未来への歌映画が保育士の心に刻む成長と音楽の物語

未来への歌映画が保育士に教える音楽と子どもの成長

音楽が得意な子どもだけが、表現活動で伸びるわけではありません。

🎬 この記事の3つのポイント
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映画の魅力をざっくり解説

『シング・ストリート 未来へのうた』は1985年ダブリンを舞台に、14歳の少年コナーが音楽で逆境を乗り越える青春映画。保育士が観ると子どもの「自己表現力」について深く考えさせられます。

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保育の現場とつながる3つのテーマ

「失敗を恐れずに表現する」「仲間と一緒に何かを作る」「大人のサポートが子どもの未来を変える」という映画のメッセージは、そのまま日々の保育実践に生かせます。

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今日から使える保育のヒント

音楽を「評価するもの」ではなく「表現する道具」として捉え直すことで、子どもたちが生き生きと活動できる保育環境づくりのヒントが得られます。

未来への歌映画『シング・ストリート』の基本情報とあらすじ

 

映画『シング・ストリート 未来へのうた』(原題:Sing Street)は、2015年制作・2016年に日本公開されたアイルランド・イギリス・アメリカの合作音楽映画です。監督はジョン・カーニー。『ONCE ダブリンの街角で』や『はじまりのうた』など、音楽を軸にした映画を作り続けてきた彼の、集大成ともいえる一作です。

舞台は1985年、大不況に苦しむアイルランドの首都ダブリン。14歳の少年コナーは、父親の失業をきっかけに荒れた公立校へ転校させられます。家では両親の喧嘩が絶えず、家庭崩壊寸前という状況です。そんな灰色の毎日の中、コナーは学校の前で出会った年上の女の子ラフィーナに一目惚れし、「自分のバンドのMVに出ない?」と口走ってしまいます。

バンドが存在しなかったにもかかわらず、コナーは仲間を集め本当にバンドを結成します。音楽に詳しい兄ブレンダンの助けを借りながら、デュラン・デュラン、ザ・キュアー、a-haといった80年代の英国ロックに影響を受けた楽曲を次々と作り上げていくのです。映画のラスト、コナーとラフィーナは嵐の海を小型ボートで渡り、ロンドンへと旅立ちます。それは夢と未来への決意を体で示す、忘れがたいシーンです。

つまり、音楽が「逃げ道」ではなく「踏み台」になった物語です。

主役のコナーを演じたフェルディア・ウォルシュ=ピーロは、アイルランド全土で約数千人を対象にしたオーディションで選ばれた俳優で、7歳からソプラノのソリストとして舞台に立っていた美声の持ち主。バンドメンバーを演じた俳優たちも、本作が長編映画デビューという新鮮な顔ぶれです。主題歌「Go Now」を歌うのは、マルーン5のアダム・レヴィーン。「今でなければいつ行く?」という歌詞が、コナーの決断と完全に重なり合い、観るたびに胸に刺さります。

映画公開当時、日本のミニシアターランキングで1位を獲得し、驚異の満足度100%(※公開当初の一部調査)を記録した作品でもあります。意外ですね。

参考として、映画の公式情報はこちらから確認できます。

映画『シング・ストリート 未来へのうた』公式サイト(ギャガ)

未来への歌映画に見る「音楽が子どもを変える」という真実

保育士として音楽活動を子どもたちと行うとき、「上手に歌わせること」「リズムを覚えさせること」に意識が向いてしまうことはないでしょうか。しかし、映画の中でコナーが音楽によって変わっていく様子は、そうした発想をやさしく覆してくれます。

コナーは、最初はギターも弾けなかった。それが基本です。それでも彼は、好きな人のために歌を作り、「どんな音楽が好きか?」と聞いてラフィーナの答えをそのまま音にしようとする。上手さより「伝えたい気持ち」が先にある姿は、保育の現場で子どもたちが音楽に向き合う姿そのものです。

岡山大学の研究(「音楽による幼児の表現活動の意義と保育者の援助に関する研究」)によると、保育場面の観察を通して、幼児が自分の感情や状況を歌詞や音・リズムになぞらえ、自発的に音楽を介した表現を行う姿が確認されています。これは映画の中のコナーが経験していることとまったく同じです。子どもは「評価されるから歌う」のではなく、「気持ちを出したいから歌う」のです。

さらに学研教室のコラムでは、音楽のメロディーや楽器の音色が脳の「扁桃体」という感情に関わる部位を刺激し、豊かな感受性や思いやりの発達を促すと説明されています。つまり、保育で歌う時間は感情教育の時間でもあるということです。

映画でコナーの兄ブレンダンが言う台詞「ロックンロールはリスクだ。それを取るか取らないかだ」は、子どもたちへの背中の押し方を考えるヒントになります。失敗しても恥ずかしくない場をつくること、「やってみな」と言える関係性こそが、子どもたちを音楽的に解放してくれます。これは保育の場で日々実践されていることと同じです。

音楽によって自己表現の場が広がると、子どもは集団の中で「自分の声」を持ち始めます。それは歌だけでなく、行動や言葉にも波及していきます。コナーが変わっていくように、毎日の保育の積み重ねで子どもも変わっていきます。

【音楽教育】子どもたちの表現すべてを受け入れる。感性と表現力を伸ばすために大切なこと(マイナビ保育士)

