挨拶の歌で世界の言葉を保育に取り入れるコツ

挨拶の歌で世界の言葉を保育に取り入れるすべて

「Hello」を歌えば歌うほど、子どもの日本語力も上がることがわかっています。

この記事でわかること
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世界の挨拶の歌の種類と特徴

Hello Songをはじめ、多言語あいさつ歌の代表曲と、保育現場での使い分けを解説します。

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年齢別の導入のねらいと実践方法

0歳児クラスから5歳児クラスまで、発達段階に合わせた活用アイデアを紹介します。

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挨拶の歌がもたらす子どもへの効果

言語習得・社会性・多文化理解など、保育士が知っておきたい研究ベースの根拠を紹介します。


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挨拶の歌「世界版」とは?代表曲と種類を整理する

 

保育現場で「世界の挨拶の歌」と呼ばれるものには、大きく2つの系統があります。ひとつは英語の「Hello Song」を中心とした英語圏発の歌。もうひとつは複数の言語で「こんにちは」を歌い分ける多言語系の曲です。

英語系で特に有名なのが、YouTube再生数が数億回を超える「Super Simple Songs」の「Hello!」シリーズです。「Hello, how are you? I’m fine, thank you!」というシンプルなフレーズが繰り返され、0歳児クラスでも無理なく取り入れられます。手を振るジェスチャーも一緒に覚えられるのが大きな魅力です。

もうひとつ人気が高いのが、アプリコット出版の「Hello Song – 10 Languages」です。英語・フランス語・スペイン語・中国語・韓国語など10か国語の「こんにちは」をメロディーに乗せて歌う曲で、一度で複数の言語に触れることができます。これは多文化保育を意識した園で特に好評です。

日本語の「あいさつのうた」も広く使われています。「おはようございます」「こんにちは」「さようなら」「おやすみなさい」という日常の挨拶をリズム良く歌う定番曲で、0〜1歳からの生活習慣定着にも有効です。

曲名 言語 対象年齢の目安 特徴
Hello! (Super Simple Songs) 英語 0歳〜 シンプルな繰り返し、手振りジェスチャー
Hello Song – 10 Languages 英語・仏・西・中・韓など10か国語 2歳〜 多言語を一度に体験できる
あいさつのうた 日本語 0歳〜 1日の生活挨拶をまとめて習得
Good Morning Song(サークルタイム用) 英語 2歳〜 出席確認・朝の会に組み込みやすい
世界のありがとう(YouTube系) 多言語 3歳〜 「ありがとう」を約10か国語で歌う知育系

つまり目的と月齢に合わせた曲選びが基本です。

挨拶の歌・世界版を保育に導入するねらいと発達への効果

「なぜ挨拶の歌で外国語を取り入れるのか?」と迷う保育士もいるかもしれません。これは感覚です。

言語習得の「臨界期仮説」によると、外国語の音を母語と同じように聞き分けられる能力は、生後6〜8か月ごろから始まり、12歳前後で大きく低下します(レネバーグ、1967)。特に発音のネイティブ性については、慶應義塾大学の論文でも「12歳が一つの分岐点」と言われています。

つまり、保育園・幼稚園は言語感覚を育てる最も良いタイミングなのです。ただし、ここで大切なのは「流暢に話せること」ではありません。「英語の音に違和感なく触れること」「多様な言語が世界に存在することを体感すること」が主なねらいです。

歌を使う理由も明確です。吉備国際大学の研究では、「保育での英語活動はあくまで楽しさを基盤にすることが不可欠」とされており、歌やリズム遊びはその代表的な手法として位置付けられています。芦屋大学の論文でも、幼児が歌を通じて「語彙の増加・言語能力の発達・脳の発達・コミュニケーション能力の向上」を期待できると報告されています。

さらに見逃せない効果があります。世界の挨拶の歌を通じた多文化理解です。外務省のキッズページには40以上の言語で挨拶フレーズが掲載されており、韓国語の「アンニョンハセヨ」、タイ語の「サワッディー」、ポルトガル語の「オブリガード」など、子どもが音として楽しめる多彩な表現が揃っています。これらを歌に乗せて伝えることで、「世界には違う言葉がたくさんある」という気づきが生まれます。これが将来的な多様性への受容につながる土台です。

吉備国際大学紀要:幼児教育現場における英語活動のあり方(PDF)

挨拶の歌「世界」を年齢別に使い分けるポイント

保育士として一番悩むのが「どのクラスに何の曲を使えばいいか」という点ではないでしょうか。年齢別に整理します。

🍼 0〜1歳クラス(乳児) は、言語の内容よりも音とリズムの心地よさが全てです。この時期は、繰り返しシンプルなメロディを聞かせるだけで十分効果があります。「Hello!」(Super Simple Songs)のようなゆったりしたリズムで、大人が笑顔で歌いかける形が基本です。子どもの視線を合わせながら、手を振って歌うだけで立派な活動になります。乳児にとっての「Hello」は単語ではなく、温かい声とリズムの体験です。

