入場行進曲で運動会を盛り上げる保育士向け選曲完全ガイド

入場行進曲と運動会を成功させる選曲の全知識

運動会の入場行進曲に「威風堂々」を流すと、子どもではなく保護者が泣き出して行進が止まることがあります。

この記事でわかること
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定番入場行進曲の特徴と使い分け

威風堂々・ラデツキー行進曲・ワシントン・ポストなど、保育園の運動会でよく使われる定番クラシック行進曲の特徴と、場面ごとの使い分けを解説します。

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著作権と運動会BGMのルール

市販CDの使用、動画アップロード、SNS投稿など、保育士が見落としがちな著作権ルールをJASRAC公式情報をもとにわかりやすく整理します。

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年齢・場面別の選曲ポイント

0〜1歳児クラスと3〜5歳児クラスでは最適な行進曲のテンポが異なります。子どもが実際に行進しやすい曲の条件と、保護者の満足度を高める選曲の視点を紹介します。

入場行進曲として運動会で定番のクラシック曲と特徴

 

保育園の運動会で「入場行進曲」として流す曲は、大きく分けてクラシックの行進曲と、近年人気のポップス系の楽曲の2種類があります。ただし入場行進という場面に限定すると、クラシックの行進曲が今も主流です。ここでは特に使用頻度が高い代表的な5曲を取り上げます。

まず真っ先に名前が挙がるのが、エドワード・エルガー作曲の「威風堂々 第1番」です。イギリスでは「第二の国歌」とも呼ばれる格調高い一曲で、1901年の初演時に聴衆が2度のアンコールを求めたほどの反響を呼びました。中間部のゆったりとした旋律が卒園式にも使われますが、主部(前半のマーチ部分)は力強い行進感があり、開会式の入場行進にも適しています。テンポが比較的ゆっくりめなので、年長児が背筋を伸ばして堂々と歩く場面に特に映えます。

次に定番として挙げられるのが、ヨハン・シュトラウス1世作曲の「ラデツキー行進曲」です。現在のオーストリア共和国でも国家を象徴する曲であり、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートでは1958年以降ほぼ毎年アンコール最終曲として演奏されています。明快でリズミカルな構成が特徴で、テンポが一定に保ちやすく、子どもが行進の足並みを揃えやすいという実用的な利点があります。保護者の手拍子が自然に起こりやすい曲でもあり、会場が一体になりやすい点も保育士に人気の理由です。

3曲目はジョン・フィリップ・スーザ作曲の「ワシントン・ポスト」です。スーザは「マーチ王」とも呼ばれたアメリカの作曲家で、この曲は1889年に発表された行進曲です。2拍子系のリズムが軽快で、テンポも速すぎず遅すぎないため、幼児でも歩きやすいのが特徴です。同じスーザ作品の「星条旗よ永遠なれ」も運動会の定番ですが、入場行進にはよりテンポが安定している「ワシントン・ポスト」のほうが使いやすいという現場の声もあります。

4曲目はフランツ・フォン・スッペ作曲の「軽騎兵序曲」です。閲兵式を思わせるトランペットファンファーレが冒頭に鳴り響き、一気に運動会らしい雰囲気を演出します。ただし、入場行進として使うなら2分33秒あたりからの行進部分を使うのが適切で、序曲全体をそのまま流すと冒頭部分が騎馬戦のBGMに聞こえてしまうという点は覚えておいて損はないポイントです。

5曲目はヨーゼフ・フランツ・ワーグナー作曲の「双頭の鷲の旗の下に」です。1880年代に作曲されたとされるこの曲は、明快かつリズミカルで、中間部の木管楽器の流れるような旋律も聴きごたえがあります。威風堂々やラデツキーほど有名ではないため「少し変えてみたい」というときの選択肢として覚えておくと便利です。

つまり、主要な入場行進曲はこの5曲から選べばまず間違いありません。

曲名 作曲者 テンポの目安 向いている場面
威風堂々 第1番 エルガー やや遅め 年長の入場・卒園式
ラデツキー行進曲 J.シュトラウス1世 中程度 全学年の入場・開会式
ワシントン・ポスト スーザ 軽快 低年齢クラスの入場
軽騎兵序曲 スッペ やや速め 開会式ファンファーレ的使用
双頭の鷲の旗の下に J.F.ワーグナー 中程度 定番を変えたいときの選択肢

参考:運動会で定番の有名クラシック音楽と入場行進曲の解説

運動会で定番の有名クラシック音楽21選!リレーやかけっこが盛り上がるBGM(Arco音楽教室)

入場行進曲の運動会での著作権ルール|保育士が見落としやすいポイント

「運動会でCDを流すのに著作権の手続きは必要なの?」という疑問は、保育士の間でもよく聞かれます。結論から言うと、保育園・幼稚園・学校での運動会における市販CDの使用は、原則として手続き不要です。

JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)の公式情報によれば、運動会は「授業の一環」と位置づけられており、以下の3条件をすべて満たす場合は演奏・CD使用とも手続きが不要とされています。

  • 🎵 入場料をとっていない
  • 🎵 演奏者に報酬を支払っていない
  • 🎵 営利を目的としていない

保育園の運動会はほぼすべてこの条件を満たします。つまり当日CDを流すだけなら問題ありません。

ただし、「手続き不要」には重要な例外があります。著作権が「切れていない」曲の使用が含まれる運動会の動画をSNSやYouTubeに投稿した場合は、別途手続きが必要になるケースがあります。JASRAC公式サイトによると、「学校が録画して保護者に配布する場合」や「運動会の動画をブログ・動画投稿サイトにアップする場合」は原則として権利処理が必要とされています。

これは痛いですね。

保護者向けに運動会の動画を限定公開するケースも増えていますが、市販CDの音楽が入った動画をインターネット上に公開することには注意が必要です。YouTubeの場合はYouTubeがJASRACと包括契約しているため、自動的に処理される場合もありますが、それはあくまでJASRACの管理楽曲に限った話です。著作権が「作曲者の死後70年を経過していない曲」「原盤権のある録音物」の場合は話が別になることも覚えておきましょう。

一方、作曲者の死後70年を経過したクラシック音楽(威風堂々、ラデツキー行進曲、ワシントン・ポストなど)は、「楽曲の著作権」は消滅しています。ただし、CDに収録されている「演奏・録音」には原盤権(著作隣接権)が残っていますので、この点が混乱のもとになりやすいです。

整理するとこういうことですね。

使用シーン 手続きの要否
運動会当日にCDを流す 不要
運動会のためだけにCDをコピーする 不要
開会式で合唱・楽器演奏する 不要
運動会の動画を保護者に配布する(CD音楽入り) 必要
運動会の動画をブログ・SNSに投稿する 必要
保護者が自分のスマホで個人撮影・自宅で見る 不要

「当日流すのはOKでも、動画に残して配るのはNG」というのが基本ルールです。クラシックなら何でも自由に使えるという思い込みは危険です。

参考:JASRAC公式「学校の運動会での音楽使用について」

ジャスラの音楽著作権レポート(JASRAC PARK)「運動会」(JASRAC公式)

入場行進曲を運動会の年齢別・場面別に選ぶポイント

入場行進曲は「とりあえず威風堂々を毎年流す」という保育園も少なくありません。しかし年齢や場面によって最適な曲は異なり、選曲を工夫するだけで子どもたちの行進の質も保護者の印象も変わります。これは使えそうです。

まず0〜2歳児クラス(乳児)の場合、入場行進というよりも「保護者と一緒にぞろぞろと入ってくる」スタイルが多いため、リズムが複雑でなく、明るく親しみやすい曲が向いています。ミッキーマウス・マーチやさんぽ(となりのトトロ)などのアニメ・ディズニー系の曲は、保護者も知っている曲が多くて場がなごみます。「ガチガチの行進曲を流してしまって0歳児クラスが困惑した」という失敗談を耳にすることもあるので注意が必要です。

3〜4歳児クラス(幼児前半)では、テンポが一定で分かりやすい曲が適しています。ラデツキー行進曲やワシントン・ポストのように、2拍子ではっきりしたリズムの曲は、「1、2、1、2」とかけ声をかけながら練習しやすく、足並みが揃いやすいです。テンポが速すぎると走り出してしまうことがあるので、練習段階でテンポを確認しておくのが大切です。

5歳児クラス(年長)は卒園前の運動会なので、保護者にとっても感動のシーンです。威風堂々の主部(行進部分)を使うと、堂々とした雰囲気が子どもたちの最後の姿をより印象深く演出します。エルガーの威風堂々はテンポがやや遅めのため、「ゆっくりでいいから一歩一歩を大切に」という指導とも相性が良いです。

選曲の際に重要なポイントをまとめると、以下のとおりです。

  • 👟 テンポ(BPM)を確認する:ウォーキングに最適とされるBPMは115〜118程度。幼児の行進にはこの範囲か少し遅め(100〜115程度)が行進しやすい
  • 👟 曲の長さを確認する:入場行進に必要な時間(クラス数×人数)を計算してから曲の長さを確認する。複数曲をつなげる場合はフェードイン・フェードアウトの処理が必要
  • 👟 繰り返し使える曲構成を選ぶ:ループ再生しやすい曲や、同じ旋律が繰り返されるマーチ形式の曲は使いやすい
  • 👟 保護者の世代に馴染みがある曲を選ぶ:聴いたことのある曲のほうが、保護者の気持ちが盛り上がり拍手や手拍子が起こりやすい

