自然観察と保育の活動
自然観察の保育の活動のねらいと発達
自然観察は「正しい名前を覚える」学びだけではなく、子どもが自然の変化に気づき、自分の言葉で確かめたくなる流れを支える活動です。環境省の幼児期の事例集でも、幼児期は自然の大きさ・美しさ・不思議さに直接触れる体験が、好奇心や思考力、表現力の基礎につながると整理されています。特に、同じ場所でも季節や天候で「この前と違う」が生まれると、観察が“イベント”から“日常”に変わります。
保育のねらいを立てるときは、次の3層に分けるとチームで共有しやすくなります。
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🌱感じる(0〜2歳でも中心):触る・嗅ぐ・聞く・見る、安心して試せる。
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🌿気づく(3〜5歳で伸びる):形・色・量・音の違いを言葉にする。
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🌳深める(年長で増える):仮説→試す→比べる→また試す、友だちと相談する。
意外と見落とされがちですが、「わからない」を残すのも観察の継続に効きます。すぐに答えを出さず、「明日も見てみよう」「雨の日はどうなるかな」と保育者が“続きの問い”を置くと、子どもが観察を生活の中に持ち帰ります。環境省の事例には、身近な自然を舞台に複数回の活動を重ね、季節の移り変わりを実感として身につけることの重要性が示されています。
参考リンク(幼児期における自然体験の意義・事例、日常型の自然保育、安全性への考え方の整理)
自然観察の保育の活動の園庭と散歩の実践
園庭と散歩は、自然観察の“量”と“継続性”を確保できる最強のフィールドです。ネイチャーゲームの考え方では、五感を使うことで「身近な場所が大自然に変わる」ような体験を作れるとされ、特別な自然環境がなくても成立します。実際、都市部でも自然緑道に毎日出かけ、0〜2歳から一年を通して五感で季節の移り変わりを感じる実践が報告されています。
園庭・散歩で使える、観察の型(テンプレ)を用意しておくと、忙しい日でも質が落ちにくいです。
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🔎見つける:色・形・動きが違うものを1つ選ぶ(葉、石、虫、雲など)。
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✋確かめる:触れる/音を聞く/匂いをかぐ(安全な範囲で)。
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🗣️言葉にする:「前より大きい」「ふわふわ」「冷たい」など一語でOK。
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🧩つなげる:「これ、どこから来た?」「どこにいると落ち着く?」
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🧺持ち帰る:持ち帰れる自然物だけを少量(落ち葉・どんぐり等)に限定。
実践例を、季節を跨いで回せる形にすると強いです。
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春:芽・花・虫の「はじまり」を探す(園庭の隅の草むらが宝庫)。
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夏:水・影・土の温度差を比べる(熱中症配慮が最優先)。
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秋:落ち葉・実・匂い(拾った葉で製作へつなげやすい)。
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冬:霜・氷・息の白さ(短時間でも発見が濃い)。
参考リンク(園庭でもできる五感の自然体験・ネイチャーゲームの考え方)
日本シェアリングネイチャー協会「ダイナミックな自然体験が園庭でできる!」
自然観察の保育の活動の五感と歌
自然観察と「歌」を組み合わせる価値は、観察で生まれた体感を、呼吸・リズム・言葉に乗せて整理できる点にあります。わらべうたは、日本の暮らしや自然が子どもの視線で歌われ、ふれあいの遊びとして続いてきた、という整理があり、自然観察の“余韻”づくりに相性が良いです。観察のあとに歌うと、子どもが見たものを思い出しやすくなり、翌日の再観察の導線になります。
組み立てのコツは「歌を先に決めない」ことです。観察で子どもが拾った素材(落ち葉、虫の声、木の実、風)に合わせ、歌・手遊び・わらべうたを“後から当てる”ほうが、活動が自然に深まります。例えば、秋の散歩で紅葉や落ち葉を観察した直後に「もみじ」を歌うと、話題がふくらみ製作にもつなげやすい、と具体的な活用シーンが紹介されています。
現場向けの「歌×自然観察」型を3つに絞ると回しやすいです。
