口語体の歌・歌が保育に不可欠な理由と試験で問われるポイント
文語体の歌詞を使うと、子どもの語彙力が伸びにくくなると言われています。
口語体の歌とは何か|文語体との違いと保育での意味
口語体(こうごたい)とは、私たちが日常会話で使っている「話し言葉」をそのまま文章や歌詞に使う表現スタイルのことです。これに対して文語体(ぶんごたい)は、かつての書き言葉をベースにした表現で、「〜なり」「〜けり」「〜べし」といった現代日常語とは異なる語尾・語彙が用いられます。
保育の文脈では、この違いが子どもにとって非常に重要な意味を持ちます。つまり口語体の歌詞かどうかが基本です。幼い子どもは、まだ語彙を獲得している最中にあります。歌から言葉を吸収していく過程において、文語体の難解な言葉は耳に入っても意味と結びつきにくく、言語発達の観点からも効果が薄いとされています。
一方、口語体の歌詞は子どもが普段耳にしている言葉と一致しているため、メロディーに乗って自然に語彙を習得できます。これは使えそうです。たとえば「もういくつ寝るとお正月」という有名な一節は、子どもが日常会話で使う「寝る」「お正月」という言葉がそのまま歌詞に使われており、小さな子どもでも意味を理解しながら歌えます。
明治時代以前に作られた多くの唱歌は文語体が主流でした。「花はさかりに月はくまなきをのみ見るものかは」といった表現は、大人が見ても難解です。子どもがこのような歌詞を聴いても、意味がわからないまま音だけを追うことになり、言葉の獲得には繋がりにくいのです。保育士がこの違いをしっかり理解しておくことで、どの歌を選曲するかの判断基準にもなります。
| 比較項目 | 口語体の歌 | 文語体の歌 |
|---|---|---|
| 使用言語 | 日常の話し言葉 | 書き言葉・古文調 |
| 子どもの理解度 | 高い | 低い(難解) |
| 語彙習得効果 | 高い | 低い |
| 代表的な例 | お正月、鳩ぽっぽ | 明治初期の学校唱歌 |
口語体の歌の歴史|幼稚園唱歌集と滝廉太郎・東くめの功績
日本で最初に幼児向けの口語体の歌を組織的にまとめた資料が、明治35年(1902年)に発行された「幼稚園唱歌集」です。これは保育士試験「保育実習理論」でも繰り返し出題される最重要テーマの一つです。
「幼稚園唱歌集」は、当時お茶の水女子大学の前身機関に勤めていた東基吉(ひがし もときち)の提案のもと、その妻・東くめ(ひがし くめ)が作詞を、作曲家の滝廉太郎が担当して制作されました。収録曲は20曲で、春から冬の四季に沿って並べられています。
この唱歌集には、当時として画期的な2つの特徴がありました。
- ① 幼児向けとして日本初の「口語体」で書かれた歌詞を採用した
- ② 全20曲すべてに伴奏譜(ピアノ伴奏)が付いていた
当時の唱歌の多くは文語体で書かれており、子どもには理解しにくいものでした。東くめはそうした現状に疑問を持ち、子どもの日常に近い話し言葉をそのまま歌詞に採用する試みを実践したのです。擬態語や身近な自然の描写を積極的に盛り込んだことで、子どもたちが歌詞の意味を感じながら歌える作品が生まれました。これが原則です。
代表曲の「お正月」(もういくつ寝るとお正月〜)や「鳩ぽっぽ」(ぽっぽっぽ はとぽっぽ〜)は、今日においても保育園・幼稚園で歌い継がれています。100年以上にわたって歌い継がれているというのは、口語体の普遍的な強みと言えるでしょう。
なお、保育士試験では東基吉・東くめ・滝廉太郎の名前と役割、そして「口語体」「伴奏付き」という2つの特徴が頻繁に問われます。
保育士試験「保育実習理論」の音楽基礎知識①:幼稚園唱歌集・リトミックなど試験頻出ポイントまとめ
口語体の歌が子どもの言語発達に与える具体的な効果
口語体の歌が子どもの発達に良いと言われる理由は、感覚的なものだけではありません。言語習得の観点から、複数の研究でその有効性が示されています。
まず、口語体の歌詞は「聴いてわかる言葉」で構成されているため、乳幼児が言葉の意味と音を同時に習得する場面を自然に作り出します。子どもは保育士の声を通じて歌を覚えていく「聴唱法(模唱法)」によって言葉を学んでいきます。そのときに歌詞が口語体であれば、歌を通じた語彙の獲得がスムーズに進みます。
たとえば「水遊び」(水をたくさん くんできて〜)という曲では、「くんできて」「たくさん」「ざぶざぶ」といった生活言語が歌詞に組み込まれています。子どもはこの歌を繰り返し歌うなかで、自分の体験と言葉が結びつき、語彙として定着していくのです。語彙習得が基本です。
また、口語体の歌はリズムにのせた反復が多く、記憶に残りやすいという特徴があります。芦屋大学の研究(2024年)によれば、幼児の歌唱活動には語彙の増加・言語能力の発達(心理的・知的効果)・脳の発達・コミュニケーション能力の向上など、多面的な効果があることが示されています。
