ドミナントと保育と和声
ドミナントと和声の機能とトニック
ドミナントは、和声の中で「次にトニックへ進みたい」という性質(緊張)を作る役割として説明されることが多く、トニックは安定、ドミナントは緊張という対比で理解すると整理しやすいです。
保育実習理論の学習では、機能和声を「トニック(T)・サブドミナント(S)・ドミナント(D)」の3分類で扱う整理が繰り返し登場し、和音の働きを“文法”として見る考え方が有効です。
一見すると抽象的ですが、現場の伴奏では「落ち着かせたい(トニック)」「盛り上げたい(ドミナント)」のコントロールに直結し、歌の終わり方や間の取り方が安定します。
保育のピアノ伴奏で迷いやすいのは、楽譜に書かれた和音が“何をしたいのか”が読み取れないときです。そこで、まずは「終止(カデンツ)」を探します。終止は多くの場合、ドミナント→トニックの流れで“終わった感じ”を作ります。
特に子どもの歌は、シンプルな三和音(Ⅰ・Ⅳ・Ⅴ)中心で書かれることが多く、Ⅴ(ドミナント)を見つけられると全体の見通しが急に良くなります。
参考)保育士さんにおすすめ!楽譜が苦手でも弾ける童謡ピアノ伴奏のコ…
逆に、ドミナントがどこにも見当たらないと感じる場合は「転回形」「省略」「装飾音」などで形が見えにくくなっている可能性があるので、次のH3で“見分け方”を具体化します。
ドミナントと属七和音と保育実習理論
保育実習理論で頻出の「ドミナント」は、属七和音(ドミナントセブンス)として問われることが多く、近年の問題でも「属七和音(ドミナントセブンス)を抽出する」形式が繰り返し解説されています。
属七和音は、根音から「長三度→短三度→短三度」で積み重ねた4音でできる、という形で説明されることがあり、構造で覚えると移調されても対応しやすいです。
また、保育士試験対策の解説では「最近問われているのはC7のように“根音+7”表記の属七和音が中心」と整理されているため、まずは“属七だけ確実に見分ける”作戦が現実的です。
では、試験での“処理手順”を、現場にも転用できる形に落とします。
結論から言うと、属七和音は「4音(ただし重複は1つと数える)」「3度堆積(並べ替えると3度ずつ)」を満たす可能性が高いです。
YouTube解説でも、和音問題を解くポイントとして「3度で積み重ねた配置に調整すること」「和音の構造と名称の知識」など、並べ替え作業が強調されています。
実務での“耳”にも効く小ネタがあります。属七和音は、Ⅴに7th(短7度)が加わることで、三和音よりも“早く解決したくなる”響きになります。
参考)保育士試験科目「保育実習理論」ー音楽について 3.コードネー…
子どもが歌い渋る場面(次のフレーズに入りにくい、転調後に迷う)では、この「解決したくなる圧」を薄く入れるだけで、歌い出しが揃いやすいケースがあります。
参考)https://ameblo.jp/hiro40574251/entry-12662825699.html
もちろん入れ過ぎると落ち着かない伴奏になるので、園では「強く鳴らす」のではなく「短く置く」「左手を軽くする」など、音量より配置で調整するのが安全です。
ドミナントと和音とコードネーム
童謡や子どもの歌の伴奏は、コードネーム(和音記号)を使うとシンプルになりやすく、「C=ドミソ」「F=ファラド」「G=ソシレ」のように“和音として読む”入口が作れます。
同じ解説内で、ハ長調・ト長調・ヘ長調・ニ長調などの基本調では「Ⅰ・Ⅳ・Ⅴの和音を演奏すれば伴奏ができる」と整理され、ドミナント(Ⅴ)を軸にすると迷いが減ることが示されています。
さらに、編曲によってはⅤがⅤ7として書かれることがあるが、まずはⅤで弾いても成立する、という割り切りが紹介されているため、現場では“まず簡略版で安定”→“余裕が出たらⅤ7”が現実的です。
コードネームでドミナントを扱うコツは、「その曲の“家(トニック)”がどこか」を先に決めることです。家が決まると、Ⅴは自然に決まり、ドミナントが“どの音から始まる和音か”が見えてきます。
また、ドミナント機能はⅤ以外にも存在しうる、という説明もあるので、曲によってはⅤが見えにくいのに“ドミナントっぽい圧”が出ることがあります。
ただし保育実習理論の試験対策としては、まずⅤとⅤ7(属七和音)を盤石にしてから、周辺のドミナント機能に手を広げるほうが得点に直結します。
参考)解ける音楽理論☆ドミナントセブンスを探せ!過去問で特訓(令和…
