみ』は、2本指をねずみに見立てて体を歩かせ、「とびこんだ」でわきをくすぐる、という動作が明確で、子どもが“次に来る”を予測しやすい構造です。予測が当たると笑いが増え、笑いが増えると声も出やすくなり、結果として歌が回り始めます。
『まめがらがら』は、2人で向かい合って手をつなぎ、歌に合わせて同時にひっくり返って背中合わせになったり戻ったりする遊び方が示されています。ポイントは「ふたり同時に体を回すこと」と説明されており、ここは保育者の援助設計に直結します。最初は“回る”が難しいので、いきなり完成形を求めず、テンポを落として回転のタイミングだけを共有すると、達成感が作れます。
意外に見落としやすいのが、こうしたわらべうたが「地域のイントネーション」と結びついている、という視点です。紹介文では、地方のイントネーションに合わせてメロディーができている、と述べた上で、誰でも歌いやすいように音を少し変えて紹介した、とされています。つまり現場でも、クラスの実態(子どもの発話、先生の声域、部屋の響き)に合わせて“少し変える”のは、伝承の精神から外れにくい調整です。
五音音階の日本の歌を保育で「検出」する独自視点:中心音と3音化
検索上位の多くは「五音音階=5つの音」という説明に寄りがちですが、保育で効くのは「実際にはもっと音が少ない歌から始められる」という運用の発想です。わらべうたには、3音だけで歌える例(「なべなべそこぬけ」=隣り合う3音で歌える)や、4音で成立している例があると具体的に述べられています。これは“五音音階の入口”として非常に強力で、音程に不安があるクラスでも導入が成立しやすいです。
ここでの独自視点は、「五音音階かどうか」を机上で判定するより、まず“中心音(主音)っぽい音”を子どもと一緒に探す活動に変換することです。記事では、わらべうたは中心となる音が非常にはっきりしているのが特徴、とされ、例として「なべなべそこぬけ」はソが中心、と説明されています。保育ではこれを「終わった感じの音はどれ?」「落ち着く場所の音はどれ?」と問いかけると、音感の芽生えを“正解当て”ではなく“感覚の言語化”として扱えます。
さらに、伴奏を付ける前に“声の重なり”を経験させると、音階の学びが遊びになります。コダーイ・メソッドの紹介では、ピアノ伴奏を付けず大人の歌唱に倣って歌うことや、ペンタトニック(半音を含まない5音)が子どもに無理なく歌える点が述べられています。園の実践に落とすなら「先生が先に短いフレーズ→子どもが返す(問答)→最後にみんなで同時に歌う」という順で、3音→4音→5音へ増やしていくと、難易度が自然に上がります。
参考:わらべうたは3音・4音の例がある/中心音が明確、という具体例(保育の導入設計に直結)

参考:ペンタトニック(五音音階)・わらべうた・伴奏を付けない歌唱の考え方(保育の運用ヒント)
https://ouchi-iku.com/kodaly-method/

作曲者不詳(中国) 「アヴェ・マリア」(五音音階)

