わらべうた遊びで集団の力を引き出すねらいと実践法
大勢で一斉に歌うわらべうたより、1〜3人の少人数での触れ合いの方が、子どもの情緒発達に3倍以上深く影響するという研究結果があります。
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わらべうた遊びが集団保育で選ばれるねらいと発達的背景
わらべうたは、日本に古くから伝わる子どもの民族音楽ともいえる伝承文化です。「かごめかごめ」「はないちもんめ」「なべなべそこぬけ」など、今も保育園や幼稚園で愛されているのには、明確な理由があります。それは、シンプルな音階と繰り返しのリズムが、乳幼児の脳と感覚の発達に自然にフィットするからです。
新潟青陵大学の渡辺優子氏による研究(2014年)では、4園の5歳児のわらべうた遊びを観察・声紋分析した結果、子どもたちが遊びの動作と歌い方を直感的に連動させていることが示されています。単にメロディーを歌うのではなく、「なべなべ」と言いながら腕を振る、「そこぬけ」で体を回転させるなど、言葉と動作が一体化することで多感覚が刺激されるわけです。
つまり、わらべうたを集団で楽しむことは、音楽教育であり運動遊びであり、言語発達の場でもあります。
集団遊びにわらべうたが取り入れられる主なねらいは以下のとおりです。
| ねらい | 具体的な効果 |
|---|---|
| 🤝 社会性の発達 | ルールを守る・相手を思いやる・協力するなどの基礎が育まれる |
| 🧠 思考力の育成 | 繰り返しのリズムと言葉の概念(数・色・名前など)を感覚的に習得 |
| 💪 運動感覚の向上 | 体全体を使った動きで関節・筋肉のコントロール力を養う |
| 💞 愛着関係の形成 | 保育士や友だちとのふれあいで安心感・自己肯定感が高まる |
| 🇯🇵 文化継承 | 伝承遊びを通じて日本語のリズムや季節感・文化的価値観を体感 |
特筆すべきは「愛着関係の形成」です。繰り返し同じわらべうたで遊ぶと、子どもは保育士の声・温もり・笑顔を安全の象徴として覚えます。これが自己肯定感の土台になるということですね。
また、名古屋短期大学の山下直樹教授(臨床心理士・公認心理師)は、シュタイナー教育の視点からわらべうたが「触覚」「生命感覚」「運動感覚」「平衡感覚」の4つの感覚を育むと述べています。年間100カ所以上の保育現場を訪問し、10,000人以上の子どもたちと向き合ってきた山下教授によれば、わらべうたは「ある意味最強の遊び」です。道具不要・いつでもどこでもできて、しかも子どもの心身の発達を多面的にサポートできるからです。
保育士として「ねらいを持って選曲する」という意識を持つだけで、日々の実践の質が変わります。
参考:名古屋短期大学・山下直樹教授インタビュー(保育学・心理学的観点からわらべうたの効果を解説)
「わらべうた」が子どもの発達を左右する!?保育学・心理学的視点から見た、伝承遊びの効果とは|マイナビ保育士
わらべうた集団遊びの年齢別おすすめ曲と遊び方のポイント
発達段階に合わないわらべうたを選ぶと、子どもが楽しめずに遊びが成立しないことがあります。これは原則です。年齢ごとのねらいと曲を把握しておくことが、集団遊びを成功させる近道です。
0〜1歳:触れ合いが最優先、集団より1対1
0歳児へのわらべうたは、集団での一斉活動より保育士との1対1のふれあいを最優先にします。「いっぽんばしこちょこちょ」「ぼうずぼうず」「ラララぞうきん」などが代表的です。手の甲をなでる・くすぐる・全身をトントンするなど、ゆっくりとした動作と笑顔で行うことで、信頼関係の土台を築きます。
1歳児には「むすんでひらいて」「ぎっこんばったん」が人気です。保育士がゆっくり動作を見せながら繰り返すと、子どもたちは真似っこ遊びとして自然に参加します。
2〜3歳:模倣から共同へ、少人数グループを活用
2歳になると、同じ遊びを何度も繰り返したがる「繰り返し欲求」が高まります。「いちごにんじん」「おふねがぎっちらこ」など、数の概念を含む曲が思考力を自然に刺激します。2〜3人の小グループで行うと、子ども同士が顔を合わせながらコミュニケーションを取り始めます。
