フランス民謡有名な曲を保育士が子どもに伝える方法

フランス民謡の有名な曲を保育士が子どもに伝えるコツ

「フランス民謡を子どもに紹介するなら、日本語訳の歌詞をそのまま使えばOKと思っていると、著作権の問題より先に”伝わらない壁”で保護者クレームが来ます。」

🎵 この記事でわかること
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有名なフランス民謡の代表曲と由来

きらきら星・アヴィニョンの橋・フレールジャックなど、保育現場でよく使われる曲の背景を解説します。

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保育士が現場で使えるアレンジ術

年齢別・場面別に、フランス民謡を子どもの活動にどう落とし込むか、具体的な方法をまとめています。

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知られていない意外な事実と注意点

「実はフランス発祥ではない」「歌詞の意味が怖い」など、保育士なら知っておきたい豆知識も紹介します。

フランス民謡の有名な曲一覧と基礎知識

 

フランス民謡と聞いて、すぐに曲名が浮かぶ人は意外と少ないものです。しかし保育現場では、知らないうちにフランス発祥の曲を毎日歌っていることがほとんどです。

まず代表的な有名曲を整理しておきましょう。

  • 🎵 きらきら星(Ah! vous dirai-je, maman):18世紀フランスの民謡が原曲。モーツァルトがピアノ変奏曲として編曲したことで世界的に広まった。
  • 🎵 フレール・ジャック(Frère Jacques):眠っている修道士(ジャック兄弟)を起こす内容の輪唱曲。日本では「クロック・ムッシュ」の名でも知られる。
  • 🎵 アヴィニョンの橋(Sur le pont d’Avignon):南フランスの実在する橋サン・ベネゼ橋を題材にした15世紀頃の民謡。
  • 🎵 シャンソン・ド・マタン(Chanson du matin)朝の歌として保育の朝の会に取り入れられることも多い。
  • 🎵 サヴォワのマルゴトン(Margotton va à l’eau):水くみに行く少女を描いた伝統的な民謡。

これが基本です。

保育士として知っておくと便利なのは、これらの曲が「何世紀に生まれたか」だけでなく、「なぜ現代の子どもにも響くのか」という視点です。繰り返しのリズムや単純な音程構成が、幼児の脳に馴染みやすい音楽的特徴と一致しているためです。

特に「きらきら星」の原曲は、フランスの恋愛をテーマにした歌詞で、子ども向けとはまったく異なる文脈で生まれました。意外ですね。英語の「Twinkle Twinkle Little Star」として変化したのはイギリスで19世紀に入ってからであり、日本語版に至るまでに少なくとも3か国語・200年以上の時間をかけて変容しています。

フランス民謡「きらきら星」の由来と保育での活かし方

きらきら星は、保育士なら年間を通じて最も多く使う曲のひとつです。ただし、その活かし方を間違えると「ただ歌うだけ」になってしまいます。

原曲「Ah! vous dirai-je, maman(ああ、お母さん聞いて)」は、1740年代にフランスで印刷された楽譜が最古の記録とされています。恋する娘が母に打ち明ける内容で、元々は恋愛歌です。これを知っておくだけで、保護者への音楽説明に深みが出ます。

保育の現場では、以下のように活用の幅を広げられます。

  • 🌟 0〜1歳:メロディーを鼻歌でゆっくり歌いながら、星の形に手を動かす「手遊び」として使う
  • 🌟 2〜3歳:ドレミ」のどれが「キラ」の音か当てるゲームにする
  • 🌟 4〜5歳:モーツァルトが変奏曲を作ったことを紹介し、「変奏」のコンセプトで子ども自身に替え歌を作らせる

つまり同じ曲でも、年齢で目的を変えることが原則です。

モーツァルトが1781〜1782年頃に作曲したピアノ変奏曲「K.265」として、この民謡を12通りのバリエーションに変えたことは有名です。クラシック音楽の入口として使える素材でもあります。保育5歳クラス向けに「同じ曲なのに変わる」体験を提供できると、子どもの音楽的感性を育てる活動につながります。

フランス民謡「フレール・ジャック」の輪唱を保育に使う方法

フレール・ジャックは、輪唱(カノン)を子どもに初めて体験させるのに最適な曲です。ただし、保育士側が輪唱の仕組みを正確に理解していないと、活動が混乱します。

輪唱とは、同じメロディーを複数のグループが時間をずらして歌い重ねる形式です。フレール・ジャックは4小節ずつ2グループに分かれて歌う最も基本的な構造になっています。

