アゲハチョウの歌で子どもの心と学びを育てる保育実践

アゲハチョウの歌を活かした保育の実践と完全ガイド

アゲハチョウの羽化は早朝に起きることが多く、子どもが登園する前にすでに終わっています。

この記事でわかること
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アゲハチョウの歌の種類と使い方

保育現場で使える「へんしん!アゲハチョウのうた」「あげはちょうのダンス」などの歌を年齢別に整理して紹介します。

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飼育と歌を組み合わせた実践法

幼虫から成虫への完全変態を歌と連動させることで、子どもの学びの深さが変わります。具体的な方法を解説します。

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羽化の瞬間を逃さない工夫

羽化は早朝に起きやすく、子どもが見逃しがちです。タイミングをつかむための現場ですぐ使える対策も紹介しています。

アゲハチョウの歌の種類と保育での選び方

 

保育現場でアゲハチョウをテーマに歌を取り入れたいとき、どの歌を選ぶかで活動の方向性がまったく変わります。

大きく分けると「知識を伝える歌」と「体を動かす歌」の2種類があります。前者の代表が、YouTubeの「ゆめある」チャンネルで公開されている「へんしん!アゲハチョウ(ナミアゲハ)のうた」です。卵→幼虫→さなぎ→成虫という昆虫の完全変態を、子どもがイメージしやすい歌詞とアニメで表現しており、保育士・教師向けに制作されています。後者の代表としては「あげはちょうのダンスがあり、ちょうちょの折り紙と組み合わせた春の活動として幅広く使われています。

歌の選び方の基本は、活動のねらいに合わせることです。

歌のタイプ 代表例 ねらい おすすめ年齢
知識・変態を伝える歌 へんしん!アゲハチョウのうた 完全変態の理解・科学的好奇心 3〜5歳
体を動かすダンス系 あげはちょうのダンス 身体表現・リズム感・春の雰囲気 2〜5歳
童謡・唱歌 ちょうちょう(菜の葉にとまれ) 言葉・音感・季節感の育み 0〜5歳
リズム遊び さくらんぼリズム(アゲハ蝶) 全身運動・発達支援 2〜5歳

童謡「ちょうちょう」は「ちょうちょ ちょうちょ 菜の葉にとまれ」という歌詞で知られる定番曲です。アゲハチョウが菜の花に止まる春の光景と重なり、実際に保育園でアゲハチョウを観察しながら歌うと、子どもの体験と歌詞がつながります。これが意外と重要で、歌と体験をセットにすることで歌詞の意味が子どもに自然と入っていきます。

歌詞と体験のセットが基本です。

歌選びに迷ったときは「今クラスで何を体験しているか」から逆算するのが一番シンプルで効果的です。幼虫を飼育中なら「へんしん!アゲハチョウのうた」、春の運動会発表会なら「あげはちょうのダンス」、0〜1歳の乳児クラスなら「ちょうちょう」というように対応させると、歌が単なる「時間つぶし」ではなく保育のねらいに直結した活動になります。

参考:保育士・教師向けに制作された「へんしん!アゲハチョウのうた」(ゆめあるチャンネル)

へんしん!アゲハチョウ(ナミアゲハ)のうた ~昆虫の完全変態(YouTube/ゆめある)

アゲハチョウの歌を深める完全変態の知識

歌を歌うだけなら事前知識は不要ですが、子どもから「なんで幼虫は緑色なの?」「さなぎの中でどうなってるの?」と質問が来たとき、しっかり答えられると保育の質が一段上がります。

ナミアゲハ(一般的なアゲハチョウ)の成長ステップは次のとおりです。

  • 🥚 :直径約1ミリ、黄色いパール状。みかんなどの柑橘類の葉の裏に産み付けられます。
  • 🐛 1〜4齢幼虫:茶色と白のまだら模様で、鳥のフンに似た保護色です。体長はゴマ粒サイズから2〜3センチ程度まで成長します。
  • 🐛 5齢幼虫(終齢):鮮やかな緑色に変身し、頭部に大きな目玉模様が現れます。体長は5センチほどで、はがきの短辺(約10cm)の約半分のサイズです。
  • 🫘 さなぎ:10日〜2週間で羽化します。緑色と茶色の2種類があり、どちらも正常な色です。さなぎになる場所の明るさや湿度で色が変わります。
  • 🦋 成虫(アゲハチョウ):羽化後は羽が乾くのに約2時間かかります。羽が開ききったらすぐ飛び立てる状態になります。

