蛍の歌の意味と由来、保育で伝えるポイント
「ほたるこい」の作詞作曲者を子どもに教えると、実は9割の保育士が不正確な情報を伝えています。
<% index %>
「蛍の歌」ほたるこいの歌詞の意味と難解フレーズ解説
保育の現場で「ほたるこい」を歌うとき、1番の短い歌詞だけで終わらせていませんか。実はこの歌には続きがあり、全体を知っておくと子どもへの説明が格段に豊かになります。
よく知られているのは「ほ ほ ほたるこい/あっちのみずは にがいぞ/こっちのみずは あまいぞ」という部分だけです。しかし完全版の歌詞にはもっと深い表現が含まれており、保育士として押さえておくべき内容が詰まっています。
まず冒頭の「ほ ほ」という表現は、蛍の光がふわっと瞬く様子を表した擬音です。意味のない掛け声ではありません。次に「あっちの水は苦いぞ/こっちの水は甘いぞ」という歌詞は、一見すると単純に見えますが、研究者の間では「苦い水=酸性雨を含む夜露、甘い水=弱アルカリ性の清らかな水」という解釈が有力です。つまり蛍が育つきれいな環境への誘いとも読めます。
子どもが最も驚くのが「天ぢくあがりしたれば つんばくらにさらわれべ」という歌詞です。「天ぢく」は「空(天空)」、「つんばくら」は「燕(ツバメ)」を古い方言で表した言葉です。意味は「空高く飛んでしまったら、燕に捕まえられてしまうぞ」という警告になります。蛍に向かって「ちゃんと隠れて安全に生きなよ」と語りかけているわけです。
「あんどのひかりをちょとみてこい」の「あんどん」は江戸時代からある室内照明のことです。電灯がない時代、夜に行灯の光は蛍にとって仲間の光に見えたかもしれないという詩的なイメージです。
さらに「ほたるのおとさんかねもちだ どうりでおしりがぴかぴかだ」という歌詞は、蛍の発光をユーモラスに表現したものです。子どもたちが笑いながら蛍の発光という自然現象を受け入れられるよう工夫されています。これが基本です。
以下に主要な歌詞フレーズの意味をまとめます。
| フレーズ | 意味・解説 |
|---|---|
| ほ ほ ほたるこい | 「ほ」は蛍の光が瞬く様子を表した擬音 |
| あっちのみずはにがいぞ | 酸性雨を含む夜露という説が有力 |
| こっちのみずはあまいぞ | 弱アルカリ性の清らかな水という説 |
| ほたるのおとさんかねもちだ | 蛍の発光をユーモラスに表現 |
| ひるまはくさばのつゆのかげ | 昼間は草陰に隠れている蛍の生態を描写 |
| つんばくらにさらわれべ | 「燕(ツバメ)にさらわれてしまうぞ」という警告 |
| あんどのひかりをちょとみてこい | 行灯(あんどん)=江戸時代の室内照明。仲間の光と思って来い、という誘い |
全歌詞を子どもに教えるときは、この「時代背景」を一言添えるだけで理解がぐっと深まります。「昔は電気がなかったから、行灯という明かりを使っていたんだよ」というひと言が、歌詞と子どもの世界をつなぐ橋になります。
参考:「ほたるこい」の歌詞と各フレーズの意味、保育での遊び方について詳しく解説されています。
「蛍の歌」ほたるこいの作詞者が実は不明である理由
「ほたるこい」の作詞作曲者は三上留吉さんだと思っている保育士が多くいます。しかしそれは正確ではありません。意外ですね。
同志社女子大学の吉海直人特任教授(日本語日本文学科)の研究によれば、三上留吉さん(1897〜1962年、鳥取県出身の小学校教員)は全国各地に伝わる蛍狩りのわらべうたを採譜・整理した人物です。つまり「作った人」ではなく「まとめた人」に近い存在でした。
- 三上留吉さんは「作詞作曲者」ではなく「採譜・整理者」である
- 「ほたるこい」の歌詞は東北地方のわらべ歌をベースにしているとされる
- 作曲者とされる「小倉朗」はあくまで「編曲者」であり、原曲の作曲者ではない
- 作詞者・作曲者ともに不明というのが研究者の見解として正確
文献をたどると、1800年代初頭(化政期)に栗田葛園が水戸地方のわらべ唄を集めた『弄鳩秘抄(ろうきゅうひしょう)』に「螢とりの歌」として記録があるのが最古の部類に入ります。さらに1831年(天保2年)刊行の小寺玉晃の『尾張童謡』にも同系統の歌詞が登場しており、江戸時代にはすでに広く歌われていたとみられています。
