近代化と歌詞と意味
近代化の唱歌と歌詞意味:富国強兵と文明開化
近代化期の日本では、学校教育に「唱歌教育」が導入され、歌を通じて国民を同じ方向にまとめる意図があったと整理されています。
この流れの中で、江戸期までの五音階中心の感覚から、西洋の七音階の採用へと転換し、西欧曲に日本語の詩を付ける形で唱歌が作られました。
その結果、唱歌は「日本の自然」「暮らし」「象徴」「民話・昔話」「明治の文明(汽車など)」といったテーマを扱い、近代化した社会の価値観を歌詞で“わかる形”にしていった側面があります。
保育園の現場に引き寄せると、唱歌は「子どもが歌うもの」でありながら、実際には大人側(国家・教育)が子どもの経験を組み替えて提示する媒体にもなりえます。
つまり「歌詞の意味」は、単語の辞書的意味だけでなく、“この歌がどんな社会を前提に作られたか”まで含めて見たほうが実態に近いのです。
近代化と歌詞意味:わらべうた・手遊び歌の変化
手遊び歌は、もともと地域や家庭で伝承されてきた「お手合わせ」などの身体遊び歌として位置づけられ、江戸期の記録にも見られるとされています。
しかし明治期に西洋文化を政府が積極的に取り入れ、音楽教科書や園の保育でも用いられるようになると、日本の伝統的な「わらべ唄」の流れが変化し、手遊び歌も西洋音階の流れへ寄っていった、という整理が示されています。
この“寄り方”は、歌詞にも現れます。昔話や伝説(桃太郎など)を言文一致・口語体で歌いやすくし、集団で揃えて歌える形に整えることで、園生活に適した歌詞へ再編集されていった面があります。
意外に見落とされがちなのは、近代化が「歌の置き換え」ではなく「遊び方の置き換え」も同時に進めた点です。
参考)https://petit.lib.yamaguchi-u.ac.jp/29197/files/166508
同じ歌でも、子ども同士の自発的な遊びとして歌われるのか、保育者の導入・指導の合図として歌われるのかで、子どもが受け取る“意味”は変わります。
近代化と歌詞意味:保育園のオルガンとピアノ
近代化の中で「西洋音楽至上主義」が保育現場のオルガンやピアノ使用にも伴っていた、という指摘があります。
これは歌詞の理解にも影響します。伴奏が整い、拍が揃い、同じテンポで反復できるようになるほど、歌詞は「言葉の味わい」より「活動の進行(みんなで揃える)」に回収されやすくなるからです。
一方で、手遊び歌には日本独自の音階・間合い・音価の伸縮といった特徴があり、言葉と身体の呼吸が合うところに面白さがある、とも述べられています。
ここでの実践的なポイントは、保育園でピアノ伴奏を使うこと自体が悪いのではなく、「伴奏の便利さが歌詞の意味の入口を狭める」瞬間を意識することです。
例えば、歌詞が古語・文語に近い唱歌を扱うときは、テンポを落として“言葉の絵”を想像させたり、子どもの生活語で短く言い換えたりするだけで、歌が教材から体験に戻りやすくなります。
近代化と歌詞意味:テレビとネットとユーチューブ
戦後の近代化が進むと、テレビの普及などによって、視覚的に手遊び歌を見て育つ子どもが増えた一方、民族性はその中に生きている、という見立ても示されています。
さらに、手遊び歌はテレビ番組で放映され全国の園へ広がった例があり、子どもの手遊び歌との出会いがテレビを介することも多くなったと述べられています。
近年はネット社会になり、ユーチューブなどでいつでもどこでも手遊び歌が見られ、保育者も取り入れて子どもに供与している、という整理もあります。
ここで大事なのは、近代化が“配信の仕組み”を変えた結果、歌詞の意味が「地域の生活から立ち上がるもの」ではなく「どこでも通用する定型」へ寄りやすい点です。
便利さの反面、子ども同士が自発的に手遊び歌をする姿が減っている可能性も示唆され、供与の仕方(多く与えすぎる、保育者側が子ども同士の遊び化を想定していない等)が影響する、と考察されています。
近代化と歌詞意味:保育園での独自視点(共振)
手遊び歌は、音やリズムを「互いに合わせる」経験として、人とつながる感覚を育てる可能性があり、記事内では「共振」という概念とも結びつけて語られています。
つまり、歌詞の意味は“内容理解”だけで完結せず、「誰と・どんな距離で・どんな呼吸で歌ったか」という身体経験の層に沈みます。
この視点に立つと、近代化によって歌詞が整い、音楽が整い、配信で均質化したとしても、保育園では再び“関係性の中で立ち上がる意味”を作り直せます。
実務としては、次のような小さな設計が効きます。
- 🎯歌詞の難語を「言い換え」ではなく「生活の例」に置く(例:季節、行事、道具)。
- 🧩1番だけ歌って終わらず、歌詞の1フレーズを“動作”に翻訳して遊びに戻す。
- 🔁ユーチューブ由来の新しい手遊び歌でも、園の生活(給食、散歩、雨の日)に合わせて歌詞の一部を子どもと作り替える。
権威性のある日本語の参考リンク(唱歌教育が文明開化・富国強兵と結びつき、歌で国民を一つの方向にまとめようとした流れ、音階の西洋化など):
教育出版「小学音楽通信 Spire_M(うたの潮流/唱歌について)」
権威性のある日本語の参考リンク(手遊び歌が近代化・テレビ普及・ネット社会でどう変化し、保育現場で使われ続ける理由、音階やリズムの特徴):