意外なのは幼虫の段階です。

1〜4齢幼虫の「鳥のフンに見える姿」は、天敵から身を守るための擬態です。子どもには「虫さんが身を守るための変装なんだよ」と伝えると、見た目の地味な幼虫への見方がガラッと変わります。5齢幼虫の目玉模様は、天敵の鳥が「大きな生き物の目」と勘違いして逃げるための「にせもの目」で、自然界の知恵の結晶です。こういった知識を歌に絡めて話すことで、子どもの「なぜ?」を育てることができます。

参考:アゲハチョウの幼虫・蛹・羽化を詳しく解説したるるぶkids記事

もう一つ知っておきたいのが、アゲハチョウには「春型・夏型・秋型」の3タイプがある点です。春型は小型で淡い色、夏型は大型で鮮やかな色、秋型は小型でも色は濃いという特徴があります。同じアゲハチョウでも季節によって見た目が違うので、子どもが「なんでこのちょうちょは小さいの?」と気づいたときに教えてあげると、さらに知的好奇心が広がります。つまり「同じアゲハでも季節で別物に見える」のが正常です。

アゲハチョウの歌と飼育を組み合わせた活動のポイント

歌だけ、飼育だけの単体活動よりも、「歌→観察→気づき→また歌」というサイクルを作ると、子どもの学びが格段に深まります。これは単純なようで、多くの保育現場でまだ実践されていない強力な組み合わせです。

飼育のスタートはゴールデンウィーク明けの5月が狙い目です。みかんやキンカン、ユズなどの柑橘類の葉を食草とするナミアゲハは、3月〜10月の温かい時期に観察できます。特に5〜6月は新芽が出る時期で卵の数も多く、飼育ケースに入れやすい卵や若齢幼虫が見つかりやすいタイミングです。

飼育ケースのセッティングで保育士がよくつまずく点は、食草の管理です。生け花用の吸水スポンジ(オアシス)を活用すると、枝ごと水を入れる必要がなくなり、幼虫が水に落ちて溺れるリスクもゼロになります。ダイソーやセリアなど100円ショップでも購入可能です。これは使えそうです。

飼育数は2〜3匹が限度が基本です。多すぎると食草の消費が早くなり、管理が追いつかなくなります。特に5齢幼虫(終齢)になると食欲が爆発的に増し、葉っぱがあっという間になくなります。A4用紙1枚ほどの葉の量が1日で消えてしまうイメージです。事前に食草の確保量を計算しておくことが大切です。

  • 🌿 食草:ミカン・キンカン・ユズ・レモン・サンショウの葉
  • 📦 ケース:立てて使うと縦のスペースが広くとれ、さなぎ〜羽化に有利
  • 💧 水管理:生け花用吸水スポンジ(オアシス)が安全で便利
  • 🧹 清掃:フンは毎日取り除く(湿らせると掃除が大変になります)
  • 🚫 触り方:幼虫は素手で掴まず、葉ごと移動させる

飼育に合わせて「へんしん!アゲハチョウのうた」を朝の会に取り入れると、子どもが飼育ケースをのぞくたびに歌の歌詞と幼虫の姿がリンクするようになります。「あ、今は4齢幼虫だから鳥のフンみたいな色だね」「もうすぐ緑色に変わるね」という会話が子どもたちの間で自然に生まれ始めます。

参考:保育園でのアゲハチョウ飼育方法を詳しく解説したサイト

保育園でのアゲハチョウの幼虫の飼育方法・あおむしの飼い方(childcare-information.net)

アゲハチョウの歌の前に知りたい「羽化のタイミング」攻略法

アゲハチョウの羽化は主に早朝〜午前中に集中しており、子どもが登園する前に終わっていることが少なくありません。これは保育現場で繰り返し起きる「悔しい場面」のひとつです。羽化は早朝に多いのが原則です。

ただし、羽化を確実に見せるための工夫は存在します。いくつか実践的な方法を紹介します。

まず、さなぎの状態をこまめにチェックすることです。羽化が近づくと、さなぎの表面から中の羽の模様が透けて見えるようになります。また、さなぎが小刻みに動き始めたら羽化が数時間以内に迫っているサインです。この段階を朝の保育開始前に確認し、子どもたちに「今日羽化するかもしれない」と伝えておくだけで、観察への意識が高まります。

