雲の歌童謡を保育で活かす選曲と歌い方ガイド

雲の歌・童謡を保育で活かす選曲と活用の完全ガイド

保育士がよく歌わせる童謡の約70%は、子どもの音域を超えた楽曲です。

この記事のポイント
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雲の歌・童謡の代表曲を知る

「くももくもく」「雲の手紙」「くものしま」など、保育で使える雲テーマの童謡を整理。作詞・作曲者や歌の背景まで詳しく解説します。

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年齢別ねらいと選曲の基準

0歳から5歳まで、発達段階ごとのねらいに合った雲の歌の選び方と導入のコツを紹介します。音域の問題も具体的に解説。

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製作・自然観察との連携アイデア

雲の歌と製作活動・屋外観察を組み合わせる保育計画の具体例を紹介。歌から広がる遊びが子どもの想像力を引き出します。


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雲の歌・童謡の代表曲と歌詞の特徴

 

保育の現場で「雲」をテーマにした童謡はどれだけあるか、意外に知られていません。代表的な作品をきちんと整理しておくことで、行事や季節、子どもの年齢に合わせた選曲がスムーズになります。

まず保育現場でもっとも親しまれているのが、NHK「おかあさんといっしょ」の楽曲群です。「くももくもく」(作詞:関和夫、作曲:中村弘明、1982年)は、雲を「ワンワンこいぬ」「ピョンピョンうさぎ」「ゴロゴロパンダ」「ノシノシゴリラ」などの動物に見立て、青空を行き来する様子をリズミカルな擬音語で描いた曲です。歌詞の末尾が「いっしょにぷかぷかうかんでいたいな」と結ばれており、子どもの空想を豊かに広げる構造になっています。擬音語の多い歌詞は乳幼児の語彙発達にも効果的です。

「くものしま」(作詞:村田さち子、作曲:風琳)は「まどからみえるしかくいそらにくもがふわり もくもくもくもくものしま」という歌い出しで、窓の外の雲が小さな島のように見える情景を描いています。こちらも「おかあさんといっしょ」の楽曲で、落ち着いた詩的なメロディが特徴です。

「雲の手紙」(作詞:工藤直子、作曲:斎藤ネコ、1998年9月の月の歌)は、雲の便箋で島と島が手紙をやりとりするという独創的な世界観で描かれた抒情的な歌です。4〜5歳以上の子どもが歌詞の意味を理解して楽しめる内容で、想像力や交流のテーマを保育に組み込む際に重宝します。

古典的な唱歌の中では「霞か雲か」(1883年、小学唱歌として発表)も存在します。ドイツ民謡「Alle Vögel sind schon da(鳥たちはみんなやってきた)」のメロディに、加部巌夫が日本語詞を当てたもので、桜の花びらが「霞か雲か」と見えるほど咲き誇る春の景色を歌います。つまり「霞か雲か」という表現は、空の雲を直接歌っているわけではないのです。この点を子どもに説明する際には「桜がいっぱい咲いて、遠くから見たら雲みたいに見えるよ」という伝え方が適しています。

さらに、こども園の先生が子どもの「くもの歌うたって」というリクエストに応えて即興で作ったという「くもくもく」(作詞・作曲:飯島秀子)は、YouTubeを中心に保育現場で広まっています。「お空の雲は何に見える?」という問いかけ形式のリズミカルな曲で、子どもと一緒に雲の形を想像しながら歌える点が特徴です。これは使えそうです。

曲名 作詞・作曲 特徴・対象年齢の目安
くももくもく 作詞:関和夫/作曲:中村弘明(1982年) 擬音語豊富・1〜3歳向け
くものしま 作詞:村田さち子/作曲:風琳 詩的・3〜5歳向け
雲の手紙 作詞:工藤直子/作曲:斎藤ネコ(1998年) 抒情的・4〜5歳向け
くもくもく 作詞・作曲:飯島秀子 問いかけ形式・2〜4歳向け
霞か雲か 作詞:加部巌夫/ドイツ民謡(1883年) 唱歌・5歳〜小学校向け

参考:「くももくもく」の歌詞と「おかあさんといっしょ」放送楽曲の情報が確認できます。

J-Lyric.net|「くも もくもく」歌詞(おかあさんといっしょ)

雲の歌・童謡を保育で使う際の年齢別ねらいと音域の注意点

雲の歌を選ぶとき、多くの保育士は「可愛らしい歌詞かどうか」や「盛り上がるかどうか」で選びがちです。しかし音楽教育研究の観点から見ると、まず確認すべきは「音域が子どもの声域に合っているか」という点です。

宮崎国際大学の日髙・横山(2021年)による研究では、保育現場で実際に使われている歌曲集から300曲を分析した結果、その約70%が音域1オクターブ以上の楽曲で構成されていることが明らかになっています。一方、幼児の自然な声域はおよそ以下の通りです。

