ダルクローズ リトミック 論文が示す保育士が知るべき実践と発達効果

ダルクローズ リトミック 論文から学ぶ保育実践と発達効果

リトミックを「音楽が好きな子向けの習い事」として導入しても、発達支援の効果はほとんど得られません。ousar.lib.okayama-u.ac+1

📚 この記事の3ポイント要約
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リトミックは「音楽教育」ではなく「人間教育」

ダルクローズが論文で示したリトミックの目的は、音楽的スキルより先に、思考力・反射力・情緒の安定を育てることにあります。

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論文研究が示す「3つの柱」を知らないと指導が偏る

リトミック・ソルフェージュ・即興演奏の3要素をバランスよく扱わないと、保育現場での効果が半減することが研究で指摘されています。

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発達障害児への応用研究も進んでいる

ダルクローズメソッドを用いたリトミック指導がQOL向上に有意な効果を示したという論文が国内でも発表されています。

ダルクローズ リトミックの「3つの柱」と論文が示す本来の目的

 

エミール・ジャック=ダルクローズ(1865〜1950)は、スイスの作曲家であり音楽教育家です。 彼が1905年ごろに提唱したリトミックは、音楽を身体の動きを通して学ぶ教育法として広く知られていますが、その全体構造は「リトミック(リズム運動)」「ソルフェージュ音感教育)」「即興演奏」という3つの柱で成り立っています。jstage.jst+1

保育現場ではリズム運動だけが取り上げられがちです。

しかし論文研究の多くは、この3要素をバランスよく実践することで、子どもの感性・思考力・創造性が統合的に育まれることを示しています。 ダルクローズ自身も「音楽的能力の根底には、リズムを身体で感じとる基礎能力こそが最重要」と述べており、それは単なる音楽スキルの習得ではなく、人間としての感じる力を育てることを最終目的としていました。eurhythmics+1

つまり、リズム遊びとリトミックは根本的に別物です。

リズム遊びが「決められた動きを再現する」のに対し、ダルクローズ・リトミックは「音を聴いて自ら判断し、体で即興的に表現する」ことを重視します。 保育士がこの違いを理解しているかどうかで、子どもに働きかける声かけや活動設計が大きく変わります。

参考)リトミックとは?保育園で取り入れる効果やねらい・やり方を解説…

ダルクローズ リトミック 論文が示す子どもの発達効果(身体・認知・情緒)

国内外の複数の論文が、リトミック実践を通じた子どもの発達効果を多面的に検証しています。 発達への効果は大きく3つの領域に分けられます。

参考)https://keiai.repo.nii.ac.jp/record/2000198/files/1903_futami073-086.pdf

🏃 身体的発達

🧠 認知・思考力の発達

  • 音楽の変化に即座に対応する活動が、集中力・記憶力・思考力を同時に刺激する
  • ダルクローズは「難しいリズムを頭で理解できても、体で表現できない子ども」の存在に着目し、頭と体のつながりを育てることをメソッドの核心に置いた

💛 情緒・社会性の発達

  • グループでのリトミック活動を継続することで、協調性・連帯感・コミュニケーション力が育まれることが研究で示されているtatsuki+1

これは大きな発見ですね。

身体・認知・情緒という3領域をひとつの活動で同時にアプローチできるのが、ダルクローズ・リトミックの最大の強みです。 特に「情緒の安定」は保育士が最も気にかける課題のひとつであり、継続的なリトミック活動がそのサポートになると複数の論文が指摘しています。

参考)https://www.tatsuki.org/DoshishaThesis3/thesis/2005/05_ueda.pdf

ダルクローズ リトミック 論文が指摘する保育士の指導における課題

保育現場でリトミックを実践することは、実は非常に難しいとされています。

参考)https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/58131/20200326164620620918/cted_010_183_197.pdf

遠藤晶(2006年)の調査では、保育者がリトミックの身体表現指導で感じる困難として以下の3点が挙げられています。

  1. 子どもが音楽や保育士の話を基本的に聞けないこと
  2. 子どもが自発的・創造的な表現をしないこと
  3. 解放的な活動の保証と保育の意図の両立が難しいこと

