バイリンガル教育のデメリットを保育士が知っておくべき理由
早期バイリンガル教育を導入している園の約6割で、3歳児の語彙数が単語話者より平均20〜30語少ない時期があると報告されています。
バイリンガル教育のデメリットとして「言語混乱」が起きやすい年齢とは
バイリンガル教育の現場でよく話題になるのが「言語混乱」です。これは、2つの言語が脳内で混在し、どちらの言語も中途半端になってしまう状態を指します。
特に2〜4歳の時期は、母語の基礎語彙を一気に習得する「語彙爆発」の時期と重なります。この時期に複数言語を同時に導入すると、語彙の定着に使えるリソースが分散されるため、単言語の子どもと比べて一時的に語彙数が少なくなることがあります。
つまり「言語が2倍になる」のではなく「各言語の深さが浅くなるリスクがある」ということですね。
カナダのマギル大学の研究では、バイリンガル幼児は各言語の語彙数が単言語児より少ないものの、2言語合計の概念数は同等という結果も出ています。これは「語彙の量的不足」と「概念理解の質的問題」は別物だという重要な示唆です。
保育士が気をつけるべきは、この一時的な語彙数の少なさを「発達の遅れ」と誤解しないことです。発達検査や保護者への説明場面で、バイリンガル環境という背景を必ず考慮する必要があります。
バイリンガル教育のデメリットとして見落とされがちな「母語の土台崩れ」問題
母語がしっかり育っていない段階で第二言語を導入すると、両方の言語が不安定なまま育つリスクがあります。これを言語学では「ダブルリミテッド(セミリンガル)」と呼びます。
ダブルリミテッドとは、どちらの言語も年齢相応の水準に達しない状態のことです。
カミンズ博士が提唱した「閾値仮説(いきちかせつ)」によれば、第二言語の習得が認知的メリットをもたらすには、まず第一言語がある一定水準に達していることが条件とされています。簡単に言えば、「日本語の土台ができていないうちに英語を入れても、両方が中途半端になる」ということです。
これは保育士にとって非常に重要な知識です。保護者から「うちの子、英語を早く始めたいんですが」と相談を受けたとき、年齢や子どもの言語発達段階を踏まえずに「いいですね!」と即答するのは危険です。
母語の発達状況を見極めながら、適切なタイミングで第二言語教育を検討する姿勢が、保育のプロとして求められます。
バイリンガル教育のデメリットと保護者の過剰期待がクレームになるケース
保育士が実際に現場で困るのは、「保護者の期待値と現実のギャップ」から生まれるトラブルです。
早期バイリンガル教育を導入している保育園・幼稚園では、入園時に「2年で英語がペラペラになる」と期待して入園する保護者が一定数います。しかし実際には、幼児期の第二言語習得は「聞き流し期間」が長く、発話が出るまでに1〜2年以上かかることも珍しくありません。
これが誤解の温床になります。
「お金を払っているのに子どもが話せない」「他の子は単語を言えるのにうちの子は…」という保護者の不満は、保育士へのクレームとして向かってくることがあります。英語教育に特化した園では、こうした保護者対応に追われて本来の保育業務に支障が出るケースも報告されています。
対策として有効なのは、入園説明会の時点で「幼児の言語習得プロセス」を丁寧に説明し、保護者と共通認識を持つことです。具体的な目標設定(例:「1年後に色の名前を10個言える」など)を文書で共有しておくと、後々のトラブル防止につながります。
バイリンガル教育のデメリットとして保育士が直面する「教材・環境コスト」の現実
バイリンガル教育を質高く実施するためには、相応のコストがかかります。これは保護者だけでなく、保育士側にとっても大きな課題です。
ネイティブ講師を常駐させるためのコストは、月額20〜50万円程度が相場とされています(講師の雇用形態や地域によって異なります)。これを保育園の収益構造でまかなうには、保育料の値上げか、補助金への依存が必要になります。
コスト面が整わないと、教育の質が維持できません。
コストをかけられない現場では「DVDやタブレットによる英語コンテンツ流し」だけになってしまうケースがあります。しかし研究では、画面越しの言語インプットは、生身の人間との対話に比べて語彙定着率が著しく低いことが示されています。米国の研究では、6〜24ヶ月の乳幼児は動画よりも生身の大人との会話から約6倍効率よく言語を習得するというデータもあります。
保育士として、こうした教育コンテンツの質を見極める目を持つことが重要です。「英語教育をやっている」という見せかけだけの環境が、子どもの発達に対してプラスにならないどころかマイナスになるケースもあることを、現場の感覚として持っておく必要があります。
<参考:American Academy of Pediatrics メディアと幼児の言語発達に関する声明>
米国小児科学会「子どものメディア利用に関するガイドライン」
バイリンガル教育のデメリットを補う「保育士独自の関わり方」という視点
ここまで紹介したデメリットを踏まえると、バイリンガル教育は「導入するかしないか」の二択ではなく、「どう関わるか」が保育士の専門性の見せ所だということがわかります。これは検索上位の記事ではあまり触れられていない独自の視点です。
保育士に求められるのは「英語を教える力」ではありません。
大切なのは、子どもが2言語の間で混乱しているサインに気づき、適切に対応する観察力です。例えば、普段より発話が減った、特定の場面で固まるようになったといった行動の変化は、言語的なストレスのサインである可能性があります。
こうした変化を記録し、保護者と情報共有することが、保育士としての本来の役割です。英語教育の専門家でなくても、「子どもの状態を言語化して伝える」ことは保育士にしかできない仕事です。
また、母語である日本語の豊かな体験(絵本の読み聞かせ、歌、言葉遊びなど)を意識的に増やすことが、バイリンガル教育のデメリットを緩和するうえで最も効果的なアプローチとされています。つまり「英語を増やす」より「日本語を深める」ことが、長期的な言語発達に貢献するということですね。
<参考:国立国語研究所 多言語環境下の子どもの日本語発達>
国立国語研究所 公式サイト(多言語・バイリンガル研究の基礎資料として)

バイリンガル教育の方法: 12歳までに親と教師ができること

