子守歌CDの歌を保育士が使いこなす方法
CDだけで歌うと、赤ちゃんが笑顔になる回数が減ります。
子守歌CDの歌が赤ちゃんに与える効果とは
子守歌は、保育の現場において長い歴史をもつ育児行動のひとつです。赤ちゃんをあやす、落ち着かせる、寝かしつけるという目的で、文化や時代を超えて世界中で歌われてきました。
近年の研究によって、子守歌が赤ちゃんの脳や感情の発達に与える影響が少しずつ明らかになってきています。玉川大学脳科学研究所の研究(黒石・梶川, 2008年、小児保健研究掲載)では、261名の母親を対象に「肉声で歌いかける場合」と「CDなどオーディオ機器で聴かせる場合」を比較しました。その結果、赤ちゃんが寝つく・体を動かす・声を出すといった反応は両者でほぼ同程度でしたが、「笑い」という反応は肉声形式の方が明らかに多く観察されたと報告されています。
これは意外なことです。多くの保育士がCDで流しながら子守歌の雰囲気を作れれば十分と考えがちですが、赤ちゃんにとっての笑いや喜びという反応には、人の肉声が直接関わっているのです。
子守歌がもたらす効果は、寝かしつけだけにとどまりません。コミュニケーション能力の向上、精神の安定、語彙力・言語能力の発達、感情表現の豊かさ、そして知能指数に良い影響をもたらす可能性があることも、複数の研究で示唆されています。
赤ちゃんは生後20週頃には音が聞こえています。
音がもたらす刺激を早期から受けることが、脳の成長に関係するとされる点は、保育士として意識しておく価値があります。CDは環境音として活用しつつも、できる限り肉声の歌いかけを組み合わせるのが理想的です。
特に生後1年目前半(生後0〜5か月頃)の赤ちゃんは、直接的な社会的相互作用のある肉声の方が、CDよりもポジティブな反応を引き出しやすいとされています。CDはあくまで補助として位置づけ、保育士自身の声を積極的に使っていきましょう。
参考:子守歌の肉声とCD(オーディオ形式)の効果を比較した国内論文。261名の母親への質問紙調査をもとにした研究成果。
「現代の家庭育児における子守歌の機能」黒石純子・梶川祥世(小児保健研究 2008年)
子守歌CDおすすめ曲と保育士が選んだ定番の歌
保育の現場で実際に使われている子守歌には、長年選ばれ続けてきた定番曲があります。小田原乳児園の保育士が選んだ「寝かしつけにおすすめの歌ランキング」では、次の3曲がトップに挙がっています。
| 順位 | 曲名 | ポイント |
|---|---|---|
| 🥇 1位 | ゆりかごのうた | ゆったりしたリズム、昔から歌い継がれる安心感 |
| 🥈 2位 | きらきら星 | 子どもに馴染み深く、ハミングでもOK |
| 🥉 3位 | シューベルトの子守唄 | 体をやさしくマッサージしながら歌うと効果的 |
これらの曲はいずれも、スローテンポで音域が広くなく、赤ちゃんの耳に穏やかに届く特性があります。保育士として覚えておきたい基本の3曲と言えます。
日本の子守歌として特に知名度が高いのは「ねんねんころりよ(江戸の子守唄)」「ゆりかごのうた(作詞:北原白秋)」「赤とんぼ(作詞:三木露風、作曲:山田耕筰)」です。日本三大子守歌とされるのは「五木の子守唄(熊本)」「島原地方の子守唄(長崎)」「中国地方の子守唄(広島・鳥取)」で、これらは地域の文化や歴史を色濃く反映した曲です。
世界のクラシック系では、「ブラームスの子守唄」「シューベルトの子守唄」「モーツァルトの子守唄」が保育CDとして商品化されており、市販のCDでは日本コロムビア、キングレコード、テイチクなどから数多くリリースされています。
CDを選ぶ際は「オルゴール調」か「声楽入り」かも大事なポイントです。
オルゴール調のCDは音が柔らかく耳に優しい一方、声楽入りは人の声が含まれるため、肉声に近い温かみがあります。保育の場面や子どもの月齢に応じて使い分けるとよいでしょう。また、AmazonやジョーシンWebなどでは「胎教・子守歌」ジャンルのベストセラー一覧から人気のCDを確認できます。
参考:保育士選定の定番曲ランキングを公開している保育施設のウェブマガジン。実際の現場の声がわかります。
「保育者が選んだ寝かしつけにおすすめの歌ランキング」小田原乳児園
参考:子守歌や童謡の歌詞・解説をまとめたサイト。おすすめ曲の一覧確認に役立ちます。
子守歌の歌詞が持つ歴史と保育士が知るべき背景
子守歌の歌詞には、単なる「おやすみの歌」を超えた深い歴史が刻まれています。保育士として子守歌を歌う際、その背景を知っておくことで、歌の伝え方がより豊かになります。
江戸時代から伝わる「ねんねんころりよ おころりよ」は、「坊やはよい子だ ねんねしな」という歌詞で広く知られています。諸説ありますが、裕福な家庭の母親目線で書かれたともいわれ、子どもを慈しむ穏やかな世界観が特徴です。
一方で、「五木の子守唄」(熊本県球磨郡五木村)や「竹田の子守唄」(京都市伏見区)は、子守奉公に出された少女たちが自分の境遇の辛さを慰めるために歌った「守り子唄」としての側面を持っています。五木の子守唄に登場する「おどま(私たちは)盆ぎり盆ぎり」という歌詞は、貧しさゆえに奉公に出された娘たちの切ない思いを表しています。歌詞に含まれる言葉が歴史的な差別問題に関わるとして、一時的にテレビ放送が自粛された時期もありました。
こうした歴史を持ちながらも、現在の保育の場では美しいメロディーと地域色豊かな旋律として受け継がれています。歌詞の意味を理解したうえで歌うかどうかの判断は、保育士それぞれに委ねられますが、少なくとも「歌詞の背景を知っている保育士」であることは、保護者や同僚への信頼感につながります。
