序奏と獅子王の行進の歌と保育活動への活かし方

序奏と獅子王の行進の歌と保育活動への活かし方

この曲は「子ども向け」に作られたものではなく、大人向けの風刺パロディとして生まれました。

🎵 この記事でわかること
🦁

曲の正体と背景

「序奏と獅子王の行進」がどんな曲で、なぜ保育現場で使えるのかを解説します。

🎶

音楽遊びへの取り入れ方

子どもがライオンになりきる表現活動や、リトミックへの具体的な使い方を紹介します。

📝

歌い方・歌詞のつけ方のポイント

子どもへのわかりやすい言葉での説明の仕方や、歌詞をつけて使う工夫も紹介します。

序奏と獅子王の行進の歌の基本知識:どんな曲なのか

 

「序奏と獅子王の行進」は、フランス作曲家カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921)が1886年に作曲した組曲『動物の謝肉祭』の第1曲目です。正式なフランス語タイトルは「Introduction et marche royale du lion」で、「獅子王の荘厳な行進」という意味を持ちます。

この組曲は全部で14曲からなり、ライオン・カンガルー・象・カッコウ・白鳥など、さまざまな動物をモチーフにした短い楽曲で構成されています。保育士にとっては「子ども向けの音楽」という印象を持つ方が多いかもしれませんが、実際の作曲の背景はまったく異なります。サン=サーンス自身は「ふざけすぎている」と感じていたため、生前はほぼ全曲を公開せず、出版も禁じていたのです。

曲の構成はシンプルでわかりやすいのが特徴です。冒頭では2台のピアノによる「耳をつんざくようなトレモロ」が鳴り響き、ライオンの咆哮を表現します。続いて弦楽器のユニゾンによる勇壮な行進曲に移行する、全71小節の作品です。テンポ指定は「Andante maestoso(荘厳にゆっくりと)」から「Allegro non troppo(速すぎずに)」へと変化し、ライオンの威厳ある登場と行進がドラマチックに描かれています。

つまり音楽で動物を描いた曲ということです。

この曲の魅力は、誰が聴いても「ライオンが歩いている」という情景が頭に浮かぶ描写力の高さにあります。サン=サーンスは感情に左右されるロマン派的な表現よりも、写実的・描写的な音楽表現を得意としており、この第1曲はその真骨頂といえます。子どもにとっても音のイメージが掴みやすく、想像力を刺激しやすいため、保育の現場で非常に使いやすい楽曲です。

Wikipedia「動物の謝肉祭」:曲の編成・各曲の詳細・作曲の背景について詳しく記載されています。

序奏と獅子王の行進の歌い方と子どもへの伝え方

この曲には歌詞がありません。「歌」として使う場合は、保育士が楽曲に合わせて言葉をつけたり、子どもと一緒に「ライオンのテーマ」を口ずさむ形で使うのが一般的です。

保育現場での歌い方として特に有効なのが、擬音語・擬態語を使った「ノリことば」の活用です。たとえば、冒頭のトレモロ部分には「ゴロゴロゴロ〜」「ザワザワ〜」と声を合わせて出し、行進曲の部分では「ドンドンドン!ライオンきたぞ!」と口で言いながら体を動かすというアプローチがあります。

子どもへの曲の紹介は「むずかしい言葉」を使わないのが基本です。「これはライオンがドカドカ歩いてくる音だよ。みんなも聴いてみて、どんなライオンが歩いてきそう?」というように、曲を聴く前に「聴くポイント」を一言添えるだけで、子どもの集中力がぐっと高まります。3〜5歳児には「強い音のとき」「やさしい音のとき」という二択のイメージ共有から始めると、音楽の抑揚を自然に感じ取れるようになります。