年齢 無理なく歌える声域の目安 音程幅
1歳児 C¹〜G¹ 3度程度
2歳児 C#¹〜A¹ 3〜4度
3歳児 B♭⁰〜A¹ 5度
4歳児 B♭⁰〜B♭¹ 5〜6度
5歳児 A⁰〜B¹ 6〜7度

ピアノの鍵盤で言えば、「ドから上のソ」という範囲が3〜4歳児にとっての自然な歌声の限界に近い、ということです。これは鍵盤のほんの5〜6音分の狭さです。この声域に収まっている「くももくもく」や「くものしま」は、保育現場での選曲として非常に合理的です。音域が合っていれば安心です。

一方で「雲の手紙」は詩的な表現が豊かな反面、メロディの音程変化が大きい箇所もあります。5歳児以上で「言葉の意味を楽しむ」ことを主眼に置くクラスで取り入れる場合は問題ありませんが、3歳以下での全員斉唱には不向きです。「難しい歌でも元気よく歌っているからOK」というのは危険な判断で、無理な発声を繰り返すと子どもが歌嫌いになるリスクがあると、高崎健康福祉大学の岡本拡子教授も指摘しています。

年齢別のねらいという観点から整理すると、以下の活用が実践的です。

  • 🍼 0〜1歳児保育士が「くももくもく」をゆっくりとした低いテンポで歌い聞かせる。子どもの反応(目線・表情)を見ながら、擬音語の部分で間を作って待つ。声域や言葉のリズムが自然に近い曲を選ぶことが最優先。
  • 🌱 2〜3歳児:「くもくもく」のように問いかけ形式の歌を使い、子どもが「ワンちゃん!」「うさぎ!」などと答えるやりとりを楽しむ。繰り返しフレーズが多い曲が記憶に残りやすい。
  • 🌤️ 4〜5歳児:「くものしま」や「雲の手紙」を導入し、歌詞の意味を一緒に味わう時間をつくる。「窓から見える雲がどこへ流れているか」を想像しながら歌うと、情景への感受性が育まれる。

「発達に合った音域の曲を選ぶ」ことが原則です。

参考:幼児の歌唱声域の研究データがPDFで公開されています。

宮崎国際大学紀要「幼児の歌唱声域と子どもの歌曲集の音域についての考察」(PDF)

雲の歌・童謡が子どもの想像力と言語発達に与える効果

「くももくもく」の歌詞が動物の擬音語をたっぷり使っているのは、偶然ではありません。擬音語(オノマトペ)は幼児の語彙発達において重要な役割を担っており、国立国語研究所の研究でも「オノマトペは子どもが言語習得の初期段階で使いやすい表現形式」として注目されています。

身体化された認知(embodied cognition)という理論があります。私たちの言葉や概念は、体の経験と深く結びついているという考え方で、「フンワリ」という言葉は、実際にふわふわしたものを手で触ったり、体をゆらゆらさせたりする動作と一緒に覚えることで記憶に定着しやすくなります。「くももくもく」を歌いながら「ふんわり・ふわふわ」と体を揺らす活動は、この理論に基づいた自然な保育実践です。

オーストラリアで行われた研究(Mavilidi et al., 2015年)では、就学前の子どもたちに外国語の語彙を4週間で学習させたところ、「全身を使って単語の意味を実演したグループ」は、「座って繰り返すだけのグループ」に比べて6週間後のテストで明確に高い定着率を示しました。歌と動作を組み合わせることは、記憶の定着に直接つながります。

また、「雲の手紙」のように「雲が便箋になる」「島どうしが手紙を送る」という比喩的な表現は、4歳を過ぎた頃から急速に発達する「想像的思考」を刺激します。幼児教育研究者の岡本拡子教授(高崎健康福祉大学)は、「歌詞から物語を広げる活動」が子どもの表現語彙を増やし、感情表現の引き出しを豊かにすることを保育の場で繰り返し指摘しています。

「雲の手紙」を歌ったあとに「雲で手紙を書くとしたら、誰に何を書く?」と問いかけるだけで、クラス全体がのびのびと言葉を使い始めます。保育士が正解を決めず、どんな答えも受け止める姿勢を示すことが、この活動を成功させる鍵です。言葉を伸ばす絶好のチャンスですね。

参考:保育園における歌のねらいと、言語発達との関係がまとめられています。

Mothership Care|保育園における歌の重要性とは?子どもが歌を歌いたくなるポイント

雲の歌・童謡と自然観察・製作活動を組み合わせる保育アイデア

雲の歌は、歌単体で使うよりも、自然観察・製作・絵本と組み合わせることで保育の質が格段に上がります。これは「表現領域の横断的なアプローチ」として、改訂版保育所保育指針(厚生労働省、2018年)でも推奨されている方向性です。

具体的な組み合わせ方として、まず「雲の観察→歌→製作」という流れが実践的です。晴れた日に園庭や窓から空を眺め、「どんな形の雲が見える?」と子どもたちに問いかけます。「ゾウみたい」「たこ焼きみたい」など、子どもが見立てた形を受け止めて共感します。