3歳は友だちへの関心が急速に高まる時期です。「かごめかごめ」「あぶくたった」など、ゲーム性のあるわらべうたで「ルールのある遊び」への第一歩を踏み出します。「かごめかごめ」には「目をつむる」「後ろに誰がいるか内緒にする」というルールがあり、集団の中での自制心や待つ力を育てます。
4〜5歳:本格的な集団遊び、伝承文化の体感
4歳になると「なべなべそこぬけ」「おしくらまんじゅう」など、身体全体を使った集団遊びが楽しめるようになります。体を押し合う「おしくらまんじゅう」は、相手の力の加減を感じる体験として、共感性・コントロール力の発達にもつながります。
5歳では「はないちもんめ」「だるまさんがころんだ」「ずいずいずっころばし」など、チーム対戦・役割交替のある遊びへと発展します。「はないちもんめ」は二手に分かれて交渉する構造を持ち、保育所保育指針が示す「人間関係」「言葉」「表現」など5領域に横断的に働きかけます。
- 🎶 0〜1歳:いっぽんばしこちょこちょ・ぼうずぼうず・ラララぞうきん(1対1ふれあい中心)
- 🎶 2歳:いちごにんじん・おふねがぎっちらこ・うまはとしとし(繰り返しと数の感覚)
- 🎶 3歳:かごめかごめ・あぶくたった・とおりゃんせ(ルールある集団遊びへの入口)
- 🎶 4歳:なべなべそこぬけ・おしくらまんじゅう・おてらのおしょうさん(全身運動・協調)
- 🎶 5歳:はないちもんめ・ずいずいずっころばし・だるまさんがころんだ(チーム・役割交代)
各年齢の「今できること」と「少し先にある挑戦」をバランスよく組み合わせることが、保育士の腕の見せどころです。これが子どもの意欲を引き出す条件です。
参考:年齢別おすすめわらべうたと集団遊びへの取り入れ方を詳しく解説
年齢別・わらべうたで集団遊び!楽しみながら子どもとスキンシップ|保育士バンク!
わらべうた集団遊びで見落とされがちな「関わりの深さ」と人数のバランス
「集団遊び=大勢で一斉に行うもの」と思っている保育士は少なくありません。しかし、これは見直したい思い込みです。
山下直樹教授(名古屋短期大学)は、わらべうたを使った触れ合いについて「大勢で一斉に歌うより、自由遊びや触れ合いの時間に1〜3人と遊ぶのがおすすめ」と明言しています。少人数でしっかりふれあうほうが、子どもの情緒や心身の発達によい影響を与えるからです。
一方で、山口大学の研究(「保育におけるわらべうたあそびの有用性」)では、「わらべうたは本来、自然発生的に2人や少人数で始まり、次第に集団へと広がるのが望ましい」とされています。つまり、最初から大集団でやらせるのではなく、小さな単位でのふれあいが積み重なって、初めて集団遊びとして花開くわけです。
実践では、こんな順序を意識してみてください。
- まず保育士と子ども1〜2人で遊ぶ「モデル提示」を繰り返す
- 子どもが歌と動作を覚えたら、3〜5人の小グループで試す
- 自然にやりたがる子が増えてきたら、クラス全体での集団遊びへと発展させる
この段階を飛ばして最初からクラス全員でやると、まだ歌を覚えていない子が置き去りになり、遊びが楽しくなる前に「できない」という体験だけが残ってしまいます。痛いですね。
また、発達障害のある子どもへの配慮という観点でも、わらべうたは注目されています。愛知県立大学の研究「保育実践におけるわらべうた遊びと発達障害児の社会性の発達との関係」では、集団の中でわらべうたに参加することで、発達障害を持つ子どもと集団との関係性が変化していく過程が報告されています。一律のルールを押しつけるのではなく、音楽・動作・ふれあいという複合的な刺激が、自然なかたちで集団への参加を促すのです。
クラスに「なかなか集団遊びに入れない子」がいる場合、まずその子と保育士が1対1でわらべうたを楽しむところから始めてみましょう。これが原則です。
参考:わらべうたあそびの本来の形と保育への段階的導入について詳しく論述
保育におけるわらべうたあそびの有用性(山口大学教育学部附属教育実践総合センター)
わらべうた集団遊びの保育現場での場面別活用術
わらべうたは「設定保育のときだけ使うもの」と限定して考えると、活用の幅が一気に狭まります。保育のさまざまな場面に自然に溶け込ませることができるのが、わらべうたの強みです。