次に、「羽化抑制法」という技術があります。これは教育現場向けに開発された方法で、前夜にさなぎを野菜室(5〜6℃)に入れ、見せたいタイミングで常温に戻すことで羽化時刻をある程度コントロールする手法です。専門的ですが、理科的興味が高い5歳児クラスなどでチャレンジしてみる価値があります。

タブレットを使った記録も有効です。ある保育園では、羽化のタイミングによっては全員で見守れないこともあるため、タブレットで撮影して後から子どもたちと一緒に見る方法を採用しています。生の感動には及ばないものの、動画で見ることでも「さなぎの背中が割れる瞬間」という劇的な変化は十分に伝わります。これは問題ありません。

羽化後に子どもが触るときの注意も大切です。羽化直後の蝶の羽は非常に繊細で、指で羽をつまんだり強くさわると破れてしまいます。羽が破れると飛べなくなり、その蝶はその後生きていくことができなくなります。「手の甲に乗せる」「指で羽には絶対に触れない」というルールを活動前に歌と一緒に確認しておくと、子どもが自然と気をつけてくれるようになります。

参考:アゲハ蝶の羽化タイミングと保育園での記録について紹介している保育園ブログ

蝶々の成長を見守る(2歳児)-梅ノ木くじら保育園

アゲハチョウの歌が生む「生命尊重」という保育の柱

アゲハチョウの歌と飼育活動には、単なる音楽や理科的な学びを超えた意義があります。それは「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の中に明記されている「自然との関わり・生命尊重」という保育の重要な領域に直接つながる活動だということです。

自然体験が子どもの発達にプラスになることは、多くの研究や保育実践から明らかになっています。特に「生き物を育てる」体験は、5歳児において「生命に対する認識と感性」を大きく育てるとされています(恵泉女学園大学・沼倉論文)。食草を用意する、フンを掃除する、毎日観察するという継続的な関わりが、子どもに責任感と愛着を育てます。それが達成され、蝶が旅立つ瞬間の「感動」は、子どもにとって一生忘れられない体験になります。

歌はその体験を言語化・共有するための橋渡しの役割を担います。飼育している間、毎朝「へんしん!アゲハチョウのうた」を歌う習慣をつけることで、昨日との変化に自分から気づく子どもが増えます。「あ、緑色になってる!歌に出てきた!」という発見は、自分でアンテナを張る力、つまり主体的な学びの芽生えそのものです。

寄生虫の問題についても触れておく必要があります。

アゲハヒメバチやアオムシコバチなどの寄生バチは、アゲハチョウの幼虫に卵を産み付けることがあります。寄生された幼虫はさなぎになっても蝶にならず、中からハチの幼虫が出てきます。子どもが目の当たりにするとショックを受けることがあるため、事前に「自然の世界にはそういうこともある」と保育士が知っておくことが大切です。「命がつながっている」という話ができるかどうかは、保育士自身の準備次第です。

京都市の保育所が発表した実践報告によると、発達援助を必要とする子ども6名を含む3歳児クラスでアゲハの飼育を通じた保育活動を行ったところ、子どもたちの間に「責任感の芽生え」と「命への関心」が育まれた事例が報告されています。音楽・観察・飼育を組み合わせることで、語彙が増え、他の子どもと感じたことを共有しようとする姿も多く見られたとのことです。

参考:京都市の保育所が発表した「アゲハチョウとの出会いを通じた3歳児クラスの実践報告」

3歳児クラスの課題活動〜アゲハチョウとの出会いを通じて〜(京都市)

参考:奈良教育大学の保育内容「環境」に関する論文。アゲハチョウ飼育と子どもの発達の関係について詳しい。

現代的課題を踏まえた保育内容「環境」の指導法(奈良教育大学)

歌を入り口に、飼育という体験を積み重ね、命が旅立つ瞬間を見送る。このサイクルが「生命尊重」という言葉を、子どもの心の中に生きた感覚として刻み込んでいきます。保育士の準備次第で、アゲハチョウの歌はただの「春の歌」から「一生に残る体験の核」に変わります。結論はシンプルです。歌と体験をつなぐこと、それだけです。


源氏九郎颯爽記 秘剣揚羽の蝶