絵本の歌を保育園で活かす選び方と効果的な使い方
絵本の歌を読み聞かせ動画としてSNSに投稿すると、最大1,000万円の罰金刑になることがあります。
絵本の歌が保育園の子どもに与える発達効果とは
保育園で「絵本の歌」や「うた絵本」を活用することは、単に場を盛り上げるためだけではありません。歌が伴う絵本の読み聞かせは、子どもの多面的な発達を同時に支える、非常に効率的な保育実践です。
🧠 発達に働きかける5つの力
| 発達領域 | 具体的な効果 |
|---|---|
| 言語力・語彙力 | 旋律にのった言葉が記憶に残りやすく、語彙が増える |
| リズム感・音楽性 | 拍やメロディーを体で感じ、音楽的基礎が育つ |
| 感情表現 | 登場人物の感情を歌と絵で追体験し、共感力が高まる |
| 社会性・協調性 | みんなで歌うことで一体感が生まれ、集団への適応力が育つ |
| 集中力・記憶力 | 繰り返しの歌詞とページめくりが注意を持続させる |
大阪芸術大学の研究によると、歌遊びやわらべうた遊びは「歌の中の言葉が旋律に助けられ、子どもの言葉の発達につながる」とされています。普通の読み聞かせでは一度聞いただけで忘れてしまいがちな言葉も、メロディーにのると子どもはずっと覚えていられます。これは言語能力が基礎です。
また、友達と一緒に歌うことで生まれる一体感は、保育園という集団生活の場において特に重要です。1人では恥ずかしくて声が出せない子でも、みんなで歌う場面なら自然に声を出せるようになることは、多くの保育士が経験的に知っているはずです。
乳児期(0〜2歳)では特に、ゆったりとしたリズムの歌絵本が安心感を与えます。保育士の声がリズムと合わさると、子どもは心が落ち着き、保育士との愛着関係を深める効果もあります。つまり絵本の歌は保育の基盤です。
大阪芸術大学「保育における手遊びの効果」論文PDF(言葉の発達・音楽的発達との関連が詳述されています)
絵本の歌の保育園向け年齢別おすすめと選び方
絵本の歌を選ぶときに「子どもが喜ぶかどうか」だけを基準にしている保育士は多いですが、実は年齢ごとの発達段階に合った選び方をすることで、活動の質が大きく変わります。
🍼 0〜1歳:音とリズムで世界を感じる時期
0〜1歳の乳児には、伴奏がない「歌声のみ」のシンプルな歌絵本が向いています。実は、乳児は伴奏があると音の情報が多すぎて、処理が追いつかない場合があります。保育士がやさしく語りかけるように歌うことが最も効果的です。
この時期のおすすめ絵本の歌には以下のようなものがあります。
- 🌸 『とんとんとんとんひげじいさん』(手遊び歌絵本):指先の動きを楽しみながら、表情も真似できる
- 🐣 『たまごのうた』:繰り返しのリズムが心地よく、何度も聞きたがる
- 🎵 『あぶくたった』(わらべうた絵本):昔ながらの音程が乳児の耳に馴染みやすい
🌈 2〜3歳:まねっこと繰り返しを楽しむ時期
2〜3歳になると、語彙が急速に増え「自分でも歌いたい」という欲求が出てきます。歌詞付きで、繰り返しのパターンがある絵本の歌が最適です。
- 🎨 『どんないろがすき』(作詞・作曲:坂田修):色の名前を覚えながら、「赤!」「青!」と一緒に声が出せる。フレーベル館から刊行されており、1歳児クラスから3歳児クラスまで幅広く使われている定番中の定番です
- 🤲 『さかながはねて』:手遊びと連動しており、体を使いながら楽しめる
🌟 4〜5歳:物語性のある歌絵本で表現力が広がる時期
4〜5歳になると、ストーリーを追いながら歌えるようになります。歌詞に意味やドラマがある絵本を選ぶと、想像力と感情表現が同時に育ちます。
- 🚶 『さんぽ』(作詞:中川李枝子 作曲:久石譲):スタジオジブリ「となりのトトロ」の主題歌で子どもたちに大人気。絵本版も複数刊行されており、歌いながらページをめくる喜びがある
