音名唱・階名唱の違いと保育士が現場で使う唱法

音名唱・階名唱の違いを保育士が正しく使い分けるための完全ガイド

「ドレミ」だけ歌わせると、子どもの音感が育たなくなることがあります。

🎵 この記事の3つのポイント
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音名唱と階名唱の本質的な違い

音名唱は「絶対的な音の名前で歌う」固定ド唱法、階名唱は「調によってドを移動させて歌う」移動ド唱法。両者はドレミを使うのに意味がまったく異なります。

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子どもへの指導に直結する違い

階名唱(移動ド)は相対音感を育てるうえで非常に効果的。保育現場での歌唱指導に階名唱を活用すると、子どもが音程をつかみやすくなります。

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保育士試験にも必須の知識

保育実習理論の問6では「移動ド唱法とは階名で歌う唱法である(○)」などの問題が繰り返し出題されます。試験前に必ず整理しておきましょう。

音名唱・階名唱とは何か?2つの定義を整理する

 

保育士試験や音楽の勉強をしていると、「音名唱法」「階名唱法」という言葉に出会います。この2つはどちらも「ドレミファソラシド」を使うのに、まったく別の概念です。ここを曖昧なまま放置すると、試験問題でも保育現場でも混乱が生じます。

まず「音名唱法(音名唱)」とは、その音符が楽譜上に置かれている絶対的な音の名前でそのまま歌う方法です。調が変わっても「ド」は常にド、「レ」は常にレです。ピアノの鍵盤のある特定の場所が「ド」と決まっているイメージで、これを「固定ド唱法」とも呼びます。日本では明治末期に専門教育の場に取り入れられた歴史があります。

一方「階名唱法(階名唱)」とは、楽曲が何調であっても、その調の主音を「ド」として歌う方法です。たとえばヘ長調の曲であれば、ファを「ド」と読んで歌います。「ドが調に合わせて移動する」ため「移動ド唱法」とも呼ばれています。11世紀のイタリアの修道士グィードが考案したとされており、保育士試験でも「階名ドレミは11世紀にグィードが考案した(○)」として出題実績があります。

絶対的な音の位置が変わらないのが音名唱。これが基本です。相対的な音の関係性をドレミで表すのが階名唱です。

比較項目 音名唱(固定ド) 階名唱(移動ド)
「ド」の位置 常に同じ(ハ長調の主音) 調によって移動する
対象とする音感 絶対音感に近い 相対音感を育てる
主な別名 固定ド唱法 移動ド唱法
調号の扱い 調号を気にしなくてよい 調号の確認が必須
歴史的背景 明治末期に専門教育へ導入 11世紀グィードが考案

「音名唱と階名唱は別物」と押さえておけばOKです。ハ長調の曲だけは、音名も階名もまったく同じになる特別なケースです。ハ長調の主音はドですから、固定しても移動してもドから始まるため結果が一致します。この例外は試験でも意識しておくと整理しやすくなります。

音名唱・階名唱と「固定ド/移動ド」の関係を具体例で確認する

「固定ド」「移動ド」という言葉は音名唱・階名唱と対応していますが、実際どう使い分けるのか、具体的なメロディで確認しましょう。

「かえるの歌」をハ長調で歌う場合、音名唱(固定ド)では「ド・レ・ミ・ファ・ミ・レ・ド」となります。これは楽譜の音符をそのまま音名で読んだものです。この場合、ハ長調なのでドが主音。音名唱でも階名唱でも読み方はまったく同じになります。

では「かえるの歌」をト長調に移調した場合はどうでしょう。音名唱(固定ド)では「ソ・ラ・シ・ド・シ・ラ・ソ」となります。ドの位置は動きません。それに対して階名唱(移動ド)では、ト長調の主音ソを「ド」とみなして「ド・レ・ミ・ファ・ミ・レ・ド」のままになります。これが移動ドの核心です。

  • 🎼 音名唱(固定ド)でト長調の「かえるの歌」:ソ・ラ・シ・ド・シ・ラ・ソ
  • 🎵 階名唱(移動ド)でト長調の「かえるの歌」:ド・レ・ミ・ファ・ミ・レ・ド

階名唱では調が変わってもメロディの「形」は常にドレミファミレドで変わりません。これが階名唱の大きな特徴です。子どもに歌を覚えさせるときに、調が少し変わっても同じメロディの動きで歌えるため指導がシンプルになります。

保育士試験の過去問では「移動ド唱法とは、階名で歌う唱法である(○)」が平成16年度に出題されています。頻出ポイントです。音名唱は固定ド、階名唱は移動ドとセットで記憶しておきましょう。姫路日ノ本短期大学の研究によると、保育士養成課程の学生85名中、実際に移動ド(階名唱)で楽譜を読んでいた学生はわずか1名(約2%)だったという調査結果があります。大半の学生が音名唱(固定ド)に慣れているという実態が明らかになっています。

