倍音の出し方と声の響かせ方を保育士が習得するコツ

倍音の出し方と声を響かせる仕組みを保育士が知るべき理由

大声を張り上げるほど子どもには届きにくい声になっている。

この記事でわかること
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倍音とは何か?声の仕組みを理解する

声帯で作られた基音に重なる複数の周波数(倍音)が、声の豊かさ・通りやすさを決めています。喉だけで出す声では倍音が生まれません。

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保育士こそ倍音のある声を必要とする理由

声帯結節は保育士に多い職業病です。倍音のある「響く声」を身につければ、喉を傷めずに子どもに声を届けることができます。

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今日からできる倍音トレーニング

ハミング・腹式呼吸・共鳴腔のコントロールなど、現場でもすぐ取り組める具体的な練習方法を紹介します。

倍音とは何か?声の基本から保育士が理解すること

 

声を出すとき、実は1つの音だけが鳴っているわけではありません。メインとなる音(基音)に加え、その整数倍の周波数をもつ複数の音が同時に鳴っています。この「重なり」こそが倍音であり、声の豊かさや個性を決定づける要素です。

たとえば「ラ(440Hz)」の音を出すと、同時に1オクターブ上の「ラ(880Hz)」、さらに上の「ミ(1320Hz)」なども鳴っています。これらは高さとして耳には入らず、「声の質感」「声色」として感じられます。カラオケの音程バーに表示される音は基音であり、それ以外に重なっている成分がすべて倍音です。

つまり、倍音が豊かな声は「大きい声」とは全く別ものです。

倍音が少ない声は音が一本線のように聞こえ、遠くに届きにくい性質があります。一方、倍音が多い声は音量が小さくても広がりをもち、自然と相手に届きます。騒がしい保育室でも力まずに子どもに聞こえる「通る声」の正体は、まさにこの倍音の多さです。

倍音には大きく2種類あります。整数次倍音は共鳴腔(口・鼻・喉)を使って作られ、声に芯やキラキラ感を加えます。非整数次倍音は息の使い方で生まれ、ハスキーさや温かみを与えます。宇多田ヒカルや夏川りみのように「声に引き込まれる」歌手は、この2種類の倍音をバランスよく使いこなしているのです。

倍音とは?活用方法や「よい声」を作る方法をプロがわかりやすく解説|Bee Music

保育士に声帯結節が多い理由と倍音の関係

声枯れは保育士の職業病です。これは大げさでもなく、実際に保育士・幼稚園教諭に声帯結節(声帯に硬いしこりができる状態)が多いことは音声医学の分野でも指摘されています。声帯結節が生じると声がかすれ、一度悪化すると数週間から数か月の沈黙療法が必要になるケースもあります。

なぜ保育士にこのリスクが集中するのか。原因は「喉頭を上げながら強く発声する」という発声パターンにあります。騒がしい保育室で子どもに声を届けようとするとき、多くの保育士は無意識に喉仏を押し上げながら大声を張り上げます。この動作は声帯同士が強く擦れ合う面積を増大させ、継続することで声帯に炎症やしこりをもたらします。

問題なのは、大声を張り上げるほど倍音が生まれにくいという点です。

喉に力が入ると声帯周辺の筋肉が固まり、共鳴のためのスペースが狭くなります。結果として声は平坦になり、倍音が生まれないまま大音量だけが出ている状態になります。子どもに届きにくく、喉にも損害を与える、二重のデメリットです。

一方、倍音の豊かな声は「響きの力で遠くに届く」仕組みを持っています。鼻腔共鳴を活用した発声では、喉への直接負担が大幅に軽減されながら、声の通りが向上します。大阪信愛学院の研究論文でも「鼻腔共鳴の利用は声帯への負担を減らし、声をより大きく・響かせる重要な作業」と明記されています。つまり、倍音を出す発声法を習得すること自体が、声帯結節の予防につながるのです。

教育者・保育者が目指すべき発声法―歌声からの考察|大阪信愛学院(PDF)

倍音の出し方の鍵となる3つの共鳴腔コントロール

倍音は声帯だけでなく、声が通る空間(共鳴腔)の使い方で生まれます。重要なのは「咽頭腔(喉)」「口腔(口)」「鼻腔(鼻)」の3箇所です。それぞれ役割が違います。

咽頭腔(喉)で声色・太さを決める

喉の空間を広げると声に太さや低音感が加わります。感覚としては「あくびをしかけた瞬間」です。このとき喉仏が平常時より少し下がっていれば、喉が開いている証拠です。舌の奥を下げすぎると声がこもるので注意が必要です。

口腔(口)で声の明るさ・輪郭を決める

口を縦方向に開く意識を持つことで声が前方に集まります。横に広げると首の筋肉が引っ張られて喉が固まるので、「顎を下に下げるイメージ」で開くのが正解です。これが声の明るさや輪郭を作ります。

鼻腔(鼻)で倍音を増幅・声量をアップさせる

最も保育士に意識してほしい共鳴腔です。鼻腔に声を響かせると、倍音が強調されて声の通りが増します。騒がしい保育室でも力まずに届く声は、この鼻腔共鳴によって実現します。声量がアップし、声に芯が出て、高い声も出やすくなるのです。保育での手遊び歌や読み聞かせにも直接役立ちます。

