阿波おどりの歌と掛け声を保育の夏祭りで活かす方法

阿波おどりの歌と掛け声を保育で活かす完全ガイド

「踊る阿呆に見る阿呆」の歌詞は、実は徳島の民謡ではなく京都発祥です。

🎵 この記事でわかること
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阿波おどりの歌「よしこの節」の歌詞と意味

「エライヤッチャ」「ヤットサー」など有名な掛け声・囃子唄の由来と意味をわかりやすく解説します。

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ぞめきを支える鳴り物の種類

篠笛・三味線・鉦・太鼓など、阿波おどりの音楽を彩る楽器の役割を紹介します。

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保育の夏祭りでの活用アイデア

歌・掛け声・簡単な振り付けを使って、子どもが楽しめる阿波おどり体験の導入方法を具体的にご紹介します。

阿波おどりの歌「よしこの節」の歌詞と全体像

 

阿波おどりといえば、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」というフレーズを思い浮かべる方が多いでしょう。このフレーズは「よしこの節(阿波よしこの)」と呼ばれる囃子唄の一部で、阿波おどりを象徴する言葉として全国的に知られています。

「よしこの節」の代表的な歌詞は以下のような構成になっています。

パート 歌詞
囃子(はやし) ハアラ エライヤッチャ エライヤッチャ ヨイ ヨイ ヨイ ヨイ
唄(うた) 踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損々
唄(うた) 阿波の殿様 蜂須賀さまが 今に残せし 阿波踊り
掛け声 新町橋まで行かんか こいこい
掛け声 ヤットサー ア、ヤットヤット

歌詞の全体像はこのようなイメージです。実際には連(れん)ごとに歌詞や歌い方が異なり、「一かけ二かけ三かけて、四(し)かけた踊りはやめられぬ」という子どもが覚えやすい数え唄スタイルのバリエーションも存在します。これが原則です。

「よしこの節」という名前の由来は、囃し声の中に「こりゃまたよしこの」「よしこのよしこの」という言葉があったことからきており、江戸時代の俗謡「よしこの節」が変化して定着したとされています。

「よしこの節」は阿波独自の民謡だと思われがちですが、実は江戸末期から明治初年にかけて全国で大流行した流行歌が起源です。意外ですね。時代を経て、各地でそれぞれの形に発展し、徳島では阿波おどりの唄として「阿波よしこの節」という独自の形で現存しています。1929年(昭和4年)には審査場での審査基準により整理され、「徳島盆踊唄(よしこの)」としてレコード化され全国に普及したという経緯があります。

阿波おどりの歌詞に込められた意味を知ることで、保育士として子どもたちに「これはどういう意味かな?」と問いかける場面が生まれます。これは使えそうです。

阿波おどりの歌詞・掛け声の由来について詳しく解説されている権威ある参考リンクはこちらです。掛け声それぞれの歴史的背景が詳しく説明されています。

阿波踊りの掛け声には意味がある|寶船TAKARABUNE

阿波おどりの歌に登場する掛け声の意味と由来

阿波おどりの歌には、いくつかの独特の掛け声・囃し言葉が登場します。それぞれに深い歴史的背景があり、子どもたちへの説明にも使えます。

まず最もよく耳にする「エライヤッチャ エライヤッチャ ヨイヨイヨイヨイ」。この言葉の意味は大きく3つあります。ひとつ目は「たいへんだ!」という活気付けの意味、ふたつ目は「すごいやつだなぁ、がんばってるなぁ」とお互いを認め合う意味、そして3つ目は幕末の「ええじゃないか」運動と結びついた「世直し」のコールという説です。エネルギッシュな掛け声ですね。

次に「ヤットサー! ア、ヤットヤット!」。これは「ヤットサー」と叫ぶと「ア、ヤットヤット」と返すのがお約束のかけ合いです。意味の由来は2つ。名古屋弁・東海地方の方言「やっとかめ(久しぶり!)」から来ているという説と、鹿児島弁の「おやっとさー(おつかれさま)」から来ているという説があります。徳島が藍の貿易で全国の文化が混ざり合っていた港町だったため、こうした各地の方言が混ざり込んでいるという歴史がとても面白いところです。

「踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損々」という最も有名なフレーズは、「踊っている人も見ている人も、どうせ阿呆なら踊ったほうが得だ」という意味です。これは阿波おどりの精神をもっともよく表していると言われています。

  • 「エライヤッチャ」:「たいへんだ!」「がんばってるね!」「世直しだ!」の3つの意味がある掛け声
  • 「ヤットサー」:「久しぶり!」「おつかれさま!」という意味で、東海・九州の方言が混ざった掛け声
  • 「踊る阿呆に見る阿呆」:踊ることへの解放感と参加を促す、阿波おどりの哲学を表す囃し言葉
  • 「新町橋まで行かんかこいこい」:徳島藩の規制に対抗した民衆の気概を表す、江戸時代の反骨精神から生まれた言葉
  • 「一かけ二かけ三かけて」:子どもが唱えやすい数え唄スタイルの囃し言葉。保育でも使いやすいバリエーション

保育の場面でこれらの掛け声を紹介する際は、全部の由来を説明する必要はありません。「ヤットサー!」と保育士が言って「ア、ヤットヤット!」と子どもたちが返す、というかけ合いゲームだけでも十分に楽しく盛り上がります。子どもへの導入はかけ合いから始めるのが基本です。

徳島県公式サイトには、阿波おどりの掛け声の音源や正調の情報が掲載されています。事前のリサーチに役立ちます。

阿波おどり|ようこそ徳島県へ(徳島県公式)

阿波おどりの歌を支えるぞめきと鳴り物の種類

阿波おどりの音楽全体は「ぞめき」と呼ばれています。「ぞめき」は漢字で「騒き」と書き、浮かれ騒ぐことを意味する言葉です。つまり「ぞめき」とは、阿波おどりのお囃子全体の総称ということですね。

ぞめきを奏でる楽器のことを「鳴り物(なりもの)」と呼び、主に以下の楽器で構成されています。

楽器名 役割・特徴
🔔 鉦(かね) 「カランカラン」という金属音でリズムをリード。鳴り物のバンドマスター的存在
🥁 締太鼓 肩から吊り下げて「ンタンタ」という軽快な裏打ちリズムを奏でる
🥁 大太鼓 「ドドンガドン」という腹に響く豪快な音。音は10km以上遠くまで聴こえることもある
🪈 篠笛(しのぶえ) ぞめきのメロディーを奏でる主役。澄んだ音色が遠くまで響く
🎵 三味線 歯切れの良い音で「ぞめき感」を演出。一時は演奏が少なくなった時代もあったが、近年再評価が進む
🎵 竹(竹太鼓) 高音リズムでグルーヴに切れ味を加える。振り付けの合図としても使われる

ぞめきの拍子は基本的に2拍子ですが、正調ぞめきは途中で1小節だけ5拍子になるという独特の構成を持っています。そのため拍の表と裏が4回循環してやっと元に戻るという複雑な揺らぎがあり、これがぞめき独特のリズムの「浮き立つ感覚」を生み出しています。

保育の場でこのリズムを体験させたい場合、手拍子やタンバリンで「タン・タン・タン・タン(2拍子)」のリズムを刻むだけで十分に雰囲気が出ます。厳密な拍子は不要です。リズムに乗って体を動かす体験が大切なのが原則です。

ぞめきについてさらに詳しく知りたい方は、南粋連のサイトが詳しく解説しています。鳴り物の音源も参考になります。

ぞめきとは?篠笛のゆれと他の楽器の兼ね合い|南粋連

阿波おどりの歌が生まれた歴史と400年の背景

阿波おどりには約400年の歴史があると言われています。その起源については大きく3つの説があり、いずれも確定的な証拠に欠けるものの、それぞれが興味深い歴史を持っています。

  • ⛩️ 築城起源説:天正14年(1586年)、徳島藩の藩祖・蜂須賀家政が徳島城の築城を記念して、城下の人々に城内での無礼講を許した際に踊られたものが始まりという説
  • 🙏 盆踊り起源説:鎌倉時代の念仏踊りから続く先祖供養の踊りが発展したという説
  • 🎭 風流踊り起源説:室町時代に流行した「風流踊り」(能楽の源流とも言われる)が影響を与えたという説