参考リンク:保育者・幼児教育者養成課程での音名・階名の取り扱いについて詳しく解説されています(保育養成課程でのピアノ実技指導研究)

姫路日ノ本短期大学「保育者養成課程における音名と階名の取り扱い」(PDF)

音名唱・階名唱を保育現場でどう活用するか:子どもへの歌唱指導

保育士試験で知識として覚えるだけでなく、実際の保育現場での活用法を知っておくことは非常に重要です。音名唱と階名唱はそれぞれ役割が異なるため、場面に応じた使い分けが求められます。

子どもに歌を教えるとき、階名唱(移動ド)が特に有効です。理由は「相対音感」の育成に直結しているからです。相対音感とは、ある基準の音からの音程の距離を感じ取る能力のことで、音楽を楽しむうえで最も実用的な耳の力です。階名唱を使えば、♯や♭といった記号を子どもに一切説明しなくても、「ドから始まる音の階段」として音楽を感じさせることができます。これは現場での歌唱指導をとても楽にします。

一方、音名唱(固定ド)はピアノを弾く場面や楽器の音合わせで使いやすい方法です。鍵盤の特定の位置と音名が一致しているため、保育士自身が楽譜を読んでピアノを演奏するときは音名唱の感覚が役立ちます。

  • 🎹 ピアノで弾き歌いするとき:音名唱(固定ド)が使いやすい
  • 🎤 子どもたちと歌を歌うとき:階名唱(移動ド)が相対音感を育てる
  • 🎧 音程を確認させたいとき:階名唱でドレミと声に出させる

静岡県教育委員会の資料によれば、移動ド唱法の最大のメリットは「相対的な音感の獲得をとおして良い耳をつくること」であり、ここでいう「良い耳」とは聴覚が優れているだけでなく、ある音を音楽的文脈の中で関係性をもって感じ取れる能力のことを指しています。子どもが歌の音程を自然につかめるようになるための土台がここにあります。

文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)でも、歌唱の活動を通して「階名で模唱したり暗唱したりする技能を身につけること」が定められており、指導上の配慮事項として「相対的な音程感覚を育てるために、適宜、移動ド唱法を用いること」と明記されています。保育士も同じ方向性で音楽活動を行うことが求められています。

参考リンク:移動ド唱法とハンドサインを組み合わせた指導法のくわしい説明が掲載されています(静岡県教育委員会)

静岡県教育委員会「ハンドサインと移動ド唱法」(PDF)

コダーイ・メソッドにおける階名唱の役割:ハンドサインとの組み合わせ

保育士試験で頻出のコダーイ・システムと、階名唱は深くつながっています。コダーイ・システムとは、ハンガリーの作曲家ゾルターン・コダーイ(1882-1967)が開発した音楽教育の包括的システムで、「移動ド唱法」とともに「ハンドサイン」を使うのが大きな特徴です。

ハンドサインとは、「ドレミファソラシド」の各音に対応した手のジェスチャーのことです。ジョン・カーウェン(1816-1880)が考案し、コダーイが改良して子どもの教育に取り入れました。たとえば「ド」は握りこぶしを横に向けた形、「ソ」は手のひらを斜め下に向けた形など、それぞれに固有のサインが割り当てられています。

階名唱とハンドサインを組み合わせると何が起きるか。子どもが視覚(手の形)と聴覚(音の高さ)を同時に連動させながら音程感覚を育てていきます。これが「内的聴感」の育成です。内的聴感とは、自分の頭の中で音を思い浮かべることのできる音楽的能力のことで、読譜指導より先に育てるべき音楽教育の基礎とされています。つまり楽譜を読む前の段階で、音程感覚を体感させるためのツールが階名唱+ハンドサインです。

コダーイ・システムでは、ピアノに頼らずアカペラで階名唱を行います。これは保育現場にとって非常に実践的です。なぜなら、楽器がなくてもどこでも音楽指導ができるからです。移動ド唱法を用いることで、♯や♭の調号は「いちばん右のシャープはシ、いちばん右のフラットはファ」という一言だけ理解すれば、子どもたちが正しい階名で歌えるようになります。

  • 🤲 ドのハンドサイン:握りこぶしを横に
  • ソのハンドサイン:手のひらを斜め下に向ける
  • ☝️ ミのハンドサイン:手のひらを下向きに水平に

コダーイ・システムが保育士試験で問われるのは、「移動ド唱法とはセットで覚えるべきシステム」だからです。試験上の知識としても、保育実践としても、階名唱とコダーイ・メソッドの関係を押さえておくことは必要不可欠です。

