鈴木メソード バイオリン4巻の曲目と各曲の習得ポイント
4巻に入った子どもは、実は3ヶ月でも曲を仕上げられます。
鈴木メソード4巻の全曲目一覧と収録の流れ
鈴木メソード(スズキ・メソード)バイオリン第4巻には、全部で9曲が収録されています。出版元である全音楽譜出版社(才能教育研究会 編)が2008年に改訂した新版が現在の標準版で、定価3,300円(CD付き)です。曲の並びは難易度順に設計されており、最初のザイツから始まり、最後のバッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」第1楽章(第2バイオリンパート)へと段階的に難易度が上がっていきます。
収録されている曲目は次のとおりです。
| No. | 曲名 | 作曲者 |
|---|---|---|
| 1 | 協奏曲第2番 第3楽章(ト長調 Op.13) | ザイツ |
| 2 | 協奏曲第5番 第1楽章(ニ長調 Op.22) | ザイツ |
| 3 | 協奏曲第5番 第3楽章(ロンド) | ザイツ |
| 4 | 協奏曲イ短調 第1楽章(ナッシェ編曲版) | ヴィヴァルディ |
| 5 | 協奏曲イ短調 第3楽章(ナッシェ編曲版) | ヴィヴァルディ |
| 6 | 無窮動 小組曲第6番 | ボーム |
| 7 | 2つのヴァイオリンのための協奏曲 第1楽章(第2バイオリン) | J.S.バッハ |
| 8 | 子守唄 | シューベルト |
| 9 | 子守唄 | ブラームス |
この並びにはしっかりとした教育的意図があります。まず馴染みのあるザイツで協奏曲の形式に慣れ、ヴィヴァルディで本格的なバロック様式の美しさを学び、ボームの無窮動でテクニックを磨き、バッハのドッペルコンチェルト(第2バイオリン)で合奏の喜びを体験し、最後の2曲の子守唄で表現力の柔らかさを身につける、という設計です。つまり技術と表現、どちらも同時に鍛えられる構成になっています。
4巻は「初級の卒業証書」とも呼ばれます。なお、本書にはピアノ伴奏(カラピアノ)のCDトラックも収録されており、模範演奏は舘ゆかり先生のデジタル録音によるものです。新版への改定で音質が格段に向上し、子どもが「耳から学ぶ」スズキ・メソードの根幹を支えています。
参考:全音楽譜出版社 公式サイト(4巻の曲目・仕様の詳細が確認できます)
鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集 4新版(CD付)- 全音楽譜出版社
鈴木メソード4巻のザイツ協奏曲を弾くために必要な技術
4巻の最初の関門はザイツの協奏曲です。収録されているのは、第2番第3楽章(ト長調 Op.13)と第5番第1楽章・第3楽章(ニ長調 Op.22)の計3曲です。ドイツの作曲家フリードリッヒ・ザイツ(1848〜1918)は、子どもの学習を念頭に置いてこれらの曲を書いており、いわば「子どものための協奏曲」として世界中の弦楽教育で長年使われてきた実績があります。
4巻に入る前に習得しておかなければならないのが、①ビブラート、②ポジション移動(第3ポジション)、③重音の3つです。これは埼玉県のバイオリン教室での指導記録にも明記されており、「この3つがなければ4巻の曲は弾けない」と断言する指導者も少なくありません。特にポジション移動は、スケールで弾ける最速テンポが実際の曲で出せる最速テンポと一致するため、スケール練習のテンポアップが欠かせません。
ザイツ第2番第3楽章のポイントは弓のメリハリです。冒頭の弓遣いで、弓のスピードと圧力をコントロールする技術が問われます。第5番第1楽章は音程の安定性と長いフレーズを支えるボーイングが課題で、第3楽章(ロンド)はリズム感と軽快なテンポ感が求められます。これが基本です。