歌詞をつけて歌う場合は、音節数をメロディに合わせることが条件です。たとえば行進曲のリズムにのせて「ラーイーオーン、ドーンドーン(手拍子)」という形でリズム読みをさせると、0歳〜2歳の乳幼児でも音楽のリズムを感じる体験ができます。これは音楽教育の分野で「リトミック」と呼ばれる手法に近いアプローチで、ダルクローズ・リトミックの考え方では「音楽を体で感じる経験が感受性の基礎になる」とされています。

これは使えそうです。

擬音語を使った口ずさみと体の動きを組み合わせることで、子どもは「音楽を聴く→体で表現する→言葉とつなぐ」という3つのプロセスを同時に体験できます。歌い方に「正解」はありませんので、保育士自身が楽しみながら声を出すことが、子どもの参加意欲を引き出す最大のポイントです。

序奏と獅子王の行進を活かした保育遊び・リトミックへの活用法

「序奏と獅子王の行進」は保育の音楽遊びやリトミックに非常に取り入れやすい楽曲です。曲に明確な「強い部分」と「しずかな部分」があるため、子どもが音の変化を体で感じ取りやすく、動きのバリエーションを引き出しやすい特徴があります。

0〜1歳児向けの活動では、保育士が子どもを抱っこしてゆっくり歩く「だっこ行進」がおすすめです。冒頭のトレモロ部分ではその場でゆらゆら揺れ、行進曲が始まったらゆっくりと歩き始めるという変化をつけることで、音楽の「変わり目」を感覚的に体験できます。音楽を繰り返し聴かせること自体が、神経回路の形成を促すという神経科学的な知見もあります。

2〜3歳児向けには「ライオンあるき」がピッタリです。音楽に合わせて四つん這いになり、手と膝でゆっくり這い回る動作を取り入れましょう。行進曲のリズムに合わせて「ドーン、ドーン」と声に出しながら歩くことで、リズム感覚と粗大運動の発達を同時に促せます。大きな動きと小さな動きを使い分けるため、ボディイメージの形成にも効果的です。

4〜5歳児には「音楽にあわせた役割遊び」が効果的です。

年齢 遊び方 ねらい
0〜1歳 だっこ行進・膝の上でリズム体験 音の変化を感覚で感じる
2〜3歳 ライオンあるき・四つん這いで行進 粗大運動+リズム感の発達
4〜5歳 「王様ライオン」vs「逃げる動物たち」の役割遊び 表現力・想像力・協調性

4〜5歳児の役割遊びでは、子ども数人を「ライオン役」に、残りを「他の動物役」に設定し、音楽が鳴り始めたらライオン役はゆっくり行進、他の子はそれぞれの動物のまねをしながら逃げる、というゲームができます。音楽がストップしたら全員その場でフリーズ、というルールを加えると緊張感が生まれ、集中力も育まれます。

生演奏の「序奏と獅子王の行進」を子どもに聴かせる機会が作れれば、視覚・聴覚両方への刺激を得られて、さらに有効です。保育施設によっては地域のオーケストラやアウトリーチコンサートを活用しているケースもあります。愛知県立芸術大学のような機関が「病院アウトリーチプロジェクト」で『序奏と獅子王の行進曲』を使用し、小さな子どもへの効果を確認しているという事例も存在しています。

序奏と獅子王の行進の歌が保育に与える意外な効果:情操教育と発達支援の視点

「序奏と獅子王の行進」のような描写音楽には、単なる「音楽遊び」を超えた教育的効果があります。保育士として知っておくと活動の質が変わる視点を整理します。

神戸常盤大学の研究(「クラシック音楽の生演奏が未就学児に与える影響についての一考察」)では、年齢に関係なく音楽は人間形成・情操教育・治療に有用であり、訓練された演奏家の音楽を生で聴き、視覚的刺激を受けることがさらに有効と報告されています。「動物の謝肉祭」のような描写音楽は、音と映像(動物のイメージ)の連合が生まれやすく、情操教育的な効果を生み出しやすいと言えます。

