英語の歌を歌う保育士向けの活用と導入の全ガイド

英語の歌を歌う保育士が知るべき導入・活用の全知識

英語の歌さえ歌えば、4歳以下の子どもの発音力は必ず伸びるわけではない。

🎵 この記事でわかること
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英語の歌の効果と注意点

玉川大学・佐藤久美子名誉教授の研究から、4歳以下の子どもに「歌」が効きにくい理由と、代わりに使える方法を解説します。

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保育士が現場で使えるおすすめ曲5選

Head Shoulders Knees and Toes、Twinkle Twinkle Little Starなど、保育園でそのまま活用できる定番英語の歌を厳選して紹介します。

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手遊び歌が語彙習得に効く理由

「身体化された認知」の研究をもとに、なぜ動きと一緒に歌うと英語が記憶に残りやすいのかを、わかりやすく説明します。

英語の歌が子どもの発音力に与える効果と研究結果

 

「英語の歌を歌えば、子どもは自然に英語を身につけられる」という考え方は保育士の間でも広く信じられています。しかし、玉川大学の佐藤久美子名誉教授(NHKEテレ「えいごであそぼ with Orton」総合指導担当)が3歳〜6歳の保育園・幼稚園児200名を対象に行った研究では、もう少し細かい事実が明らかになりました。

この研究では、子どもたちを50名ずつ4グループに分け、①歌、②チャンツ(リズムのみでメロディーなし)、③絵本の朗読、④何もなし、という4種類の音源を3週間聞かせた後、英単語の発音力を比較しました。発音採点はネイティブスピーカーが「4点(ネイティブ並み)〜0点(無音)」で評価するというものです。

結果として注目すべき点は2つあります。まず、日本語の語彙力がある5歳児では、歌・チャンツ・朗読のどれを聞かせても発音力が伸びたこと。しかし一方で、日本語の語彙力がまだ低い子ども、あるいは4歳以下の子どもの場合は、「歌」グループの伸びが小さく、「朗読」と「チャンツ」グループの方が有意差のある伸びを示したことです。

つまり「歌」が効く条件というのは、ある程度日本語の語彙力が育っていることが前提です。

その理由は明快です。歌はメロディーを同時に覚える必要があるため、記憶の負荷がかかるのです。特に4歳以下の子どもにとっては、振り付けを覚え、メロディーを覚え、英語の歌詞を覚えるという3つの作業が同時に課されます。結果として、英語の発音そのものへの意識が最後回しになってしまうケースも報告されています。これは条件次第ということですね。

保育士として大切なのは、「年齢と日本語語彙力に合わせて歌を選ぶ」という視点です。5歳以上で日本語力がある子どもには積極的に英語の歌を取り入れてよいでしょう。4歳以下には、朗読やチャンツをメインにしつつ、耳になじみのある「ABCソング」や「Happy Birthday to You」などから始めると効果的です。

なお、どの年齢・グループの子どもも、英語を全く聞かない④のグループより発音力は向上していました。続けることが原則です。

参考:玉川大学・佐藤久美子名誉教授による調査内容(ワールドファミリー掲載)

歌で英語学習するときに注意するポイントは?|ワールドファミリー

英語の歌と手遊びの組み合わせが子どもの語彙習得を助ける理由

「英語の手遊び歌は本当に効果があるのか?」という疑問に答える研究が、近年増えてきています。認知科学の分野では「身体化された認知(embodied cognition)」という理論があり、私たちの知識や記憶は身体が経験した感覚や動きと結びついていることが、心理学・脳科学の両面から実証されています。

具体的な研究例を挙げましょう。オーストラリアのプリスクール(未就学児)に通う111人の子どもたちが、未知の外国語(イタリア語)の語彙14単語(swim、jump、fly など)を4週間学ぶ実験が行われました。子どもたちは「全身で単語の意味を実演するグループ」「座ったままジェスチャーで実演するグループ」「ただ単語をリピートするだけのグループ」などに分けられました。