- 🎶 『やまのおんがくか』:登場するさまざまな動物と音楽の掛け合いが楽しく、表現の幅が広がる
選び方のポイントを一つだけ覚えておけばOKです。それは「繰り返し歌えるシンプルさがあるか」です。子どもは同じ歌を何十回と繰り返すことで安心感を得て、そこに発達の土台が生まれます。
保育のせかい「保育園でうたあそびが子どもに与える影響とは?」(年齢別の選曲ポイントと発達効果が詳しく紹介されています)
絵本の歌の保育園での読み聞かせを成功させるコツ
絵本の歌を読み聞かせる際、「うまく歌えるかどうか」を心配する保育士は少なくありません。しかし、子どもにとって大切なのは保育士の歌声の上手さではなく、一緒に楽しんでいるかどうかです。
読み聞かせを成功させるための実践ポイントを整理します。
✅ 読み聞かせ前の準備
- 絵本を事前に読み込んで、歌のメロディーと歌詞の流れを自分の中で確認しておく
- 環境は「静かで、保育士の背景がシンプルな場所」を選ぶ(視覚的な刺激が多い環境では子どもの集中力が分散します)
- 人数と年齢に合ったサイズの絵本を用意する(0〜2歳なら10人程度まで、見やすい絵が大きい本を)
🎤 読み聞かせ中のポイント
声色の変え方については、大げさにやりすぎると逆効果です。意外ですね。声色を過剰に変えると子どもの注意が「保育士の演技」に向いてしまい、絵本の世界への集中が途切れることがあります。
おすすめは「ページの場面転換に合わせて声のトーンをやや変える」程度に留めることです。たとえば怖い場面は少し低くゆっくり、楽しい場面は明るく少し速めに読む、それだけで十分です。
読み終えたあとにすぐ「どうだった?」と質問攻めにするのも避けましょう。余韻が重要です。歌が終わったあとのしばらくの沈黙や、子どもが自然に口ずさむ時間を大切にすることが、歌と絵本の記憶を深く定着させます。
🔁 繰り返し読み聞かせるメリット
子どもが「また読んで」と言ってきたとき、それは最高のサインです。同じ絵本の歌を繰り返すことで子どもは歌詞を暗記し、次第に保育士と一緒に歌えるようになります。この「一緒に歌える瞬間」が、言語発達と自己表現の大きなステップになります。繰り返しが基本です。
絵本文化推進協会「読み聞かせのコツ やってはいけない意外なNG4つ」(声色・スピード・環境など、読み聞かせの注意点が体系的にまとめられています)
絵本の歌を保育園でSNS発信する際の著作権の注意点
保育の記録や情報発信としてSNSやYouTubeに絵本の読み聞かせ動画を投稿している保育士が増えています。しかし、これは著作権法上で極めてリスクの高い行為です。
⚠️ 知らないと損する著作権の基礎知識
絵本の歌の読み聞かせ動画をインターネットに無断投稿した場合、著作権法第119条により、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科される可能性があります。「善意でやっていた」「子どものためだった」という動機は、法律上の免責理由にはなりません。
具体的にNGとなる行為を確認しておきましょう。
- ❌ 保育士が絵本を読んでいる動画を園のSNSやYouTubeに投稿する(「絵の部分を映さなくても」音読だけでも公衆送信権の侵害になります)
- ❌ 絵本のページをコピーして、ペープサートやスケッチブックシアターの絵柄をそのまま使う(複製権の侵害)
- ❌ ネットで見つけた絵本の挿絵をお便りに使い、それをホームページに掲載する
一方、保育室内で子どもたちに読み聞かせるだけであれば問題ありません。著作権法第38条により、非営利・無料・無報酬の条件を満たす場合は、施設内の読み聞かせは認められています。施設内だけなら問題ありません。
🎵 音楽(歌)の著作権については特に注意が必要です