つまり「ほたるこい」は少なくとも江戸時代から歌い継がれてきた民俗文化の結晶です。「誰かが作った歌」ではなく、「日本中の子どもたちがつないできた歌」と捉えるのが正しい見方です。
昭和16年(1941年)に国民学校芸能科音楽の教科書「ウタノホン上」にも「作者不詳」として掲載された事実がその証拠です。現在広く知られているバージョンは小倉朗による編曲版ですが、あくまで「編曲」です。「作詞:わらべ歌・作曲:わらべ歌」が正確な表記ということです。
これは保育の現場でも重要な視点です。子どもに「この歌は誰が作ったの?」と聞かれたとき、「わからないんだよ。昔から日本中の子どもたちが歌ってきた歌なんだ」と答えられる保育士は、単なる正確な情報提供を超えた豊かな文化教育を実践していると言えます。
参考:「ほたるこい」の作者・起源・歌詞の意味について研究者が詳しく解説しています。
「蛍の歌」ほたるこいの地域バリエーションと全国415曲の事実
「ほたるこい」は全国で歌われてきましたが、地域によって歌詞や旋律が大きく異なります。この多様性はほとんどの保育士が知らない事実です。
北原白秋が編集した『日本伝承童謡集成』(天体気象・動植物唄編)には、螢狩りの唄が415曲も収録されています。岐阜県内だけで260曲が採譜されたという記録もあります。日本全国のコンビニの総数が約56,000店(都道府県あたり平均約1,200店)と考えると、岐阜1県だけで260曲がある規模感は、いかにこの歌が地域の文化に根ざしていたかを示しています。
地域ごとの特徴的な歌詞を見てみましょう。
| 地域 | 歌詞の特徴 |
|---|---|
| 秋田県 | 「ほうほう螢こい あっちの水は苦いぞ こっちの水は甘いぞ」(「あっちの水」形式) |
| 東京都 | 「ほうたるこい 山見てこい 行燈の光を一寸見てこい」(「山見て来い」形式) |
| 栃木県 | 「ホーホーほたるこい 螢の親父は金持ちだ 夜は提灯高のばり」(「昼は草葉の露のんで」形式) |
| 佐賀県 | 「ホホ螢こい 谷川の水呉りゅう」(「水呉りゅう」型) |
| 宮崎県 | 「ほたるどんの嫁どりは あんどんもいらぬ ちょうちんもいらぬ」(独自形式) |
| 沖縄県 | 「じんじん」ではじまる、まったく異なる旋律の独自形式 |
研究者はこれらを大きく「山見て来い形式」「昼は草葉の露のんで形式」「あっちの水形式」の3種類に分類しています。広島県高田郡向原地方では蛍狩りの唄を子守唄として使っていたという記録もあります。歌の用途まで地域によって異なっていたわけです。
これは保育の現場でも活用できる視点です。地域によって歌が違うという事実は、子どもたちに「文化や地域の多様性」を伝える絶好のきっかけになります。「みんなが少しずつ違う歌詞で歌っていた」という驚きが子どもの好奇心を刺激します。
年長の子どもには「お家の人に、あなたの地域のほたるこいを聞いてみてね」と一言伝えるだけで、家庭でのコミュニケーションが生まれます。保護者を巻き込む保育のきっかけとしても活用できます。これは使えそうです。
参考:螢狩りの唄の地域多様性と保存についての学術的な資料です。
「蛍の歌」蛍の光の歌詞の意味と知られざる4番の歴史
唱歌「蛍の光」は保育士なら誰でも知っている歌です。しかし歌詞の意味を正確に説明できる人は意外と少ないものです。卒園式の退場曲として流れることも多いため、ここでしっかり押さえておきましょう。
まず1番の冒頭「蛍の光 窓の雪」という表現は、中国の故事「蛍雪の功(けいせつのこう)」が由来です。晋の時代の車胤(しゃいん)という人物は、灯油を買う金がなく、夏は蛍を集めてその光で書物を読み、孫康(そんこう)という人物は冬に雪明かりで勉強したというエピソードです。苦労して学問に励み成果を出すことを意味する故事成語で、旺文社の大学受験雑誌「螢雪時代」の名前もここから来ています。
「蛍の光 窓の雪 書読む月日 重ねつつ」は現代語に直すと「蛍の淡い光や雪明かりで書物を読む日々を重ねてきた」という意味です。つまり長い学びの日々を振り返る歌詞です。