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🍁観察→歌→表現:散歩で拾う→歌で季節語彙→製作・ごっこへ。
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🐞観察→歌→模倣:虫・鳥の動きや鳴き声を歌や手遊びで再現。
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🌧️観察→歌→安心:雨・風など“怖さ”が出る日ほど、歌で情緒を整える。
参考リンク(自然をモチーフにしたうた遊び・わらべうたの背景)
小学館HugKum(保育)「日本の文化や自然をモチーフのうた遊び」
参考リンク(自然観察後に歌う具体的シーン例:落ち葉・紅葉→歌→製作)
保育の引き出し「【保育園/10月の歌】季節感を楽しむおすすめ曲」
自然観察の保育の活動の安全と準備
自然観察は安全配慮が“別枠”ではなく、活動設計そのものです。福島県の自然保育の安全管理資料では、事前準備(連絡体制、救急用品、実地調査)、活動時(散歩・火・刃物等)、活動場所別(森・野原・水辺等)に分けてチェック項目が整理されています。特に重要なのが「人数把握は難しい」という前提に立ち、グループ分けや配置で成立させる視点です。
現場で実装しやすいチェックポイント(抜粋)を、観察活動向けに再構成します。
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🗺️下見:新しい場所は引率者全員で実地調査(危険箇所を地図に記入)。
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🧑🤝🧑配置:全体状況を把握する人員を置く(森・野原でも同様)。
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🏷️見える化:子どもの名札、集合方法、集合場所を事前に共有。
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🧰備品:救急用品+携帯電話+地図+飲料+応急の防寒(季節で入替)。
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⏱️人数確認:散歩では全員が揃ったところで確認し、定期的にも実施。
そして、意外と効果が高いのが「保護者への説明を先に整える」ことです。同資料は、日頃から安全管理の取り組みや体制を整理して伝えることで、万一のケガや事故の受け止めが変わる、としています。活動の写真・短い記録を添えて、何を学び、どう安全を確保しているかを“見える化”すると、園内の合意形成も進みます。
参考リンク(自然保育の安全管理チェックリスト・活動場所別の注意点)
福島県「ふくしま子ども里山教育・自然保育 安全管理マニュアル(案)(PDF)」
自然観察の保育の活動の独自視点:指導員と地域連携
検索上位の記事では「園の中で完結するアイデア集」に寄りがちですが、実は伸びしろが大きいのが“外部の自然観察の専門家”との連携です。日本自然保護協会(NACS-J)は、自然観察指導員が保育園等と連携し、園庭や園外活動の自然観察・自然体験を支援する取り組み(おさんぽ応援団)を案内しています。ここでは、園児の散歩同行、保育者向けの観察ポイント現地レクチャー、観察会の企画開催など、関わり方が複数示されています。
この連携が効く理由は、単なる「ゲスト講師で盛り上げる」ではなく、園の資産(フィールド理解・観察ポイント・安全の勘所)を増やせる点にあります。例えば、保育者向けの現地レクチャーは園児対応がない形でも実施しやすい、とされ、忙しい園でも導入のハードルが下がります。さらに散歩同行は、交通の安全見守りの人手不足を補いながら、その場で臨機応変に自然観察を深められる、という現場的メリットが書かれています。
連携を一度きりで終わらせないための設計案です。
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🤝初回:保育者向けに「園周辺の観察ポイント」を一緒に棚卸し。
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📝2回目:園児の散歩同行で、子どもの問いの拾い方をモデル化。
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📚3回目:季節のテーマ(落ち葉・水辺・虫など)でミニ観察会。
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🔁定着:園の年間計画に「短時間×高頻度」の観察枠を固定。
参考リンク(保育園等と連携する自然観察指導員の活動形態:現地レクチャー・散歩同行・観察会企画)
日本自然保護協会(NACS-J)「保育園・幼稚園等と連携した活動を希望する自然観察指導員(おさんぽ応援団)」

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