この3つを「喉=LOW、口=MIDDLE、鼻=TREBLE」のイコライザーだと考えると整理しやすいです。鼻腔を使うだけでこのイコライザーのTREBLEが上がり、倍音成分が増え、声が遠くまで届くようになります。

保育者・教員養成課程における発声指導の必要性|東海学院大学(PDF)

保育士が今日からできる倍音の出し方トレーニング

倍音を出す声は、短期間の練習でも確実に変化を実感できます。以下の3つのステップは、喉への負担がほぼゼロで取り組めるため、声枯れが気になる保育士にも安全です。

ステップ1|ハミングで鼻腔共鳴を体感する(毎日1〜2分)

口を軽く閉じ、「んー」と低めの声を出します。このとき鼻の付け根や頬骨のあたりに微かな振動を感じれば、鼻腔共鳴が起きている証拠です。振動は鉛筆の先を頬に軽く当てるような細かさです。この感覚をつかむだけで、発声の質が大きく変わります。

ハミングは声帯への接触がほとんど発生しないため、声が疲れた日や声枯れ気味のときでも安全に実践できます。これが原則です。

ステップ2|腹式呼吸で息の土台を整える(毎日2分)

倍音の多い声には、安定した息の圧力が必要です。仰向けに寝てお腹に手を置き、息を吸ったときにお腹が膨らむのを確認します。慣れたら立った状態でも同じ感覚が再現できるようになります。息が浅いと共鳴腔が開かず、倍音が生まれる余裕もなくなります。

ステップ3|母音「あ・お」をゆっくり伸ばす(毎日1〜2分)

「あー」「おー」と口を縦に開けながら声を伸ばします。声を前に集めるイメージで出すと、自然と口腔・鼻腔が響き、倍音が乗りやすくなります。1回の発声を5〜8秒程度伸ばすのが目安です。保育室に入る前の朝のウォームアップとして最適です。

これは使えそうですね。

練習の進み具合を確認したい場合は、スマホの録音機能を使う方法がおすすめです。練習前後の声を録音して聴き比べると、響きの変化を客観的に確認できます。Androidでも iPhoneでも標準の録音アプリで十分です。自分の耳だと骨伝導の影響で実際の声と違って聞こえるため、録音チェックが上達の近道になります。

倍音のある声が子どもに与える安心感と保育現場への応用

倍音が豊かな声は、音量に関係なく聴く人に「安心感」「包まれるような温かさ」を感じさせます。これは複数の周波数が重なることで音が丸く広がり、脳が「心地よい音」と受け取るためです。赤ちゃんが母親の声を聴いて落ち着くのも、この倍音成分が豊富だからだといわれています。

保育現場では、この効果が2つの場面で活きます。

1つ目は「絵本の読み聞かせ・手遊び歌」です。倍音のある声で読むと、子どもたちが集中しやすくなります。同じ内容を読んでも、声に響きがあるほうが子どもの目が手元に集まります。これは声が持つ音色・倍音成分が子どもの注意を引きつける性質があるためです。大学の研究でも「よく通る美しい声は子どもたちに安心感を与え、絵本などを読む際の理解度を高める」と報告されています。

2つ目は「集団活動での指示出し」です。30人規模のクラスで声を通すために大声を連発するのは喉への大きなリスクです。しかし鼻腔共鳴を使った倍音のある声なら、適度な音量でも声が広がり、教室の端まで届きます。力まずに指示が通るようになると、喉の疲労も精神的な疲弊も減少します。これは大きなメリットです。

倍音の多い声は「声量が小さくても空間に広がる」のが特徴です。

音環境の研究では、保育室の残響が改善されると「声を張らなくても子どもに届く」という保育士の声が多く報告されています。これは室内環境と声の質の両面が関係していますが、声側のアプローチとして倍音の活用は非常に有効な選択肢です。

保育園での音環境の大切さ|豊野保育園

独学で倍音をマスターする際の注意点と保育士向けの独自視点

倍音のある声を独学で習得しようとしたとき、最も多いつまずきは「どこに響いているのかわからない」という感覚の壁です。鼻腔・口腔・咽頭といった共鳴腔は目に見えないため、正しくできているか自己判断しにくいのが現実です。

さらに気をつけてほしいのが、「ささやき声」でのコミュニケーションです。声が疲れたときについ出てしまうこのクセは、一見喉に優しそうに見えて、実は声帯に非常に大きな負担をかけます。ささやき声では声帯を「半開き」の状態で摩擦させるため、完全な発声よりもダメージが蓄積しやすいのです。声に違和感があるときは、ささやき声でなく「沈黙」を選ぶのが正解です。

もう1つ、保育士に特有の課題があります。それは「子どもの声に合わせて音域が引っ張られる」問題です。高い声で話す子どもたちに合わせるうちに、自分の声も高く緊張した状態になりがちです。高い音域で喉頭を上げながら発声するほど声帯への接触面積が増え、結節のリスクが高まります。意識的に「喉を下げた状態(咽頭腔を開いた状態)」で話すクセをつけることが、保育士としての声の寿命を守る上で極めて重要です。

喉が疲れやすいと感じている保育士には、「毎日ボイトレ」のような無料のボイトレアプリを朝のルーティンに取り入れることをおすすめします。3分程度のハミング練習や腹式呼吸練習を通じて、仕事前に声の土台を整えることができます。

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