  • 👥 グループAが第1小節を歌い始める
  • 👥 グループAが第2小節に入ったとき、グループBが第1小節を歌い始める
  • 👥 2つの声が重なり合うハーモニーが生まれる

これは使えそうです。

3〜4歳では輪唱の完成形は難しいため、まずは「2人で一緒に歌う」練習から入るのが現実的です。5歳クラス以上であれば、クラス全体を2グループに分けた本格的な輪唱に挑戦できます。音楽的な「聞く耳」を育てる活動として、発表会の演目にも活用されています。

歌詞の内容は「ジャック修道士よ、眠っているのですか?朝の鐘を鳴らしなさい」という意味です。修道院での早朝の鐘つきを怠けた修道士に呼びかける場面を歌っています。子どもに「朝起きるのが大事」というメッセージとして伝えると、生活習慣の話題とも結びつけられます。

なお、中国では「两只老虎(リャンジーラオフー=2頭のトラ)」という歌詞でほぼ同じメロディーが子ども向けに歌われており、フランス民謡が東アジアにも深く根付いていることがわかります。国際理解教育のきっかけとしても使える曲です。

フランス民謡「アヴィニョンの橋」が保育の身体活動に使われる理由

「Sur le pont d’Avignon(アヴィニョンの橋の上で)」は、踊りながら歌う曲として保育現場では特に人気があります。身体を動かすリズム教育との相性が抜群です。

この曲の特徴は、歌詞に「橋の上でこんな踊りをします」というフレーズが繰り返され、そのたびに踊りのポーズが変わる点にあります。「紳士はこうして、淑女はこうして」と職業や性別によってジェスチャーが変わる構造なので、子どもが自分なりのポーズを考えて参加しやすいのです。

  • 💃 歌いながら自由にポーズを作る→創造性・表現力の育成
  • 💃 「橋の上ではどんな踊りをする?」と保育士が問いかける→言葉のやり取りと想像力の促進
  • 💃 複数の子どもが違うポーズをする→多様性を認める体験

身体を動かしながら歌う、が基本です。

ちなみに、曲の舞台である「ポン・サン・ベネゼ(サン・ベネゼ橋)」は現在も南フランスのアヴィニョンに実在します。全長900mの橋のうち、現在残っているのは約165mの4アーチ分のみです。残りは17世紀の洪水で流されました。「橋の上で踊る」という歌詞に対し「橋が半分しかない」という事実は、保育士が子どもに伝える豆知識として使えます。

保育5歳以上であれば、世界地図でフランスの場所を確認しながら「アヴィニョンはここにある町だよ」と地理への関心を結びつけることもできます。歌を起点に広がる学びは、幼児教育の根幹にある「遊びを通した学習」と一致します。

保育士だけが知っておきたいフランス民謡の意外な裏側

有名なフランス民謡には、表向きの「子ども向けの明るい歌」とは全く異なる背景を持つ曲が少なくありません。保育士がその事実を知っておくことで、説明の質が大きく変わります。

まず「きらきら星」の原曲歌詞は恋愛の告白であることはすでに触れました。同様に、以下のような「意外な背景」を持つ曲が多く存在します。

  • 😮 フレール・ジャック:一説では、鐘つきをさぼった実在の修道士「フレール・ジャック・マルタン」を皮肉った歌という説がある
  • 😮 マルブルーは戦争に行った(Malbrough s’en va-t-en guerre):18世紀の戦争を風刺した曲で、フランス革命期にも替え歌として使われた政治的な歌謡
  • 😮 Il était une bergère(むかしむかし羊飼いがいた):子守歌のように聞こえるが、後半で猫が罰せられる場面が登場し、フランスの農村社会の規律を描いている

意外ですね。

これらの背景を保育士が知っておくメリットは大きく2つあります。1つは、保護者への文化的な説明ができること。もう1つは、子どもに「歌には物語がある」という感覚を伝えるきっかけになることです。

「なぜその歌が生まれたのか」を一言添えるだけで、同じ歌でも子どもの聞き方がまったく変わります。保育士の言葉が「ただ歌う体験」を「文化に触れる体験」へと引き上げる瞬間です。フランス民謡は、世界の多様な文化や歴史を子どもに伝える入口として、保育現場で今後さらに活用価値が高まる素材といえます。


新訂 フランス語で歌いましょう―発音のてびき