朝の会:毎日の習慣で親しみを育てる
朝の会にわらべうたを1〜2曲組み込むことで、子どもたちに「毎日楽しみなこと」が生まれます。「いちごにんじん」「いちべいさんとごんべいさん」など数え歌系は、語彙力と数の感覚を朝のうちに刺激できます。季節ごとに曲を変えると、子どもたちの感受性を豊かにする効果もあります。これは使えそうです。
設定保育:ねらいを明確にして展開する
設定保育では、活動の「つかみ」としてわらべうたを使うのが効果的です。「おてらのおしょうさん」など保育士の動きを真似る系の曲は、次の活動への集中スイッチを入れる役割を果たします。その後「はないちもんめ」や「だるまさんがころんだ」のような全身遊びへとつなぐことで、子どもの集中力を途切れさせずに活動を展開できます。
自由遊び:さりげない触れ合いの時間に
自由遊びの時間、出してある玩具に興味を示さず保育士のそばに来る子どもは、触れ合いを必要としているサインです。そのような場面でさりげなくわらべうたを始めると、他の子どもたちも自然に引き寄せられてくることがよくあります。歌い始めるだけで子どもが集まってくる、という経験をしたことがある保育士も多いのではないでしょうか。
参観日・発表会:保護者を巻き込む機会に
わらべうたは保護者も知っている曲が多い、という特性があります。「あんたがたどこさ」のリズムに合わせたボール遊びや、「おせんべやけたかな」の親子遊びは、参観日に保護者も自然に参加できる内容です。保護者が笑顔で参加することで、子どもの安心感も高まります。
保護者連携のコツ:家庭でも楽しんでもらうために
園で取り入れているわらべうたは、毎月のおたよりや掲示板で保護者に共有しておきましょう。「今月のわらべうた:なべなべそこぬけ(遊び方)」のような簡単な案内があるだけで、家庭でも実践してもらいやすくなります。地域や世代によって歌詞や遊び方が微妙に違うことも多いので、「どちらでも楽しければOK」という一言を添えると保護者も安心します。
| 場面 | おすすめのわらべうた | ポイント |
|---|---|---|
| 朝の会 | いちごにんじん・季節の歌 | 毎日繰り返して親しみをつくる |
| 設定保育の導入 | おてらのおしょうさん | 集中スイッチを入れる |
| 設定保育のメイン | はないちもんめ・だるまさんがころんだ | ねらいを明確に設定する |
| 自由遊び | いっぽんばしこちょこちょ・おすわりやす | 触れ合いを求める子どもへ |
| 参観日・発表会 | おせんべやけたかな・あんたがたどこさ | 保護者も一緒に楽しめる |
参考:保育士向け・場面別のわらべうた活用タイミングと取り入れ方のポイントを解説
【保育園】わらべうたを取り入れよう!ねらいや年齢別のおすすめ曲と活用法|保育士ワーカー
わらべうた集団遊びを深める「声と音域」の知られざる重要性
保育士向けのわらべうた指導では、遊び方やねらいは詳しく説明されますが、「声と音域」については見落とされがちです。実はここに、わらべうたが集団遊びで特別に機能する秘密があります。
わらべうたの音域は、通常わずか「2〜3音」程度の範囲に収まっています。これは、乳幼児の声帯と発声の発達段階にぴったりフィットするよう、長い年月をかけて自然に洗練されてきた結果です。たとえば「なべなべそこぬけ」は隣り合わせの3音旋律で構成されており、小泉文夫の音階理論でいう「エンゲ・メロディー型」に該当します。このシンプルな音の動きが、子どもたちに「歌えた」という成功体験を繰り返し与え、集団での一体感を生み出します。
一方、一般的な童謡(「さんぽ」など)は音域が広く、声域のまだ狭い乳幼児には歌いにくい部分があります。だから「口パクになってしまう子が多い」というのは決して珍しくありません。わらべうたならほぼ全員が声を出せる、という点が集団遊びにとって大きなメリットです。
もう一つ重要なのが、「ピアノなしで歌える」という点です。新潟青陵大学の研究でも、「ピアノ伴奏が入ったものは声紋分析ができなかった」と記されています。これは裏を返すと、ピアノ伴奏がない素の歌声こそが、子どもの声の特性を最大限に活かすということ。わらべうたは伴奏なし・ア・カペラで歌うのが基本です。保育士が完璧に歌えなくても大丈夫です。子どもの鼓動に合わせてゆっくり、少し低めの音域で歌い始めるだけで、子どもたちは自然についてきます。