🐣 2〜3歳クラス(低年齢幼児) になると、真似する力が急速に育ちます。「ハロー」「アンニョン」「ニーハオ」のように短く発音しやすいフレーズから始めるのが効果的です。出席確認を兼ねた「Where is ○○?」ソング(グーチョキパーのリズム)も、この年齢での定番です。手遊びと組み合わせることで身体全体で言葉を覚えていきます。

🌱 4〜5歳クラス(年中・年長) は、「なぜ言葉が違うのか」を軽く説明しながら取り入れると理解が深まります。「Hello Song – 10 Languages」のような多言語曲を使い、「これはフランスの言葉だよ」「これはタイの言葉」と絵や地図と組み合わせると、世界への興味がぐんと広がります。まとめると以下のポイントが条件です。

  • 0〜1歳:音とリズムの心地よさ重視。繰り返しの多い英語の歌で耳を慣らす
  • 2〜3歳:短くて真似しやすいフレーズ。手遊びとセットで身体に覚えさせる
  • 4〜5歳:多言語曲+地図・国旗などの視覚補助で「世界」への気づきをうながす

年齢によってねらいが変わる、これが原則です。

ワールドファミリー:外国版「朝の会」サークルタイムが英語学習に効果的な理由

保育の朝の会に挨拶の歌・世界版を組み込む実践アイデア

実際の保育現場で「どう組み込むか」は、準備のしやすさが鍵になります。忙しい毎日の中でも継続できる方法を見ていきましょう。

最もシンプルな方法は、現行の「朝の会」にHello Songを1曲加えることです。これは使えそうです。登園後の朝の会で「おはようございます」と日本語の挨拶をした後、続けて「Hello!」と英語の歌をワンコーラス歌うだけです。準備ゼロで始められ、1週間続けるだけで子どもたちが自然に口ずさみはじめます。

出席確認を挨拶の歌に組み込む方法も効果的です。「Where is ○○(子どもの名前)?」と保育士が歌い、呼ばれた子が「Here I am!」と返す形です。これはグーチョキパーのリズムに乗せて行うと、月齢の小さい子でも楽しめます。

週に一度「世界の言葉の日」を設けるのも良いアイデアです。月曜は英語、水曜は韓国語、金曜は中国語……と曜日ごとに変えると、子どもたちが「今日は何語?」と楽しみにするようになります。「アンニョン!」「ニーハオ!」と元気よく返す姿は、保護者へのアピールにもなります。

挨拶を身体の動きと組み合わせることも大切です。タイでは合掌(手を合わせてお辞儀)、欧米ではハイタッチ、日本はお辞儀、というように「国によって挨拶のしかたが違う」ことを動作で体験させると記憶に残りやすくなります。外務省の子ども向けサイトでも「モンゴルでは帽子をかぶる挨拶がある」「チベットでは舌を出す挨拶がある」など、ユニークな文化的挨拶が多数紹介されています。こういった「え、なんで?」という驚きが子どもの探求心を育てます。

外務省キッズページ:世界のあいさつ(40以上の外国語で挨拶フレーズを紹介)

挨拶の歌「世界」を保育士が選ぶときの独自視点:母語力を守る使い方

「英語を早く始めれば始めるほどいい」という考えは、実は一部の専門家から慎重な見解も出ています。ここを知っておくと安心です。

2025年に発信された現役保育士の記録では、「英語と日本語を同時に過剰に取り入れると、母語の発達が遅れるリスクがある」という指摘がなされています(kirameki-kids.jp)。0〜2歳の乳幼児は特に母語の土台を作る最中であり、英語漬けにすることが必ずしも良いわけではありません。

ではどうすれば良いのでしょうか?答えは「挨拶の歌」をあくまで「遊びのひとつ」として位置づけることです。保育での英語活動のあり方を研究した吉備国際大学の論文にも、「あくまでも保育士と一緒に楽しさを共有する場として捉えること」が明記されています。

具体的には、1日の英語活動は5〜10分程度に収めること、日本語の挨拶や歌とセットで行うこと、外国語を「特別なもの」ではなく「自然な毎日の一部」として見せることが有効です。保育士自身が「間違えても楽しそうにやっている」という姿勢を見せることが、子どもの言語への前向きな態度を育てます。

また、外国にルーツのある子どもが在籍するクラスでは、その子の母語(例えばポルトガル語やベトナム語)の挨拶を歌に取り入れることで、その子が主役になれる瞬間をつくれます。厚生労働省の調査でも、各国語での手遊びや歌を通じた多文化理解が有効な支援策として取り上げられています。これは、外国籍児のいるクラスだけでなく全ての子どもの「多様性への感受性」を育てる機会になります。

  • 英語活動は1日5〜10分を目安に。日本語とのバランスを保つ
  • 外国語は「楽しい遊びのひとつ」として導入し、プレッシャーをかけない
  • クラスにいる外国籍の子の母語の挨拶を歌に取り入れると一体感が生まれる
  • 保育士自身が楽しんで歌う姿を見せることが子どもへの最大のモデルになる

母語をしっかり育てながら世界に開くことが、本当の多文化保育です。

厚生労働省:保育所等における外国籍等の子ども・保護者への対応に関する調査(PDF)

<たのしい園生活♪>保育園・幼稚園・こども園でうたう歌 ベスト60