「阿波の殿様 蜂須賀さまが 今に残せし 阿波踊り」という歌詞があることから、築城起源説が広く知られていますが、実際には江戸時代以前から徳島周辺では盆踊りが盛んに行われており、蜂須賀家政の入国をきっかけに加速・発展したと考えるのが自然です。

阿波おどりが大きく変化した時代として見逃せないのが幕末です。天保13年(1842年)に徳島藩が阿波おどりを城下町内に閉じ込める「町切り規制」を実施しました。すると民衆は「新町橋まで行かんかこいこい」と歌いながら橋を目指すという行動を起こします。橋の上だけは城下町の内か外か曖昧な「治外法権」の場だったからです。厳しいところですね。

この「新町橋まで行かんかこいこい」という掛け声には、藩への反骨精神と民衆のエネルギーが詰まっています。子どもたちに「昔のお祭りは、こんな面白いドラマがあったんだよ」と伝えると、歴史の授業にもつながる豊かな導入になります。

また「踊る阿呆に見る阿呆」のフレーズは、実は徳島発祥ではなく、天保10年(1839年)の京都の「豊年踊り」で使われた記録が残っています。「踊る阿呆に見る阿呆、おなじあほなら踊るがとくじゃ」という形で京都で先に歌われており、その後徳島に伝わって阿波おどりの精神と融合したとされています。つまり400年の歴史を誇る阿波おどりの代名詞的フレーズですら、実は「流入した文化」だということです。

阿波おどりの歴史的背景について徳島県公式の詳細な説明はこちらです。

文化|徳島県公式ホームページ(阿波おどりの起源と歴史)

保育士が知っておきたい阿波おどりの歌の活用アイデア【独自視点】

阿波おどりの歌や掛け声は、実は保育の様々な場面に取り入れやすい素材です。夏祭り運動会だけでなく、日常の保育活動の中にも活かせる場面がたくさんあります。以下に、具体的な活用アイデアをシーン別にまとめました。

🎉 夏祭り・夏の行事への導入

夏祭りや縁日ごっこの場面では、「ヤットサー!」と保育士が呼びかけて「ア、ヤットヤット!」と子どもたちが返すかけ合いを繰り返すだけで、お祭りの雰囲気が一気に高まります。事前の練習も簡単で、3〜5回繰り返すだけで子どもたちが覚えるほどシンプルです。

  • 朝の会や集まりで「ヤットサー!→ア、ヤットヤット!」のかけ合いを1週間前から取り入れて、お祭り気分を段階的に盛り上げる
  • タンバリンや鈴を使って2拍子のぞめきリズムを手拍子で体験する「鳴り物ごっこ」コーナーを設ける
  • 「一かけ二かけ三かけて~」の数え唄を手遊びとして取り入れる(特に3〜5歳児向け)

🎵 リズム感・音楽的発達への活用

阿波おどりのぞめきは、2拍子の基本リズムを体で感じさせる素材として優れています。ぞめきのリズムには「はねるリズム」という独特の軽快な揺らぎがあり、研究によると子どもたちがもともと持っているリズム感覚と親和性が高いことが報告されています(日本幼児教育・保育学会誌掲載の研究より)。

体験は「聴く→手拍子する→体を動かす」の順に進めるのが基本です。最初から全員を踊らせようとすると乗り気でない子どもも出ますが、まず聴かせてリズムに慣れさせることで、自然と体が動き出す子どもが増えてきます。

📖 日本文化を学ぶ保育活動として

阿波おどりには「エライヤッチャ(すごいね!がんばってるね!)」という意味の掛け声があります。これを「友だちをほめる言葉」として活動の中で使うと、文化体験と言葉の学びが同時にできます。保育士が「〇〇ちゃんがお片付けしてくれたよ、エライヤッチャ!」と声をかけてみると、子どもたちも自然にこの表現を使うようになります。これは使えそうです。

また、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」という言葉は、5歳以上の子どもには「踊る人も見ている人も、みんなで楽しんだほうが得だよ」という参加の大切さとして伝えることができます。運動会や発表会の前に「やらないともったいないよ」という導入として使うと、参加意欲が自然と高まります。

保育の現場でぞめきのリズムを用いた活動についての学術的な参考になる論文はこちらです。研究が気になる方はご参考に。

沖縄のカチャーシーと徳島の阿波踊りを用いた調査を通して(日本幼児教育・保育学会)

阿波踊り本。