情操教育に有効ということですね。

また、「序奏と獅子王の行進」に含まれる音楽的な特徴は、子どもの発達に対して複数の働きかけを同時に行える点で優れています。具体的には以下のような要素があります。

  • 🎵 強弱のコントラスト:冒頭のトレモロ(強)と弦楽器の行進(中強)の対比が、音量・強弱への感受性を育てます。
  • 🦁 テンポの変化:序奏のゆったりとした部分から行進曲への移行が、テンポの変化を身体で感じる体験になります。
  • 🎼 旋律の「らしさ」:「ライオンの足音っぽい」と誰もが感じる描写力が、音楽と情景のイメージをつなぐ力(音楽的想像力)を養います。

発達支援の観点では、「序奏と獅子王の行進」は発達障害・知的障害のある子どもへの活用例も存在します。「とてもにぎやかなコンサート」という0歳・未就学児・発達障害・知的障害の方々にウェルカムなボーダレスコンサートでも、この曲が演目として取り上げられています。音量の変化が大きく「予測しやすいパターン」を持つこの曲は、聴覚的な刺激に敏感な子どもにとっても安心感を持ちやすい構造を持っているからです。

一方で注意点もあります。冒頭のトレモロは非常に大きな音で始まるため、音に敏感な子ども(聴覚過敏傾向のある子ども)に聴かせる際は、最初の音量を小さめに設定するか、事前に「最初は大きい音がするよ」と予告することで、驚き・パニックを防ぐことができます。事前の「プリペアリング(予告)」は、特別な配慮を要する子どもへの支援で特に大切な視点です。

神戸常盤大学「クラシック音楽の生演奏が未就学児に与える影響についての一考察」:年齢を問わない音楽の教育的効果と、生演奏の有効性について学術的に解説されています。

序奏と獅子王の行進の歌が保育の劇遊び・発表会で使えるアイデア

「序奏と獅子王の行進」は劇遊びや保育の発表会にも活用できる楽曲です。この曲には「登場」「行進」というわかりやすいストーリー構造があるため、劇のオープニングや動物キャラクターの登場シーンに非常にマッチします。

発表会での活用例としてよく見られるのが「百獣の王ライオンの登場シーン」です。子ども1〜2人がライオンの衣装を着けてゆっくりと舞台に歩き出るシーンに、冒頭のトレモロから行進曲へと切り替わるタイミングを合わせると、演劇的な「間」と緊張感が生まれます。

曲のポイントは入りのタイミングです。

  • 🎵 トレモロ部分(序奏):照明が暗く、舞台の奥でライオンが準備している演出に合わせる
  • 🦁 ファンファーレ風のリズム:ライオンが客席に向かって歩き始めるタイミング
  • 🎶 弦楽の行進曲:ライオンが堂々と歩き、他の動物たちが整列するシーン

劇遊びにおいては、「ライオンと他の動物の謝肉祭」という簡単なシナリオを保育士が手作りし、動物の謝肉祭の音楽(第2曲「めんどりとおんどり」、第5曲「象」、第13曲「白鳥」など)と組み合わせて使う形が定番です。これにより、単曲ではなく組曲全体を通した「物語型発表」になります。子どもたちは音楽の雰囲気に合わせてそれぞれの動物をなりきって演じることで、自己表現力・想像力・他者との協調性を同時に体験できます。

劇遊びでの音楽使用を検討する場合、著作権についても知っておく必要があります。サン=サーンスは1921年に亡くなっており、没後70年(1991年)が経過しているため、「序奏と獅子王の行進」の原曲の楽曲著作権はすでに消滅しています。保育室内での非営利使用であれば、著作権上の問題はほとんどありません。ただし「演奏者・録音物」の著作隣接権は別途存在するため、CDや音源を使う際は権利処理済みの音源(JASRACや保育向け音楽サービスの利用許諾があるもの)を使用することが推奨されます。著作権のことは意外と見落とされがちです。

