ラッコの歌みんなのうたを保育士が使い倒す完全ガイド
現在、日本の水族館で会えるラッコは鳥羽水族館の2頭だけです。
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「ラッコの歌みんなのうた」いたずラッコとはどんな曲か
「いたずラッコ」は、NHKの長寿音楽番組「みんなのうた」で1986年6月〜7月に初放送された楽曲です。作詞・作曲は須田あきらさん、歌は水森亜土さんが担当しました。水森亜土さんは、透明なアクリルボードに歌いながら両手で同時にイラストを描くパフォーマンスで70年代から人気を博した、イラストレーター・歌手・女優の多才な人物です。
映像は「実写」で撮影地は三重県の鳥羽水族館。つまり、当時実際に水族館で泳ぐラッコの映像が使われた珍しい構成になっています。これは意外ですね。
初放送以降、1987年・1988年・1990年・1991年・1993年・2000年・2006年・2011年・2014年・2020年・2022年と、実に10回以上にわたって再放送されています。「みんなのうた」の中でも特に再放送回数の多い、人気の高い曲の一つです。つまり40年近くにわたって愛され続けている名曲ということですね。
歌詞の内容は非常にシンプルで明快です。
- 「ラッコはいいな いつも遊んでる」(遊び好きな姿)
- 「学校もなけりゃ 塾もない」(自由なライフスタイル)
- 「ママとお昼寝 ユラユラリ」(母子で浮かびながら眠る生態)
- 「朝から晩まで カチカチカッチン」(石を使って貝を割って食べる様子)
子どもが思わず「ラッコってのんびりしてて羨ましい!」と感じるような歌詞の世界観です。保育士として活用する際に注目すべき点は、この歌詞がラッコの実際の生態をユーモラスに表現しているという事実です。ただ可愛いだけの動物ソングではなく、「ラッコってこんな生き物なんだ」という知的好奇心を自然に刺激できる構造になっています。
NHK みんなのうた 公式「いたずラッコ」曲情報ページ(うた・作詞・作曲・放送月を確認できます)
「ラッコの歌みんなのうた」の歌詞に登場するラッコの生態を深掘り
「いたずラッコ」の歌詞には、ラッコの本物の生態が複数描写されています。保育士がこれを理解しておくことで、歌を歌った後に「なぜラッコはそうするの?」と子どもに聞かれたときの対応力が格段に上がります。
まず注目したいのが「カチカチカッチン」というフレーズです。ラッコはお腹の上に石を乗せ、その石に貝を打ちつけて割って食べるという、道具を使う非常に珍しい哺乳類です。石は大切な「道具」なので、お気に入りの石を皮膚のたるんだポケット状の部分に入れて持ち歩くという習性があります。子どもに伝えるなら「ラッコはね、自分だけの宝物の石を持ってるんだよ」という言い方が直感的にわかりやすいでしょう。
次に「ママとお昼寝 ユラユラリ」というフレーズです。野生のラッコは、海流に流されないよう昆布(コンブ)を体や手足に巻き付けてお腹を上にして眠ります。ちょうど昆布のベッドに包まれて寝ているイメージです。一方、水族館のように昆布がない環境では、仲間同士や親子で手をつないで眠ることがあります。これが「手つなぎラッコ」として世界中で話題になったあの愛らしい姿です。
これは使えそうです。
そして見逃せないのがラッコの体毛の秘密です。ラッコは地球上の哺乳類の中でもっとも体毛の密度が高い生き物で、1平方センチメートルあたり約10万〜14万本もの毛が生えています。全身では約8億本。人間の髪の毛は全部で約10万本ですから、ラッコ1頭の毛は人間8,000人分の髪の毛に相当します。ラッコには体温を保つための脂肪層がほとんどないため、この密度の高い毛の層に空気を含ませることで断熱し、冷たい海水から体温を守っています。
| ラッコの生態 | 歌詞のフレーズ | 子どもへの伝え方 |
|---|---|---|
| 石で貝を割る | カチカチカッチン | 自分だけの宝石を持ってるよ |
| 昆布を巻いて眠る(野生) | ユラユラリ | 昆布のお布団で寝てるよ |