これはとても大切な視点ですね。保育士として日常的に歌う場面で「この歌詞は子どもの日常語に近いか」を意識するだけで、音楽活動が発達支援の質の高いツールになります。一読して意識しておけばOKです。
幼児の表現活動を支える保育者の歌唱についての一考察(芦屋大学紀要・2024年):歌唱が語彙発達・脳の発達・コミュニケーション能力に与える効果が詳述されています
保育士試験で必ず問われる口語体の歌・歌のポイントを整理する
保育実習理論の問6は、音楽の基礎知識を問う設問です。その中でも「幼稚園唱歌集」に関連する口語体の歌の知識は、過去に繰り返し出題されています。ここでは試験対策として、絶対に覚えておくべきポイントを整理します。
まず「幼稚園唱歌集」の基本情報として、発行年・作者・特徴の3点が最頻出です。
- 📅 発行年:明治35年(1902年)
- ✍️ 作詞:東くめ(東基吉の妻)
- 🎹 作曲:滝廉太郎
- 📋 特徴①:日本初の幼児向け口語体歌詞
- 📋 特徴②:全曲に伴奏譜(ピアノ伴奏)が付いている
- 🎵 代表曲:お正月、鳩ぽっぽ、水遊び
次に、試験でよく出る「○か×か」形式の問題パターンを確認しておきましょう。
- 「幼稚園唱歌集は文語体で書かれた歌詞が特徴である」→ ✕(口語体が特徴)
- 「幼稚園唱歌集の作曲者は東くめである」→ ✕(東くめは作詞者、作曲は滝廉太郎)
- 「幼稚園唱歌集は日本で公に出版された最初の幼児用音楽教科書である」→ ✕(最初の幼児向け「口語唱歌集」ではあるが、「公に出版された最初の幼児用音楽教科書」は別)
- 「幼稚園唱歌集の歌詞はすべて口語体で、全曲に伴奏がついている」→ 〇
なお、「幼稚園唱歌集」と「小学唱歌集」は混同しやすいポイントです。小学唱歌集(明治14〜17年)は伊沢修二が主導した学校教育向けのもので、こちらは文語体中心であり幼児向けではありません。試験ではこの違いが問われることもあるため、しっかり区別しておきましょう。これが条件です。
また、童謡と唱歌・わらべうたの違いも重要です。「赤い鳥」童謡運動(大正7年)、鈴木三重吉、北原白秋・西条八十らの名前は、唱歌・童謡の違いを問う問題でセットで出題されることが多いです。
保育実習理論「音楽基礎知識②唱歌・童謡・わらべうた」:わらべうた・唱歌・童謡の違いと保育士試験の過去問まとめ
保育現場で口語体の歌を選曲・活用する独自の視点
ここまでは保育士試験の知識として「口語体の歌」を整理してきましたが、実際の保育現場での選曲・活用という視点は、試験勉強だけでは見えにくい部分です。この視点を持っておくと、日々の保育の質が変わります。
保育士として現場で歌を選ぶとき、「子どもが楽しんでいるか」という感覚的な判断は大切ですが、それに加えて「この歌詞は今の子どもたちの日常語に近いか」という視点を持つことで、より意図的な選曲ができるようになります。口語体かどうかが条件です。
たとえば、わらべうたは口語体に近い日常語で書かれているものが多く、音域も狭いため(2〜5音程度で構成)、1〜2歳の子どもでも無理なく歌えます。一方、昭和以降に作られた童謡の中には音域が広く、歌詞も抽象的なものがあり、実は3歳以下の子どもには難しい曲も少なくありません。厳しいところですね。
さらに、口語体かつ擬態語・擬音語が豊富な歌は、発語を促す手遊びとの相性が特に良いとされています。「ぽっぽっぽ」「ざぶざぶ」「ぱらぱら」といったオノマトペを含む歌詞は、子どもが音を体感しながら言葉と意味を結びつけていける最良の素材です。
月齢・年齢に合わせた選曲を行うためには、歌詞の言語的なレベルと音域の両面から判断することが重要です。具体的な行動として「歌詞の中に擬音語・擬態語が含まれているか」「主語や述語が日常語でわかりやすいか」の2点をチェックするだけでも、選曲の質が高まります。これだけ覚えておけばOKです。
また、季節の歌を選曲する際も、口語体かどうかという視点を持つことで、子どもたちが歌詞の意味を感じながら季節を体験できる時間を意図的に作り出せます。「今月のうた」として採用する曲を選ぶ際に、ぜひ歌詞の言語スタイルも確認してみてください。
| 年齢の目安 | 向いている歌のタイプ | 選曲のポイント |
|---|---|---|
| 0〜1歳 | わらべうた・子守唄 | 2〜3音の音域、繰り返しが多い口語体 |
| 2〜3歳 | 手遊び歌・口語体唱歌 | 擬音語・擬態語が豊富、短い歌詞 |
| 4〜5歳 | 童謡・季節の歌 | 口語体で物語性がある、会話調の歌詞 |
乳幼児の発達に沿う保育の歌を選曲する必要性(白藤学院 研究紀要・2020年):乳幼児の心体の発達と歌の選曲基準について、発達段階に沿った詳細な考察が記されています

司法書士講義民事訴訟法・民事執行法・民事保全法: 完全口語体表記によるわかりやすい解説

