ハワイ王国 歌と音楽と国歌と女王

ハワイ王国 歌と音楽

この記事でわかること
🎵

ハワイ王国の「歌」の役割

国歌・メレ(うた)・儀礼の声が、暮らしと政治と教育にどう結びついたかをつかめます。

👑

女王が残した音楽の背景

リリウオカラニの代表作を、史実寄りの説明で整理し、誤解されやすい点も押さえます。

🧒

保育園での取り入れ方

安全・配慮・言葉選びのポイントを踏まえ、歌あそびや導入トークの形に落とします。

ハワイ王国 歌と音楽の国歌:He Mele Lāhui Hawaiʻi

 

ハワイ王国の「最初のオリジナル国歌」として語られるのが「He Mele Lāhui Hawaiʻi」です。ハワイ州観光局の学習サイトでは、このメレは王への神の加護を願う内容で、1866年にリリウオカラニによって書かれ、当時は英国国歌のハワイ語訳を国歌として歌っていた背景も説明されています。

この話が保育園向けに使いやすいのは、「国の歌=戦いの歌」だけではなく、「守ってください」「元気でいてください」という“祈りの歌”にもなる、という視点を持てる点です。

導入トーク例としては、子ども向けに「国の歌は、みんなが安心して暮らせるように“おねがい”する歌もあるんだよ」と置き換えると、政治史に深入りせずに文化理解へつなげられます。

参考:女王が書いた国歌の背景(依頼者・時代・教会でのお披露目など)

https://www.aloha-program.com/news/detail/1955

ハワイ王国 歌と音楽の国歌:Hawaiʻi ponoʻī

「Hawaiʻi ponoʻī」は、かつてハワイ王国の国歌で、1898年のクーデター以降はハワイ州の州歌になった、と整理されています。

Wikipediaの説明では、1874年にカラカウア王が作詞し、ロイヤル・ハワイアン・バンド指揮者のヘンリー・バーガーが作曲、同年11月にカワイアハオ教会で初演されたとあります。

保育園で扱うときは、原語歌詞の暗唱を目的にせず、「合唱(Hui)」の概念だけを借りて“みんなで同じ言葉を繰り返す”遊びに落とすと成立しやすいです(例:先生が短いフレーズ、子どもが同じフレーズを返す)。

参考:州歌になった経緯・作者・初演の情報

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%9D%E3%83%8E%E3%82%A4

ハワイ王国 歌と音楽の女王:Aloha ʻOe

「Aloha ʻOe(アロハ・オエ)」は、ハワイ王国最後の女王リリウオカラニが作った曲で、別れの歌として世界的に知られている、という説明が日本語Wikipediaにもあります。

また、ハワイ州観光局の学習サイトでは「幽閉中に書いた別れの歌」という説を誤解として退け、作曲は1877/78年ごろと記録され、着想の舞台としてマウナウィリやヌウアヌ・パリ越えのエピソードが語られています。

保育の現場では「さようなら」の歌として使いやすい一方、歴史の重さに引っ張られすぎないよう、「また会おうね」という再会のニュアンス(“Until we meet again”と並記されることがある点)を強調すると、日常のあいさつ歌として安全に着地します。

参考:作曲時期の誤解が起きる理由(楽譜出版が幽閉期に話題になった等)

https://www.aloha-program.com/news/detail/1955

ハワイ王国 歌と音楽のメレ:ハク・メレという発想

保育園で「ハワイの歌」を扱うとき、曲名や踊りだけを増やすより、“歌が作られる考え方”を共有した方が教材として強くなります。ハワイ州観光局の学習サイトは、言葉を選び集めてメレ(うた)を紡ぐ人を「ハク・メレ」と呼び、王族自身が優れたハク・メレだった例も多いと説明しています。

この「言葉を集めて歌を編む」という説明は、制作遊びに直結します。たとえば「天気」「花」「ともだち」「ありがとう」など、子どもが出した単語カードを並べ替えて“わたしたちのメレ”を作ると、暗記中心にならず、文化理解と表現活動が両立します。

意外と知られていないポイントとして、同サイトはリリウオカラニが生涯150曲以上の歌を書いた、とも述べています。作品数の多さを知ると、「代表曲だけの人」ではなく「作り続けた人」として伝えられ、活動の厚みが出ます。

ハワイ王国 歌と音楽を保育園で扱う配慮(独自視点)

ハワイ王国の歌や音楽には、国歌・王族・クーデターなど、背景に政治史が含まれますが、保育園では“対立の説明”より“文化の形”に焦点を当てるほうが実装しやすいです(例:歌は祈りにも、あいさつにも、記憶の箱にもなる)。

具体的な運用としては、次のように「歌唱」以外の入口を用意すると、子どもの参加の幅が広がります。ハク・メレの説明を借りて「言葉を集めて歌にする」「花の名前を集めてレイみたいに並べる」といった活動にすれば、歌えない子も“作る側”で参加できます。

最後に、安全面と誤解防止のチェックリストも置いておきます。史実の断定を避けたい点(例:「幽閉中に作った」と言い切らない)は観光局サイトが誤解として触れているので、導入トークの台本はそこに寄せるのが無難です。

  • 導入は「国歌=みんなの願い」「別れの歌=また会う歌」に言い換える。
  • 固有名詞は最小限(女王名・曲名)にして、ストーリーは短く区切る。
  • “歌う”だけでなく、“言葉を集める(ハク・メレ)”活動を必ずセットにする。
  • 説明文で「幽閉中に作曲」と断定しない(誤解として扱われている)。
保育でのねらい 使える切り口 現場での一言例
あいさつ・別れ Aloha ʻOe(再会の含み) 「さようならって、また会う約束の言葉でもあるよ」
共同表現 合唱(Hui)という仕組み 「先生の言葉を、みんなで返してみよう」
言葉あそび ハク・メレ(言葉を集めて紡ぐ) 「みんなの言葉を集めて、短い歌を作ろう」


ハワイ王国 矢富祐人著