「ゆりかごのうた」は大正時代に北原白秋が作詞した楽曲で、昔はわざわざ子守唄を歌わせるために奉公人を雇う文化もあったほど、子守歌の位置づけは特別なものでした。これは現在の保育の価値観にも通じるものがあります。
歌詞の意味を知ることは、歌の深みを増やします。
「きらきら星」はフランス発祥のメロディーで、原曲のタイトルは「Ah! Vous dirais-je, Maman(あのね、お母さん)」。日本の歌詞とは全く違う恋愛の歌が元になっているというのも、保育士が話のネタとして使えるちょっとした知識です。
参考:子守唄の歴史・地域文化・歌詞の背景を詳しく解説するNPO法人のアーカイブ。
子守歌CDを保育で使うときのルーティン活用術
子守歌CDを昼寝(午睡)の場面で使う場合、ただ流すだけではなく「ルーティンの一部」として取り入れることが重要です。これは、「音楽が流れ始めたら眠る時間だ」という条件づけを子どもの習慣に組み込む考え方です。
埼玉福祉保育医療製菓調理専門学校の2015年の研究では、19名の年少クラスを対象に、普段音楽を流していない園でオルゴール調CDと童謡CDを各6日間ずつ試験的に流す実験が行われました。その結果、音楽を流すこと自体が「直接的な入眠時間の短縮」には必ずしもつながらなかったものの、入眠のきっかけ・場の区切りとして機能する可能性が示されました。つまりCDの効果は、音自体よりも「使い続けることで生まれる合図としての役割」にあるのです。
- 💡 毎日同じ曲・同じタイミングで流すことで、子どもの脳が「このメロディー=眠る時間」と認識するようになります
- 💡 音量は60dB以下を目安に。赤ちゃんの耳はとても敏感で、大きすぎる音は逆効果になります(一般的な会話程度の音量が適切)
- 💡 オルゴール調のCDは、人の声や日常音と音域が異なるため、睡眠導入に向いているとされています
- 💡 肉声との組み合わせが理想的。CDを流しながら保育士が小声でハミングするだけでも効果が高まります
保育アンケートでは、音楽を使う理由として「入眠時の気持ちを落ち着かせるため」「場面のメリハリをつけるため」が多く挙げられており、現場でも実用性が高く評価されています。逆に「使わない」理由としては「子ども自身の入眠ペースを尊重したい」という声もありました。子どもによって合う・合わないがありますが、試してみる価値は十分あります。
午睡前の環境整備も大切です。室内の温度は25〜26℃程度に保ち、採光をやや落とすだけでも眠りやすい雰囲気がつくれます。子守歌CDはその環境整備のひとつとして活用するのが基本です。
参考:保育専門学校の研究発表。午睡時の子守歌CDの効果を実験で検証した内容が確認できます。
「入眠時における子守唄の効果」埼玉福祉保育医療製菓調理専門学校
保育士が知るべき子守歌CDの著作権と注意点
保育の現場で子守歌CDを使う際、多くの保育士が見落としがちなのが「著作権」の問題です。知らないまま違反してしまうと、最大で1,000万円以下の罰金または10年以下の懲役が科せられる可能性があります。これは通常の窃盗罪(刑法では10年以下の懲役または50万円以下の罰金)と比べても、金額面でははるかに重い罰則です。
著作権法の基本として、CDに収録された楽曲には「作曲者・作詞者・編曲者・演奏者・CD制作会社(レコード会社)」それぞれに著作権または著作隣接権が発生しています。これらすべての権利者に許可を取ることは現実的には難しいため、日本ではJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)が一括管理しています。
保育園でCDをかける場合の基本的なルールを整理すると、次のようになります。
| 使用場面 | 著作権的な扱い |
|---|---|
| 保育室内でのBGM再生(CD使用) | 原則として著作権者の許可が必要(ただし非営利・無料なら免除されるケースあり) |
| 子どもへの生演奏・肉声で歌う | 著作権法第38条の「非営利演奏」で多くの場合OK |
| 運動会などの動画を撮影しネット公開 | JASRAC許可が必要 |
| パブリックドメイン曲(著作権切れ)の使用 | 許可不要 |
特に注意が必要なのは「ネットへのアップロード」です。保育の記録として動画を撮影しSNSや保護者向けサイトに掲載する場合、BGMで市販のCDが流れていると著作権侵害になるリスクがあります。
著作権が切れた楽曲(パブリックドメイン)は安心して使えます。
「ねんねんころりよ」「ゆりかごのうた」「五木の子守唄」「ブラームスの子守唄」など、作曲者の没後70年が経過した楽曲は著作権が切れており(演奏者の著作隣接権は別途確認が必要)、自分で演奏・歌唱する分には問題ありません。著作権フリーの音源サービスや保育専用の音楽CDを活用するとリスクを避けられます。
現場でCDを使う際は、施設として正規品を購入すること、インターネット上への動画掲載時は音楽を使わない・著作権フリー音源を使うことを心がけてください。
参考:学童クラブ・保育園での著作権の実務的な注意点を詳しくまとめたブログ記事。音楽・動画・画像の扱いが整理されています。
「学童や保育園で知らないとヤバい著作権違反行為」学童クラブ運営ガイド
参考:保育所・幼稚園など教育機関における音楽著作権の公式手続きページ。