保育士として子どもの練習を側で見る機会があるなら、「弓が駒と平行に動いているか」「肘の高さは保てているか」という2点を観察するだけで、練習の質を大きく底上げするアドバイスができます。音程だけに目を向けがちですが、実はボーイングの形が整うと音程も安定するという関係があります。重音の場合は単音より弓圧を抜いて弾くというのも重要なポイントで、力任せに押さえると2本の弦が鳴らなくなってしまいます。
スズキメソード4巻までに修得しておかなければならないこと(浦和・さいたまバイオリン教室)
鈴木メソード4巻のヴィヴァルディ協奏曲イ短調の難しい箇所と練習法
ヴィヴァルディの協奏曲イ短調は、4巻の中でも特に「壁」になりやすい曲です。スズキ教本に収録されているのは「ナッシェ編曲版」と呼ばれるもので、ハンガリーの名ヴァイオリニスト、ティヴァダール・ナッシェ(1859〜1930)によるバイオリン独奏用の編曲版です。原曲(RV356)よりも装飾や音の並びが整理されており、学習段階にちょうど良い難易度に調整されています。
第1楽章は冒頭の力強いユニゾンが印象的で、全体的に音程とテンポの安定感が問われます。意外ですね。特に難しいとされるのが第3楽章の2ページ目で、複雑な音の並びが続く箇所があり、多くの生徒が壁を感じる部分です。ここは右手と左手を別々に練習してから合わせる方法が効果的で、さらにリズムを変えて(例:タタタ・タタタのリズムに変換する「リズム練習」)繰り返すことで指が自然に動くようになります。
この曲の最大の学習的意義は、「楽譜をただ弾くだけでは不十分」という自主性の訓練にある、と複数の指導者が指摘しています。楽譜の再現だけでなく、どのように弾くか、どんな音色を出すか、という「考える力」が育ちます。これはスズキ・メソードの根幹である「耳から育てる母語教育法」とも深くつながります。赤ちゃんが毎日言葉を耳にして自然に話せるようになるように、良い音楽を繰り返し聴いて自分の音づくりを深めていく、という考え方です。
保育士の視点で見ると、この曲はイ短調(短調)という点がポイントです。短調の曲を通じて、子どもは「悲しい」「落ち着いた」「少し切ない」という感情の表現を音楽的に体験します。保育現場で情操教育を意識するなら、この曲を鑑賞させるだけでも感情語彙の発達に寄与するという研究的見解もあります。
参考:スズキ・メソード公式サイト(母語教育法の理念が詳しく説明されています)
Aboutスズキ・メソードとは | 公益社団法人才能教育研究会
鈴木メソード4巻のボーム「無窮動」とバッハ二重協奏曲の特徴
4巻後半の2曲は、技術と表現の両面でレベルが上がります。まずボーム「無窮動(小組曲第6番)」ですが、「無窮動(むきゅうどう、英: Perpetual Motion)」とは、常に一定した速い音符の流れが続く曲のことです。16分音符が延々と続くスタイルで、テンポが速くなるほど快感が生まれる曲でもあります。
この無窮動は新版(2008年改訂)から4巻に追加された曲で、旧版には収録されていませんでした。これは知っておくと得します。旧版で習っていた方との世代差が生まれる箇所でもあります。ボーイングの安定性と均一な音の粒立ちが求められ、テンポアップを焦ると指がばらばらになるため、「ゆっくり正確に→少しずつ速く」というステップが原則です。
次に、バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調(BWV1043)」の第1楽章・第2バイオリンパートですが、この曲は「ドッペルコンチェルト」の愛称で親しまれる名曲です。4巻では第2バイオリン、5巻では第1バイオリンを担当するという構成になっており、4巻と5巻の生徒が合奏できる仕組みになっています。これはスズキ・メソードならではの合奏教育の工夫で、先輩・後輩が一緒に演奏できる設計です。
第2バイオリンパートは一見サポート役に見えますが、実は全体の土台を支える重要な役割を担っています。ハーモニーを理解し、相手の音を聴きながら演奏するという「聴く力」と「合わせる力」の両方が鍛えられます。つまり合奏の土台が第2バイオリンです。保育現場では「人の話を聞く力」が重視されますが、ドッペルコンチェルトを通じて音楽的に体験させることが、その力の素地を育む可能性があります。
