調理方法と保育と食育とクッキングと衛生

調理方法と保育と食育

調理方法と保育と食育(この記事でわかること)
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クッキングの設計

年齢発達に合わせた工程の切り分け、ねらいの立て方、当日の運営ポイントを整理します。

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衛生・安全の基準

中心温度、作業導線、感染症流行時の判断など、現場で迷いやすい論点を具体化します。

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保育園の歌×食育

歌を「合図」「記憶」「行動」のスイッチにして、手洗い・配膳・後片付けまで自然に定着させます。

調理方法 保育 食育のねらいとクッキングの位置づけ

 

保育の食育で「調理方法」を扱う価値は、レシピ習得よりも先に、子どもが“食を営む力”の基礎に触れる点にあります。厚生労働省の「保育所における食育に関する指針」では、保育所の食育は「食を営む力」の基礎を培うことを目標にし、家庭や地域と連携しながら全職員で進める重要性が示されています。特に「料理と食」の領域では、身近な食材で調理を楽しむこと、準備から後片付けまで自ら関わること、調理器具の使い方を学び安全で衛生的な使用法を身につけることなどが具体的に整理されています。

この整理に沿って考えると、クッキング保育は「イベント」ではなく、日々の生活(給食・おやつ・栽培・行事食)とつながる学びの装置になります。たとえば、ねらいを「旬を知る(食と文化)」「協力して進める(食と人間関係)」「安全に扱う(食と健康)」のように分けると、同じメニューでも観察ポイントが変わり、記録もしやすくなります。

実務で使いやすい“ねらいの書き方”の型は、次の3点セットです。

  • 体験:何をするか(例:ちぎる、混ぜる、盛りつける、見る、においをかぐ)。

  • 気づき:何に気づくか(例:温度変化、香り、色、音、手触り、量の変化)。

  • 行動:次にどうするか(例:手洗いを自分でやる、道具を正しく返す、食べ方を選ぶ)。

意外と効く工夫として、「子どもの発言」をねらいの中心に置く方法があります。調理工程中に“答えを言わせる”のではなく、「どうしてこうなると思う?」と問い、子どもの仮説を残すと、食育が“知識注入”ではなく探究になります。指針が示すように、食育は具体的な子どもの活動を通して総合的に展開されるため、発言の記録はそのまま評価・改善に転用しやすい素材になります。

(指針の全体像:食育の目標、領域「料理と食」等の根拠)

厚生労働省「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針」概要(PDF)

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0604-2k.pdf

調理方法 保育 食育の衛生と安全(中心温度・導線・感染症)

調理方法を保育で扱うとき、最優先は“楽しい”より先に「事故と食中毒の芽を潰す設計」です。札幌市の資料にあるクッキングの留意点(例)では、計画時に安全・衛生的に行える内容にすること、感染症流行時(例:ノロウイルスなど)はクッキングを控えること、衛生管理上「食材が調理室と保育室を行き来しない」導線にすることが示されています。

加熱の基準も、現場でブレやすいので文章化して統一するのが有効です。同資料では、十分な加熱として「中心温度75℃で1分以上(※二枚貝等は85~90℃で90秒以上)」を基本とすることが明確です。また、調理終了後から2時間以内に食べること、揚げ物や熱湯を保育室で扱わないこと、誤嚥・窒息リスクがある料理(例:白玉団子等)を避けることも具体的に示されています。

“意外と見落とされる”衛生の肝は、温度や消毒液より「参加可否の基準」を前日に整えることです。札幌市資料では当日開始前に健康観察(下痢、嘔吐、発熱、傷など)を行い、疑いがあれば調理作業に参加させない点が明記されています。ここを曖昧にすると、当日の現場判断が揺れ、保育士側の心理的負担も増えます。

すぐに園内共有しやすいチェックリスト(短縮版)は次の通りです。

  • 計画:感染症流行状況/導線(食材は行き来しない)/メニュー(加熱しやすい、誤嚥回避)。

  • 当日:健康観察(症状・傷)/手洗い・爪/器具は消毒済み。

  • 加熱:中心温度75℃1分以上(必要に応じ例外を追記)。

  • 喫食:調理後2時間以内。

  • ふり返り:目的・衛生・安全が適切だったか評価。

(クッキング時の衛生・安全・中心温度・導線・感染症流行時の判断の根拠)

札幌市「『クッキング』の留意点(例)」(PDF)

https://www.city.sapporo.jp/kodomo/sengen/documents/shiryou9.pdf

調理方法 保育 食育の年齢別クッキング(食材・調理器具・工程)

年齢別の設計は「できる/できない」で分けるより、“危険の種類”と“体験の質”で工程を切るほうがうまくいきます。厚生労働省の指針でも、子どもが大人の援助を受けながら自分でできることを増やすこと、調理器具の使い方を学び安全で衛生的に扱うこと、身近な大人や友達と協力して調理を楽しむことが「料理と食」に含まれています。

