阿波踊りの歌の歌詞と意味、保育で使える掛け声の由来まとめ
「踊る阿呆に見る阿呆」は徳島民謡ではなく、実は天保10年(1839年)の京都発祥です。
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阿波踊りの歌「よしこの節」の歌詞の全体構成とバリエーション
阿波踊りの歌といえば、まず頭に浮かぶのが「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」というフレーズでしょう。このフレーズは「よしこの節(阿波よしこの)」と呼ばれる囃子唄の一部で、阿波おどりを象徴する言葉として全国的に広く知られています。
「よしこの節」は、囃子(はやし)・唄(うた)・掛け声の3つのパートが組み合わさって構成されています。囃子は歌の前後に入るリズミカルな掛け声、唄は歌詞本体、掛け声はその合間に差し込むコール&レスポンスの言葉です。それぞれが役割を持っています。
代表的な「よしこの節」の構成は以下のとおりです。
| パート | 歌詞・言葉 |
|---|---|
| 囃子(はやし) | ハアラ エライヤッチャ エライヤッチャ ヨイ ヨイ ヨイ ヨイ |
| 唄① | 踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損々 |
| 唄② | 阿波の殿様 蜂須賀さまが 今に残せし 阿波踊り |
| 掛け声① | 新町橋まで行かんか こいこい |
| 掛け声② | ヤットサー ア、ヤットヤット |
「よしこの節」という名前の由来は、囃し声の中に「こりゃまたよしこの」「よしこのよしこの」という言葉が入っていたことからきています。江戸末期から明治初年にかけて全国で大流行した流行歌「よしこの節」が、時代を経て徳島に根付き、阿波おどりの唄として「阿波よしこの節」という独自の形に発展しました。
歌詞には複数のバリエーションが存在します。代表的なものとして、「ひょうたんばかりが浮き物か 私の心も浮いてきた 浮いて踊るは阿波踊り」という陽気なフレーズや、数え唄スタイルの「一かけ二かけ三かけて 四(し)かけた踊りは止められぬ 五かけ六かけ七かけて 八(や)っぱり踊りは止められぬ」という子どもにも親しみやすいバリエーションもあります。連(れん)ごとに歌い方も歌詞も異なるのが原則です。
「一かけ二かけ三かけて」は、保育の場面でも子どもたちが声に出して覚えやすい数え唄のリズムを持っているため、夏祭りの準備期間に一緒に唱えるだけで自然とお祭り気分が高まります。これは使えそうです。
1929年(昭和4年)には審査場での基準整理により、「徳島盆踊唄(よしこの)」としてレコード化され、全国に広く普及した経緯があります。つまり「よしこの節」は100年近い記録上の歴史がある歌詞ということですね。
阿波踊りの歌詞・掛け声の由来について詳細に解説されている参考サイトはこちらです。掛け声それぞれの歴史的背景が丁寧にまとめられています。
阿波踊りの歌の掛け声「エライヤッチャ」と「ヤットサー」の意味
阿波踊りの歌を保育士として子どもに紹介するとき、最初に覚えてほしい掛け声が「エライヤッチャ エライヤッチャ ヨイヨイヨイヨイ」と「ヤットサー! ア、ヤットヤット!」の2つです。この2つだけ覚えておけばOKです。
まず「エライヤッチャ エライヤッチャ ヨイヨイヨイヨイ」について解説します。この言葉には3つの意味が含まれていると言われています。
- 🔵 「たいへんだ!」という活気付けの意味:関西弁の「えらいこっちゃ(大変なことだ)」に由来するという説。お互いを鼓舞し、気合いを入れる掛け声として使われていた。
- 🟡 「すごいやつだ!がんばってるね!」というほめ言葉の意味:「どえらいやっちゃ(すごいやつだなぁ)」という関西弁に由来するという説。踊り手同士でお互いを認め合う言葉として使われていた。
- 🔴 「世直し」の掛け声という意味:幕末に全国を席巻した「ええじゃないか」運動が徳島にも上陸し、民衆が阿波踊りで「ええじゃないか」を踊る中で、「えらやっちゃ」という形に変化したという説。江戸時代の反体制的な民衆エネルギーが込められている。