バッハの二重協奏曲(ドッペル)の解説(スズキ・メソード 石戸クラス)
鈴木メソード4巻「子守唄」2曲が保育士にとって特に重要な理由
4巻の最後に収録されているのは、シューベルトとブラームスそれぞれの「子守唄」です。この2曲は技術的には4巻の中で最も易しい部類に入りますが、だからこそ「音色」と「表現」が全て問われる曲でもあります。保育士として特に知っておいてほしい曲がこの2曲です。
シューベルトの子守唄(D.498)は1816年に作曲されたピアノ伴奏付きの歌曲が原曲で、穏やかな3拍子と澄んだメロディーが特徴です。バイオリンで演奏すると弦の響きが柔らかさをさらに引き立て、赤ちゃんを寝かしつけるような安心感を持ちます。一方、ブラームスの子守唄(Op.49-4、1868年作曲)はウィーン民謡を基に書かれたとされており、親しみやすいメロディーで世界中に普及しています。この曲は日本でも「眠れよ 良い子よ」の歌詞で広く知られています。
保育の現場での活用という観点から見ると、この2曲には大きな価値があります。まず、ゆったりとしたテンポとやわらかい音色は、乳幼児の情緒を落ち着かせる効果が複数の保育研究でも示されています。お昼寝の時間の前にCDや演奏を流すだけで、子どもが自然に落ち着くといった声も現場では聞かれます。これは使えそうです。
さらに、この2曲を弾く子どもに対して「誰かを優しく包むように弾く」という言葉で指示を出すことは、音楽表現だけでなく共感性の育ちにも働きかけます。弾く子本人が「誰かのために演奏する」という感覚を持つことで、音色が劇的に変わるのです。実際に多くの指導者が「子守唄は感情移入の練習曲」と位置づけており、技術的な簡単さと表現の深さという二重の意味を持つ曲と言えます。
スズキ・メソード各巻曲目リスト(バイオリンオンラインレッスン)
鈴木メソード4巻の曲目を保育士が子どもの音楽教育に活かす独自視点
保育士がスズキ・メソード4巻の内容を知っておくと得する理由は、「音楽のある保育」を支える知識として直接使えるからです。バイオリンを習っている子が在園している場合、その子の取り組んでいる曲を知っているだけで、声がけの幅が広がります。「今ザイツ弾いてるんだって?難しい曲だね」のひと言が、子どもの自己肯定感を高める大きなきっかけになります。
スズキ・メソードの理念の中に「非認知能力の育成」があります。東京大学・酒井邦嘉名誉教授との共同研究では、スズキで学んだ生徒の脳はテンポ感に特別な強みを持つことが確認されています。テンポ感とは、つまり物事のリズムをつかむ力で、会話のテンポ、活動の流れの読み方、集団行動へのなじみやすさ、すべてに通じます。音楽を通じて「やり抜く力」「協調性」「集中力」が育つという研究成果は、保育の現場にも十分に応用できる知見です。
4巻の曲には、感情の幅が広い作品が揃っています。ザイツの力強さ、ヴィヴァルディの悲壮感、無窮動の爽快感、バッハの知的な美しさ、子守唄の穏やかさ、という5種類の感情体験が1冊の中にあります。これらを保育の「鑑賞活動」として取り入れると、子どもの感情語彙が豊かになる可能性があります。鑑賞活動で使う音楽を選ぶ際、この4巻の曲目を参考にしてみてください。
また、バッハのドッペルコンチェルト(第2バイオリン)のように、複数の人が役割を持って演奏する曲は、「みんなで何かを作る」という協同経験そのものです。保育士が合奏活動を設計するとき、「それぞれが違う役割を担って1つの音楽を作る」というコンセプトはそのまま、鍵盤ハーモニカや打楽器を使った合奏活動に転用できます。音楽は条件が整えばいつでも保育の道具になります。
参考:スズキ・メソードでの脳発達・非認知能力への効果についての詳細は公式サイトで確認できます。