その後に「くももくもく」や「くもくもく」を歌うと、歌詞の内容が実際に見た空と結びつくため、印象が深まります。単に「今日は雲の歌を歌います」と始めるよりも、子どもの記憶への定着率が変わってきます。歌が体験の「言語化」になるわけです。

製作では、綿(または白いティッシュを丸めたもの)を青い画用紙に貼り付けて雲を作るアイデアが、2〜3歳児クラスで人気があります。「ゴリラの雲を作ってみよう」「うさぎの雲はどんな形?」と声をかけると、歌で出てきた動物と製作が自然につながります。こうした活動の積み重ねが、子どもの「歌は楽しいもの」という感覚を育てます。

4〜5歳児向けには「雲の絵本」との連携も効果的です。絵本『くものすおやぶんとのはらなかま』(まどみちお)や、空の絵が美しい絵本を読んだ後に「雲の手紙」を歌うと、歌詞の抽象的な表現がすんなりと子どもたちに届きます。

製作・観察・歌を組み合わせる際のポイントは以下の通りです。

  • ☁️ 観察は「正解なし」で行う:「あれは積乱雲です」などの正確な知識より、「あの雲、どう見える?」という問いかけで想像力を引き出す。
  • 🖌️ 製作は歌の直後に行う:歌で印象に残ったイメージを、手を動かして表現することで体験が深まる。
  • 📖 絵本・歌・製作はセットで計画する:保育指針の「表現」領域を横断的に扱う意識で、活動をひとつのテーマでつなぐ。
  • 🎤 保育士が一緒に歌うピアノ伴奏だけに専念せず、子どもと一緒に声を出すことが保育指針でも求められている。

参考:保育における造形表現と音楽表現の連携に関する研究です。

CORE|保育現場における造形表現と音楽表現活動の連携によるアプローチ(PDF)

保育士が知っておきたい雲の童謡にまつわる意外な豆知識

現場の保育士がよく知っている「くももくもく」や「くものしま」にも、意外に知られていない背景があります。知っておくことで、保護者への一言や子どもとの会話に深みが出ます。

まず「くももくもく」(1982年)は、NHK「おかあさんといっしょ」の月の歌として誕生した後、現在も再放送・再配信され続けています。作曲者・中村弘明氏は同番組で多くの名作を手がけた人物で、擬音語を巧みに音楽に乗せる手法は当時から高く評価されていました。40年以上経った今も保育現場で歌われ続けているのは、子どもの声域に配慮した音域設計と、繰り返しフレーズの心地よさにあります。

「雲の手紙」の作詞者・工藤直子(1935〜2014年)は、詩集『のはらうた』で知られる日本を代表する詩人です。「てんとうむしのてんてんてん」など、子どもの感性に直接触れる言葉を長年生み出してきた詩人が手がけたこの歌は、歌詞の一語一語に丁寧な情景が込められています。「雲が便箋になる」という比喩は、子どもにとっても大人にとっても詩的な驚きを持ちます。

「霞か雲か」がドイツ民謡を原曲として持つことは冒頭でも触れましたが、さらに興味深い事実があります。この唱歌は1883年(明治16年)の「小学唱歌集 第二編」に収められた古い楽曲で、140年以上前から日本の子どもたちが歌い継いできた歴史があります。「140年前の歌が今も残っている」という事実を知ると、童謡・唱歌がいかに力を持った文化遺産であるかが改めて感じられます。意外ですね。

また、「くもくもく」(飯島秀子作)のように、現代の保育現場の先生が子どもの一言から即興で作り出した歌が、今やYouTubeを通じて全国の保育園・幼稚園に広まっているという事実も注目に値します。デジタル時代における「口コミで広まる新しいわらべうた」の誕生といえるかもしれません。保育士が自ら歌を作り、発信する文化が生まれつつあります。いい変化ですね。

保育士として知っておくと役に立つ豆知識をまとめると、以下の通りです。

  • 🎼 「くももくもく」は1982年作で、40年以上現場で使われ続けている:音域の配慮と擬音語の豊かさが長寿の理由。
  • ✍️ 「雲の手紙」の作詞者・工藤直子は詩集「のはらうた」で知られる詩人:子どもの感性に寄り添う言葉の名手。
  • 🏛️ 「霞か雲か」は1883年(明治16年)初出のドイツ民謡が原曲:140年以上日本で歌い継がれてきた文化遺産。
  • 📱 現代の保育士が作った「くもくもく」がYouTube経由で全国に広まった:デジタル時代の新しい「現場発の童謡」の誕生。

参考:「雲の手紙」の放送記録と曲情報が確認できます。

おか索|「雲の手紙」のおかあさんといっしょでの放送日

雲よ歌え愛とロマン―ほのぼの先生笑って泣いて