想像力と音楽遊びとリトミック
想像力 音楽遊び リトミックのねらい
リトミックは、音やリズムを「聴く→感じる→身体で表現する」ことで感性を磨く音楽教育法として、保育園でも乳幼児期から取り入れられていると説明されています。
保育のねらいとしては、全身で音楽を感じて動く楽しさを味わうことに加え、音楽やリズムに触れて想像をふくらませ感性を養うことが挙げられています。
また「すぐ反応して体現する」経験が、集中して判断し実行する力（判断する力・実現する力）につながるという整理もあり、単に“音楽が好きになる”だけにとどまらないのがポイントです。
ここで誤解されやすいのが、リトミックを「ダンス」や「お遊戯」と同じように、見本どおりに動く活動へ寄せてしまうことです。
参考）現役リトミック講師が教える！楽しく盛り上がるリトミック指導案…
もちろん導入でまねっこを使うのは有効ですが、最終的には子ども自身が音からイメージし、動き（表現）を選べる余白を残すほど、狙いワードの「想像力」と噛み合います。
参考）【簡単に解説】リトミックとは?年齢別のやり方や保育士が行う際…
保育計画の観点では、ねらいを「音楽能力の獲得」だけに狭めず、次の3点をセットで書けると活動がぶれにくくなります。
- 音・リズムを聴き分ける（聴覚の焦点化、合図を聞く）。
- 想像をふくらませる（音から情景・キャラクター・気分を連想）。
- 表現する（身体、声、簡単な楽器、友だちとのやりとり）。
参考リンク（リトミックの定義・年齢別プログラムの考え方を確認する）
想像力 音楽遊び リトミックの年齢別
保育園でのリトミックは「決まったルールはない」一方で、年齢によって適した曲やテンポ、動かし方を変えるとよいとされています。
つまり、同じ“歌”や“音楽遊び”でも、年齢の発達に合わせて「想像の材料」と「表現の難易度」を調整するのが実務的です。
以下は、現場の説明として具体例が載っている年齢別の要点です。
- 0歳児：音に慣れる時期で、保育者と一緒に体を揺らす・手足を動かすなど「音楽やリズムに合わせて体を動かす楽しみ」を味わう。
- 1歳児：手を叩く・ジャンプ・メロディーに合わせて揺れるなど「自分で動かす」経験を増やしていく。
- 2歳児：身近なものや動物を「想像して表現」できるようになるので、ゆっくりな曲で象やカメ、軽快なテンポでウサギやリスなど、イメージを動きにする活動が合う。
- 3歳児：個々の想像力・表現力だけでなく、友だちと一緒に音楽やリズムを表現できるようになり、電車ごっこ等の遊びに発展させやすい。
- 4歳児：グループに分かれて、聞こえた音やリズムに応じて動きを切り替えるなど「聞いて判断して表現する」要素を増やせる。
- 5歳児：より高度なリズムや拍子、音階を聴いて表現でき、グループ活動も複数リズム・幅広い音程を用意することで深まりやすい。
「音楽遊び＝歌唱」になりやすいクラスでは、歌は“入口”として使い、途中で「音だけの場面（伴奏のみ／声なし）」を挟むと、子どもが歌詞の意味から離れて“音そのもの”を材料に想像しやすくなります。
また、同じ音楽を繰り返し使うと音やリズムを覚え、活動開始の合図にもなるとされるため、クラスの見通しづくりにも役立ちます。
参考リンク（保育園でのリトミックの定義、効果、年齢別の具体例、進め方のポイント）
https://www.watashi-hoiku.jp/column/00139/
想像力 音楽遊び リトミックの声かけ
想像力を伸ばす場面で効きやすいのは、「こう動いて」という具体指示よりも、子どもが動きを思いつける“イメージの種”を渡す声かけです。
実際に、音楽の変化と合わせて動きを想像するきっかけとなるよう、保育者の声掛けは「イメージを膨らませやすい声」にするのがポイントで、ストーリーを投げかける言葉を準備するという提案があります。
さらに、準備したストーリーを主軸にしつつ、子どもたちが作り出したイメージを取り入れながら進めることが推奨されています。