OEKfan「曲目解説:サン=サーンス/動物の謝肉祭」:各曲の構成・楽器・音楽的特徴が詳細に解説されています。劇遊びでどの曲がどの動物に対応するかを確認するのに最適です。

序奏と獅子王の行進の歌にまつわる豆知識:保育士が知ると差がつく雑学

「序奏と獅子王の行進」には保育士として知っておくと会話や活動のなかで役立つ豆知識があります。活動の前に子どもに語りかけるエピソードとして使えるものばかりです。

まず知っておきたいのが「この組曲は最初、こっそり作られた」という事実です。サン=サーンスは1886年、友人のチェリスト・シャルル・ルブークのために「プライベートな夜会」向けに『動物の謝肉祭』を作曲しました。初演は同年3月9日、オーストリアのクルディムで非公開に行われました。この作品には「他の作曲家の曲をパロディにして風刺的に使っている」部分があり(第4曲「亀」ではオッフェンバックの「天国と地獄」を超低速で演奏するなど)、サン=サーンスは「軽すぎる」と判断して生前の出版を禁止したのです。

つまり、今世界中の保育園で流れているこの曲は、作曲者が「人に聴かせたくなかった曲」という皮肉な歴史を持っています。没後の1922年に全曲が出版されて初めて世に出ました。

次に知っておくと面白いのが「組曲の中には『ピアニスト』という曲がある」という点です。第11曲の「ピアニスト」では、2人のピアニストが「ドレミファソラシド」のような単純な音階練習を延々と演奏します。これは、ピアノ演奏家を動物と同列に並べてからかった、サン=サーンス流のブラックユーモアです。

保育士ならではの豆知識として覚えておきたいのが、「この曲は生演奏で聴くと子どもの反応がまったく違う」という点です。録音音源で聴く場合と、実際の弦楽器・ピアノの生演奏で聴く場合では、子どもの身体的な反応(体が動く、目が輝く、自然と声が出るなど)に大きな差が生まれやすいことが、実践的な保育の現場でも報告されています。年に1回でも、地域の音楽家や音楽大学生によるアウトリーチ演奏の機会を設けることは、子どもにとって大きな体験になります。

また音楽的な特徴として、序奏と獅子王の行進は「ハ長調とイ短調(ドリア旋法)」が組み合わされた構成になっています。序奏は4/4拍子、ハ長調から始まり、行進曲でイ短調に移行します。この「明るいハ長調」から「やや神秘的なイ短調」への転換が、ライオンの「威厳と迫力」を同時に表現しているのです。音楽理論的には難しく聞こえますが、子どもに伝えるときは「最初の音は大きなライオンの声。次の音はライオンが歩きだした音だよ」という言葉で十分に伝わります。

シンプルな言葉に置き換えることが保育士の腕の見せどころです。

  • 🎵 作曲年:1886年(サン=サーンス51歳のとき)
  • 🌍 初演地:オーストリア(クルディム)、非公開で演奏
  • 📖 出版年:1922年(作曲者没後)
  • 🎼 全曲数:14曲(組曲全体)、第1曲は71小節
  • 🎹 使用楽器:ピアノ2台、弦楽五部、フルートクラリネットシロフォン、グラスハーモニカ
  • 🦁 テンポ:Andante maestoso → Allegro non troppo → Piu allegro

この豆知識を持っておくことで、保護者への発表会前の説明や、年長児への曲紹介の際に「ちょっと大人な話」として語りかけることができます。保育士の側の音楽知識が深いほど、子どもへの音楽体験の質も高まっていきます。

ピティナ・ピアノ曲事典「動物の謝肉祭(2台ピアノ)」:作曲家の背景・初演の経緯・楽曲の権威ある解説が掲載されています。サン=サーンスが出版を禁じた経緯についても詳しく学べます。

【Amazon.co.jp限定】1st ONE-MAN LIVE “薄明の序奏” (特典:スマホキーリング) [Blu-ray]