3つの意味が重なっているのが面白いですね。子どもたちに「エライヤッチャは『すごいね!がんばってるね!』っていう意味なんだよ」と教えると、保育の中で自然に使えるほめ言葉として機能します。
次に「ヤットサー! ア、ヤットヤット!」についてです。この掛け声は、「ヤットサー」と呼びかければ「ア、ヤットヤット」と返すのが習わしのコール&レスポンスです。この掛け声の語源には2つの説があります。1つ目は、愛知・三重・岐阜の東海地方の方言「やっとかめ(八十日目→久しぶり!元気かい?)」に由来するという説です。2つ目は、鹿児島弁「おやっとさー(おつかれさま)」に由来するという説です。
徳島が藍の貿易で栄えた港町だったため、全国の方言や文化が混ざり合っていたわけです。その歴史が2つの全く違う地域の方言を同時に取り込んだ掛け声を生み出しました。意外ですね。
保育の場でこれらの掛け声を活用する際は、理屈より体験が先です。「ヤットサー!」と保育士が声をかけ、「ア、ヤットヤット!」と子どもたちが返すかけ合いを朝の会で1週間繰り返すだけで、夏祭りの当日には子どもたちが自然と声を揃えられるようになります。練習感覚ゼロで覚えられるのが条件です。
掛け声の意味と阿波踊りの精神について、プロ集団による詳しい解説はこちらです。掛け声の音のイメージも掴みやすく説明されています。
阿波踊りの歌「踊る阿呆に見る阿呆」の歌詞が生まれた400年の歴史
阿波踊りには約400年の歴史があると言われています。その起源については大きく3つの説があり、どれも興味深い背景を持っています。
- ⛩️ 築城起源説:天正14年(1586年)、徳島藩の藩祖・蜂須賀家政が徳島城の築城を祝い、城下の人々に無礼講を許したことが始まりという説。歌詞「阿波の殿様 蜂須賀さまが 今に残せし 阿波踊り」はこの説を反映している。
- 🙏 盆踊り起源説:鎌倉時代の念仏踊りから続く先祖供養の踊りが発展したという説。盆の時期(8月12〜15日)に行われることとも一致する。
- 🎭 風流踊り起源説:室町時代に流行した「風流踊り」が影響を与えたという説。能楽の源流とも言われる芸能との関連が指摘されている。
「踊る阿呆に見る阿呆」のフレーズが誕生した経緯も、実はとても面白い歴史があります。このフレーズが最初に記録に現れるのは、天保10年(1839年)の京都の「豊年踊り」です。大丸呉服店(現・大丸百貨店)の下村家が瀧尾神社を造営した竣工祝いとして京都市中で民衆が熱狂的に踊り歩き、その際に「踊る阿呆に見る阿呆、おなじあほなら踊るがとくじゃ」と歌われた記録が残っています。つまり400年の歴史を誇る阿波踊りの代名詞的フレーズですら、実は「京都から流入した文化」だということです。
その後、この流行が徳島に伝わり、もともと盛んだった阿波おどりの熱狂と融合し、現在の形になりました。
歴史のもう一つの重要な転換点として、天保13年(1842年)の「町切り規制」があります。財政難と民衆の反乱を恐れた徳島藩が、阿波踊りを城下町内に閉じ込める規制を実施しました。厳しいところですね。すると民衆は「新町橋まで行かんかこいこい」と声を揃えて橋を目指します。新町川に架かる橋の上だけは、城下町の内か外か規制が曖昧な「治外法権」の場だったからです。この「新町橋まで行かんかこいこい」という掛け声には、権力への反骨心と民衆の生命力が凝縮されています。
保育士として子どもたちに阿波踊りの歌を紹介する際、「昔の人たちはお祭りを楽しむために、お殿様のルールとけんかしながら橋まで歌って歩いたんだよ」と伝えるだけで、歌詞が生きた物語になります。歴史と結びつけることで記憶に残りやすくなるのが条件です。
阿波踊りの歴史に関する詳細な一次資料的な解説はこちらです。築城説から禁止令までの流れが詳しく記されています。
阿波踊りの歌を支える「ぞめき」と鳴り物の種類と特徴
阿波踊りの音楽全体は「ぞめき」と呼ばれています。「ぞめき」は漢字で「騒き」と書き、「浮かれ騒ぐ」ことを意味する言葉です。つまりぞめきとは、阿波踊りのお囃子全体の総称ということですね。
ぞめきを奏でる楽器群のことを「鳴り物(なりもの)」と呼びます。主な楽器とその特徴は以下のとおりです。
| 楽器名 | 特徴・役割 |
|---|---|