| 手をつないで眠る(水族館) | ユラユラリ | お友達と手をつないで浮かんで寝るよ |
| 終日食べ続ける | 朝から晩まで | お腹いっぱい食べないと寒さに勝てないんだよ |
ラッコが「いつも食べている」のにも理由があります。体温維持のために大量のエネルギーが必要で、体重の約25〜35%に相当する量の食べ物を毎日摂取すると言われています。体重が30kgなら、毎日7〜10kgの貝やウニを食べる計算です。これが「食べすぎたっておこられない」という歌詞の背景です。
ラッコの行動の秘密を解説した専門記事(手をつなぐ習性・ラフティング行動の詳細が確認できます)
「ラッコの歌みんなのうた」と日本のラッコ事情——保育士が知っておくべき現実
「いたずラッコ」が初放送された1986年当時、日本ではラッコブームが起きていました。鳥羽水族館に1983年にアラスカから4頭のラッコが来館したことがブームの火付け役となり、その後ピーク時には国内28か所・122頭ものラッコが飼育されるほどの人気でした。
厳しいところですね。
しかし現在(2026年時点)、日本で会えるラッコは鳥羽水族館の「メイ」と「キラ」の2頭のみです。ピーク時の122頭から98%以上が減少してしまいました。ラッコは2020年にIUCN(国際自然保護連合)によって絶滅危惧種に指定されており、アメリカが1998年に輸出を禁止したことで日本への新たな個体の導入が事実上不可能な状況にあります。
保育士にとってこの情報を知っておくことは、大切です。
子どもが「ラッコに会いたい!」と言ったとき、「三重県の鳥羽水族館に行けば会えるよ」と教えられるだけでなく、「ラッコはとっても少なくなってきているから、大事にしなきゃいけない生き物なんだよ」という自然保護・命の大切さにつながる話題に発展させることができるからです。これは保育所保育指針における「自然との関わり・生命尊重」という視点とも直結します。
「いたずラッコ」という1曲の歌から、絶滅危惧種・環境問題・命の大切さという深いテーマへ広げられることが、この曲の大きな可能性です。保育の「ねらい」を意識するなら、単に歌って楽しむ以上の活用価値があります。
「ラッコの歌みんなのうた」を保育で使う年齢別ねらいと活用アイデア
「いたずラッコ」を保育現場で活用する際、子どもの発達段階に合わせてねらいや導入方法を変えることが重要です。
2〜3歳児向け:リズムと模倣を楽しむ
2〜3歳はまだ歌詞の意味をすべて理解することは難しい時期です。しかしこの曲は「ラッコ ラッコ ラッコ」という繰り返しのフレーズがあり、リズムが明快で覚えやすい構造になっています。この年齢では、音の繰り返しを楽しみながら言語感覚を育てることがねらいの中心です。
保育者のアイデアとしては、「カチカチカッチン」の部分で両手の甲をぶつけ合う動作をつけるだけで十分です。体を動かしながら歌うことで、歌に対する親しみが生まれます。
4歳児向け:ラッコの生き物としての不思議さを知る
4歳になると「なんで?」「どうして?」と理由を知りたがる知的好奇心が旺盛になってきます。「ラッコって本当に学校もないの?」「カチカチカッチンって何してるの?」という疑問を引き出す良い機会です。
歌った後に「ラッコはね、石でご飯を食べるんだよ」とラッコの生態を一つだけ伝えてみましょう。子どもの「えっ、石で?」という反応が次の好奇心につながります。これが条件です。
5歳児向け:環境問題・命の大切さへ広げる
5歳は物事の因果関係を理解し始める時期です。「昔は100頭以上いたラッコが、今は2頭しかいない」という事実を、子どもが理解できる言葉で伝える素材として活用できます。
「環境が変わると動物が減っちゃうんだよ」「だから私たちも生き物を大切にしようね」という方向に話を広げると、保育所保育指針が求める「自然との関わり・生命尊重」の視点を養えます。
また、「いたずラッコ」は大人数での合唱だけでなく、パネルシアターの題材にも向いています。ラッコが石で貝を割る場面・お腹の上で眠る場面をパネルで表現すると、視覚的にラッコの生態を楽しく伝えられます。