歌詞は1881年(明治14年)に稲垣千頴によって作詞され、尋常小学校用の唱歌として発表されました。メロディは原曲がスコットランド民謡「Auld Lang Syne(オールド・ラング・サイン)」です。「Auld Lang Syne」はスコットランド語で「昔から」「久しき昔」を意味し、旧友と再会して思い出話をしながら杯を交わすという内容です。日本人が感じる「寂しいお別れの歌」とは本質的に異なります。
そして多くの保育士が知らないのが3番・4番の歌詞です。現在は1番(〜2番)しか歌われませんが、もともと4番まであります。3番は「一つに尽くせ 国の為」という歌詞があり、4番は「千島の奥も 沖縄も」「千島の奥も 台湾も」というように、日本の領土変化に合わせて文部省によって何度も書き換えられた歴史があります。
- 千島の奧も 沖縄も 八洲の外の 守りなり(明治初期の原案)
- 千島の奧も 沖縄も 八洲の内の 守りなり(千島樺太交換条約・琉球処分後)
- 千島の奧も 台湾も 八洲の内の 守りなり(日清戦争後、台湾割譲を受けて)
- 台湾の果ても 樺太も 八洲の内の 守りなり(日露戦争後)
3番・4番が戦後に歌われなくなった理由はその内容が軍国主義的だったためです。戦時中には逆に「スコットランド民謡(敵国の音楽)だから」という理由で歌うことが禁止された時期もありました。その禁止が解かれた1946年(昭和21年)の卒業式で「蛍の光」が復活したときは、多くの生徒が感激したとNHKの記録にも残っています。
これは「蛍の光」の歌詞が単なる別れの歌ではなく、日本の近代史そのものを映し出している証拠です。保育士として子どもに伝える際は1番の内容で十分ですが、背景として知っておくことで言葉に深みが生まれます。
参考:唱歌「蛍の光」の歌詞の意味と4番が歌われなくなった歴史について詳しくまとめられています。
唱歌「蛍の光」は、卒業ソングや閉店の音楽として定番曲。実は4番まである|童謡・唱歌の世界
「蛍の歌」を保育で活かす年齢別の遊び方と保育士だけが知る2曲同時奏法
「ほたるこい」は0歳の赤ちゃんから年長児まで幅広く活用できるわらべうたです。年齢によって遊び方を変えるのが原則です。
名古屋短期大学保育科の山下直樹教授(臨床心理士・公認心理師)の研究によれば、わらべうたは子どもの発達の土台となる「触覚」「生命感覚」「運動感覚」「平衡感覚」の4つの感覚を育む効果があるとされています。山下教授はこれまでに10,000人以上の子どもたちと向き合ってきた研究者です。
年齢別の遊び方を以下にまとめます。
🍼 0歳〜1歳(ねんねの赤ちゃん・はいはい期)
ゆったりとしたテンポで歌いながら、赤ちゃんを抱いて揺らします。「あっちの水は苦いぞ」のタイミングで顔を近づけて表情豊かに語りかけ、「こっちの水は甘いぞ」でほっぺをそっとなでてあげましょう。触覚と生命感覚が育まれます。親子・保育士と子どもの間に信頼感が生まれます。
🐾 1歳〜2歳(よちよち歩き期)
「ほ ほ ほたるこい」の「ほ」に合わせて、両手を前に出してひらひら動かす手遊びを取り入れましょう。光る蛍のイメージを身体で表現することで運動感覚が刺激されます。テンポが一定で覚えやすいため、自然と口ずさむようになります。
🌟 3歳〜5歳(幼児期・ちょうちんゲーム)
みんなで輪を作り、ちょうちん(または代わりになるもの)を持った鬼が輪の中を歩きながら全員で歌います。歌が終わるタイミングで鬼がちょうちんを誰かに渡して交代します。繰り返すことで「順番を待つ」経験が積まれ、社会性の発達につながります。
そして検索上位の記事にはほとんど載っていない、現場の保育士さんに特に知っておいてほしい視点があります。「ほたるこい」には2つの異なる歌詞バージョンを同時に歌う「2曲同時奏法」が存在します。
具体的には「ほ ほ ほたるこい/あっちのみずは にがいぞ」という標準版と、「ほたるこい やまみちこい」という短縮版の2つを別々のグループが同時に歌います。この2つはテンポが異なるにもかかわらず、最後の「こい」という音がほぼ同時に重なる構造になっています。
「あっ、合った!」と子どもが気づいたときの表情は格別です。この「重なる瞬間」の体験は音を「聴く力(内的聴感)」の発達に直結します。音楽教育の観点から見ると、これはいわゆる「対位法的な聴き方」の入門として機能します。難しい音楽理論は必要ありません。