未来への歌映画の「兄の役割」が示す、保育士としての関わり方

映画の中で、コナーが音楽に目覚めるきっかけを作ったのは兄のブレンダンです。彼自身は夢を諦めた人物として描かれていますが、コナーの才能を誰よりも信じ、レコードを貸し、音楽の知識を教え、そして「お前はもっと遠くに行ける」と背中を押します。結末、コナーはラフィーナとともにロンドンへ旅立ちます。兄は残されます。それが切なくも美しい。

この「ブレンダン」の存在は、保育士そのものの姿に重なります。保育士は、子どもたちの主役の人生には直接登場しません。しかし、子どもが「自分には何かできる」と感じる最初の体験を支える存在として、物語の中に必ずいます。

ポイントは、ブレンダンがコナーの音楽を「評価」したのではなく「面白がった」という点です。「上手いか下手か」ではなく、「コナーがやりたいことを一緒にやろう」という姿勢でした。保育の現場でも、子どもの表現を「できる・できない」で捉えるのではなく、「今この子は何を表現しようとしているのか」を見つめる視点が、子どもの可能性を大きく広げます。

大人のリアクションが条件です。子どもが「見ていてくれる大人がいる」と感じるとき、初めて思い切り表現できるようになります。それは東京藝術大学が取り組む音楽療法関連の研究にも示されており、「子どもの個性や発達段階に寄り添った音楽活動が、自己表現や発達全般を促す」とされています。

保育士として「ブレンダンのような存在でありたい」と思うなら、今日できることは1つです。子どもが何かを表現したとき、結果よりも「やろうとしたこと」に声をかけてみましょう。「すごいね、歌ってくれたんだね」というひと言が、次の表現への扉を開きます。

子どもの心を育む音楽活動(東京藝術大学 研究資料)

未来への歌映画から保育士が学ぶ「自己表現を育む環境づくり」

映画の中でコナーたちがMVを撮影するシーンは、どれも予算ゼロ・機材は粗末・場所は学校や海辺という手作り感あふれる内容です。しかし彼らは全力でした。「完璧な条件がないと表現できない」という発想がまったくない。これが大事です。

保育の現場でも、「ピアノが弾けないから音楽活動が不安」「声に自信がないから子どもと歌うのが怖い」という声をよく耳にします。しかし映画が教えてくれることは、「道具や技術より、一緒に楽しむ姿勢そのものが子どもに伝わる」ということです。子どもは保育士の「一生懸命さ」や「楽しんでいる空気」を敏感に感じ取ります。

🎯 保育現場で今日から試せる「音楽×自己表現」のヒント

やること ポイント
即興で短い歌を作ってみる 上手さより「思いついたまま歌う」楽しさを共有する
子どもの鼻歌を「すごいね、その歌教えて」と聞く 表現を肯定することで次の表現を引き出す
リズム打ちで「子どもが先生」のターンを作る 主体性と自己肯定感が同時に育つ
給食中や移動中のBGMを変えてみる 感覚を刺激する小さな仕掛けが感受性を磨く

こうした積み重ねが、映画のコナーが音楽で成長したような体験を、子どもたちに日常スケールで届けることにつながります。

なお、音楽と子どもの発達に関する専門知識を深めたい保育士の方には、「リトミック」の考え方を学べる書籍や研修が参考になります。リトミックとは、スイスの音楽教育家エミール・ジャック=ダルクローズが考案した音楽教育法で、音楽に合わせて身体を動かすことで音楽的感覚だけでなく集中力・協調性・創造力も伸ばすとされています。幼児期(特に3〜5歳)はリズム感と音楽的感性が最も鋭くなる時期であるという研究(信州文化短期大学研究紀要)もあり、保育の現場にうまく取り入れることで大きな効果が期待できます。

未来への歌映画と保育士が共鳴する「逆境の中の希望」という独自視点

映画の舞台は1985年のダブリン、大不況の時代です。失業・家庭崩壊・学校でのいじめ。コナーはどれをとっても「子ども支援が必要な状況」に置かれていました。それでも彼は、音楽という手段を見つけることで、ゆっくりと光に向かって動いていきます。

保育士の多くは、恵まれた環境の子どもだけを見ているわけではありません。家庭に課題を抱えた子ども、自己表現が苦手な子ども、集団になじめない子どもと、毎日向き合っています。そうした場面でこそ、映画が持つメッセージは強く刺さります。

コナーの物語で特に印象的なのは、「音楽をやり始めてすぐに上手くなったわけではない」という点です。最初のMV撮影は手探りで、失敗だらけでした。しかし周りの仲間たちは笑って続けました。その「失敗を笑いに変えられる関係性」があったからこそ、コナーは諦めずに成長できたのです。

子どもにとっての「安全に失敗できる場」をつくることが、保育士の大切な役割です。それは何も特別なプログラムや高い技術を必要としません。「失敗しても大丈夫だよ」という雰囲気、言葉、まなざし。そういった積み重ねが、子どもが自分らしく表現できる土台になります。

映画『シング・ストリート 未来へのうた』は、その「土台づくり」の大切さを、音楽と青春を通して見事に描き出しています。ラスト、嵐の中を船で進む2人の姿は、理想を掲げて困難に立ち向かう子どもたちの姿そのものです。保育士として毎日子どもに向き合うあなたが、その船に風を送る存在であることを、この映画はやさしく気づかせてくれます。

本作はNetflixやAmazon Prime Videoなどのサブスクリプションサービス(配信状況は時期によって変わるため要確認)、またはレンタルサービスで視聴可能です。休日や勤務後のリフレッシュとして、ぜひ一度手に取ってみてください。観終わった後、翌朝の保育がきっと少し変わります。

シング・ストリート 未来へのうた 作品情報・あらすじ・レビュー(映画.com)

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