幼稚園教育要領「身近な事象や動植物への感動を伝え合う」ねらいについて(文部科学省)
「ラッコの歌みんなのうた」を歌う際の保育士が知っておくべき独自視点——「のんびりラッコ」像は半分フィクション
「いたずラッコ」の歌詞では「いつも遊んでる」「いつものんびり」というラッコ像が描かれています。保育士はこの「楽そうなラッコ」像と実際の生態の差を知っておくと、子どもへの伝え方にリアリティと深みが出ます。
実はラッコの生活は、「のんびり」とはかなり異なります。
まず食事に費やす時間が非常に長く、起きている時間の約3分の1は食事か食べ物を探すことに使われています。体温維持のために大量の食物が必要なため、のんびりしていると文字通り体が冷えて命に関わります。「食べすぎたっておこられない」というのは生存戦略です。
次に毛づくろいに費やす時間も膨大です。ラッコの保温は毛の中に空気を含ませることで成立しているため、毛が汚れると体温が一気に下がってしまいます。野生のラッコは1日のうちかなりの時間を毛づくろいに使っており、これを怠ると低体温で死亡するリスクがあります。つまり、私たちが「かわいい〜」と感動するあのもふもふした毛並みを維持すること自体が、ラッコにとっては命がけの日課です。
意外ですね。
歌の中の「のんびりなラッコ」は、海の上をゆったり浮かぶ姿が私たち人間にはそう見えるというだけであり、ラッコ自身は常に体温管理と食料確保に真剣に向き合っています。保育士がこの事実を頭に入れておくことで、「ラッコは楽に見えるけど、実はちゃんと頑張ってるんだよ」という視点を子どもに伝えられます。
これは「見かけだけで判断しない」「それぞれの生き物には生きるための理由がある」という人権的感覚や、多様性への理解にも自然につながる保育的テーマです。結論は、歌はエンタメの入口、深掘りが保育の本番ということです。
ラッコの毛づくろいや生態についてさらに詳しく知りたい保育士の方には、日本動物学会や東京ズーネットの公開情報が参考になります。
ラッコの体毛密度・保温のしくみについて(東京ズーネット・公式動物Q&A)
「ラッコの歌みんなのうた」に関連するおすすめの絵本・教材と組み合わせ方
「いたずラッコ」の世界観をさらに広げるために、絵本や教材と組み合わせると保育の充実度が大きく上がります。
まず、ラッコの「手つなぎ」をテーマにした絵本として「手つなぎラッコ」(作:まりさ)があります。野生のラッコが昆布を体に巻いて眠る場面と、仲間同士で手をつないで眠る場面が描かれており、歌で紹介した後に読み聞かせると子どもの理解が視覚的につながります。「ユラユラリ」というフレーズとのリンクが心地よく、子どもが「あ、あの歌の場面だ!」と気づく体験につながります。
次に、ラッコを含む海の生き物を扱ったペープサートやパネルシアター用の素材も市販されています。保育士が手作りする場合は、クラフト紙にラッコのシルエットを描き、裏に石の絵を貼って「カチカチカッチン」の場面を演じるだけでも十分に効果的です。
歌・絵本・パネルシアターの3点セットで行うと、子どもが「聞く・見る・参加する」すべての学習スタイルでラッコに触れられます。
また、「いたずラッコ」は保育士のピアノ弾き語り用の楽譜がいくつかの楽譜集に収録されています。「NHK みんなのうた 第10集」などのCDも市販されており、保育室でのBGMとしても活用できます。曲の長さは約2分31秒とコンパクトなため、朝の会や帰りの会のルーティンに組み込みやすい点も保育士にとってのメリットです。
「いたずラッコ」を出発点として、水族館への遠足と組み合わせる保育計画も効果的です。現在ラッコに会えるのは鳥羽水族館だけという状況を踏まえると、鳥羽水族館への遠足前に「いたずラッコ」を歌っておくことで、子どもたちの事前学習として機能します。「本物のラッコに会えるかもしれない!」という期待感が高まり、遠足の満足度も上がります。
保育士がこの曲を単なる「楽しい動物の歌」としてではなく、生き物への関心・命の大切さ・環境問題の入口として意識して使うことで、歌一曲から得られる保育的価値は大きく広がります。これだけ覚えておけばOKです。