やり方としては、まず保育士が2つのパートを一人ずつ歌って見本を見せ、子どもたちを2グループに分けてチャレンジさせましょう。うまくいかなくても構いません。「あれ、ずれた?」「もう一回!」というプロセス自体が子どもの集中力と聴く力を鍛えます。年長児(5歳以上)であれば十分に楽しめます。
保育ねらいのまとめを以下に示します。
| ねらい | 具体的な内容 |
|---|---|
| 季節感の育成 | 夏の生き物・自然への関心を高める |
| 言語発達 | 古い言葉・方言・擬音語への自然な触れ合い |
| 社会性の発達 | 鬼交代ゲームで「順番を待つ・譲る」経験を積む |
| 音楽的成長 | リズム感・音程感・内的聴感の向上 |
| 情緒の安定 | 保育士や友達との触れ合いで安心感を育む |
保育の場では大人数で一斉に歌うより、自由遊びや触れ合いの時間に3人程度の少人数で遊ぶ方が発達への効果が高いとされています。少人数でしっかりと目を合わせながら歌うことが大切です。
参考:わらべうたが子どもの発達に与える効果について専門家が解説しています。
子どもたちの多面的な能力を育てる!? わらべうたの教育効果|第一興商
「蛍の歌」を子どもに伝えるときの注意点と保育計画のポイント
「ほたるこい」と「蛍の光」を保育の場で効果的に使うには、いくつかの工夫と注意点があります。これを知っておくと、子どもへの伝え方がレベルアップします。
① テンポは「ゆったり」が正解です
「ほたるこい」はわらべうたです。童謡のように元気よくテンポを上げて歌うのではなく、ゆったり・やわらかく歌うのが基本です。子どもの安静時心拍数(1分間60〜100拍)に合わせたテンポで歌うことで、子どもが安心して歌に入り込めます。速く歌いすぎると、わらべうたが本来持っている「落ち着き」の効果が半減します。
② 音程よりも「雰囲気」を大切にする
わらべうたには厳密な正解がありません。音程が多少ずれていても、保育士が楽しそうに自信を持って歌うことが最も大切です。「うまく歌えないから…」とスマホやYouTubeだけに頼ってしまうと、子どもとの直接の触れ合いが失われます。声の温かみと呼吸のリズムを感じさせることがわらべうたの核心です。厳しいところですね。
③ 「本物のほたる」との接続を意識する
蛍は水質汚染に非常に敏感な生き物で、成虫になってからの命は2週間ほどしかありません。この事実を子どもに伝えると、「命の短さ」「自然の清らかさ」について自然に話し合うきっかけになります。「ほたるが住める場所はきれいな川だけなんだよ」という一言で、環境への関心が生まれます。
④ 「蛍の光」を卒園式で使う際のひと工夫
「蛍の光」は卒園式の退場曲として使われることが多い歌です。このとき「蛍雪の功」の故事を年長児に伝えておくと、歌の意味が子どもたちに届きます。「一生懸命勉強した人が光を照らして頑張った、その話が歌になっているんだよ」という言葉で十分です。意味を知って歌う卒園式は、意味を知らずに歌う卒園式とはまったく異なる体験になります。
⑤ 保育計画への組み込み方
「ほたるこい」の取り入れ時期は6月下旬〜8月が最適です。ほたるの実際の活動時期(5月下旬〜7月上旬)に合わせることで、歌と自然体験が結びつきます。0歳から年長まで対応できるため、異年齢保育にも組み込みやすい点が特長です。ちょうちんは代替品でも構いません。光るものであれば懐中電灯でも十分楽しめます。
- 取り入れ時期:6月下旬〜8月(ほたるの季節)
- 対象年齢:0歳〜年長まで幅広く対応可能
- 必要な道具:ちょうちん(代替品でもOK)・なくても楽しめる
- 他の活動との連携:絵本「ほたる」・夏の自然観察・七夕行事との組み合わせが効果的
「ほたるこい」も「蛍の光」も、歌詞の意味・背景・遊び方を意識して伝えるだけで、子どもたちの体験はまったく違うものになります。それが保育士の専門性です。単なる季節の歌として流すのではなく、文化・自然・歴史をつなぐ教材として活用することを意識してみてください。
参考:幼児期の音楽表現活動における歌唱の役割について、保育者の視点から研究された論文です。