「さんぽ」「どんないろがすき」などの人気絵本の歌には、作詞者・作曲者・演奏者それぞれに著作権が発生します。JASRAC(日本音楽著作権協会)が一括管理しており、園のホームページや保護者向け動画に使う場合は手続きが必要になることがあります。
ただし、YouTubeにアップする場合はYouTube自体がJASRACと包括契約を結んでいるため、保育士が自ら演奏・歌唱した動画は比較的対応しやすい環境にあります。ただし「絵本のページを映す」行為は別問題です。音楽著作権と出版社の著作権は別々に処理が必要です。
保育士として安心して情報発信を続けたい場合は、JASRAC公式サイトまたは日本児童文芸家協会の著作権ガイドラインで最新情報を確認することをおすすめします。
日本児童文芸家協会「著作権情報・読み聞かせガイドライン」(読み聞かせ動画の可否・手続き方法が明記されています)
学童クラブ「著作権法に注意!学童や保育園で知らないとヤバい違反行為」(読み聞かせ・塗り絵・音楽・DVDなど保育現場の具体的なケースを網羅)
保育士が現場で使える絵本の歌の独自活用アイデア
ここまで紹介してきた発達効果・選び方・著作権の知識を踏まえた上で、実際に保育室で取り入れやすい活用アイデアを紹介します。検索上位の記事ではあまり触れられていない、現場目線の工夫です。
朝の会に短い絵本の歌を1曲取り入れると、子どもたちが一日の始まりを楽しみにするようになります。毎日同じ曲を2〜3週間繰り返すことで、月末には全員が歌えるようになる達成感が生まれます。これは使えそうです。
帰りの会では、少し落ち着いた雰囲気の歌絵本(わらべうた系)が向いています。体を鎮めながら一日を振り返る時間として機能します。
🌦️ 季節・行事ごとのテーマ選曲
絵本の歌は季節行事と組み合わせることで、子どもの生活との結びつきが強まります。
| 季節・行事 | おすすめ絵本の歌のテーマ |
|---|---|
| 春(入園・進級) | 「おはなしおはなし」などの導入歌 |
| 6月(梅雨) | 「あめふりくまのこ」「ニャニュニョのてんきよほう」 |
| 夏(七夕・お祭り) | にぎやかなリズム系の手遊び歌絵本 |
| 秋(運動会前) | 元気なテンポの絵本の歌でウォームアップ |
| 冬(クリスマス・発表会前) | 「ゆきのひのうさこちゃん」などしっとり系 |
🎭 絵本の歌を劇遊び・オペレッタにつなげる工夫
4〜5歳クラスでは、繰り返し読み聞かせしてきた絵本の歌を劇遊びに発展させることができます。『はらぺこあおむし』(作:エリック・カール、日本語版:もりひさし、歌:新沢としひこ)のように、歌と物語が連動した絵本は特に劇化しやすい素材です。
ただし、発表会の劇で絵本の内容を使う場合は、「著作物の題名・著作者名・出版社名の明示」「営利目的でないこと」などの条件を満たす必要があります。著作権法が条件です。事前に確認しておくことで、万一のトラブルを防げます。
🎧 保護者への「おうち絵本の歌」提案という視点
保育参観や保護者向けおたよりで、家庭での絵本の歌の楽しみ方を提案するのも有効な関わりです。「今月は○○という歌絵本を読んでいます。おうちでも一緒に歌ってみてください」と伝えるだけで、保育園と家庭をつなぐ橋渡しになります。
家庭でも歌える定番の絵本の歌として「どんないろがすき」「しあわせならてをたたこう」などは、保護者世代も知っている曲が多いため、親子で自然に歌える環境が整いやすいです。親子の歌が目標です。
親子がおうちで歌う機会を意識的に増やすと、子どもの語彙発達の速度が上がることも複数の研究で示されています。Hart & Risley(1995)の研究では、幼少期の語りかけの量が語彙力の発達に直結することが報告されており、歌による語りかけはその質と量を両立できる手段として注目されています。