現場でそのまま使える、声かけの型（例）を整理します。
- 情景型：「いまの音、どんな天気みたい？」（音→情景→動きへ）。
- 変化予告型：「次の音で、世界が変わるよ」（強弱・テンポ変化の予告）。
- 合図型：「この音が聴こえたら反対回り」（音を合図にして判断と切替を促す）。
一方で、声かけが多すぎると子どもの“聴く”時間を奪い、音より言葉を追ってしまうことがあります。
そこで、保育者が「言葉を減らす設計」として、合図となる音を作る（例：特定の和音、鈴1回、タンバリン強打など）という考え方が紹介されています。
合図が定着すると、説明より先に耳と身体が働くので、音楽遊びが“指示ゲーム”になりにくく、想像力が動きやすい状態を保てます。
参考リンク（リトミックのねらい／ストーリー型の声かけ／合図の作り方など実務のコツ）
https://tryt-worker.jp/column/hoikushi/detail/ho340/
想像力 音楽遊び リトミックの環境
想像力が出るかどうかは、活動内容よりも「環境設定」で決まる場面が少なくありません。
たとえば、リトミックは同じ音楽で繰り返すことがポイントとされ、音やリズムを覚えやすくなり、いつもの曲が“楽しい時間の合図”にもなると説明されています。
この“予測できる安心”があると、子どもは次に何が来るかを不安がらず、表現にエネルギーを使いやすくなります。
環境面で押さえると効果が出やすい要素を、保育室の運用としてまとめます。
- 音源の使い分け：同じ曲を基本にしつつ、テンポを変える・曲調のバリエーションを入れると飽きにくいとされています。
- 空間の確保：大きい動きと小さい動きの両方ができるよう、始める前に“動ける範囲”を視覚で示すと安全に集中しやすいです（テープ等）。
- 評価の言葉：子どもの表現を尊重し、よいところを褒めることで自己肯定感が高まり、楽しい雰囲気が作れると述べられています。
「想像力が弱い子がいる」のではなく、「想像していい空気が薄い」こともあります。
たとえば、正解の動きを探す雰囲気が強いと、子どもは試行錯誤を避けがちです。
“型にはまらない楽しみ方を”とされるように、音の高さやテンポを変えてストーリー性を持たせたり、年齢や人数で内容を変えたりする柔軟さが、環境づくりの中核になります。
想像力 音楽遊び リトミックの独自視点
検索上位の多くは「効果」「年齢別」「やり方」の整理が中心ですが、現場で差が出るのは“想像力が生まれる順番”を逆転させる工夫です。
一般にリトミックは「音を聴いてから動く」流れで語られますが、あえて「動いてから音を探す」場面を短く入れると、子どもが自分の動きに合う音（強弱・テンポ）を意識し始め、聴き方が変わります。
このとき保育者は、子どもの動きに合わせてテンポの良いリズム→ゆったり→切れの良い音のように音楽を当てはめる例が紹介されており、“動きと音の対応づけ”が想像力の橋渡しになります。
独自視点として提案したいのは、「合図の音」を“子ども側が作る”ミニ役割を入れることです。
合図となる音を作ることで動きのバリエーションが広がるとされていますが、合図役を日替わりにすると、合図を出す子はタイミングを聴き、周囲は音を待ち受けるため、活動全体の集中が揃いやすくなります。
運用の例は次のとおりです。
- 合図役の子が鈴を1回鳴らしたら「止まる」。
- 合図役の子が2回鳴らしたら「反対回り」。
- 合図役の子が小さく鳴らしたら「小さな動物」、大きく鳴らしたら「大きな動物」。
もう一つ、意外に効くのが「同じ曲の“途中で無音を作る”」ことです。
同じ音楽を繰り返すと音やリズムを覚える、という特性を利用して、慣れてきた曲の“いつもの場所”で一瞬止めると、子どもは頭の中で音を補完しようとし、次の動きを予測して表現を続けようとします。
これは意味のない難しさではなく、「音がなくても音楽を感じる」体験になり、歌や音楽遊びが“再生ボタンの外”へ広がる導線になります。
イマジネール 想像力の現象学的心理学 (講談社学術文庫 2568)