参考リンク:コダーイメソッドを日本の保育現場でどう実践するかが具体的にまとめられています

oriori「家庭でも実践できるコダーイメソッド」

音名唱・階名唱の保育士試験対策:頻出問題と解き方のポイント

保育実習理論の音楽問題、特に問6には音名唱・階名唱の知識が直接的に問われます。ここでは過去問の傾向と、具体的な問題の解き方を整理します。

まず、よく出題される正誤問題のポイントを確認しましょう。「移動ド唱法とは、階名で歌う唱法である」は○(平成16年度)、「階名ドレミは、11世紀にグィードが考案したものである」も○(平成18年度)です。これらは基本事項として確実に正解できるようにしておきましょう。

さらに難しい問題として「〇〇長調の階名△△は、音名◇◇である」という変換問題が出ます。解き方は次のとおりです。

  • 📌 ステップ1:調名から主音を特定する(例:二長調→主音はレ)
  • 📌 ステップ2:主音を「ド」として階名の音階を並べる(レ=ド、ミ=レ、ファ♯=ミ、ソ=ファ…)
  • 📌 ステップ3:指定された階名の位置に対応する実際の鍵盤の音(音名)を確認する

例えば「二長調の階名ファは、音名嬰ト(♯ソ)である」という問題。二長調の主音はレです。レをドとして音階を上がっていくと「ド(レ)・レ(ミ)・ミ(ファ♯)・ファ(ソ)・ソ(ラ)…」となります。階名ファは鍵盤上の「ソ」に対応するため、音名は「ト」です。問題文は「嬰ト」となっているため、これは×となります。

鍵盤の「ハニホヘトイロハ」の対応も整理しておきましょう。ド=ハ、レ=ニ、ミ=ホ、ファ=ヘ、ソ=ト、ラ=イ、シ=ロです。この変換が瞬時にできるようになると、階名・音名の変換問題でミスが減ります。

日本語音名
対応するドレミ ファ

音名と階名の変換は「まず調の主音を特定する」が原則です。これさえ守れば解けます。保育士試験では平成16年から令和7年まで継続的に出題されているため、過去問5年分をひととおり解いて慣れておくことを勧めます。

参考リンク:保育実習理論の音楽問題における階名・音名の解き方が図解で丁寧に説明されています

保育士対策「二長調の階名ファは、音名嬰トである。の解き方」

音名唱・階名唱の歴史と日本の学校教育における変遷

音名唱と階名唱の歴史を知ることで、なぜ2つの唱法が混在しているのかを理解しやすくなります。保育士試験でもこの背景知識は出題される場合があります。

階名唱の「ドレミ」は、11世紀にイタリアの修道士グィードが考案したとされています。「ドレミファソラシ」はラテン語のグレゴリオ聖歌「聖ヨハネ賛歌」の各節の頭の音節が由来で、教会での音楽教育が起源です。もともとは「音程の階段」として設計されており、移動ドが本来の形でした。

日本では明治時代に西洋音楽が導入された際、「ドレミ」が音名唱(固定ド)として普及します。明治11年に伊沢修二が音楽取調掛でドレミの代わりに「ヒフミ唱法」を提唱しましたが、明治28年ごろには東京音楽学校の小山作之助の提案で廃止され「ドレミ唱法」が採用されました。さらに第二次世界大戦中は敵国語として「ドレミ」が禁止され、「イロハ唱法」が強制された時期もありました。意外ですね。

戦後の昭和21年には文部省が通達を出し、「音楽を指導する場合には原則としてドレミ階名唱法を使うこと」と定めました。これは「階名唱を基本とすること」の宣言です。現在の学習指導要領でも引き続き、相対音感育成のための移動ド唱法の活用が明記されています。

  • 📖 11世紀:グィードが階名ドレミを考案
  • 📖 明治11年:日本に「ヒフミ唱法」が登場
  • 📖 明治28年ごろ東京音楽学校が「ドレミ唱法」を採用
  • 📖 太平洋戦争中:ドレミが禁止され「イロハ唱法」が強制される
  • 📖 昭和21年:文部省が「ドレミ階名唱法を使うこと」と通達
  • 📖 平成29年:文部科学省が学習指導要領で移動ド唱法の活用を明記

日本の音楽教育は戦争と政治に翻弄されながら現在の形になっています。音名唱と階名唱が混在している背景には、こうした歴史的経緯があります。「ドレミ=固定ドとして覚えた世代」と「移動ドとして習った世代」が同じ職場に共存しているのは、こうした歴史のためです。

参考リンク:保育実習理論で出題される音楽教育の歴史・各種唱法の背景が分かりやすくまとめられています

保育園job「保育実習理論 おぼえよう!音楽の基礎知識①音楽教育編」

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