学校唱歌と保育園と行事歌
学校唱歌を保育園の行事歌にする選び方(季節・月)
保育園で学校唱歌を行事歌として活かすコツは、「春夏秋冬」だけでなく「4月〜3月の月ごと」に曲を配置して、毎年の見通しを作ることです。季節の歌を月ごとに整理する考え方は、3〜5月を春、6〜8月を夏、9〜11月を秋、12〜2月を冬と分ける方法も併用でき、園の行事予定に合わせやすいです。実際に月別で候補曲をまとめた資料では、3〜4月に「春がきた」「どこかで春が」「春の小川」「チューリップ」、6月に「あめふり」「かたつむり」、7〜8月に「うみ」「たなばたさま」、10〜11月に「もみじ」「まつぼっくり」、1〜2月に「ゆき」「たきび」「豆まき」などが提示されています。
「行事歌=行事当日だけ歌う曲」になりがちですが、学校唱歌は“季節の描写が濃い”ものが多く、行事の前後(導入〜振り返り)まで使えるのが強みです。たとえば七夕の時期は、行事としての制作や飾り付けと並走させて「たなばたさま」を毎日少しずつ歌うことで、短冊や天の川といった語彙が生活の中で定着しやすくなります。さらに、秋の「もみじ」は散歩・落ち葉遊び・制作(スタンプ、ちぎり絵)と接続しやすく、行事に頼らなくても“季節の行事感”を作れます。
参考)【園生活・園行事のうたリスト】幼稚園・保育園・こども園 – …
曲選びの現場テクとしては、次の3点を先に決めるとブレにくいです。
月ごとの“定番枠”を固定しつつ、クラスの発達に合わせて入れ替える運用にすると、上司・同僚との共有もスムーズになります。
学校唱歌の歌詞と著作権(配布・ブログ・動画)
学校唱歌を保育園で扱うときに、意外と盲点になりやすいのが「歌詞を配る/載せる/送る」場面です。JASRACの案内では、教育機関での音楽利用は著作権法第35条などにより一定条件下で許諾なく利用できるとしつつも、条件(非営利、授業の過程、必要と認められる限度、権利者利益を不当に害しない等)が整理されています。 つまり、園内で歌うことと、園外に向けて発信・配布することは同じ扱いにならない可能性があります。
特に注意したいのは次のケースです。
- 📄 保護者向けに歌詞カードを配布する(行事の練習用など)
- 🌐 園ブログに歌詞を全文掲載する、楽譜画像を載せる
- 🎥 行事の歌を撮影した動画を限定公開・配信する
- 💿 行事の録音・録画をCD/DVD等で配付する
JASRACの説明では、学校行事を録音・録画した媒体を配付する場合は手続きが必要になる旨が明記されています。 また、学校のホームページで音楽を流したり歌詞や楽譜を載せる場合は手続きが必要とされています。 保育園のブログやクラス便りは「学校のホームページ」と完全に同一ではないものの、園外への公衆送信・複製に当たり得るため、運用は同様に慎重に判断した方が安全です。
現場での実務としては、次の順に確認すると迷いが減ります。
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- その曲が誰の著作物か(作詞・作曲、管理団体)
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- 園内利用か、園外に出る配布・掲載か
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- 歌詞の「引用」ではなく「掲載」になっていないか
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- 不安がある場合は、管理団体や出版社の案内を確認する
参考:教育機関での音楽利用(授業・行事・配信・ホームページの考え方)
学校唱歌を保育園の行事歌として練習する手遊び(導入)
行事歌の練習で大切なのは、「最初から“歌として完成”を目指さない」ことです。歌詞を覚える前に、リズム・言葉・息の場所を体で理解させると、結果的に歌がそろいます。季節歌・行事歌を月ごとに並べる考え方を採ると、同じ季節語彙(雪、雨、こいのぼり等)が繰り返し登場するため、手遊びや動作化との相性も良くなります。
おすすめの導入は、次のような“短い型”です(入れ子にせず、先生がすぐ回せる形にしています)。
- ✋ キーワード動作:歌詞の名詞だけ動作化(例:雪=手をひらひら、こいのぼり=腕を泳がせる)
- 🥁 リズム先行:歌詞を言わず、手拍子と足踏みだけでサビのリズムを固定
- 🗣️ ことば遊び:歌詞の一部を「先生→子ども」の掛け合いにする
- 🎹 音の合図:ピアノの前奏を“合図”として毎日同じパターンで始める
学校唱歌は、メロディが比較的ゆったりで息継ぎが分かりやすい曲も多い一方、語彙が硬めに感じることがあります。そこで、保育園では「意味が分かる範囲までの理解」をゴールにし、難語は絵カード・写真・散歩で補うと、無理なく“うたが生活に入る”状態を作れます。
ここでの意外なポイントは、行事直前に練習量を増やすより、行事の1か月前から“毎日30秒だけ触れる”方が、子どもが歌を嫌がりにくいことです。短時間で反復すると、子ども側に「できた!」が積み上がり、行事当日の集団歌唱が安定します。
学校唱歌を保育園の行事歌にする運動会(構成)
運動会での行事歌は、入場・体操・競技・退場の“流れ”に沿って曲の役割を分けると、現場の混乱が減ります。行事歌の候補整理として、運動会向けに「うんどうかい」「燃えろ運動会」「運動会の歌」などを挙げ、行事ごとに歌を配置するまとめ方もあります。 学校唱歌の中にも行進に合う曲調のものがあり、園児の年齢によっては「歩くテンポを揃えるBGM」として機能します。
運動会向けの実務ポイントは次の通りです。
- 🏁 入場:テンポが一定、フレーズが短め(隊列が乱れにくい)
- 🤸 体操:歌詞が分かりやすく、動きの合図を入れやすい
- 🏃 競技前:応援の声が出る余白がある(歌が長すぎない)
- 🎀 退場:落ち着いて終われる曲(興奮をクールダウン)
また、運動会は「保護者が見る」比重が高い行事なので、歌詞カード配布や撮影動画の扱い(園外に出るかどうか)も事前確認が重要になります。 当日に慌てないために、園内用掲示と、保護者配布物(持ち帰り)を分け、歌詞を載せる場合は権利関係の確認を済ませておくと安心です。
学校唱歌を保育園の行事歌にする独自視点(行事の振り返り)
検索上位の「曲リスト」型の記事は便利ですが、保育の質を上げるなら、学校唱歌を“行事の振り返り装置”として使う視点が効きます。つまり、行事が終わった後に同じ歌をもう一度歌い、子どもの経験を言葉に戻す時間を作ります。季節や行事の歌を「その季節に興味を持つ」「行事に期待を持つ」ために用いる考え方が紹介されているように、期待だけでなく振り返りにも同じ歌を転用できます。
振り返りでの使い方(保育園で実装しやすい形)
- 🖼️ 写真タイム+1番だけ:運動会や芋掘りの写真を見て、1番だけ歌う
- 🧺 実物とセット:落ち葉、どんぐり、短冊など“触れるもの”を置いて歌う
- 📝 先生の一言メモ:歌の後に「今日の行事で楽しかったこと」を1人1語だけ言う(長文は求めない)
- 🎤 ソロではなく役割制:歌が苦手な子は「太鼓係」「絵カード係」でも参加OKにする
この方法の良さは、行事歌が“発表のための練習”から、“体験を統合する日課”に変わることです。結果として、学校唱歌の言葉の硬さも、体験の裏付けができて柔らかく理解できるようになります。
参考:月別・季節別に歌を整理する考え方(行事の歌の例も掲載)