6週間後のテストで最もよく語彙を覚えていたのは、全身で単語の意味を実演したグループでした(Mavilidi et al., 2015)。これは記憶に関する「実演効果(enactment effect)」と呼ばれる現象であり、外国語の語彙学習でも確認されています。これは使えそうです。

つまり保育士の現場で言えば、”fly”(飛ぶ)なら両腕を広げて飛ぶ真似をしながら歌う、”jump”(跳ぶ)なら実際にジャンプしながら歌うという形が、英語の語彙を記憶に残りやすくするわけです。日本でも「むすんでひらいて」や「大きなくりの木の下で」のように、歌詞の動作を体で表現する手遊びは昔から行われてきましたが、まさにその方向性が英語学習でも正解ということです。

ただし注意点が一つあります。手遊びを覚えることに子どもが必死になりすぎると、英語の発音への意識がおろそかになるリスクがあります。先に歌詞をある程度聞き慣れさせてから、動きを加えるという順番が有効です。動きが先、英語が後、という流れにならないよう意識することが大切です。

保育所保育指針(厚生労働省、2018)でも、手遊びは「子どもの豊かな感性や表現する力を養う」活動として位置づけられています。英語の手遊び歌は、この指針の趣旨とも合致する活動といえるでしょう。

参考:手遊び歌と「身体化された認知」の研究についての詳細解説

英語の手遊び歌は、子どもの英語学習に役立つ?〜「身体化された認知」の研究からわかること〜|Bilingual Science

英語の歌の選び方|保育士が現場で使えるおすすめ曲5選

英語の歌を選ぶ際、保育士が意識すべき基準は大きく3つあります。①繰り返しが多くメロディーが単純であること、②身体を動かせる歌詞が含まれていること、③子どもがすでに知っているか、すぐ耳になじむ曲であること、です。以下に、保育現場で実際に使われている定番曲を5つご紹介します。

曲名 特徴・使いどころ 対象年齢
🎵 Twinkle Twinkle Little Star きらきら星」として日本語でも親しまれている。メロディーになじみがあるため導入に最適。 0歳〜
🎵 Head, Shoulders, Knees and Toes 体の部位を英語で歌いながら触る手遊び歌。語彙と動きが直結しているため記憶に残りやすい。 2歳〜
🎵 If You’re Happy and You K

「幸せなら手をたたこう」の英語版。クラップ、スタンプ、ノッドなど動作の語彙が豊富。 2歳〜
🎵 The Wheels on the Bus バスの各部分の動きを順番に歌う。繰り返し構造が明確で歌詞を覚えやすい。 1歳〜
🎵 Baby Shark 韓国発のPinkfong制作。YouTube再生回数140億回超の世界的大ヒット曲。子どもの食いつきが抜群。 1歳〜

特に注目したいのが「Head, Shoulders, Knees and Toes」です。この曲は head(頭)、shoulders(肩)、knees(膝)、toes(つま先)という4つの単語を、その部位に触りながら繰り返し歌います。先ほど紹介した「実演効果」の観点からも、非常に理にかなった学習曲といえます。

曲選びの時点でもう一つ意識したいのが、テンポです。The Wheels on the Busのように繰り返しが多い歌は、最初はゆっくりのテンポで一緒に歌い、慣れてきたら少しずつ速くするという進め方が子どもたちに受けやすいです。YouTube動画の「Speeding Up」バージョンを使うと、速さを徐々に上げていく遊び方もできます。これはそのまま使えますね。

なお、ABCソングやHappy Birthday to Youのように、日本でも日常的に耳にするなじみのある曲からスタートするのがおすすめです。メロディーを覚えるための認知負荷が少なくなる分、歌詞の英語に意識を向けやすくなります。

英語の歌の効果を最大化する「かけ流し」の正しいやり方

保育園での「英語かけ流し」は手軽に始められる方法として広まっていますが、やり方を間違えると効果が出にくい可能性があります。ただ流すだけ、というアプローチは一定の効果はありつつも、より効率的な方法があります。