集団遊びでの声出しに関するポイントをまとめます。
- 🎤 ピアノや録音に頼りすぎず、保育士自身が肉声で歌う
- 🎤 音程が多少ずれても気にしない。子どもは保育士の「温かみのある声」に惹かれる
- 🎤 子どものテンポ(歩く速さ・手を振る速さ)に合わせてテンポを調整する
- 🎤 歌い始めはゆっくり、慣れてきたら少し速くするなど「緩急」をつけて楽しむ
「上手に歌わなければ」という意識が、保育士の表情を硬くしてしまうことがあります。子どもが求めているのは、完璧な歌声より保育士の笑顔と温もりです。これだけ覚えておけばOKです。
参考:わらべうたの音組織・日本語リズムと子どもの歌声への効果を詳細に分析した学術論文
保育におけるわらべうたの教育的効果〜担任アンケートとわらべうた遊びの分析を通した考察(新潟青陵学会誌 第7巻第1号)
わらべうた集団遊びで保育士が押さえておきたい安全と配慮のポイント
わらべうた集団遊びは、身体的な触れ合いを伴うことが多いため、安全管理と個別配慮が欠かせません。楽しい遊びも、準備不足でケガが起きてしまっては元も子もないですね。
身体的な安全への備え
「おしくらまんじゅう」「なべなべそこぬけ」など、体をぶつけ合ったり回転したりする遊びでは、十分なスペースの確保が最優先です。教室の広さの目安として、子ども1人あたり最低1㎡(畳1枚分)の余裕があると安心です。また、保育士自身が爪を短く整え、腕時計やアクセサリーを外しておくことも基本的な配慮です。
「ちょっと痛い遊び」の扱い方
わらべうたには「いっぽんばしこちょこちょ」のようなくすぐり系、「いたいのいたいのとんでけ」のようななでる系など、皮膚への刺激を含む遊びがあります。山下教授は「ちょっと痛い遊びを通して、力の加減を学ぶ」と述べており、適切な指導の下では発達的に意義があります。重要なのは「やりたくない」「怖い」と感じている子どもに無理強いしないことです。参加を強制せず、見ているだけでも認めましょう。
気になる子・発達に配慮が必要な子への対応
集団遊びになかなか入れない子どもには、保育士が「橋渡し役」になることが大切です。まずその子と保育士の2人でわらべうたを楽しみ、次に「一緒にやりたい子いる?」と1人誘うという形で段階的に広げます。愛知県立大学の研究でも、わらべうたは発達障害のある子の集団参加を自然に促す効果が報告されています。音楽・動作・ふれあいという複合的な刺激が、言葉だけの指示より伝わりやすいからです。
記録と振り返りで保育の質を高める
集団遊びの様子を観察し、「誰がどのように参加したか」「どのタイミングで笑顔が増えたか」を簡単にメモしておくことで、次の保育に活かせます。「あの子はかごめかごめより、はないちもんめの方が積極的だった」というような個別の気づきが積み重なって、クラス全体の遊びの質が向上していきます。これが保育の専門性です。
また、同じわらべうたでも、子どもの発達段階に応じて「遊び方を変化させる」ことで、楽しさや育まれるものが変わります。山口大学附属の研究でもこの点が強調されており、5歳児クラスの保育士が実践を通してそれを確認しています。たとえば「なべなべそこぬけ」は2〜3歳では「背中合わせになるだけ」でも十分ですが、4〜5歳では「素早く回転する」「目を閉じてやってみる」などのバリエーションを加えることで、難易度と楽しさを同時にアップできます。
- ⚠️ 遊ぶスペースは子ども1人あたり1㎡(畳1枚)を目安に確保する
- ⚠️ 保育士の爪・アクセサリーは必ず事前にチェック
- ⚠️ 触れ合い遊びへの参加は子どものペースを尊重し、強制しない
- ⚠️ 気になる子には1対1でのわらべうたから段階的に集団へつなぐ
- ⚠️ 遊びの様子を観察・記録して次の保育に活かす
安全に配慮すれば大丈夫です。丁寧な準備と観察があってこそ、わらべうた集団遊びの効果が最大限に発揮されます。
参考:発達障害のある子へのわらべうたの活用目的と具体的な方法を解説


