いただきますの歌を保育園で活かす食育と実践のすべて
「いただきますの歌」を毎日歌っていても、好き嫌いのある子には効果がないと思っていませんか?
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いただきますの歌が保育園で持つ「食育」としての本当の意味
「いただきます」という言葉は、単なる食事前の合図ではありません。農家さん・漁師さん・給食調理員さん、そして食材となった生き物の命、すべてへの感謝をひとことで表した言葉です。農林水産省の「おうちで和食」では、「いただきます」は本来、料理の食材となった自然の恵みへの感謝を表すものだと解説されています。
保育所保育指針においても、食育は「健康な生活の基本としての『食を営む力』の育成に向け、その基礎を培うこと」と明確に位置づけられています。ここで重要なのは「教える」ではなく「体験を通じて気づく」というアプローチです。歌はまさに、この体験の入口になります。
毎日歌うことで、子どもはメロディとともに言葉の感触を体に刷り込んでいきます。繰り返しが定着させる、というのが基本です。ただし「ただ歌わせる」だけでは、言葉の意味まで届きません。歌ったあとに先生が「今日のごはんを作ってくれた人に、気持ちを届けよう」と一言添えるだけで、子どもの受け取り方がまったく変わります。
厚生労働省が定めた食育に関する指針では、食育の5つの観点として「食と健康」「食と人間関係」「食と文化」「いのちの育ちと食」「料理と食」が挙げられています。いただきますの歌はこのうち複数の観点に同時にアプローチできる、効率のよい食育ツールといえます。意外に多くの側面をカバーしているということですね。
農林水産省「おうちで和食」いただきますの意味について。
保育園で人気のいただきますの歌【定番3曲の特徴と使い分け】
保育現場で実際に使われているいただきますの歌には、いくつかの定番があります。それぞれ目的や音域が異なるため、場面に合わせて選ぶことが大切です。
まず、最も広く知られているのが合唱作曲家・弓削田健介さんによる「食育のうた いただきます」です。内閣府主催の食育推進全国大会をきっかけに、地域の保育園の子どもたちの言葉をもとに作られた曲で、幼稚園・保育園・小学低学年の音域にぴったり合わせて設計されています。歌詞には朝ごはんの大切さ、農家さんや漁師さんへの感謝、命のつながりといった食育の要素がすべて盛り込まれており、発表会の教材としても活用されています。YouTube公式チャンネルで動画・歌詞・ダンス動画を無料で確認でき、これは使えそうです。
次に注目したいのが、リベットボタンによる「いただきますとごちそうさま」です。2024年時点でSNS上の再生回数が1億回を突破した実績を持ち、子どもたちのあいだで特に人気の高い食育ソングです。「いただきます」と「ごちそうさま」両方の意味をわかりやすく伝える歌詞が特徴で、食への興味や感謝の気持ちをイラストとセットで視覚的にも伝えられるよう工夫されています。
3つ目として、各保育園がオリジナルで使っている短い手遊び歌形式の「いただきますのうた」があります。都市型保育園ポポラーなど複数の施設が独自に作成・公開しており、「この歌を歌えば好き嫌いが減る」と紹介している保育園もあるほど、子どもの食欲スイッチとして機能しているケースもみられます。
選ぶ基準としては、0〜2歳クラスなら繰り返しが多くリズムが単純なものを、3歳以上のクラスには歌詞に具体的な食材名や人物が登場する曲を選ぶと、食育のねらいと連動しやすくなります。曲の種類が多くて迷うところですが、まず一曲を継続することが定着への近道です。
食育の歌「いただきます」動画・歌詞・ダンス|合唱作曲家 弓削田健介
いただきますの歌を保育園で使うときの著作権の注意点
保育現場で歌を使うとき、著作権について「保育園だから大丈夫」と思っていませんか。これは大きな誤解になる可能性があります。
著作権法では、学校などの教育機関での音楽利用について、一定の条件を満たせば著作権者の許諾なく利用できると定められています(著作権法第35条)。保育所もこの「教育機関」に準じる扱いを受けることがあります。ただし、条件が重要です。
特に注意が必要なのは「ネット配信」です。保育の様子を動画で撮影し、SNSやYouTubeに公開する場合、背景で流れているいただきますの歌は著作権の対象になります。JASRACの管理楽曲がBGMとして入っていた場合、著作権者への手続きが別途必要になるケースがあります。知らずにアップして利用料を請求された事例も、保育・学童現場で増えています。