ここで、保育者がやりがちな「かっこいい和音を入れたくなる」問題に触れます。
最近はSNSやレッスン系で「セカンダリードミナント」を童謡アレンジに使う話題も見られますが、園の現場で多用すると歌の安定より“伴奏の主張”が勝つことがあります。
参考)Instagram
よって、ねらいは“子どもが歌いやすい道筋作り”に置き、ドミナントは「区切り・合図・次へ進む力」を作る用途に限定するのが安全です。
参考)https://www.nankyudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/HDR7_0004.pdf
ドミナントとカデンツとピアノ
保育者・教員養成の文脈では、カデンツ(終止形)を「トニック―ドミナント―トニック」などの和声進行として捉え、ドミナントが緊張、トニックが弛緩の性格を持つ、という説明がされています。
この整理は、試験の和音問題だけでなく、実際の弾き歌いで「終わりが締まらない」「間奏が落ち着かない」といった悩みの修正にも直結します。
つまり、指を速く動かす練習より先に「どこでドミナントを置いて、どこでトニックに戻すか」を決めるほうが、短時間で“それっぽい伴奏”に近づきます。
現場で使える、カデンツの小技を具体化します。
・曲の最後の2小節だけ「Ⅴ→Ⅰ」を意識して、左手は根音(またはオクターブ)を置き、右手は3音だけで構成する(忙しい日はこれで十分)。
・終わりがぼやけるときは、ドミナントの手前で少し息を吸えるテンポ感(ほんのわずかな間)を作ると、子どもも一緒に“終わり”を共有しやすいです。
・逆に行事でキリッと終わりたいときは、ドミナントを長めに保持してからトニックに戻すと、終止の説得力が上がります。
参考)https://tokyo-kasei.repo.nii.ac.jp/record/10174/files/2017_ky_0048.pdf
意外と見落とされるのが、「カデンツは“ミスを目立たせにくい”」という現場メリットです。
伴奏中に1音外しても、最後の終止がドミナント→トニックで整うと、聴き手は“着地した安心感”を優先して受け取ることが多いからです。
試験でも現場でも、結局は「最後を整える力」が評価や安心につながるので、カデンツはコスパが高い練習ポイントになります。
参考:保育者・教員養成でのカデンツ(終止形)指導、ドミナント(緊張)とトニック(弛緩)の説明
https://tokyo-kasei.repo.nii.ac.jp/record/10174/files/2017_ky_0048.pdf
ドミナントと保育と転調(独自視点)
検索上位の試験対策は「属七和音を見分ける」に寄りがちですが、保育の現場ではドミナントを「転調の合図」として扱えると、歌唱活動が安定しやすいです。
たとえば、童謡を弾く保育士にとって弾きにくい調や、歌の途中で転調が入る場合、転調直前にドミナントをしっかり響かせるとメロディーが強調され、子どもたちを誘導できるという実践的な言及があります。
ここでのポイントは、難しい理論より「子どもが迷う場所の直前で、ドミナントで“次へ行くよ”のサインを出す」という運用です。
転調場面の“ありがちな失敗”も整理しておきます。
・伴奏者だけが転調して、子どもが元の調で歌い続ける(結果、園全体が一瞬混乱)。
・転調が怖くて、ドミナントを避けてしまい、どこにも進まない“ふわっとした伴奏”になる。
・属七和音をフルで鳴らそうとして、左手が重くなりテンポが落ちる(歌が息切れする)。
対策はシンプルで、「転調の直前だけ、ドミナントを分かりやすく」「転調した直後は、トニックを分かりやすく」です。
具体的には、転調前:左手はドミナントの根音だけ(または5度)にして、右手は3音でⅤ(余裕があればⅤ7)を短く置く、という“軽いのに伝わる”形が安全です。
転調後:最初の1小節はトニックをはっきり提示し、子どもの音程が定まってから装飾や分散和音を増やすと、歌の安心感が上がります。
最後に、保育実習理論の学習と現場をつなぐ練習メニューを置きます。
・保育実習理論:属七和音(ドミナントセブンス)を「3度堆積に並べ替える」練習を、1日3問だけ回す(短時間で継続)。
・ピアノ:童謡を1曲選び、最後の2小節だけカデンツ(ドミナント→トニック)を毎回同じ型で弾き、手癖として固定する。
・保育:子どもが入りにくい箇所を見つけたら、その1小節前にドミナントを置いて「合図」を作る(音量ではなくタイミングで誘導)。