| 🔔 鉦(かね) | 「カランカラン」という金属音でリズムをリードする。鳴り物のバンドマスター的存在で、ぞめきの核心を担う |
| 🥁 締太鼓 | 肩から吊り下げて「ンタンタ」という軽快な裏打ちリズムを奏でる。踊り子の足さばきとリンクする |
| 🥁 大太鼓 | 「ドドンガドン」という腹に響く音。その音量は大きく、お祭りの会場全体を包む迫力がある |
| 🪈 篠笛(しのぶえ) | ぞめきのメロディーを担う主役。澄んだ音色が遠くまで響き、祭りの情緒を作り出す |
| 🎵 三味線 | 歯切れの良い音で「ぞめき感」を演出。近年再評価が進んでいる楽器 |
ぞめきの拍子は基本的に2拍子ですが、正調ぞめきは途中で1小節だけ5拍子になるという独特の構成を持っています。このリズムの揺らぎが、ぞめき独特の「浮き立つような感覚」「足が勝手に動き出す感覚」を生み出します。
「ぞめき」という言葉の意味を知ると、子どもたちに「このリズムはね、浮かれて踊り出したくなるって意味の名前がついているんだよ」と伝えることができます。言葉の意味と体の感覚がリンクする瞬間が生まれます。これはいいことですね。
保育の現場でぞめきを体験させたい場合、篠笛や三味線がなくても大丈夫です。タンバリンや鈴で「タン・タン・タン・タン(2拍子)」のリズムを刻むだけで、十分に雰囲気が出ます。まず「聴く→手拍子→体を動かす」という順番で体験を積み重ねるのが基本です。最初から踊らせようとせず、リズムに慣れる時間を作ることで、体が自然に動き始める子どもが増えていきます。
鳴り物の詳細や音源については、阿波踊りの専門連のサイトが参考になります。
保育士だけが知っている阿波踊りの歌詞の独自活用術【現場視点】
阿波踊りの歌や掛け声は、夏祭りや運動会だけでなく、保育の日常にも取り入れやすい素材です。ここでは保育士だからこそできる、歌詞・掛け声の独自の活用方法を紹介します。
まず「エライヤッチャ!」をほめ言葉として日常使いする方法があります。「エライヤッチャ」には「すごいやつだ!がんばってるね!」というほめ言葉の意味があります。片付けを頑張った子に「エライヤッチャ!」と声をかけると、子どもは何度でも聞きたくなります。文化体験と語彙習得が同時にできます。
- 🌟 朝の会でのかけ合い導入:「ヤットサー!」と保育士が呼びかけ「ア、ヤットヤット!」と子どもが返す練習を、夏祭りの1週間前から毎朝取り入れる。1回30秒で済み、当日には自然と声が揃う。
- 🎵 「一かけ二かけ」で数遊び:「一かけ二かけ三かけて 四かけた踊りは止められぬ」を手遊びや数え遊びとして使う。特に3〜5歳児は数唱が楽しい時期なので、数字の習得と歌を同時に体験できる。
- 📖 「踊らにゃ損々」で参加促進の言葉に:発表会や運動会の前に「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々って言葉があってね、やらないともったいないよという意味なんだよ」と伝えると、消極的な子への自然な参加促進になる。
- 🥁 「ぞめき」リズムで身体表現活動:タンバリンや手拍子で2拍子のぞめきリズムを刻みながら、子どもたちが自由に体を動かす「リズム遊び」の時間を設ける。「音楽と友だちになる」体験は、幼児の音楽的発達を促す土台になる。
- 🗺️ 絵本・紙芝居と組み合わせた文化学習:「阿波の殿様 蜂須賀さまが 今に残せし 阿波踊り」という歌詞に合わせ、徳島のお城や地図を絵で見せながら歌うと、5歳児でも「遠くの場所で始まったお祭りの歌」という文化の広がりが感覚的に理解できる。
また、阿波踊りには「踊る阿呆に見る阿呆」という言葉が象徴するように、「参加すること自体が価値である」という哲学が込められています。保育の場で「うまく踊れなくても関係ない」「みんなで楽しむことが大事」というメッセージを子どもに伝えたいとき、この歌詞を引用するとストレートな指示より心に届くことがあります。
歌詞の「ひょうたんばかりが浮き物か 私の心も浮いてきた」というフレーズも、子どもたちと一緒に「ひょうたんは水に浮くんだよ、心が浮く(うきうきする)ってどんな気持ちかな?」と問いかける「ことばあそび」の素材になります。言葉の豊かさに気づかせる機会が原則です。
保育士向けの音楽活動や民謡を使った保育実践についてはこちらも参考になります。