一方、施設内での演奏や子どもたちが声を合わせて歌う場合は、非営利・無料・無償であれば問題になりにくいとされています。つまり「教室で歌う」のは基本的にOKです。
著作権フリーを明示している曲や、パブリックドメイン(著作権が切れた楽曲)を活用する方法もあります。弓削田健介さんの「食育のうた いただきます」については、YouTubeでの正規公開チャンネルから視聴する分は問題ありませんが、音源をダウンロードして別の動画に使用する場合には確認が必要です。
おたよりに「今日歌った曲名」を記載するだけなら著作権上の問題はありません。これが家庭連携の入口になる、というのは後ほど解説します。
いただきますの歌の導入で保育園の給食時間を変える実践術
歌をただ歌わせるだけでは、食育効果はなかなか出てきません。「歌の後に言う一言を決める」というシンプルな工夫が、現場の雰囲気を大きく変えます。
たとえば、いただきますの歌を歌い終わった直後に先生が「今日のお味噌汁のお豆腐、どこから来たと思う?」と一言投げかけるだけでいい。子どもの目が食器のほうに向き、食材への関心が自然に生まれます。これが食育指針でいう「食材の色・形・香りへの興味を持つこと」の実践です。
具体的な運用イメージとしては次の3ステップです。
- 🎵 手洗い・着席の歌(短め):行動の合図として機能させる。この歌が始まったら「着席して手を揃える」をルール化すると、先生の声かけが激減します。
- 🌿 いただきますの歌(本番):食材・感謝・命のつながりを歌詞で感じる時間として位置づけます。
- 🗣 歌後の一言(固定):今日の食材や農家さん・調理員さんへの一言を毎回固定すると、子どもが「次は何を言われるかな」と耳をすませるようになります。
この「歌→一言」の組み合わせを続けることで、子どもが主体的に食事に向き合う姿勢が育っていきます。食育は知識を「教える」より、毎日の習慣の中で「気づく」体験を積み上げるほど定着しやすいのです。
また、好き嫌いが多い子に対しても、歌のあとに「今日のニンジン、ゆでると色がどう変わったか見てみよう」と観察課題を1つ加えるだけで、「食べる・食べない」の二択ではなく「観察する・触れる」という第3の選択肢が生まれます。食への接し方に変化が出てきます。これは痛いほど現場で効く方法です。
楽しく食べる子どもに〜保育所における食育に関する指針|厚生労働省(PDF)
いただきますの歌を使った保育園と家庭の連携【おたより活用術】
食育は保育園だけで完結しません。家庭との連携なしには、習慣として根づかないことがほとんどです。
保護者が家庭でも「いただきます」を声に出して習慣にしてほしい。でも「ちゃんとやってください」と伝えるだけでは、なかなか動いてもらえません。そこで効果的なのが、おたよりや連絡帳への「今日歌った曲名」の記載です。これなら著作権上の問題もなく、保護者がその場でスマートフォンで検索して、夕食時にYouTubeで一緒に聴けます。
🌟 おたより連携の例文イメージ(連絡帳コメント)
「今日の給食前に、弓削田健介さんの『食育のうた いただきます』を歌いました。歌詞の中に農家さんや漁師さんが出てきて、○○くんが『うちのパパもお魚捕ってる?』と聞いてくれました。ぜひ夜ごはんのときに一緒に聴いてみてください📻」
このひと言があるだけで、家庭の夕食の話題になります。保護者が子どもに「今日、保育園でどんな歌歌った?」と声をかけやすくなり、食卓での会話が増えます。食育は家庭と保育園が一体となって進めることで、はじめて子どもの心に根づいていきます。
保護者会で連携の仕組みを紹介するときは、「挨拶を通じて子どもが積極的に変わった」という具体的なエピソードを添えると、保護者の共感が得やすくなります。たとえば「給食前に歌を始めてから、苦手だったほうれん草を一口食べてみた子がいました」という実例は、保護者にとっても「やってみよう」というきっかけになります。
さらに一歩進めた家庭向け提案として、「ありがとうシール」も有効です。食前に「いただきます」を声に出して言えたら専用シールを貼る、というゲーム感覚の取り組みを提案すると、子どもの「やりたい」という気持ちを引き出せます。週に5枚集まったら「すごいね!」と声かけするだけで、自己肯定感と習慣が同時に育ちます。