たとえば、園で扱いやすい工程を「非加熱」「加熱」「加熱後の作業」に分けると、衛生設計と保育設計が同時に整います。札幌市資料でも、加熱をしない/加熱後に作業を行う場合は「園児が自分で触ったものを自分で食べる方式にできるもの」といった考え方が示されています(例としてサンドイッチやラップおにぎり等)。この発想は、年齢が低いクラスほど強い味方になります。

実務的な年齢別の“工程の例”を、食育のねらいと結びつけて整理します。

  • 低年齢向け(安全最優先):ちぎる、にぎる、混ぜる、並べる、盛りつける。

  • 中年齢向け(役割分担):計量、のせる順番を話し合う、盛りつけの見た目を考える。

  • 高年齢向け(見通し):材料→手順→注意事項を事前に共有し、自分たちで段取りを組む。

ここで一段深掘りすると、「食育=料理」だけに寄せず、後片付けまでを“学び”にするのが強いです。指針は準備から後片付けまでの食事づくりに自ら関わることを含めています。つまり、布巾の使い分け、机の消毒、器具の返却、エプロンのたたみ方も、調理方法の延長として扱えます。

“意外な効果”として、後片付けを丁寧に設計すると、次回のクッキングへの期待が上がります。子どもにとっては「やりっぱなし」で終わるより、「片付いた=完了」の達成感が残り、活動の見通し(始まり→終わり)も作りやすくなるからです。

調理方法 保育 食育の歌で手洗いと配膳を定着させる(独自視点)

保育園での歌に興味がある読者向けに、調理方法と食育を“歌で回す”設計を提案します。クッキングの現場は「手洗い」「待つ」「交代する」「触らない」「戻す」など、子どもにとって退屈になりがちな行動が多く、ここが崩れると衛生・安全も崩れます。そこで歌を、行動のタイマー兼ルール提示として使うと、声かけの回数が減り、全体の空気が整いやすくなります。

ポイントは、歌を“気持ちを盛り上げるBGM”にしないことです。歌は「合図(開始と停止)」「手順の記憶」「衛生の基準の共有」に使います。札幌市資料で示されるように、手洗いは調理前だけでなく、汚れたものに触った後にも適切に行えているか確認する必要があります。ここを歌で仕組み化すると、個別注意よりも“クラスの習慣”になりやすいです。

使いやすい運用例を、現場目線で具体化します。

  • 🧼手洗い歌:1番=濡らす・石けん/2番=指先・親指/3番=手首/最後=流す→拭く。

  • 🍙交代歌:歌が終わったら道具を置いて、次の子へ「どうぞ」の合図。

  • 🧑‍🍳触らない歌:加熱前の食材(肉・卵など)は大人の担当、と“歌詞で役割”を固定。

  • 🧽片付け歌:机拭き→道具返却→エプロン→うがい手洗い、の順で歌詞にして迷いを減らす。

さらに“意外な改善策”として、歌を「前日予告」にも使うと、当日の混乱が減ります。札幌市資料は事前にエプロン・三角巾、爪切り、参加者の健康状態など、準備の依頼が重要だと示しています。前日に歌で「明日はエプロン」「つめチェック」などを繰り返すと、家庭連携が強まり、忘れ物も減りやすいです。

歌の導入は、活動を軽くするためではなく、衛生・安全を“子どもが主体的に守れる形”に翻訳するための手段です。強い禁止より、クラスの共通言語(歌)として持つ方が、結果的に安全と楽しさの両立に近づきます。

調理方法 保育 食育の計画と評価(記録・改善・連携)

クッキング保育は、実施して終わりにすると「楽しかった」で止まり、次回の質が上がりません。厚生労働省の指針では、食育は全職員の共通理解のもと計画的・総合的に展開される必要があり、その経過や結果を記録し、自己の食育実践を評価し改善することが必要とされています。つまり、記録は“提出用”ではなく、次の安全と学びを良くするための道具です。

記録の項目は、増やしすぎると続かないので、最低限を固定します。

  • ねらい(体験・気づき・行動の3点)。

  • 工程(子どもが触る/触らない、加熱の有無)。

  • 衛生(手洗いのタイミング、中心温度の確認、喫食までの時間)。

  • 子どもの反応(発言、表情、友達との協力)。

  • 次回の改善(導線、道具、説明の順番、歌の運用)。

家庭連携も、やり方次第で“負担”にも“資産”にもなります。指針は家庭と連携して進める重要性を示しており、札幌市資料も保護者へエプロン・三角巾、爪切り、健康状態の連絡などを依頼することを具体的に書いています。連絡帳や掲示は「お願い」を増やすほど反発が出るので、「今日のねらい」「子どもの発言」「家でできる1工程」だけを短く返すほうが継続しやすいです。

“あまり知られていない効き方”として、調理活動の評価は「衛生が守れたか」だけでなく、「見通しを持てたか」を見ると次が整います。見通しが持てない子は、待ち時間に触ってしまったり、手洗いを飛ばしたりしやすいからです。歌・絵カード・手順の復唱など、見通し支援を1つ入れるだけで、安全の再現性が上がります。

(計画・記録・評価改善・家庭地域連携の根拠)

厚生労働省「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針」概要(PDF)

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0604-2k.pdf

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