厳しいところですね。

特に3つ目の「活動の自由度と保育の意図のバランス」は、多くの保育士が直面するジレンマです。 ダルクローズ・リトミックの理念は「子ども自身が音楽に反応して動く」ことを大切にしますが、保育士が活動をコントロールしすぎると、それはリトミックではなく「お遊戯の練習」になってしまいます。

また、岡山大学の実践研究では「子どもの主体的な動きを引き出すには、保育士がピアノ演奏を子どもの動きに合わせてリアルタイムに変化させる高度な技術が必要」とされています。 この技術を身につけていない保育士は、リトミックの効果を最大限に引き出せていない可能性があります。

参考)https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/6/61575/20210325140206144725/cted_011_211_223.pdf

以下のリンクでは、保育施設における実践研究の詳細と今後の保育者養成の課題が論じられています。

子どもの主体的な身体表現を引き出すリトミックの保育実践研究(岡山大学)

ダルクローズ リトミック 論文に見る発達障害児への応用可能性(保育士必見の独自視点)

多くの保育士はリトミックを「定型発達の子ども向けの音楽活動」として捉えています。しかし論文は、それが誤解であることを示しています。

参考)https://hijiyama-u.repo.nii.ac.jp/record/201/files/02.pdf

比治山大学の論文では、発達障害のある子どもに対してダルクローズメソッドに基づくリトミック指導を行い、その効果を「子どものQOL(生活の質)尺度」を用いて分析しました。 結果として、リトミック活動を通じてQOLの有意な向上が確認されています。

これは使えそうです。

発達障害児支援においてダルクローズ・リトミックが効果的な理由は、活動の構造そのものにあります。 リトミックは「音楽を聴いて→即座に判断して→体で表現する」という一連のプロセスを繰り返す活動であり、これが感覚統合・注意制御・身体協調を同時に刺激します。 療育的アプローチとしての可能性を持つリトミックは、インクルーシブ保育を実践する保育士にとって非常に注目すべき分野です。repository.itc.u-tokyo+1

東京大学の論文では、ダルクローズが1915年に発表した論文「学校、音楽、喜び」の中で「すべての子どもが感動を感じ取る能力を備えて学ぶべきだ」と述べていることが紹介されており、インクルーシブ教育の先駆け的な思想があったことがわかります。

参考)https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/2000558/files/edu_60_08.pdf

以下の論文では、発達障害児とダルクローズメソッドの実践効果が詳しく論じられています。

発達障害児支援としてのダルクローズメソッドの実践とその効果(比治山大学)

ダルクローズ リトミック 論文を保育実践に活かすための具体的な手順

論文の知見を保育現場に落とし込むには、正しい「活動設計の順序」が鍵になります。ousar.lib.okayama-u+1

以下のステップを参考にしてみてください。

ステップ1:音楽を先に決めない

先に動きありきでBGMを選ぶのではなく、「どんな体験をさせたいか(速い・ゆっくり、強い・柔らかい)」からテーマを決め、それに合った音楽を選ぶ。

ステップ2:子どもの反応を「ピアノで返す」

子どもがドタドタと元気よく動いたら演奏を大きくする、静かに動いたら音量を落とすというように、演奏が子どもの動きに「応答」する形を意識する。

ステップ3:「正解を求めない」言葉がけをする

「こう動いてね」ではなく「この音に合う動き、どんなものがある?」と問いかけることで、子ども自身の即興性・創造性を引き出す。

ステップ4:継続する(最低8回以上)

善本桂子(2010年)の研究では、リトミック活動の効果は継続的な実践(約180名の保育士・学生対象)によって初めて現れることが示されています。 単発の活動では発達への影響はほとんど見られません。

参考)https://h-bunkyo.repo.nii.ac.jp/record/383/files/bunkyokyoiku24(yoshimoto).pdf

継続が条件です。

リトミック指導の資質を高めたい保育士には、日本ダルクローズ音楽教育学会が発行するリトミック・オンライン・ジャーナル「音楽と動き」が参考になります。最新の研究知見が日本語で読める貴重なリソースです。

日本ダルクローズ音楽教育学会 学会誌一覧(最新論文にアクセスできます)

ダルクローズ ピアノ曲集 III (0679)