年齢と場面に合った曲を選ぶのが原則です。

また一つの工夫として、入場行進の練習でBGMを変えてみる方法があります。最初の練習は軽快なワシントン・ポストで足の動かし方を覚えさせ、本番用に威風堂々を採用すると、本番当日の特別感が増し、子どもたちも自然と背筋が伸びるという現場の声もあります。

入場行進曲の運動会向けCD・音源の選び方と活用法

実際に保育現場で使う音源は「市販の運動会向けCD」か「デジタル配信サービス」の2パターンが主流です。それぞれの特徴を整理してから選びましょう。

市販の運動会向けCDの場合、保育専門出版社が制作しているものは「行進しやすいテンポに調整済み」「フェードアウト処理済み」「年齢別に分けた収録内容」など保育現場の使いやすさを考慮した作りになっています。コロムビアミュージックの「みんなで運動会〜幼稚園・保育所向き運動会用音楽集〜」シリーズや「きょうの運動会」シリーズは、保育園・幼稚園の現場で長年使われてきた定番商品です。

CDの場合は毎年使い回せるのも利点ですね。

一方、デジタル音源・ストリーミングの場合は、Audiostock(オーディオストック)などの著作権フリーBGMサービスを活用する方法もあります。Audiostockには「ワシントン・ポスト」をほぼ原曲のままアレンジした音源なども掲載されており、運動会BGMとしての利用も可能です。こうした著作権フリーBGMは、前述のSNS・動画投稿の問題もクリアできる点が大きなメリットです。

ただし、著作権フリー素材であっても利用規約の確認は必須です。「個人・非営利利用は無料だが、商用・配布には有料ライセンスが必要」という条件設定のサービスも多いため、入手前に保育園の用途が規約に合致するかを確認する1ステップが必要です。

保育園の規模や予算によって最適な方法は変わりますが、初めて担当する保育士には「保育専門のCD」が最も安心できる選択肢です。音源の加工や選曲の手間が省け、テンポも練習に適したものに整えられているため、準備にかかる時間を他のことに使えます。

参考:保育園・幼稚園向き運動会用音楽集の情報

幼稚園・保育所向き運動会用音楽集「きょうの運動会」商品情報(日本コロムビア)

入場行進曲の練習を運動会本番に活かす保育士ならではの指導アイデア

入場行進曲を選んだ後、もう一つ大切なのが「練習の質」です。曲がどれだけ良くても、子どもたちが曲に乗って行進できなければ意味がありません。ここでは現場で使える、あまり語られていない視点からの練習アイデアを紹介します。

まず取り入れやすいのが、「曲の意味や名前を子どもに伝える」アプローチです。たとえば威風堂々の練習前に「この曲はね、『いふうどうどう』っていって、とっても立派でかっこいいっていう意味なんだよ」と一言伝えると、子どもたちの歩き方が変わります。言葉が行動に影響を与えるのは幼児でも同じで、「威風堂々の顔で歩いてみよう!」という声かけだけで背筋が伸びる子が増えます。

また、「手拍子で拍を感じさせる」練習法も効果的です。歩く前にまず曲に合わせて手拍子を打つ練習をして、2拍子のリズムを体で理解させます。ラデツキー行進曲のように手拍子が起こりやすい曲は特にこの練習と相性が良く、「1・2、1・2」というリズムを体に叩き込んでから歩き始めると、足が自然と揃います。

「入場の隊形を曲の構成に合わせる」工夫も印象を大きく変えます。たとえば曲に繰り返しの部分がある場合、1回目はクラスごとに横一列で入場し、2回目の繰り返しで隊形変換する、というように振り付けると見栄えがします。これは保護者目線でも「練習を積んできたんだな」という満足感につながります。

大切なのは本番より練習の質です。

さらに、年長クラスでは「自分たちが選んだ曲で入場する」という体験を取り入れる保育園もあります。いくつかの候補曲を子どもたちに聴かせて、「どれが一番かっこいい行進曲か」を多数決で選ばせる方法です。自分たちで選んだ曲という意識が生まれると、練習への意欲が上がり、本番の入場行進にも力が入ります。

最後に、練習段階と本番で同じ音源を使うという点も重要です。「練習ではピアノで弾いていたのに、本番だけオーケストラ音源に変えたら子どもたちが戸惑った」というケースは実際に起こります。練習用と本番用は同じ音源で統一するのが原則です。

保育専用のBGMサービス「ほいくis」や「保育士バンク」などのサイトでは、保育士向けに選曲ガイドが公開されているものもあり、曲探しに行き詰まったときの参考になります。

参考:保育園の運動会に使える音楽と選曲ポイントの解説

保育園の運動会に!おすすめの音楽と選曲ポイント(ほいくis)

<プーサン>歌劇「タンホイザー」/入場の行進曲「歌の殿堂をたたえよう」(ワーグナー)