ポイントは「音に意味をつなげること」です。先ほどの研究でも示されたとおり、言語の記憶は身体感覚と結びついていると記憶に残りやすくなります。かけ流しの時間でも、保育士が率先して曲に合わせた動きをしてみせるだけで、子どもたちが自然とまねし始めます。

「英語耳」の臨界期は9歳前後と言われています。この時期を過ぎると、母国語以外の言語の音を聞き分ける力が低下しやすくなります。言い換えれば、保育園・幼稚園の時期こそが英語の音に慣れる最大のチャンスです。ただし、ここで誤解してほしくないのは「かけ流すだけで勝手に話せるようになる」わけではないという点です。かけ流しは「英語の音に慣れる」ための土台作りとして機能します。

効果的なかけ流しのコツをまとめます。

  • 同じ曲を毎日繰り返す:同じ曲を3週間聞き続けるだけで発音力の向上が確認されています(佐藤久美子名誉教授研究)。継続が基本です。
  • 静かな環境で流す:雑音の多い環境では音の聞き取り精度が落ちます。給食後のリラックスタイムや朝の会の前後がおすすめです。
  • なじみのある曲から始める:Twinkle Twinkle Little StarやABCソングなど、子どもがすでに知っているメロディーを活用するとスムーズです。
  • 週に1〜2曲のペースで少しずつ追加する:曲数を増やしすぎると、どの曲も定着しません。1曲をしっかり覚えてから次へ移る方が定着します。

かけ流しに使えるコンテンツとしては、YouTubeの「Super Simple Songs」チャンネルや「Pinkfong(ピンキッツ)」が保育現場でもよく活用されています。字幕表示もできるため、保育士自身が歌詞を確認しながら使えるのも便利な点です。

保育士ならではの視点:英語の歌を「楽しい遊び」として維持するための注意点

これは検索上位の記事ではあまり語られない話ですが、保育士が英語の歌を取り入れる際に見落としがちな視点があります。それは、「英語を教えようとしすぎると逆効果になる」というリスクです。

手遊び歌の研究者でもある児島亜矢子氏(2021)は次のように述べています。「手遊び歌はあくまで『遊び』であり、要素的な知識や技能を習得させる手段として行われるとするなら、それは『遊び』ではない」。つまり、英語習得の目標を前に出しすぎると、遊びとしての本質的な喜びが失われてしまうということです。これは大切なポイントですね。

保育士が実際の現場で気をつけたいことを整理しましょう。

  • ⚠️ 発音を「正しく言えたかどうか」で評価しない:幼児期は楽しさが最優先です。発音の正確さよりも、「また歌いたい!」と思えるような体験を積ませることが大切です。
  • ⚠️ 「振り付け→メロディー→英語」の順番にならないよう注意する:子どもは動きを覚えることに必死になるため、英語の発音が最後回しになりがちです。歌詞を先に聞かせてから動きを加える順番を意識しましょう。
  • ⚠️ 保育士自身が楽しむ姿を見せる:英語が苦手な保育士も多いですが、完璧な発音よりも「楽しそうに歌う姿」の方が子どもには伝わります。まず自分が楽しんで歌うことが一番の導入です。
  • ⚠️ 強制しない:歌いたくない子どもに無理に歌わせると、英語へのネガティブな印象が生まれます。聞いているだけでも十分な経験になります。

英語の歌を保育に取り入れる目的は「英語の習得」だけではありません。異文化への興味・関心を育てること、リズム感や表現力を養うこと、友達と一緒に声を合わせて歌う喜びを経験させることも含まれています。英語の歌は、保育5領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)すべてに関わる活動でもあります。意識を広げることが重要です。

英語が不安な保育士向けには、動画に合わせて一緒に歌えるYouTube「Super Simple Songs」や「Sesame Street公式チャンネル」がおすすめです。ネイティブの自然な発音を耳で確認しながら、保育士自身も楽しく学べます。準備の手間も少なく、明日から使えるコンテンツが揃っています。

参考:保育所保育指針と手遊び歌の活用について

英語の手遊び歌が保育現場で持つ意義と理論的背景|Bilingual Science

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